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アンコンシャスバイアスとは? 代表例から企業ができる取り組みを解説
- 公開日:2024/02/15
- 更新日:2024/09/13
アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)は、企業の経営やマネジメントにも多くの悪影響を与える危険性があります。本記事では、そんなアンコンシャスバイアスの具体例や対策を紹介しています。
アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)とは
アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)とは、人々のなかに気づかぬうちに形成されている思い込みや偏見です。その特徴は、主に過去の経験や知識、価値観などから発生し、普段の発言や行動にも影響を及ぼす点にあります。
アンコンシャスバイアスは自覚が難しく見過ごされやすいものの、ハラスメントやパフォーマンスの低下など、本人の周囲や所属組織にさまざまな弊害をもたらします。そのため、近年では多くの企業で対策に向けた取り組みが進められています。
アンコンシャスバイアスは誰もが持っている思考
アンコンシャスバイアスは決して珍しい現象ではなく、日々の生活や仕事のなかでもさまざまな場面で見られます。代表的なところでは、「看護師」は女性、「医師」は男性というように、ある職業に対して特定の性別をイメージしてしまう事例が挙げられます。
他には、同じ立場でも相手の年齢や性別によって接し方を変えたり、相手が自分と同じ考えを持っている前提で接してしまったりすることも、アンコンシャスバイアスの影響として多く見られる行動でしょう。
アンコンシャスバイアスが注目される背景
世界的にアンコンシャスバイアスが注目されるようになった大きなきっかけは、2010年代にアメリカの企業で従業員の人種・性別の偏りが問題視され、その原因としてアンコンシャスバイアスの存在が指摘されたことにあるといわれています。
また、最近では日本でも「ダイバーシティ」や「インクルージョン」といったあらゆる属性を受容・尊重する考え方が重視される傾向にあり、働き方も多様化の一途を辿っています。そんな現代において、企業によるアンコンシャスバイアス対策の重要性は、今後もさらに大きなものとなっていくことが予想されます。
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ダイバーシティ推進
アンコンシャスバイアスの代表例
アンコンシャスバイアスの代表例を紹介します。
正常性バイアス
正常性バイアスとは、自らが置かれている危機的状況から目を背け、「まだ大丈夫」「いつものこと」と事態を過小評価してしまう心理現象を指す言葉です。
正常性バイアスにもとづく判断は、リスクへの対処を遅らせ、結果的に被害をより大きなものにしてしまう可能性があります。
集団同調性バイアス
人間は集団で行動する際、周囲から与えられる安心感や圧力を理由に、自らの意思よりも他者への同調を優先してしまうことがあります。
こうした「誰もしていないから自分もしない」「周りがしているから自分もするしかない」といった判断も、誤った行動につながるバイアスの1つです。
ステレオタイプ
世間的なイメージなどを理由に「この特徴を持つものは他にこんな特徴もあるに違いない」と勝手に関連付けて考えてしまう現象は、ステレオタイプと呼ばれます。
「この仕事は女性のもの」「この趣味は若い人のもの」などの偏見は、そこにあてはまらない存在を無視することになりかねないため注意が必要です。
確証バイアス
自分にとって都合の良い意見だけを取り上げ、都合の悪い意見を排除しようとする心の動きを確証バイアスといいます。
具体的には、まだ不確定な物事を検証・調査する際に、自分の予想の裏付けになる情報ばかりを集めてしまうといった行動が確証バイアスにあたります。
アインシュテルング効果
アインシュテルング効果とは、慣れた考え方や物事の見方を優先し、それ以外の視点が欠落してしまう現象です。弊害としては、革新的なアイディアや他者の意見を受け入れられない、といったことが挙げられます。
ハロー効果
好印象を持っている相手の能力や行動に対して、実態にかかわらず高い評価を下してしまうことをハロー効果と呼びます。また、逆に悪印象を理由として相手を不当に低く評価してしまうケースもハロー効果に含まれます。
職場・企業におけるアンコンシャスバイアスの具体的なケース
次に、職場や企業で起きがちなアンコンシャスバイアスの例を見てみましょう。
人材育成
人材育成にバイアスが作用する主な例としては、「女性は結婚・出産ですぐに退職する」といった偏見にもとづくキャリア目標の設定が挙げられます。
そのような思い込みは、女性には重要な仕事や長期プロジェクトに取り組むための育成はしない、というようなことにつながります。
希望や実態にそぐわない目標を与えることは、従業員のモチベーションを低下させてしまい、思うような成長につながらない可能性が高いでしょう。
人事評価
