導入事例
20年先を見据え「経営人材育成研修」「社長・役員ワークショップ」で社内の意識を変える
名港海運株式会社
- 公開日:2024/12/02
- 更新日:2024/12/04
事例概要
背景・課題
私たちは、2020年度から段階的に「中核人材育成研修」「経営人材育成研修」「社長・役員ワークショップ」「360度サーベイ」「エンゲージメントサーベイ」に取り組みました。背景として、これまでは比較的安定した事業環境のなかで成長してきましたが、産業構造が大きく変化するこの時代に社内の意識を変える必要性を感じたことがあり、抜本的な人材育成に着手しました。
検討プロセス・実行施策
新任の部長・副部長クラスには「経営人材育成研修」として部内課題の抽出方法とその解決方法を、中堅リーダークラスには「中核人材育成研修」として“思考力・企画力・提案力・実行力”を身につけてもらう研修です。研修後は、研修内で各自が抽出した課題を各部に持ち帰り、解決に向けた行動を実践していきます。「社長・役員ワークショップ」では、各々の「360度サーベイ」の結果を題材に、これから社員とどう向き合い共に成長していくべきかを議論しました。この「社長・役員ワークショップ」のもう1つの目的は社長と役員の一枚岩化です。
成果・今後の取り組み
社長と役員が役職の上下に忖度せず、会社のために良いか悪いかを自由に意見交換する環境を醸成することができました。今後はエンゲージメントサーベイも活用し、すべての役員・社員が仕事を通じて成長を感じられる職場環境を創っていきたいと考えています。
背景・課題
課題を抽出し、それを実践形式で解決する研修がなかった
三谷:私たち名港海運は、2020年度から40歳前後の中堅リーダークラスを対象とした「中核人材育成研修」を開始しました。翌年2021年度からは、1つ上の階層、部長・副部長クラスを対象とした「経営人材育成研修」をスタート。
2022年度からは、社内の意識を変えるには役員の意識を変える必要があるとして、役員クラスの一枚岩化を目指す「社長・役員ワークショップ」も開始し、そのなかで社長も含めて役員は毎年「360度サーベイ」を受けています。さらに2024年度からは「エンゲージメントサーベイ」も始め、360度サーベイと組み合わせて、役員・社員の能力開発や組織開発に活用しています。以上の施策をリクルートマネジメントソリューションズにお願いしてきました。
これら一連の取り組みを始めた背景には、私たちの事業構造やビジネス環境の変化や不透明性があります。私たち名港海運は、名古屋港における港湾運送事業を中核とした総合物流企業です。製造品出荷額日本一の愛知県を支える名古屋港を中心に比較的安定した事業運営を行ってきました。しかし、今後はどうなるか分かりません。また、10年後、20年後に現在の主要顧客にビジネス上の変化が起これば、われわれは非常に大きな影響を受けることになります。今は順調でも10年後、20年後は全く不透明な時代です。
今までは顧客から与えられた課題に対し、誠意を持って一生懸命取り組むことで信頼を得て成長してきましたが、これからは環境の変化を他社に先んじて察知する能力を磨く必要性を感じています。そこで、人事部としては「20年先を見据えて社内の意識を変えよう」と新しい研修体系の構築に着手しました。
検討プロセス・実行施策
思考力・企画力・提案力・実行力を身につける「経営人材育成研修」「中核人材育成研修」を実施
三谷:私たちがこれから必要とする能力は、一人ひとりが事業課題を自ら発見する「思考力」、その課題への打ち手を構想する「企画力」、上司や経営層の理解を得て企画を通す「提案力」、打ち手を現実的に前に進める「実行力」です。「経営人材育成研修」は部長・副部長クラス、「中核人材育成研修」は中堅リーダークラスに、これらの能力を身につけてもらう研修です。受講者たちはこれらの能力について研修で学んだ後、現場に戻って自部署や自業務に課題を発見し、課題解決策を企画・提案・実行することで、学びを実践につなげています。
小田:私は入社以来32年間、国際関連の業務を担当しつづけ、そのうちの18年は海外拠点に勤務しました。そして2023年9月に人事部に異動となり、人事部長を務めています。ですから私も新任部長として、2023年度の経営人材育成研修を受講しました。その実体験をお話しします。
