問題・
背景個別支援の手法として注目されるコーチング
近年、1対1で実施される個別支援のアプローチ「コーチング」が、今までになく注目されています。こうしたアプローチが注目されている理由は、主に2つです。1つ目に、社員が抱える業務上の「課題の個別性」がより高まったことがあります。2つ目に、「経験学習」という考え方が注目され、社員個人が業務経験から学習することを重視する傾向が増したことが挙げられます。
(1)社員が抱える「課題の個別性」の高まり
現代の企業やそのなかで働く個人はグローバル化やダイバーシティの高まりなどによって、これまでになく不確実で複雑性の高い環境に直面しています。こうした環境は、チームや一人ひとりの社員が直面する課題の個別性が高まる状況を生み出しています。そのため、各々の状況に合わせたソリューションを提供できるコーチングの利用が広がっています。
(2)「経験学習」への注目
経験学習とは、「実際の業務経験を省察することで学びを深める学習」のことです。経験学習では、業務経験からの学びを最大化するために「経験→省察→概念化→実践」のサイクルを効果的に回すことが重要です。しかし、日々の業務に追われながら自分自身を客観的に振り返るこのサイクルを1人で回し続けるのは容易ではありません。そのため、コーチという第三者の質問、承認、フィードバックなどを通して、個人の省察や行動実践を促進する1対1の個別支援アプローチが注目されているのです。

主な
課題個別支援はリーダーシップ開発と親和性が高い
個別支援の手法を用いた人材開発上の課題はいろいろありますが、主な課題として「リーダーシップ開発」が挙げられます。
コーチングによるリーダーシップ開発
「コーチング」とは、コーチが対象者との対話を通じて、対象者の立場・役割にふさわしい態度・能力の獲得を支援するプロセスです。対象者の「ビジョンの明確化」「信念・価値観の明確化」「チャレンジ行動の促進」などを実現することができます。
リーダーシップ開発でコーチングが利用されるのは、企業を取り巻く環境変化のスピードが以前より増し、技術などの進化がより速くなったことが大きな理由です。そのため近年、企業のリーダーは、自身の経験からは予期できないビジネスの問題や課題に直面する機会が増え、これまでの成功体験を通じて作られた思考・行動のパターンに疑問をもち、思考様式を更新させていくことが求められるようになりました。自身のビジョンや行動様式を常に確認し、環境変化に適応させるのです。このとき、自分1人で確認するよりも、第三者の力を借りて確認した方がより客観的で効果的な気付きを得ることができるために、コーチングが活用されているのです。
