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THEME マネジメント/リーダーシップ

調査レポートミドル・マネジャーの役割に関する実態調査

時間配分の5タイプに見る管理職の役割変革 鍵となる組織サポート

執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
藤澤 理恵

プロフィール

戦略推進、ダイバーシティ&インクルージョン、コンプライアンス、働き方改革……あらゆる施策推進の「鍵」とされるミドル・マネジャーは、今、「多重責務」状態ともいわれる。ミドル自身は何を感じ、どのような変革や、組織的サポートを求めているのだろうか。

調査概要

本調査は、従業員規模300名以上の企業に正社員として勤務する20〜50代で、部下をもつ課長相当の管理職を対象とした。営業・販売系、企画・事務系、開発系の職務系統が均等になるように回収し、有効回答数は601名である(図表1)。

管理職の5つの役割 時間配分の5タイプ

本調査では管理職に次の5つの役割を想定した。「業務マネジメント(業務の計画、割り当て、進捗管理、トラブル対応、問題解決、など)」「方針づくり(組織の方向性やビジョンを考え・提示する、戦略や戦術の決定や修正、など)」「部下マネジメント(方針や業務分担の意味を伝える、意欲や能力を高める、相談に乗る、など)」「対外的活動(社内外のネットワーキング、情報収集、対外発信、など)」「プレイヤー業務」である。それぞれにどの程度の時間を配分しているかを尋ねた。

クラスター分析という手法を用い、時間の使い方の典型として5タイプを見出した(図表2)。それぞれ、他のタイプに比べて多く時間を割いている役割を名に冠して「業務マネジメント重視タイプ」「方針重視タイプ」「部下マネジメント重視タイプ」「対外活動重視タイプ」「プレイングマネジャータイプ」と呼ぶことにしよう。

職種や部下人数によらず時間配分タイプは存在する

職種や組織の人数ごとに、時間配分タイプの分布を見ると、どのカテゴリにも時間配分の5タイプが存在する。職務系統ごとに見ると(図表3)、営業・販売に「部下マネジメント重視タイプ」「プレイングマネジャータイプ」が、企画・事務に「部下マネジメント重視タイプ」が、開発に「業務マネジメント重視タイプ」「方針重視タイプ」がやや多い。また、直接管理する部下の人数が多くなるほど、「部下マネジメント重視タイプ」「業務マネジメント重視タイプ」の割合が高くなり、「プレイングマネジャータイプ」の割合が低くなる傾向が見られる(図表4)。

部下あり管理職経験年数、所属企業の従業員規模によるタイプ分布に一定の傾向は見られなかった。

適応感高い「方針重視」 孤立しやすい「プレイング」

時間配分タイプごとの、管理職の仕事への適応感を見てみよう(図表5)。タイプによらず約6〜7割が“仕事にやりがいを感じている”。

それ以外の項目で、全般的に適応感が高いのは「方針重視タイプ」である。一方、「プレイングマネジャータイプ」は“仕事が楽しいと思う”という設問にとてもあてはまると回答した割合が他群に比べて最も多い。しかしそれ以外の設問へのポジティブな回答はいずれも低い。特に“これから先のキャリアの展望が開けたと思う”かでは、両者の開きは28.2ポイントにもなる。

両タイプの差は、“部下から信頼されていると思う”“困ったときに助けを求めたり本当の気持ちを話したりできる相手がいる”の2項目でもそれぞれ25.7ポイント、20.4ポイントと大きい。プレイヤー業務に割く時間が5割を超える「プレイングマネジャータイプ」は、孤軍奮闘となり、管理職としての役割を果たす上での支援的な関係性が築きにくい可能性がある。

マネジャーの仕事における成長感とは

マネジャーという仕事は、担う本人にとって魅力的なキャリアなのだろうか。図表5で見たように、“自分が成長したと思う”割合は7割前後に上る。対して、“これから先のキャリアの展望が開けたと思う”とする割合は5割前後にとどまる。管理職としての成長とはどのようなことと考えているのか、時間配分タイプごとの特徴を探りながら、フリーコメントを図表6にまとめた。

全体に多く見られたのは、部下の育成・成長や、自身の視野の広がりに関する回答である。「方針重視タイプ」や「部下マネジメント重視タイプ」にその傾向が表れている。他方、「業務マネジメント重視タイプ」では、個々の部下の育成というよりは、組織を掌握・統制し結果を出すという回答が多い。「プレイングマネジャータイプ」では、部下と現場をリードしつつも、任せる意識への転換が成長として語られている。

プレイヤー業務の理由は人材の不足感

「プレイングマネジャータイプ」は、月間200時間以上の長時間労働者の割合が最も高く(43.1%)、プレイヤー業務はマネジャーが忙しくなる要因の1つと考えられる(図表7)。

プレイヤー業務を担う理由の中心は、難度の高い業務やイレギュラー業務を含む、仕事を任せられる人材の不足である(図表8)。

しかし、“部下に仕事を任せきれない”という課題は、「プレイングマネジャータイプ」に限らない(図表9)。ここでも、悩んでいるマネジャーの割合が全体平均より10ポイント以上低いのは「方針重視タイプ」である。「方針重視タイプ」は、部下に仕事を任せ、プレイヤー業務の時間を10%程度に抑え、方針づくりと業務マネジメントにおよそ30%ずつ時間を配分している。時間を割いて作った確かな方針と業務マネジメントにより、部下に仕事を任せやすくなるという好循環がうかがえる。

