- 公開日:2023/03/27
- 更新日:2024/05/16
弊社は、新人・若手社員の「受け身化による成長鈍化」や「モチベーション低下」「早期離職」などの課題に対し、受講者本人が、セルフリーダーシップを発揮し自ら状況を変えていく、自律の力を高めるプログラム「X-SHIP(クロスシップ)」の提供を始めている。X-SHIPとはどのような研修なのか。プログラム開発を担当した桑原正義と武石美有紀が紹介する。
対談メンバー
● 桑原 正義(HRD統括部 HRDサービス開発部 主任研究員)
● 武石 美有紀(HRM統括部 HRMサービス開発部 研究員)
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◆ Z世代分析から導いた自律推進の鍵をカリキュラムに反映。
新入・若手社員のセルフリーダーシップと自律をサポートします。
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- 目次
- リリース当初から共感を呼び自然に導入企業が増えた研修
- Z世代に最も必要なのは「セルフリーダーシップの発揮」
- 「自分の人生を自分起点で良くしていく練習」を積んでもらいたい
- 「うちの若手がこんなに笑顔になるなんて」と人事の皆さんが驚く
リリース当初から共感を呼び自然に導入企業が増えた研修
――X-SHIPとはどのようなプログラムですか?
桑原:一言でいえば、X-SHIPは「Z世代が自ら動き出していく研修」です。プロトタイプ導入を経て、2022年9月に正式リリースしました。
リリース直後にもかかわらず約40社と想定を上回る数の導入をいただいていますが、興味深いのは、特にプロモーションをかけていなかったプロトタイプがお客様の共感を呼び自然に増えていったことです。1年目フォローや2年目の育成でお客様の課題意識が高まるなか、営業担当が「いま、こんな研修を作っているところです」とお客様に案内するだけで、導入企業が約40社にまで増えたのです。こんなプログラムは珍しい。多くのお客様が本当に必要としている研修だ、という実感があります。
――なぜ自然に導入企業が増えたのでしょうか。
桑原:多くのお客様がいま、1990年代後半以降に生まれ、デジタルネイティブな環境で育ってきたZ世代向けの研修に課題を感じています。「既存の新人・若手研修が、イマイチ刺さっていない」と感じているんですね。しかし、どうしたらよいのかは分からないのです。ですから、「X-SHIPはZ世代の特徴をふまえて、学習内容や方法をこのように設計しました」と説明すると、強い関心を持っていただけるケースが多いのです。
武石:若い世代のなかには、些細なきっかけで離職してしまう人が多く見られます。例えば、上司の一言が納得のいかないものだったから辞める。友達と仕事の話をするなかで、友達よりも成長の機会をもらえていないと思ったから辞める。そういう事例をよく耳にします。
いまの環境が嫌だったら、環境を変えればいい、と考えてしまう人も多いのです。以前の世代の皆さんからは、そういう若い世代とどう接したらよいか分からないという声をいただきます。X-SHIPは、そうしたZ世代に効果のある研修プログラムです。
Z世代に最も必要なのは「セルフリーダーシップの発揮」
――なぜX-SHIPを開発したのでしょうか。
桑原:X-SHIPは、「セルフリーダーシップの発揮」を目指すプログラムです。セルフリーダーシップとは、「自分起点で動いて、より良い状況をつくっていく力」のことです。いまは自律の力がますます重要になる一方、Z世代は自律に苦手意識を持つ傾向が見られ、ここを支援するプログラムが必要と考え開発しました。
背景を詳しく説明します。ご存じの方も多いと思いますが、いま世界は「VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の略)」だといわれています。VUCA環境では、言われたことをしっかりできる力だけではなく、「自律的に学習・成長していく力」が求められます。なぜなら第一に、VUCA環境には唯一の正解がなく、上司も答えを持っているとは限らないからです。全員が自分で考え、試行錯誤しなくてはなりません。第二に、職場には育てる余裕がありませんから、新人・若手も自分から周囲に働きかけて学んでいく姿勢が欠かせません。第三に、異なる考えや働き方をする人たちと協働するケースが増えており、誰もが相互理解や協働を試行錯誤して学ぶ必要があります。第四に、リモート&オンライン化が進んだいま、新人・若手が自分から上司・先輩とコミュニケーションを取る必要性がこれまで以上に増しています。
ところが私たちの調査では、最近の新人・若手社員には、「自律への苦手意識」を持つ傾向が見られます。その背景として、嫌なことを我慢し続けたり、自分で何とかして乗り切ったり、親や先生に叱られたり、試行錯誤したりする経験が、育成担当よりも新人・若手社員の方が減っていることが分かりました(図表1)。VUCA環境で役立つ経験が乏しく、入社後に不安やとまどいを感じやすくなっているのですね。
<図表1>社会人になる以前に、以下のような経験はありましたか?
