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カスタマーハラスメント(カスハラ)とは? 具体例・カスハラ対策を解説
- 公開日:2024/12/20
- 更新日:2024/12/20
「カスハラ」という言葉を最近よく耳にするようになりました。しかし、具体的にどんな行為がカスハラに当たるのか、また、自分や従業員がカスハラに遭ってしまった場合、どのように対処すればいいのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、カスタマーハラスメント(カスハラ)について、分かりやすく解説します。
- カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
- カスハラとクレームの違い
- 企業が取るべきカスハラ対策
カスタマーハラスメント(カスハラ)について理解するために参考にしていただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が不適切な言動や過剰な要求を通じて、企業やその従業員に精神的・身体的な負担を強いる行為を指します。例えば、理不尽な苦情、威圧的な態度、無理な要求などが含まれます。この問題は従業員の働く環境を悪化させるだけでなく、企業全体のサービス提供にも悪影響を与えるため、対策が重要です。適切な対応には、従業員を守るガイドラインの策定や組織内での支援体制の構築が求められます。
カスハラとクレームの違い
カスハラ(カスタマーハラスメント)とクレームは、目的や行動に明確な違いがあります。
クレームは、顧客がサービスの改善や問題解決を目的として、合理的な範囲で意見を伝えるものです。一方、カスハラは理不尽な要求や威圧的な態度、暴力的な言動を伴い、従業員や企業に不必要な負担を与える行為を指します。正当なクレームは企業の成長に貢献しますが、カスハラは職場環境を悪化させる問題として対応が必要です。
カスハラの現状
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、多くの業界で深刻な問題となっており、その影響は従業員の精神的負担だけでなく、企業のサービス品質や運営にも及びます。近年、顧客の理不尽な要求や暴力的な行動が増加傾向にあり、対応の難しさが課題となっています。
特に対面や電話での応対が多い業界で発生しやすく、従業員の離職率を高める要因にもなっています。そのため、企業にはカスハラを防ぐための明確なガイドラインや支援体制の整備が求められています。
カスハラの具体例
近年、職場における新たなハラスメントとして注目されているカスハラですが、どのような行動が該当するのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
以下に、カスハラの具体例について解説します。
誹謗中傷
カスタマーハラスメント(カスハラ)の具体例として、「誹謗中傷」が挙げられます。これは顧客が従業員に対して人格を否定するような暴言や、不適切な表現を繰り返す行為を指します。例えば、商品の遅延や接客態度への不満を理由に、必要以上に感情的な攻撃を行うケースです。このような行為は、従業員の精神的なダメージを引き起こし、職場の雰囲気を悪化させる原因となります。企業は、従業員を守るため、具体的な対策を講じることが重要です。
長時間拘束
「カスハラ」の具体例として「長時間拘束」があります。これは顧客が問題解決のために従業員を無理に長時間対応させる行為を指します。例えば、長時間にわたり電話での対応を強要したり、物理的に店舗に長くとどめたりすることなどが含まれます。このような行為は従業員の時間を奪い、業務効率を低下させるだけでなく、精神的な疲労も引き起こし、職場環境に悪影響を与えます。
暴言・暴力行為
「カスハラ」の具体例の1つが「暴言・暴力行為」です。顧客が従業員に対して、言葉で侮辱したり、怒鳴る、さらには身体的な暴力を振るうこともあります。こうした行為は、従業員の精神的・身体的な健康を著しく害し、職場環境を悪化させます。暴言や暴力行為が繰り返されると、従業員のモチベーション低下や離職につながり、企業全体にも悪影響を及ぼします。
金銭や商品の要求
「カスハラ」の一例として「金銭や商品の要求」があります。顧客が不当な理由で金銭や商品を要求し、従業員に対して強要することです。このような行為は企業の信用を損ね、法的な問題にも発展しかねません。さらに、従業員にとって精神的な負担が大きく、職場の安全と秩序を脅かす可能性があります。企業は適切な対応策を講じ、従業員を守る必要があります。
プライバシーの侵害
「カスハラ」の一例として「プライバシーの侵害」が挙げられます。顧客が従業員の個人的な情報や私生活に不適切に関与し、過度な質問をしたり、プライバシーに関する情報を要求したりする場合です。これにより、従業員は精神的な負担を感じ、ストレスや不安を引き起こすことがあります。企業は、顧客と従業員のプライバシーを守るため、明確なガイドラインを作成し教育を行う必要があります。
セクシュアルハラスメント
「カスハラ」の一例として「セクシュアルハラスメント」が挙げられます。これは、顧客が従業員に対して不適切な性的言動をすることです。例えば、身体的な接触や不快な言葉、性的な要求などが含まれます。このような行為は、従業員の精神的な健康に深刻な影響を与え、職場環境を悪化させる原因となります。企業は、このようなハラスメントを防ぐために、教育や方針の周知を徹底し、従業員を守る対策を講じることが重要です。
カスハラがもたらす影響
カスハラが個人の心に与える傷跡は目に見えないため、その影響の大きさを過小評価しがちです。カスハラがもたらす影響についてみていきましょう。
従業員への影響
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、従業員に深刻な影響を及ぼします。理不尽な要求や暴言を受けることで、精神的ストレスが蓄積し、モチベーションの低下や業務効率の悪化につながる場合があります。これが進行すると、心身の不調やバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こし、最悪の場合、離職を選択する従業員も少なくありません。従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業にとって喫緊の課題です。教育や相談体制を整備し、適切に対応する仕組みが求められています。
企業への影響
