導入の実態と留意すべき4つのポイント 対話する組織をつくる1on1ミーティングの戦略的活用に向けて

執筆者情報
ソリューション統括部
事業開発部
マネジャー
日比 健太郎

個人の価値観や働き方の多様化にともない、「個を生かすマネジメント」に対する経営上の必然性が高まりつつある。そのようななか、人材開発・組織開発施策の1つとして、1on1ミーティングへの注目が高まっている。実際、ヤフーの取り組みがベストプラクティスとして共有されて以降、新たに1on1ミーティングの導入を開始した企業は枚挙に暇がない。一方で、日常的な運用を担う現場と歩調が合わず、なかなかうまくいかないケースも散見され始めている。本稿では、これまで約30社近くの企業で1on1ミーティングの導入や活用推進をお手伝いし、複数の導入企業へのヒアリングをするなかで得た知見をもとに、1on1ミーティングが注目されている背景ならびに導入の際に留意すべきポイントを中心に考察していきたい。


1on1ミーティングとは?

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に対話する場・機会を意味している。1on1ミーティングの頻度・時間といった実施の枠組みは各社各様であるが、基本的な特徴には共通項が見られる。

第1に、基本的には部下のための時間であること。従業員の個性や持ち味を生かすマネジメントの象徴的なタッチポイントとして位置づけられ、主人公は部下とされている。

第2に、上司・部下双方による協働作業であること。対話が言語を介した当事者間の相互作用である以上、1on1ミーティングを意義ある場・機会とするためには、上司・部下の双方が当事者意識をもって貢献することが求められる。とりわけ、部下自身も当事者意識を発揮して貢献するという視点が肝要となる。

第3に、準公式的な面談の仕組みであること。上司と部下が1対1で行う面談は、1on1ミーティング以外にも存在する。最も公式的なのは、人事制度の運用と紐づいた目標設定面談、評価面談などである。一方で、最も非公式的なのは、現場で日常的に発生ベースで行われる面談である。この点、1on1ミーティングは公式的な面談と非公式的な
面談の中間に位置づけられる準公式的な面談という特性をもっている。ゆえに、必須でも任意でもなく、推奨という形式で現場に展開されることが多い。

第4に、広範なテーマを巡った対話であること。日常のトラブルから中長期のキャリアに至るまで、1on1ミーティングで話されるテーマは多岐にわたる。ゆえに、1on1ミーティングをより意義ある場・機会とする上で、伴走役の上司においては、テーマに即した適切な態度や振る舞いが期待される。

以上が、1on1ミーティングの備える基本的な特徴である。よく、1on1ミーティングの運用を担う上司の方から「1on1ミーティングは難しい」という話を聞かせていただくが、それは上述した1on1ミーティングの基本的な特徴に由来しているともいえる。

なぜなら、部下のための時間であるがゆえに、話題に上るテーマは広範にわたり、伴走役となる上司には幅広い対応力が求められるからだ。このことが目標設定面談や評価面談のような目的の絞られた面談との違いともいえる。

図表1に、1on1ミーティングで扱うテーマの分類と上司の多様な関わり方を図示した。部下から提供される話題は、仕事の側面と人の側面のいずれにも及び、しかも時間軸が特定されない。また上司には、話題の内容そのものに働きかけるアプローチと部下の内面に働きかけるアプローチの両方に長け、そこに時間軸を掛け合わせた少なくとも4つの関わり方の「ひきだし」を自在に使い分けることが求められる。

私たちはコーチングの理論と技術の専門家として、このような上司の対応力の開発を中心に1on1ミーティングの導入をお手伝いさせていただくことが多い。よって、ここで改めて1on1ミーティングの基本的な特徴を踏まえ、現場に仕組みとしてしっかりと根付くサポートをしていきたいと考えている。

1on1ミーティングがなぜ注目されているのか?

