導入事例
「1on1」の導入により、社員一人ひとりに強みを生かした仕事をアサインしてサポートする
株式会社丸井グループ

- 公開日:2024/10/28
- 更新日:2024/10/28
事例概要

背景・課題
私たち丸井グループには、以前から「対話の文化」や「手挙げの文化」が根づいており、多くのマネジャーがすでに非公式の1on1を実施したりしていました。2022年、「社員一人ひとりの強みを活かしたチャレンジを増やし、『フロー(時を忘れ、我を忘れて没頭する状態)を体験できる組織」を実現する』という新たな目標が生まれました。それには「1on1」の導入が最適だと考え、公式導入を決めました。

検討プロセス・実行施策
リクルートマネジメントソリューションズと議論し、「丸井グループの1on1は、デザイン・アサイン・サポートを通して価値を創出する施策だ」と定義しました。2023年度下半期から開始した「1on1コーチング研修」は、部下のために1on1を行う意義・意味が腑に落ちる内容でした。私自身が本研修で、上司がアサインやサポートまでするのなら、部下にとって有意義な時間になるという確信を得られました。

成果・今後の取り組み
私自身が、1on1を通して部下の強みを活かした仕事をアサインできました。1on1推進担当の担当者はマンガ家でもあります。彼女の画力を活かしたマンガをふんだんに使用した「1on1スキルブック」や「月刊 まるいの1on1」が社内で好評を得て、1on1コーチング研修に手を挙げる人も増えたのです。今後は、現在開発中の「1on1アプリ(仮称)」を導入し、さらに1on1を社内に普及させていきます。
背景・課題
社員の強みを活かしたチャレンジを増やすためには「1on1」が最適だった

原田:私たち丸井グループは、10年以上前から「人的資本経営」に取り組んできました。なかでも、私たちは以前から「対話の文化」を重視しています。対話のルールを設けて奨励してきた結果、社内には対話の習慣がすでに定着しています。
経営理念を決める際にも、対話の場を設けて徹底的に話し合いました。また、社員一人ひとりの自主性を促す「手挙げの文化」も根づいており、中期経営推進会議、プロジェクトやイニシアティブ、社外のビジネススクールへの派遣、次世代経営者育成プログラム、新規事業などはすべて手挙げ制になっています。
実は2019年に一度「1on1」の公式導入を検討したのですが、そのときは意義や意味を十分に感じられずに見送りました。なぜなら、社内にはすでに対話の文化が根づいており、多くのマネジャーがすでに非公式の1on1を実施していたからです。2023年の役員・管理職向けアンケートでは、約7割がすでに非公式1on1を実施していると回答しました。つまり、多くの上司たちが日々の対話のなかで、部下に寄り添って心理的安全性を創出したり、部下の特性や強みを理解したり、部下のWILL(やりたいこと)を引き出したりしていたのです。だから、わざわざ1on1を公式に導入する必要はないだろう、と私たちは考えました。
ところが、2022年に風向きが変わりました。私たちは、丸井グループ独自の3つのエンゲージメント指標を設け、その数値を伸ばしています。そのうちの1つ「自分の強みを活かしてチャレンジしている」という指標は、2012年の38%から、2022年の52%へと10年間で明らかに改善したのですが、2022年から、この数値をさらにもう一段高めるという目標が生まれたのです。社員一人ひとりの強みを活かしたチャレンジを促すことは、私たちが理想とする「フロー(時を忘れ、我を忘れて没頭する状態)を体験できる組織」の実現を加速します。そして、フローに入りやすい状態の社員を増やすことは、私たちが「社会課題解決企業」となり、「すべての人が『しあわせ』を感じられるインクルーシブな社会を共に創る」というミッションを実現するために必要なのです。
そこで2023年、リクルートマネジメントソリューションズにも相談しながら、いろいろと検討した結果、社員の強みを活かしたチャレンジを増やすためには「1on1」を公式導入するのが最適ではないか、という結論に達しました。こうして目的が明確になったことで、1on1導入の必然性が生まれました。
検討プロセス・実行施策
丸井グループの1on1を「デザイン」「アサイン」「サポート」を通して価値を創出する施策と位置づけ