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、企業にも大きな影響を及ぼします。まず、従業員が受ける精神的ストレスが業務効率を低下させることで、サービスの質が損なわれる可能性があります。また、過剰な要求への対応に時間やリソースが割かれ、本来注力すべき業務が遅延することもあります。さらに、職場環境の悪化や従業員の離職率増加により、人材確保のコストが増大することも懸念されます。企業は、カスハラ防止策を講じることで従業員を守り、健全な運営を維持する必要があります。
他の顧客への影響
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、他の顧客にも悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、従業員がカスハラ対応に追われることで、他の顧客へのサービスが遅れる、あるいは十分な対応ができなくなることがあります。また、カスハラを目撃した他の顧客に不快感やストレスを与え、企業のイメージダウンにつながる恐れもあります。結果として、顧客満足度の低下や信頼の喪失を招き、企業全体の業績に悪影響を及ぼすことが考えられます。
企業が取るべきカスハラ対策
以下では、企業が取るべきカスハラ対策について解説します。
従業員のサポート体制の整備
企業がカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策として最初に行うべきことの1つは、従業員を保護するためのサポート体制を整えることです。これには、カスハラ対応の相談窓口の設置や、緊急時のエスカレーション体制の確立が含まれます。また、従業員が安心して業務に取り組めるよう、対応マニュアルの作成や専門家のアドバイスを取り入れることも重要です。これにより、従業員のストレス軽減と職場環境の改善が期待できます。
カスハラ予防策を導入
カスタマーハラスメント(カスハラ)の予防策を導入することは、トラブルを未然に防ぐために重要です。企業はまず、顧客対応のルールや行動基準を明確化し、従業員に周知する必要があります。また、顧客に対しても適切な行動を促すためのポリシーを表示することが有効です。さらに、従業員向けにトラブル対応の研修を実施し、適切な対応力を養うことで、問題発生時の迅速かつ適切な対応が可能となります。このような予防策により、企業全体のリスクを低減できます。
従業員のメンタルヘルス保護
従業員のメンタルヘルスを保護することは、カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の重要な要素です。企業は、カスハラに遭遇した従業員の心身の負担を軽減するために、心理的ケアを提供する仕組みを整えるべきです。具体的には、カウンセリング制度や専門機関への相談窓口の設置が挙げられます。また、職場内でストレスマネジメントの研修を実施し、従業員が感情を適切にコントロールできるよう支援することも効果的です。これにより、健康的な労働環境の維持が可能になります。
カスハラに関するよくある質問
ここからは、カスハラに関するよくある質問を解説します。
カスハラはどのような業界で起こりやすいですか?
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、顧客対応が直接的に求められる業界で特に起こりやすい傾向があります。具体的には、小売業、飲食業、宿泊業、医療福祉業、コールセンター業務などが挙げられます。これらの業界では、顧客との接触が頻繁であるため、過度な要求や不適切な態度に直面する可能性が高まります。また、サービス業の性質上、顧客満足を重視するために、従業員が顧客からの理不尽な要求を受け入れてしまう状況も背景にあります。
カスハラが問題になっている理由を教えてください
カスタマーハラスメント(カスハラ)が問題となる理由は、従業員の働きやすい環境を損ない、精神的・肉体的な負担を増大させるからです。また、企業全体の生産性や職場の士気に悪影響を与えることも挙げられます。さらに、顧客対応の限界を超えた要求が続くと、他の顧客へのサービス提供にも支障をきたす可能性があります。これらの影響は、長期的には従業員の離職率増加や企業イメージの低下につながり、経営にも重大なリスクをもたらします。
カスハラ防止に関する条例や法令はありますか?
カスタマーハラスメント(カスハラ)に関する防止策として、東京都では「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が制定され、2025年4月1日から施行される予定です。この条例は、顧客等と働くすべての人が対等な立場で互いに尊重し合う社会の実現を目指し、カスハラの防止に関する基本理念や各主体の責務を定めています。
具体的には、カスハラの一律禁止や、東京都、顧客、就業者、事業者それぞれの責務を明確化し、カスハラ防止指針の作成・公表を行うことなどが盛り込まれています。 なお、罰則規定は設けられていませんが、カスハラが違法である旨が条例上明記されたことで、被害の減少や緩和が期待されています。
また、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定し、企業がカスハラ防止のために取り組むべき具体的な対策を示しています。このマニュアルでは、カスハラの定義や事例、企業が講じるべき対策などが詳しく解説されています。これらの取り組みを通じて、カスハラの防止と働く人々の就業環境の改善が進められています。
参考:東京都TOKYOはたらくネット
おわりに
カスタマーハラスメント(カスハラ)についてお伝えしてきました。カスタマーハラスメントの要点をまとめると以下のとおりです。
- カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が不適切な言動や過剰な要求を通じて、企業やその従業員に精神的・身体的な負担を強いる行為を指す
- 正当なクレームは、顧客がサービスの改善や問題解決を目的として、合理的な範囲で意見を伝えるもので、一方、カスハラは理不尽な要求や威圧的な態度、暴力的な言動を伴い、従業員や企業に不必要な負担を与える行為を指す
- 企業が取るべきカスハラ対策は、カスハラ対応の相談窓口の設置やメンタルヘルスを支援するプログラムの導入、顧客対応のルールや行動基準を明確化することで、それらを従業員に周知する必要がある
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が不適切な言動や過剰な要求を通じて、企業やその従業員に精神的・身体的な負担を強いる行為を指します。適切な対応には、従業員を守るガイドラインの策定や組織内での支援体制の構築が求められます。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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