育成者:1048名(過去3年以内に新人育成経験がある人) 新人・若手:424名(入社3年目以内の人)
出典:インターネット調査(2018年9月)
なぜそうなったかといえば、社会が変わったからです。例えば、ネット社会の進展によって、自分好みにカスタマイズされた情報やサービスが手元に届くようになりました。
エンターテインメントの高度化が進み、より面白いものや自分に合ったものを選べる機会が増えました。経済的に豊かになり、少子化も進んだために、小さいときから欲しいものを簡単に手に入れられる人が増えました。教育のあり方が改善されて、競争が減り、より安心・安全になり、叱られたり我慢したり失敗したりすることが減りました。不条理な目に遭ったり、何かを無理強いされたりすることもずいぶんなくなりました。もちろん、これらは基本的には良いことですが、VUCA環境への適応という意味では良いことばかりとは限りません。
武石:先ほど触れたように、Z世代は以前の世代と比べて、転職に抵抗感を持たない人が多いです。その原因の1つは、いま桑原が説明したように、環境の方が自分に合わせて変わってくれる社会になったことです。誰かが自分に合った情報を届けてくれる社会、誰かが自分を楽しませてくれる社会、誰かが自分を安心・安全にしてくれる社会になったんですね。だからこそ、会社の環境が気に入らなかったら、いまの会社を辞めて、もっと良い環境を見つければよい、という考え方にもつながるわけです。
桑原:ただ、勘違いしていただきたくないのですが、Z世代の皆さんに問題があるわけではありません。Z世代は、学生時代までは「望むものを得るために自分から相手に働きかけていく経験」や「失敗や否定される不安があっても、思い切ってやってみることで成長する経験」、「異質なものから何かを得る経験」を積みにくい環境に置かれています。ところが、社会人になってビジネスに関わると、いきなりそうした経験や行動が必要とされるのです。これは本人の意欲や能力の問題ではなく、環境や経験の問題です。Z世代の皆さんは、環境が180度変わって、急に自律して動くことを求められる苦しさを感じているのです。同じ状況に置かれたら、おそらく誰もが同じようになるはずです。
武石:こうしたZ世代に必要なのは、受け身にならずに「いまの環境に向き合う力」です。主体的に考えて行動を起こし、いまの環境や状況をより良くしていく力です。それがセルフリーダーシップです。
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◆『X-SHIP』のサービス詳細はこちらからご確認いただけます。
セルフリーダーシップを発揮し、よりよい状況を自分でつくる|X-SHIP(クロスシップ)
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「自分の人生を自分起点で良くしていく練習」を積んでもらいたい
――X-SHIPのプログラム内容を詳しく教えてください。
桑原:私たちは独自にZ世代を研究し、何が彼らの自律学習や成長の阻害/促進要因になるかを分析しました。そして、セルフリーダーシップにつながる「6つのスイッチ」を設定しました(図表2)。<理解を深める><視野を広げる><価値観とつなげる><スタイルを生かす><ものの見方を切り替える><知識・スキルを身につける>の6つです。最初の2つは、「状況を捉えなおす」スイッチで、次の2つが「自分らしさを生かす」スイッチ、最後の2つが「自分をアップデートする」スイッチです。
<理解を深める><視野を広げる><ものの見方を切り替える><知識・スキルを身につける>の4つは、「いまの自分にはない新しいものを取り入れる」ためのスイッチです。自分が置かれた環境の可能性を広げたい、環境に新たな意味を見出したい、という人に効果があります。対して、<価値観とつなげる><スタイルを生かす>の2つは、「いま自分のなかにあるものを生かしていく」ためのスイッチです。日常的にやるべきことや身につけるべきことに意識が奪われてしまい、自分がもともと持っていた意欲や能力を忘れがちな人に有用です。
<図表2>X-SHIPの6つのスイッチ
X-SHIPのプログラムは、2日間の集合研修です。1日目は、自分らしさや自身のものの見方の特徴への理解を深めます。「自分らしさをいまの仕事に生かす」という視点で考えていくと、受講者の皆さんは、「難しいと思っていたことが、自分の得意なやり方でやっていけば、実行できると思えた」といった気づきを得ていきます。
<図表3>X-SHIPの研修プログラム
武石:1日目で特徴的なのが、「#(ハッシュタグ)ワーク」です。チーム全員が一人ひとりに対して、相手の”らしさ”を表す言葉を#をつけて贈り合うのです。Z世代は細やかな感性の持ち主が多く、本人も気づいていない特徴に気づくことも多いのです。#ワークによって相互に認知し合うと、場は活性化し、楽しみながらも多くの学びを得られます。実際に参加した受講者からは、「周りのメンバーから“らしさ”を尊重してもらい元気が出た」「もらった#が自分の指針になった」「恥ずかしいけど、自分のことを話せる喜びを感じた」などの声があがっています。