時間をかけたいのは部下マネジメント

ではマネジャーたちは、時間配分をどのように変えたいと考えているのか(図表10)。どのタイプでも、最も減らしたいのはプレイヤー業務であった。

他方、もっと時間をかけたい役割の一番人気は、部下マネジメントである。しかし「方針重視タイプ」のみは、部下マネジメント以上に、方針づくりを選んでいる。すでに約30%の時間をかけているが、それでも約半数がもっと時間をかけたいと考えていることから、方針づくりへの手応えが感じられる。

時間配分を変えられるか 鍵を握る組織サポート

しかし、マネジャーが、自身の時間の使い方を変えることは簡単ではない。管理職としての業務の時間配分を変える難しさを尋ねたところ、合わせて86.9%のマネジャーが“とても難しい”“やや難しい”と回答した(図表11)。

具体的な方法を尋ねたところ“人員の確保が一番だが、なかなか難しい(営業・販売)”などの認識の一方、“自動化と権限委譲(開発)”“仕事の断捨離と他担当との業務分担見直し(企画・事務)”など一層の業務効率化が可能であるとの見通しがうかがえる。“人材力の底上げ(営業・販売)”“経営幹部の意識改革(企画・事務)”など、組織力の向上を期待する声もある。

マネジャーの時間配分は、さまざまな環境要因の影響を受けている。時間配分を変えるのが難しい/難しくないと考えているマネジャー別に、外部環境、部署の仕事特性、部下の特性、会社の「大企業病」傾向への認識に違いがあった項目をピックアップした(図表12)。市場の競争が激しく納期や品質へのプレッシャーが高い環境や、離職率の高さ、ルールにとらわれる非効率さや官僚的な縦割りのコミュニケーションといった「大企業病」の傾向が、マネジャーの役割変革を阻害している。

また部下の特性については意外にも、時間配分を変えるのが難しいと考えるマネジャーの配下において、“指導・判断業務を一部担ったり代行したりできる”“自分よりも業務遂行能力や専門知識・技能のレベルが高い”部下はむしろ多い。しかし、同時に、“必要な知識・スキルが不足している”“仕事に対する意欲が低い”部下もより多く抱えている。このことから、優秀な人材がいるだけでは十分でなく、仕事を任せる心理的な壁や、手がかかる一部の部下に時間をとられることが、マネジャーの役割変革を阻害する可能性がうかがえる。

これらへの対処をマネジャーが1人で背負うことは困難であろう。上位者や人事が共に有効な対処を考え、マネジャーが本来業務に集中できるよう支援する体制が必要と考えられる。

「働き方改革」は管理職を助けているか

最後に、マネジャーの目から見た「働き方改革」に触れたい。「働き方改革」が企業の生産性を高める取り組みとなるには、現場のキーパーソンであるマネジャーを助け、組織を活性化する改革を目指すべきだろう。実態はどうか。前項と同じ、マネジャーの時間配分の変えにくさの認識と、「働き方改革」による影響との関連を見てみよう。

時間配分を変えにくいと考える群では、“管理職の負担が高まった”割合が高い(図表13)。しかし、“仕事に使う時間(労働時間)が減った”“働く場所や勤務時間を、より柔軟に変えられるようになった”“多様な勤務形態や属性の人が増えた”といった働き方の変化そのものには、差が見られない。働き方の変化そのものではなく、それにより管理職の負担が高まる場合に、マネジャーの役割変革が阻害される。

また、「働き方改革」が個人や職場に及ぼした影響との関係も見てみよう(図表14)。効率一辺倒で余裕が失われたり、求心力や協働の精神が損なわれたりするような場合には、マネジャーの役割変革が阻害されることがうかがえる。

人事や経営層が、マネジャーを助ける組織的な施策に取り組むかどうかが、「働き方改革」成功の鍵となるだろう。

本調査では、一口にマネジャーと言っても、5つの異なるタイプの時間を過ごす人々がいることが明らかになった。彼らは、管理職としての役割をよりよく果たすために、それぞれに時間配分の改革を望んでいる。多くのマネジャーが時間を増やしたいと考えているのは「部下マネジメント」であった。しかし、部下に仕事を任せられない、人材が十分でないという大きな課題感を解決する鍵は「方針づくり」にあることが本調査からは示唆されている。部下と共に将来を議論し方針を見出すことが、結果的に部下の自律性を高め、仕事を任せやすくし、部下の成長やキャリア開発にもつながるのではないだろうか。また、マネジャーの役割変革が個人の努力のみによっては難しいという側面も浮かび上がった。近年の、「働き方改革」や、「HRBP(HRビジネスパートナー:現場に出ていく人事)」のトレンドは、まさにこの点に意識を向けるべきといえよう。マネジャーの時間の使い方を理想に近づけていくために、例えば、低スキル者やメンタル不調者へのケアを人事などが組織横断で担うこと、また、求心力や協働を高める組織開発への支援が考えられる。

本レポートが、部下と共に事業成果を上げようと奮闘するマネジャーが、より生き生きと活躍できる未来に資する材料となれば幸いである。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.58 特集1「マネジャーの役割再考『あれもこれも』からの脱却」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

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管理職の5つの役割 時間配分の5タイプ
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