原田:私たちは1on1導入にあたり、リクルートマネジメントソリューションズと議論して、まず「丸井グループが目指す1on1の姿」を定義しました(図表1)。
リクルートマネジメントソリューションズと1on1のあり方を議論していた際、マネジメントサイクルを回すうえで大切になる考え方として「デザイン」「アサイン」「サポート」があることを知り、丸井グループの1on1にもこれらを取り入れることにしました。基本として丸井グループでは、上司が部下との間に心理的安全性を創出したり、部下の特性や強みを理解したり、部下のWILLを引き出したりすることを大事にしているので、「デザイン」で定義づけられていることとの親和性がありました。
そのうえで、上司が部下一人ひとりの強みを活かした仕事を「アサイン」して、チャレンジ機会を設定することを1on1の大きな目的に据えました。また、アサインした後は、上司が必要な支援を特定して実行する「サポート」に力を入れることも明記しました。このようにして、丸井グループの1on1は、デザイン・アサイン・サポートを通して価値を創出し、部下一人ひとりをフローへ導いて社会課題解決企業を実現するための施策である位置づけたのです。
つまり、私たちはアサインとサポートを主目的に据えたわけです。そうすることで、日々の対話とは別に1on1を実施する意義や意味を明確にしたのです。
<図表1>丸井グループがめざす1on1の姿

「1on1コーチング研修」は、部下のために1on1を行う意義・意味が腑に落ちる内容だった
原田:リクルートマネジメントソリューションズとは何度も議論を交わし、丸井グループに合った1on1を共創してきました。解像度の粗い段階から加わってもらい、全面的に相談してきたのです。そのうえで、2023年度下半期から、リクルートマネジメントソリューションズの「1on1コーチング研修」を実施しました。私たちのオーダーやフェーズに応じて、プログラムをカスタマイズしてもらいました。
私自身も1on1コーチング研修を受講しましたが、部下のために1on1を行う意義・意味が腑に落ちる内容でした。特に、受講者同士で「1on1トライアル」を体験するプログラムが印象に残っています。受講者たちがペアを組んで1on1を試行し、上司側と部下側の両方を疑似体験するのです。そのなかで、私は上司側の楽しさを実感できました。実は1on1では、意外と上司の方が1on1の意義・意味を信じきれず、「部下の貴重な時間を奪って申し訳ない」と思ってしまいがちです。しかし、私は1on1トライアルを通して、上司がアサインやサポートまでするのなら、部下にとって有意義な時間になるという確信を得ることができました。私自身が1on1の効果や良さを実感し、これなら広められると思えたのです。
成果・今後の取り組み
私自身が部下の強みを活かした仕事をアサインできた

