連載・コラム
タグライン/世界を変える、「人間関係」の科学へ。連載 第2回
「自己を知る」は、よい関係性をつくるためのベース(後編)
- 公開日:2021/02/08
- 更新日:2024/05/20
時代の急速な変化にともない、働く個人と組織の関係が大きく変わり、注目されています。当社は2019年7月、タグライン〈世界を変える、「人間関係」の科学へ。〉を策定しました。 “空気”だとか、“縁”だといわれ、捉えどころのないものだと思われてきた「人間関係」を、人々が生み出す場のエネルギーや相乗効果まで含めた豊かな概念として捉えています。
本連載では、「人間関係」の側面から、多様な人との協働や、マネジメントのやりがいなどに光を当て、働く個人の一人ひとりをあるがままに生かすことを大事にしながらも、共通の目的に向かって社会に価値を発揮するために、組織に所属することの大切さにも触れていきます。
第1回では、自己との関係性に焦点をあて、「自己を知る」ことが何につながっているのかについて解説しました。後編となる今回では、具体的に「自己を知る」を進めるにはどうしたらよいかについて解説します。
「自己を知る」を進めるための3つの視点
それらを踏まえて、どのように「自己を知る」を進めたらいいかについて考えてみたい。
<図表1>
まずは上記の氷山モデルをぜひ活用いただき、前回ご紹介したように、自分自身を多面的に表現するところから始めていただければと思う。
例えば、以下の3点を順に言語化してみるだけでも、一定の気づきがあるはずだ。
[1]自身の内面
どんな考え方をして、どんな知識とスキルを持って、それらに自分の得意・不得意がどんな影響を与えているか、自身の内面について分解し言語化してみる(前回のAさんの例を参照)
[2]らしさの発揮とらしさの変革
それらの自分らしさをどのように今の仕事に発揮しているか、そして、その仕事から自分らしさにどんな学びを得ているか、自分らしさの「出し入れ」について言語化してみる(氷山モデルの[1][2]参照)
[3]心の状態とその影響
その「らしさの発揮」と「らしさの変革」はどんな心の状態(コンディション)のなかで行われていて、それらにどんな影響を与えているかについて、特に[2]の自分らしさの「出し入れ」への影響について言語化してみる。(氷山モデルの[3]参照)
以下に、自分自身で具体化することを試せるように例示を含むワークシートをご用意するので、ぜひ試してみていただきたい。
<図表2>
自分自身が感じていたことを体系立てて表現できたのではないだろうか。
また、周囲にも分かりやすく共有できるように整理できたのではないだろうか。
このような内省は、自身が今後物事を進めていくにあたって、とても有用な基点になると思うので、ぜひ活用いただきたい。
特に(2)の「らしさの発揮とらしさの変革」という自分らしさの「出し入れ」に注目する部分は、少し過去まで遡って振り返ると効果的だ。そのとき、その「出し入れ」が自律的に、そして頻度高く行えているかを確認することで、「自律的な成長サイクル」を回せているかどうかを確認できる観点になる。
これが実感を持って確認できれば、「自律的な成長サイクル」に入っていて、あらゆる機会を自身のレベルアップにつなげることができているだろう。本当の意味で自己適応ができている状態だといえる。
一方、(3)の心の状態やその影響がネガティブで、「らしさの発揮」を感じられなかったり、「らしさの変革」に結び付けられていない感じがしたりする場合は、機会を自身のレベルアップにつなげることができておらず、もったいないことになっている可能性があるため、それを自身の気づきにつなげたい。
他者から見る自分の重要性
前述の作業でも自身にとってかなり有用なものになると感じていただけると思うが、一方で、あくまでもこれは「自分自身の視点」での「自己を知る」ということである点は忘れないようにしたい。
「他者から見る自分(「自己を知る」の外面)」は、「自分の認識している自分(「自己を知る」の内面)」とは違うことが少なくない。人はどちらか一方をより優先したくなってしまう。他方で、優れた人は両方のバランスを高く保つように意識して行動しているのではないか。
直感的にはその双方には一定の関係性があり、一方が高くなればもう一方も高くなるように感じる。
しかし、ターシャ・ユーリックの研究によると、双方の間にはほとんど関係性がなく、影響も与えない。
内面の方は、仕事や人間関係への満足度などを高め、不安やストレスを軽減する。そして、外面の方は共感力や他者の視点に立つ能力を高める。また、リーダーとメンバーの認識が近いほど(つまり外面と内面の近いほど)、両者の関係は良好で、メンバーはリーダーに満足度を感じ有能視するが、近くない場合は逆の傾向がある。
これは非常に大事にしたい示唆だと感じる。
この点を踏まえると、「自己を知る」ためには、 「ジョハリの窓」という心理学モデルを活用すると効果的だ。
このモデルは、他者からの見え方を理解することで自己への気づきを促し、その客観性を高める方法として提唱された。
昨今は、さまざまな場面で自分への理解を深めるためのツールとして活用されており、タテ・ヨコの格子で仕切られた4つの領域を“窓”に見立て、タテの格子は自己について自分が知っている領域と知らない領域とを、ヨコの格子は自己について他人が知っている領域と知らない領域とを、それぞれ隔てるものと考えて捉える。
<図表3>
このモデルを意識しながら、自身の姿について一致している点と違っている点を周囲と交換し、「自己を知る」ことを広げていく。そうすることが、自身が「気づかない窓」を開き(図内の領域1を領域2の方向へ広げる)、自己成長につながっていく。
「自己を知る」ことは他者にも影響を与える
一方、他者も相手である自分のことが全て見えているわけではない。
積極的に自己を開示していくこと(図内の領域1から領域3の方向へ広げる)が、他者が「私(自己)を知る」ことにつながっていく。そのことが他者に刺激(影響)を与え、さらに自分にフィードバックされて、自己成長につながる。
もちろん、その他者への刺激(影響)は、貢献する良い影響もあれば、足を引っ張るような悪い影響もある。そして褒められたり承認されたりすることもあれば、お叱りを受けたり批判を受けたりすることもあるだろう。
それらも含めて、自分にとっての貴重な機会になり、自己成長につながる。
自分と他者がお互いに、「自分が知らない自分」と「他者が知らない自分」を少なくし、「開かれている」領域(領域1)を大きくしていくことで、双方ともに自分からも他者からも見える部分を広げ、相互理解が深め、互いに刺激し合い、それぞれの成長につなげていくことをお勧めしたい。
1on1などの場を積極的に活用して、上司と本人が主体的にこれに取り組むと、より効果的だろう。
自律的に働く
最後に、コロナ禍でより強く求められている「自律的に働く」について考えることでまとめたい。
コロナ禍が加速させているVUCAな環境で求められる「自律的に働く」ことも根幹はやはり『自己を知る』にある。
自己についてきちんと理解できていなければ、自分らしさ、自分の専門性が生かせず、自律的に働き成果を出すことはできない。
実際、自律的に働くときに感じる「(『自己を知る』が元になる)自己コントロール感」と、仕事満足・パフォーマンスの間には相関があることがSpector(1986)の研究からも明らかになっている。その理由は、自律性が高いと刺激量が高く、内発的に動機づけられるからだ。そしてその内発的な動機づけは、量的パフォーマンスだけでなく、質的パフォーマンスにも影響を及ぼす。
つまり自己を知り、それを自律的に働くことにつなげられれば、仕事を面白いと感じ、仕事や組織コミットメントを高め、ストレスを減らすなど、自身で良い状況をつくりだし、良い結果を手繰り寄せられるということだ。
このことを強く認識し、「自己を知る」に意識的に取り組んでいきたいものだ。
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