それでは、このような特徴をもつ1on1ミーティングを企業が今こぞって導入しようとしているのはなぜか?1on1ミーティングの導入目的とその裏側にある背景・問題意識の2点に分けて考察したい。

初めに、導入目的について考察すると、「1つに限定されない多義的・重層的な目的で導入される」「一方で各社事情に応じて主目的は異なる」という特徴が挙げられる。

図表2のとおり、各社が表明する導入目的は多岐にわたる。また、1on1ミーティングを多岐にわたる複数の目的を同時実現するための手段として位置づけている点が特徴的である。

一方で、主目的は各社の事情に応じて異なる。とりわけ、以下の2つが主目的として表明されることが多い。

第1に、従業員のエンゲージメントの向上である。1on1ミーティングを通じて、従業員のアトラクト&リテンションを図ることをより重視するケースだ。例えば、優秀なエンジニアの採用や流出防止が事業課題となっているIT関連企業において、主目的として表明されることが多い。

第2に、従業員の経験学習を起点とした能力開発の促進である。1on1ミーティングを通じて、従業員の主体的な行動と学習を促進することで、成果と成長を同時追求するケースだ。例えば、主力事業のトレンドが成長段階から成熟段階に差し掛かり、新たな成長カーブを描くべく、新規事業の創出や新サービスの開発が事業課題となっている製造関連企業において、主目的として表明されることが多い。

以上のように、1on1ミーティングの導入目的は「1つに限定されない多義的・重層的な目的で導入される」「一方で各社事情に応じて主目的は異なる」という特徴が見られる。

なお、筆者としては、複数目的の同時実現を目指しつつも、導入場面でのコミュニケーションでは、自社における主目的を明確に強調することが現場の理解・共感を得ていく上で肝要であると考えている。

導入の裏側にある背景や問題意識には、「個を生かすマネジメント」に対する経営上の必然性の高まりがある。人が本来的に備えている主体性や創造性という才能を最大限発揮させるマネジメントを行うことが、戦略推進上とても重要であるという問題意識に根付いているともいえる。個人の主体性や創造性を喚起するための日常的なマネジメントのタッチポイントとして、1on1ミーティングが位置づけられている。

個を生かすマネジメントの重要性が高まった背景として、以下の3つの変化がキーワードとして挙げられる。

第1に、個人の価値観の多様化である。若手・中堅層を中心に、働く上で地位報酬・金銭報酬以上に社会的意義や自己成長に代表される意味報酬を重視する傾向が強まりつつある。ゆえに、個々に異なる価値観を尊重したマネジメントを行うことの重要性がより高まってきている。

第2に、働き方改革にともなう協働の仕方の変化である。具体的には、テレワークやフリーアドレスに代表される日常の働き方の変化の影響を受けて、従来の職場で自然発生的に行われてきた対面かつ高頻度のコミュニケーションが緩やかに減少しつつあることが挙げられる。ゆえに、個人の状況を踏まえた適切なマネジメントを行う上で、従来の自然発生的なコミュニケーションに頼りすぎず、1on1ミーティングに代表される意識的、計画的なコミュニケーションの枠組みの重要性がより高まってきている。

第3に、企業の競争環境の変化である。製造関連企業を中心に、主力事業のトレンドが成長段階から成熟段階に差し掛かるなかで、既存の主力事業の改善をターゲットとするオペレーション重視のマネジメントから新規事業の創出や新サービスの開発をターゲットとするイノベーション重視のマネジメントへのシフトが事業課題となりつつある。転じて、現場におけるマネジメントコミュニケーションも規律や実行を重視する指示・命令型から個人の主体的行動や組織学習を重視する協働・共創型へとシフトしていくことがより求められるようになってきている。

1on1ミーティングの取り組みはどのように受け止められているか?

ここまで、1on1ミーティングの概要と1on1ミーティングが注目されている背景について考察してきた。総括すると、「個を生かすマネジメント」の重要性が急速に増しているからこそ、1on1ミーティングという意図的な対話の機会を導入する企業が増えているのだ。同時に、それは1on1ミーティングという施策を起点に、上司に対してはマネジメントスタイルの進化を、部下に対してはリーダーシップスタイルの進化を期待する会社としてのメッセージともいえる。

それでは、このような背景・意図をもって導入された1on1ミーティングは、実際に社内でどのように受け止められているのか?今度は、1on1ミーティング導入後の実際の反響について考えたい。具体的には、経営・人事ならびに現場双方の視点から考察する。

まず、経営・人事の視点からは、“部分的成功”という認識を示されることが多い。図表3に1on1ミーティングの効能をモニタリングする際の切り口として、1on1ミーティングの効能の観点とレベルについて図示した。この切り口に照らして、“部分的成功”という各社の認識の意味するところを解釈すると、レベル1のアダプテーション(適応促進)の側面では一定の効果が出ているが、レベル2のディベロップメント(成長促進)、レベル3のパフォーマンス(成果創出)の側面ではまだ発展途上であると受け止めていると考えられる。