桑原:2日目は「クエストセッション」を行います。お互いの仕事の状況を共有し、より良い状況にするには、どんな考え方ややり方があるかを全員で探究(クエスト)する場です。正解のない環境では、答えを求めるよりも、新たな可能性や選択肢をたくさん持つことが、より自分に合った効果的なアクションの発見につながります。そのことを体験的に学んでいただく時間です。1人あたり50分かけて、「○○さんはこの長所を生かしたらいいのでは」「こうしたら状況が変わるかも」「こんなふうに捉えたら楽になるんじゃない?」といった意見を出し合うのです。
武石:実はZ世代は、自律を苦手とする一方で、協働を得意とする傾向があります。例えば、人事の皆さんは、クエストセッションの前は「わが社の若手社員が、そんなに長時間対話できますか?」と半信半疑ですが、実際にやってみると、皆さん時間が足りなくなるほど夢中で話し合うんです。なかには、こちらが思ってもみなかった意見が出てきたり、意外な能力を発見できたりすることもよくあります。クエストセッションが終わったら、最後に「マイアクション」として、これから自分がどんな行動を起こすか、何に挑戦するかを自分で決めていただきます。
桑原:2日間を通して、「自分の人生を自分起点で良くしていく練習」を積んでもらいたい、と願っています。社会人になったら、環境を簡単に変えるのではなく、自分の人生を自分で切り開いていくことが欠かせません。その経験をできるだけ早い段階で積んでいただきたいと思っています。X-SHIPは、その経験の第一歩です。
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「うちの若手がこんなに笑顔になるなんて」と人事の皆さんが驚く
――X-SHIPの特徴やポイントをあらためて教えてください。
桑原:X-SHIPの学習アプローチは「個の尊重」「自己決定による納得感」「学び合い」の3点です。Z世代の皆さんと個別で話すと、実は一人ひとりがいろいろな考えや意見を持っていることが分かります。なかには、上司世代も学べるような知識や価値観を持っている人もいます。ただ、それを表現したり、行動に移したりする部分に課題を抱えていると感じます。そうした課題を解決するためには、Z世代一人ひとりの意見や価値観を尊重して、こちらで良いか悪いかの評価をしないことが大切です。また、彼らの自己決定を尊重して行動を支援し、自分たちで試行錯誤しながら学び合ってもらうことが自律学習の力を高めます。以上のようなアプローチが、本人にも組織にもプラスにつながることが見えてきたのです。
それから、図表3のような「ビジュアルデザイン」を積極的に取り入れています。大量のテキストよりも、絵や映像からインプットするのがZ世代のスタイルです。すべてを定義して伝えきるよりも、キーとなる情報を渡し、あとはそれぞれにフィットする形で言語化・解釈してもらう方が納得感も高く、学びにつながります。
<図表4>X-SHIPのビジュアルデザイン例
――人事の皆さんからの感想を教えてください。
桑原:「会社の研修で、うちの若手がこんなに笑顔になるなんて」と人事の皆さんが驚くことが多いですね。X-SHIPは、もちろん真面目に学習する部分が中心ですが、本来、学びが持つ「楽しさ」や「面白さ」も取り入れています。Z世代は、そうした面があることで、より前向きに深く学んでいくところがあります。うまくいかずに元気をなくしている受講者や、先々の見通しが持てずに悩んでいる受講者が、X-SHIPを受けることで本来の自分らしさに立ち返ったり、新しい可能性を発見したりして前向きになっていく姿をよく見かけます。同期と力を合わせて研修を受けることがプラスに働くケースも多いですね。
ある受講者の方が、「この研修がなかったら、何もかもマイナスにしか考えられないままで、気持ちがどこまでも落ちていったと思います」と言っていたのが心に残っています。いまの世代の気分や状況を代弁するような感じがしました。単に学ぶだけでなく、いまの自己を肯定しながら、未来に向けた可能性を感じられる研修が必要とされているのだ、と強く感じます。
武石:Z世代は素直で成長意欲も高い傾向にあります。実際に、研修中に6つのスイッチをうまく使いながら、自律的に変わっていく様子を何度も目の当たりにしました。
ぜひ、Z世代に自らの可能性を発揮してもらうきっかけとして、X-SHIPを活用していただけたら嬉しいです。
PROFILE
桑原 正義(くわはら まさよし)
HRDサービス開発部 主任研究員
1992年4月人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て2015年より現職。 探究領域:VUCA×Z世代の育成アップデート、“個を生かす”生成アプローチ NPO法人青春基地(プロボノ) 立教大学経営学部BLP兼任講師
武石 美有紀(たけいし みゆき)
HRDサービス開発部 研究員
2016年 リクルートキャリア(現リクルート)入社。企業の採用領域の課題解決支援や社内の新人研修の企画・研修講師業務に携わる。 現在は当社にて、主に新人・若手社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。
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