バイアスを含む人事評価のなかでも多く見られるのが、「人柄が好きだから」といった個人的な好感にもとづく評価です。
他には、新たに評価に値する成果を出したにもかかわらず、それ以前のイメージで評価を下すといったことも、バイアスによる不当な人事評価の代表例といえます。
人事採用
出身大学や前職といった人材の情報は、時として採用の重要な基準となる一方、選考担当者のバイアスの対象にもなりやすいため注意が必要です。
例えば、その他の経験や能力に目を向けずに「この大学の出身なら優秀に違いない」と学歴だけで採用を決定することは、結果的に入社後のミスマッチを生んでしまう可能性があります。
人事配置
従業員の年齢といった業務内容に無関係な属性を理由に、特定の仕事や昇進をさせないといった人事は、バイアスによる不当な判断の最たるものです。
従業員に業務や役職を任せる際には、あくまで仕事に関連のある能力を基準として、公平に配置を行うことが大切です。
アンコンシャスバイアスが企業に与える影響
アンコンシャスバイアスは経営や組織に悪影響を与えるため注意が必要です。
経営に及ぼす悪影響
企業の経営は従業員の活躍によって支えられているため、従業員に対するアンコンシャスバイアスは経営状況にも大きな影響を及ぼします。例えば、バイアスによる誤った経営判断は優秀な人材の獲得や定着を阻害し、業績の停滞を引き起こす可能性があります。
また、コンプライアンス(法令順守)の意識が求められる企業の経営において、アンコンシャスバイアスは時に致命的なトラブルの原因にもなります。なかでも、性別や国籍のみを理由とした人事は法令違反とみなされる場合があり、企業としての信用を失うことにもつながるため注意が必要です。
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コンプライアンス対策の基本 ~管理職として押えておくべき知識~(129)
組織に及ぼす悪影響
組織を構成する従業員がアンコンシャスバイアスにもとづいて行動することは、組織内の人間関係を悪化させ、パフォーマンスの低下をもたらします。
お互いを認め合えず、偏見を押し付け合う組織では、従業員は次第にコミュニケーションを避けるようになるでしょう。その結果、互いの連携が弱まり、組織が思うように力を発揮できなくなってしまうのです。
企業がアンコンシャスバイアス解消に取り組む目的
企業がアンコンシャスバイアスへの対策を講じる主な目的は、大きく「正確性の向上」「公平性の確保」「多様性の受容」の3つに分けられます。
企業を健全に運営し成長させるためには、先入観にとらわれない正しい判断が大切です。加えて、社会から必要とされる企業となるうえでは、あらゆる従業員や顧客に公平に向き合い、広く受け入れる姿勢も不可欠といえます。
多様な価値観が混在する現代において、企業には単に利益を追求するだけでなく、さらなる付加価値をいかに生み出せるかが問われています。そうした観点でも、アンコンシャスバイアスの解消は有効な取り組みといえるでしょう。
アンコンシャスバイアスの対応方法
ここからは、アンコンシャスバイアスの具体的な対応方法を紹介します。
個人やチームでできる取り組み
まず、個人やチームで取り組める対応方法は以下の2つです。
知識を深める
アンコンシャスバイアスによる悪影響を防ぐためには、まずは「アンコンシャスバイアスとはどのようなものか」といった基本的な知識をしっかりと把握しておくことが有効です。
身につけた知識は予防だけでなく、自らが同じようなバイアスを抱いてしまった際に、自覚して解消に努めるうえでも大きなヒントとなるはずです。
自覚・認識に努める
アンコンシャスバイアスについて一定の知識を得た後は、自分自身または組織のメンバーが悪影響のあるバイアスを抱いていないか意識的に確認することも重要です。早い段階で問題を認識すれば、その分対処も余裕を持って行えるでしょう。
企業ができる取り組み
次に企業で取り組めるアンコンシャスバイアスへの対応方法を見てみましょう。
アンケートを実施する
企業が従業員のアンコンシャスバイアスに気づくための取り組みとして効果的なのが、社内向けに実施するアンケートです。
例えば、示されたいくつかの具体例に対し、自分があてはまるものにチェックをつけてもらうといった形式のアンケートであれば、社内の傾向を分かりやすく可視化できます。
研修・トレーニングを実施する
全社的に従業員のアンコンシャスバイアスへの感度を高めたい場合には、座学研修やロールプレイングなどを行うのもよいでしょう。
とはいえ、社内のリソースだけで実施する教育には限界があるため、外部研修や社外の専門家の力を頼るのも一つの手です。
<関連リンク>
アンコンシャス・バイアス ~無意識の「思いこみ」や「偏ったモノの見方」に気づき、信頼と成果を生み出す~(179)
まとめ
アンコンシャスバイアスは企業に大きなリスクをもたらす一方で、誰もが抱く可能性のある普遍的な心理現象です。そのため、悪影響を防ぐうえでは一人ひとりがその影響に目を向け、率先して対策を講じることが大切です。
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