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インタビュー

【トレーナーインタビュー】新人・若手社員の研修現場から

「Z世代が本音を話せるトレーナー」は、 いったいどんな魔法を使っているのか?

  • 公開日:2023/05/22
  • 更新日:2024/05/16
「Z世代が本音を話せるトレーナー」は、いったいどんな魔法を使っているのか?

弊社は、新人・若手社員の「受け身化による成長鈍化」や「モチベーション低下」「早期離職」などの課題に対し、受講者本人が、セルフリーダーシップを発揮し自ら状況を変えていく、自律の力を高める研修プログラム「X-SHIP(クロスシップ)」の提供を始めている。
前回記事では商品の開発背景や実施効果を紹介したが、本記事ではX-SHIPをはじめ新人・若手向けの研修においてZ世代の本音を引き出し、学び合う場をつくることに定評のある2名のトレーナー・今井と津坂に、Z世代と接する際のあり方・方法・注意点などを詳しく聞いた。2人には、Z世代がどのように見えているのだろうか。

対談メンバー
● 今井 礼(人材開発トレーナー)
● 津坂 竜平(人材開発トレーナー)

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「皆さんの状況を船に例えたとして、今の船・海・空の様子を教えてください」と問うと、ニコニコしながら書いてくれる
Z世代は、相手が「役を演じている」と感じたら「心のシャッター」を閉じるから、素のままで話す
人生を自分で決めることにワクワクできれば、自律的に行動できるようになる
認知・承認・期待さえあれば、Z世代もフィードバックを素直に受け入れる

「皆さんの状況を船に例えたとして、今の船・海・空の様子を教えてください」と問うと、ニコニコしながら書いてくれる

――簡単に自己紹介をお願いします。

津坂:トレーナーになる前は、海運会社で働いていました。前職時代、みんなが互いを認め合い、自分らしさを生かしながら仕事をすると大きな成果が出たんです。自分らしく働ける人を増やしたいと思い、トレーナーになりました。

今井:私の前職は航空会社で、社員教育に携わっていました。新人たちがたった1カ月で変わっていくのが面白くて、「いろんな方の学びを支援して、私も一緒に学んでいけたらどんなに楽しいだろう」と思って、弊社のトレーナーになって今に至ります。

――最近、お客様からZ世代の接し方についてよくいただく悩みがあります。

私たちX-SHIP開発チームは、それらの悩みを次のようにいくつかのキーワードにまとめています。自分のことを分かってくれないと感じると心を閉ざす「心のシャッター」。無表情で感情が読み取れないことを意味する「すん」。ビジネスマナーやルールについての「ゆるさ」。時間効率を重視する「タイパ」。やることに意味や価値を感じないとやる気が出ない「意味価値大事」。決めつけず多くの選択肢のなかから自分に合ったものを選びたい「合うもの選ぶ」。

こうした特徴を持つZ世代に対して、どう接すればよいかが分からずに悩んでいる人事や上司の方が増えている印象です。お二人は、どう捉えていますか?

<図表1>Z世代に対する悩みを表すキーワード

<図表1>Z世代に対する悩みを表すキーワード

津坂:「意味価値大事」には本当に気をつけています。「なんで1日研修なの?」「なんでグループ討議をするの?」というところから説明しないと、Z世代は研修の意味や価値を感じてくれません。説明の仕方によって、彼らのやる気や動きが全く変わってくるんですよ。

今井:X-SHIPでも、「すん」はよくあります。最初に私が「おはようございます」と言っても、まさに「すん」としたまま挨拶が返ってこなくて、シーンとしてしまうんですよ。

津坂:私は「すん」については、オンラインなら「皆さんマイクオンにして声を聞かせてください」って言ってます。そのとき、研修は聞くモードじゃなくて、参加する場であるという意味も同時に伝えることが大事です。最初のうちは様子見の受講者もいますが、何度かやれば多くの受講者がやってくれるようになって、「すん」はなくなりますよ。

今井:X-SHIPでは、セルフリーダーシップの発揮を職場での航海に例えて、職場の状況を空と海に、自分はそのなかの船に例えて対話することから始めます。「皆さんの状況を船に例えたとして、今の船・海・空の様子を教えてください」と問いかけるんですね。これは効果的で、皆さんニコニコしながら、「晴れ」「曇り」「大嵐」などとチャットに書いてくれます。「なんで大嵐なんですか?」と聞くと、理由をきちんと話してくれますよ。そのときには「すん」はなくなってます。

「皆さんの状況を船に例えたとして、今の船・海・空の様子を教えてください」と問うと、ニコニコしながら書いてくれる

津坂:大嵐って書くってことは、話したいという意思表示でもありますよね。

今井:船のメタファーを使うことで、言語化しにくい内面の感情を表しやすくなる面もあるんですね。

<図表2>X-SHIPのビジュアルデザイン例

<図表2>X-SHIPのビジュアルデザイン例

Z世代は、相手が「役を演じている」と感じたら「心のシャッター」を閉じるから、素のままで話す

――「心のシャッター」に出合うことも多いと思いますが、どう対応していますか?