このように、アダプテーション(適応促進)の観点が成果として最もクローズアップされやすいのは、最も顕著に確認される変化が、「上司・部下間の相互理解の高まり」であることに由来するとも考えられる。具体的には、上司・部下間の対話機会の増加や対話の質的変化の影響を受けて、上司が自身の考えや状況について理解してくれているという安心感が醸成された結果、より前向きに仕事へ取り組むことができるようになったという現場の反応がコメントとして多く寄せられるという事情があると考えられる。

続いて、現場の視点からは、「一定の有用感を感じている」というポジティブな認識と「具体的な運用に戸惑っている」というネガティブな認識の双方が示されることが多い。図表4に具体的な現場の反応例について図示したので、参照いただきたい。

1on1ミーティングの導入に際して留意すべきポイントは?

続いて、導入各社へのヒアリングの事実を参考に、1on1ミーティングの導入に際して推進部門が留意すべきポイントについて考察したい。

1on1ミーティングの導入に際して、推進部門が直面する象徴的な課題は、以下の4つに集約されることが分かった。

第1に、現場の当事者意識の醸成だ。「そもそもなぜ1on1ミーティングを実施するのか?」「すでに日常的に関わりがあるなかで、現場の負荷を高めてまで実施する意義が本当にあるのか?」。現場の上司・部下の双方からよく懸念として示される意見である。この点、1on1ミーティングは、他者との意思疎通を図るための知恵として発明された会議などと同様、現場で日常的に運用される新たなコミュニケーションの仕組みという側面もあるため、上司・部下双方が当事者意識をもって運用することが必須となる。ゆえに、導入段階においては、まずは現場の上司・部下の双方が1on1ミーティングの意義・意味について十分に理解・共感している状態を育むためのコミュニケーションを図っていくことが肝要となる。

第2に、現場の運用力の向上だ。「1on1ミーティングの進め方が分からない」「個別の部下との関わり方で困っている」。上司側から懸念として示される代表的な意見だ。この点、上司が1on1ミーティングの場をより良く運営できるように、知識・スキル学習の機会付与やナレッジ共有などの教育的支援を充実させることが肝要となる。他方で、部下側からは「何を相談したらよいのか分からない」という懸念がよく示される。この点、受動的な参加姿勢とならないように、部下に対しても1on1ミーティングに対する当事者意識を促すための働きかけを行うことが肝要となる。

第3に、現場の効力感の醸成だ。「部下にとって役立つ時間にできているのか自信がない」「1on1ミーティングの意義を感じていないが、上司に言い出せない」。こちらも現場の上司・部下からよく出てくる意見である。この点、1on1ミーティングは上司と部下の協働作業による営みゆえ、上司・部下双方の効力感が醸成されていかないと形骸化していく傾向が見られる。よって、上司においては、自身の1on1ミーティングの受け止められ方について知る機会を、部下においては、自身が1on1ミーティングに対して感じていることを伝える機会を付与することが望ましい。

第4に、現場の実施環境の整備だ。「1on1ミーティングを実施する場所がない」「部下の人数が多すぎて全員と実施するリアリティをもてない」。これらも導入段階でよく耳にする現場の意見である。実際に、実施場所の不足やマネジメントサイズの大きさなどの環境要因を理由に、1on1ミーティングが形骸化していくことも多い。この点、推進部門が中心となって、できる限り現場が取り組みやすい環境を整備することが望ましい。

以上が、1on1ミーティングの導入に際してつまずきがちな象徴的な4つの課題である。1on1ミーティングという仕組みを現場に着実に根付かせていく上で、是非参考にしていただきたい。

最後に

改めて、数多くの1on1ミーティングの導入をお手伝いし、またさまざまな識者と議論させていただいた過程で強く印象に残っているのは、「1on1ミーティングを入口にマネジメント変革を起こしていく」「意識的マネジメントの象徴的なタッチポイントが1on1ミーティングだ」という言葉だ。

つまり、1on1ミーティングはあくまでマネジメント場面の1つにすぎない一方で、企業のマネジメントのあり方が端的に問われる場面であるということだ。ゆえに、1on1ミーティングをより機能させる上での核心は「マネジメント変革という文脈とセットで1on1ミーティングをデザインしていくこと」であると考える。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.52 特集2「対話する組織をつくる1on1ミーティングの戦略的活用に向けて」より抜粋・一部修正したものである。
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