私は経営人材育成研修で、これまで知らなかったことばかりを学びつづけ、毎日のように目から鱗が落ちていました。本研修では、「自社と自身の現状を知るためのフレームワーク」や「自社と自身のこうありたいという将来ビジョンの描き方」を学ぶのですが、私は経営視点で自社のビジネスを俯瞰的・大局的に考えたことがありませんでした。また、「自分がどうありたいか」から物事を考えたこともありませんでした。国際物流の実務には自信があり、お客様の要望に応えることは得意としていますが、経営視点で考える経験はほぼ初めてだったのです。ですから、最初は答えようにも答えられず、知恵熱が出て大変でした。
しかし、経営人材育成研修を受講した後、3~4カ月の現場実践を経ると、ようやく一筋の光が見えてきました。自分なりに事業・組織・自己のビジョンを描き、変革課題を設定することができるようになってきたのです。例えば、経営層から「人事制度改定を通して、小田はこの会社をどう変えたいのだ?」と問われたとき、自分の言葉で答えられるようになりました。学びを継続的に実践していけば、少しずつ経営視点を持てるようになるのだと実感しています。
社長・役員・部長が「360度サーベイ」を受け、忖度せずに言い合って相互信頼を高めている
三谷:一方の「社長・役員ワークショップ」は、社長・役員の一枚岩化を図るプログラムです。社長・役員が、経営層として求められるリーダーシップ開発を目標に、各自のリーダーシップを見直し、お互いのリーダーシップについて話し合う場です。
本ワークショップの中心にあるのが「360度サーベイ」です。360度サーベイを通じて、社長と役員が自らを知ると共に、社長―役員間、役員―部長間で率直に意見し合い、相互信頼を高めてもらいたい、というねらいのもとで始めました。2024年度からは対象者を部長クラスまで拡大しています。なお、社長が360度サーベイを受けるケースは少ないと聞いていますが、私たちの場合は髙橋社長が自己変革のためにむしろ率先して受けており、360度サーベイが社内に定着しています。
小田:私も今回360度サーベイを受けましたが、上司・部下・周囲から忖度のないコメントをもらうことができ、大いに参考になっています。もちろん反省する部分は多々ありましたが、一方で自分の言動が部下の役に立っていることも分かり、励みにもなりました。これから自分の言動を変えていくうえで有用かつ貴重な情報を得ることができたと感じています。
三谷:なお、リクルートマネジメントソリューションズは、私たちを理解したうえで、私たちに適したプログラムを次々に提案・実行してくれるありがたい存在です。会社研究のために物流倉庫などにも出向いて実際の業務内容を確かめるなど、真摯な姿勢を信頼しています。また、トレーナーの質が高く、受講者たちの気づきにつながる的確な問いかけをしてくれること、受講者たちの脳に適度な負荷をかけてくれることに好印象を抱いています。加えて、トレーナーが受講者一人ひとりを覚えている点が素晴らしく、研修の継続性が生まれています。
成果・今後の取り組み
社長と役員たちが遠慮なく話し合うようになり、彼らの意思決定が目に見えて変わった
三谷:これら一連の施策による変化ですが、現在はまず、社長・役員を中心に起こっています。社長と役員の一枚岩化が確実に進んでおり、チーム経営が形になりつつあります。例えば、役員会・経営審議会などの場で、社長と役員が遠慮なく侃々諤々の議論をするようになりました。社長・役員ワークショップの実施以前にはなかったことです。「経営者から社員に対するコミュニケーション不足と発信力の弱さ」という社員たちの声を受け、「社長・役員ワークショップ」による役員一枚岩化で経営層の意思決定はこうして目に見えて変化しています。
エンゲージメントサーベイを活用したリーダーシップ開発にも着手
三谷:さらに、2024年度から「エンゲージメントサーベイ」を開始しました。もともと従業員満足度調査を行っていましたが、従業員満足度調査で主に分かるのは衛生要因です。私たちはそれだけでなく、社員のやりがい・成長に関する意識や想いを知りたかったのです。そのためにはエンゲージメントサーベイを実施する必要がありました。2024年度の回答率は99.7%と非常に高く、社員の関心の高さを実感しています。また、サーベイ結果からは改善すべき点も明確になりました。