津坂:心のシャッターを閉じてしまうと、研修に集中していない態度や行動を見せる方も多いです。私はそういう受講者を見つけたら、その態度や行動の背景に何があるのかを聞きます。彼・彼女にとって意味のない時間になるのはもったいないですからね。やり取りしているうちに、仕事の愚痴や会社へのクレーム、抱えている不安なんかを話し始めたら、「その想いや悩みをこの場に持ち込んだらいいよ。みんなにも一緒に考えてもらおう」って言います。そこから本人も身を乗り出して参加して、前向きな解決策が生まれたことがありました

今井:私は、心のシャッターを閉じつづけている受講者には、ずっと注目するようにしていますね。その人が「ロボットみたいに働いている自分が嫌で」みたいな感じで、何か感情を出してくれたときに、「続きを聞きたいから何でも話してみてください」と呼びかけると、シャッターを少しずつ開けてくれることが多いです。

――心のシャッターを閉じるのは「言っても分かってもらえない」と思うからで、受け止めてもらえると分かれば素直に出してくれるし、コミュニケーションも広がるということですね。新入・若手社員へのリスペクトを奥底に感じました。

今井:リスペクトは大事にしていますね。「そのお話、○○の点がすごく良かったですよ。心が動きました」というように、等身大の自分で接したうえで、良いことはきちんと受け止めて褒めてあげることが大切だと思います。あと、トレーナーが先に自己開示すると、皆さんが自己開示しやすくなるので、最初に私が自分のことを話すようにしてます。

津坂:Z世代は、「あのトレーナーは、研修講師という役割を演じている」と感じたら、心のシャッターを閉じます。私がトレーナーとして、「こうあるべきだ」「もっとこうしなきゃ」などと言い始めたら、Z世代は拒絶するんですね。彼らは、分かり合えないと感じた相手とは距離を置くんです。そうならないよう、できるだけ自分の素のまま、ありのまま、生身で話すようにしています。自分がトレーナーであることを忘れることもありますね。

Z世代は、相手が「役を演じている」と感じたら「心のシャッター」を閉じるから、素のままで話す

――ビジネスマナーやルールについての「ゆるさ」への指摘については、どう感じていますか?

津坂:多くの受講者は、表向きはゆるい態度を取っていても、別にやる気がないわけではありません。決めつけないことが大事です。「つまらなそうですね」なんて言ってしまうと、それこそ心のシャッターを閉じてしまいますから。彼らは他者からのフィードバックにとっても敏感なんです。

反対に、「自分も2年目研修が嫌だったんですよね」とか「新人の頃、隣の席に怖い先輩がいたんですよ」というように、彼らと同じ立場だった頃のエピソードを織り交ぜると、心を開いてくれることもあります。やはり素の自分で接することが大事です。

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人生を自分で決めることにワクワクできれば、自律的に行動できるようになる

――Z世代は、小さな頃から自分に合ったものを選べる環境が普通になっており、「環境がもっと良ければ」と捉える傾向があります。この傾向が、セルフリーダーシップ発揮の壁になることもありますよね。

今井:そのとおりです。大変な目に遭っている新人・若手のなかには、気をつけないと「部署が悪い、上司が悪い」と言って、セルフリーダーシップを避けてしまう受講者がいます。そうした受講者には気をつけています。

――セルフリーダーシップを避けてしまう受講者にはどう対応していますか?

今井:私は、話をできるだけ未来のことに持っていくようにしています。未来を前向きに変えようとする一歩を踏み出して、少しでも元気になってもらえたらいい、と思っていますね。

津坂:とはいえ、Z世代に変えられないことがあるのも、一方の真実ですよね。新人・若手にはどうにもならない外的要因は、間違いなく存在します。例えば、上司や育成担当者が忙しすぎて相手をしてくれないようなことは、よくありますよね。

私の場合は、そういう外的要因の話になったときは、いったん「自分では変えられないこと」をその場に全部出してもらって、「大変だね」と言葉をかけるようにしています。そのうえで、「確かに、皆さんが解決できないことはありますよね。でも、自分で解決できることや動けることもあると思います。それは何ですか?」と問いかけるんです。

そうすると「自分が、上司や育成担当者にスイッチを入れるしかないですかね」とか「自分が部長を動かせたらスゴイですね」と、話が盛り上がっていくことがあるんですよ。少なくとも、外的要因の存在を全面的に否定せず、彼らの見方を認めてあげることは大事だと思います。

――Z世代に自律のスイッチが入るのはどんな瞬間ですか?