小田:これから、このエンゲージメントサーベイ結果を使った「部門長ワークショップ」を実施します。各部門の結果を部長クラスにフィードバックして、自組織の課題を洗い出し、その課題を解決する施策の企画・実行につなげてもらう研修です。その際には経営人材育成研修での学びがきっと役立つはずです。
三谷:私たちは今後5年、10年かけて、組織と社員の意識を変えていきたいと考えています。そのためには、以上の研修施策を適宜ブラッシュアップしながら、継続することが大切です。例えば、中核人材育成研修の対象層をより若い層に拡大し、早期から経営視点を持ってもらう方がよいかもしれないと考えています。その一方で、20年先を見据えた人事制度改定なども来年度の実施に向けて進行中です。
トレーナーの声
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDトレーナー
富村 興
2020年12月、三谷様の「20年先のために社内の意識を変える」「そのために、抜本的な能力開発と組織開発に着手したい」というお話からスタートしました。しかし、会社変革への支援が本当に可能なのかと不安が先行して、日々、米村ソリューションプランナーとの議論が続きました。
「不安」が「確信」に変化したのは2年後でした。
確信に変わった理由は「変革への原動力」が伝わってきたからですが、その根幹をひとことでいうと、社長を中心とした変革を先導する方々の圧倒的な「当事者意識」です。
■1つ目の原動力は、経営トップの「意思」と「覚悟」
社長・役員の一枚岩化のワークショップを5回実施しましたが、髙橋社長がご自分の弱みも含めてさらけ出して対応されている姿を見て、その意思と覚悟を感じました。同時に、それを支える三谷常務の逃げない姿勢が他の役員の皆様へ伝わり前に進み始めました。1年後、「役員会・経営審議会の場で、社長と役員が遠慮なく話ができるようになってきた」という言葉をお聞きしたときに「大きな一歩」が踏み出されたと嬉しくなりました。
■2つ目の原動力は、目的「将来のため社内の意識を変える」が連鎖したこと
変革で大事なことは「何をするのかではなく、何のためにするのか(目的)」ですが、ぶれない目的が新たに参加された小田人事部長の心を動かすことになりました。小田様が変革の目的を「人的資源のさらなる活用で名港グループをより強い組織へ変える」と力強くご自身の言葉で語られている場面が増えました。その結果、人事部門の一枚岩化も進み始めました。
■3つ目の原動力は、変革の意義を感じた若手の行動力
山田グループリーダーの「このままでは未来がない」という危機意識、問題意識が素晴らしく、実務の先導者として、2024年、エンゲージメントを通した組織変革を提言されました。再度、経営層のワークショップがスタートしましたが、山田様の当事者意識が大きな原動力となって経営を動かし、変革を前に進めています。
いずれにしても、その根幹の鍵は、先導される方々の「圧倒的な当事者意識」だと確信できました。
まだまだ変革は続きますが、2020年からの取り組みが基点になったといえる日が必ず来ると、米村ソリューションプランナーと未来の可能性を楽しく語り合っています。
取材日:2024/07/29
企業紹介
名港海運株式会社
名港海運は、名古屋港における港湾運送事業を中核とした総合物流企業として、適正な利益の確保と会社の安定・成長を図り、港という「公器」を預かる企業の使命である、地域社会への貢献を経営の理念としている。名古屋港トップクラスの倉庫保管スペースと輸送能力を有し、豊富な貨物取扱実績を誇っている。海上貨物のみならず、中部国際空港等の空港にも拠点を設置するなど、海・陸・空のあらゆる輸送ニーズに対応している。また、アメリカ、ヨーロッパ、アジアをはじめ、国際ネットワークを広げ、Door to Doorの輸送ニーズに対応している。
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