津坂:「#ワーク(自分らしさについてお互いにハッシュタグでキーワードを贈り合うワーク)」でグループの仲間からフィードバックをもらうと、スイッチが入ることがあります。周囲からの承認の言葉によって「これが自分の強みなのか」と認知でき、「それならこうしたい」という気持ちが生まれて、アクションを起こすモチベーションが上がるんです。

今井:私はZ世代にも、他の世代と同じように「選択肢はあなた自身にありますから、自己決定しましょう」と伝えています。そうしたら先日、研修の最後に「最初は自分で決めるのは難しいと思っていたけれど、今はワクワクしてきました」と言ってくれた受講者がいました。

そうやって人生を自分で決めることにワクワクできれば、自律的に行動できるようになります。できるだけ多くの方に、そう感じてほしいですね。

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認知・承認・期待さえあれば、Z世代もフィードバックを素直に受け入れる

――Z世代の長所を教えてください。

津坂:情報があふれていることもあって、自分の若い頃よりもいろんなことを知ってますね。視野も広いと感じることが多いです。確かに心のシャッターを閉めがちですが、取っかかりさえあれば、見知らぬ人たちと仲良くなる速度も案外速いですよ。

今井:柔軟性が高く、どんな人でも受け入れられる懐の深さのある方が多いと思います。多様性を大事にする世代なんですね。相手を否定せず、お互いに尊重し合うタイプの受講者をよく見かけます。

<図表3>Z世代の特徴(代表的なもの)

<図表3>Z世代の特徴(代表的なもの)

――Z世代と接するうえで、いまだに難しいと感じることは何ですか?

今井:難しいのは自分の立ち位置ですね。Z世代に限った話ではないと思うのですが、トレーナーは、どうしても教える立場に立ってしまいがちです。上から目線にならないように気をつけていますが、ふとしたときに、よかれと思ってアドバイスしそうになるんですよ。今も「よかれ」と葛藤することは多いですね。

津坂:実は最近、Z世代の難しさを感じなくなりました。なぜかというと、Z世代と私たち世代は、表面は違うように見えますが、内面はそんなに変わらないからです。深く話してみたら、彼らの悩みが10年前の自分の悩みと近かったりするんですよ。じっくり時間をかけて話し合いたい、仲良くなりたいという受講者も多いです。表面的な世代の違いに注目しすぎない方がいいと思います。

――上司や人事の皆さんは、Z世代にどのように接したらよいのでしょうか?

津坂:正解のない世のなかになった以上、ある程度までは信じて任せることが大切です。彼らが何かをやりたいというのなら、ぜひ見守りながらチャレンジさせてみてください。もしかしたら彼らが正解なのかもしれないんですから。成果が出なかったら、元に戻せばよいだけです。

あと、Z世代はフィードバックを嫌がる印象があるかもしれませんが、実際は彼らも上司・先輩からのフィードバックを求めています。ただし、フィードバックの前に、認知・承認・期待を伝えることが大切です。認知・承認・期待さえ届けば、彼らもフィードバックを素直に受け入れるんです。

今井:同感です。Z世代との関係性を整えたうえで、伝えるべきことは伝えてください。甘やかすのがよいわけではありませんから。

津坂:新人・若手は目の前の仕事に一生懸命な場合が多いので、全社的な業務のつながりを把握できていないケースが多いです。単純作業マシンのようになってしまい、周りが全然見えていないZ世代も少なくありません。ですから、自分の仕事が会社のなかでどのように役立っているのかを見せてあげるといいですよ。つながりのある部署の方と引き合わせたりしてもいいかもしれません。彼らが自分の存在意義を見いだせるようになりますから。

今井:私も、「意味価値大事」なZ世代には存在意義を伝えることが大事だと思います。実は、Z世代には社会貢献欲求や組織貢献欲求の高い人が多いです。自分勝手に見えるかもしれませんが、そうではなくて、自分らしく会社に貢献したいと思っているんですね。業務のつながりだけでなく、半年後や1年後の仕事上の景色を見せてあげることにも効果があります。

――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

津坂:Z世代と接するときには、何を大事にしたいのか、どこに向かいたいのかを聞いてあげることが大事です。その会社に在籍している以上、必ず何かしらの想いがあります。その想いに耳を傾けてください。表面的に捉えたり、決めつけたりはしないであげてください。

今井:「Z世代の特徴を理解することは大事ですが、ひとりの個人として尊重してください」の一言に尽きますね。人として向き合うことが大切だと思っています。

PROFILE

今井 礼(いまい あや)
人材開発トレーナー

航空会社にて、国内および国際線旅客のハンドリング業務に従事し、国内外拠点のスーパーバイザー業務を経験。その後、人材育成部門に異動し、社員教育の企画から実施までを担当し、新入社員の育成や教育制度の改善、キャリアプランの作成に注力。社員のモチベーション向上、スキルアップ、キャリアアップの機会拡大に貢献し、成果を上げるための支援を行う。

津坂 竜平(つさか りゅうへい)
人材開発トレーナー

海運会社にて国内外営業、人事、財務、労組専従、出向、転勤を経験し、ヒト、モノ、カネ、労使という多面的な立場で組織に従事。人事制度改定や風土改革、人材育成に様々な立場から関わり、常に最新トレンドを追いかけながらも自社に合う施策を提案し、人を育て、人を活かし、組織成果を出す土壌の構築に邁進した。

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