原田:1on1コーチング研修は、現在までに役員を含む管理職の約半数が手挙げで参加し、参加後のアンケートでは、参加者の99%が「研修を通して気づきや学びがあった」と回答しました。良い学びになっているようです。
1on1はまだ導入したばかりですから、明確な成果が見えてくるのはこれからです。そこで、具体的成果として、私自身が部下の強みを活かした仕事をアサインできた事例をご紹介します。
1on1の公式導入にあたり、人事部に1on1推進担当を新設しました。1on1推進担当の担当者は、実は副業でマンガ家やイラストレーターをしています。しかし、丸井グループのなかでその画力を活かすシーンはなかなかありませんでした。そこで、私たちは1on1で話し合い、社員向けに「1on1スキルブック」を作り、社内イントラネット上に「月刊 まるいの1on1」(図表2)を創刊することを決めました。いずれも担当者が描いたマンガをふんだんに使用して、気軽に読みやすい雰囲気を醸成することにしたのです。
また、1on1の公式導入に関する人事通達でも漫画を使用しました。役員・管理職向けの通達だったにも関わらず、一般社員からの反響も非常に高く、昨年社内で発信された通達の中で最も高い閲覧数を記録しました。私や担当者のもとには、周囲から「今回の通達は良い意味で人事部らしくなくてよかった」といった声が多く届きました。さらに、この通達によって、1on1コーチング研修に手を挙げて参加する人が増えました。マンガが間違いなく効果を発揮したのです。
私1人では、1on1の情報共有にマンガを使うなどという発想は絶対に出てきませんでした。漫画やイラストを描くことを強みにもった担当者がいたからこそ、「1on1スキルブック」や「月刊 まるいの1on1」はうまくいったのです。このようにして上司が部下の可能性を信じ、部下の強みを活かすアサインやサポートをすれば、ポジティブな結果を創出できるのだと実感した出来事でした。この成功は、私と担当者が1on1推進により前向きになれた大きな要因の1つです。
<図表2>月刊 まるいの1on1

今後は「1on1アプリ(仮称)」を導入し、1on1をさらに社内に普及させていきたい
原田:丸井グループでは、フローに入りやすい状態の社員を2030年までに60%に高めることを目指しています。2024年6月は45%を目標としていましたが、47%を達成しました。その成功要因の1つは1on1ではないかと考えています。また、2024年7月には、1on1の取り組みに関する全社調査を実施しました。その結果、上司の問いかけなどにより「1on1内での発言量が7割以上」かつ「キャリアをテーマに1on1を実施した」社員の異動希望率は、1on1未実施の社員より高い結果となりました。1on1は自律的なキャリア形成にも効果があるのではないかと考えています。今後は1on1の質を高め、回数を増やし、1on1コーチング研修の参加者を増やすことで、さらに1on1を社内に普及させていきます。
未来の大きな武器の1つが、現在開発中の「1on1アプリ(仮称)」です。人事部のある社員が、システム開発未経験にもかかわらず、自ら手を挙げて、アプリ開発に取り組んでいます。このアプリが完成すれば、部下がフローに入っているかどうか、フローに入るためにチャレンジングなアサインが必要なのか、それとも上司のサポートが必要なのか、といったことが、上司も部下も一目瞭然で分かるようになるはずです。フローを唱えた心理学者チクセントミハイの概念をベースにしており、学術的な裏付けもしっかりしています。このアプリの活用を通し、社員一人ひとりがより高い解像度で自分自身のフロー状態を理解することや、1on1の積極的な実施を促進していきたいと考えています。

ソリューションプランナーの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRDサービス共創部
パーソナルディベロップメントグループ
シニアソリューションアーキテクト
後藤千晶
今回のご支援を通じて大切にしたことは、「丸井グループ様の1on1がメンバーのフローを実現するためのツールとして現場で機能するためには?」を追求することです。
丸井グループ様では「一人ひとりの好き」を応援することを大切にされているので、どうせやるなら1on1も好きになってもらいたい。丸井グループの皆さんを具体的にイメージしながら、1on1の定義や研修で何を伝えたいか、いつどんな打ち手や現場サポートが必要になるのかなど、何度もディスカッションさせていただきました。
さまざまな企業様より1on1が形骸化しているとご相談を頂きますが、背景には目的の不在と熱の不足の2点があると考えています。1on1は、マネジメント層の貴重な時間をコミュニケーションに投資してもらう取り組みです。その投資は事業成果につながるか? 現場が1on1を好きになってくれるためには何が必要か? 設計者側が知恵を絞り、現場任せにならない施策設計をすることが求められます。

ソリューションプランナーの声

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
営業2部6グループ
ソリューションプランナー
奥尾 泰平
今回、丸井グループ様の取り組みをご支援させていただくなかで印象的だったのは、1on1を通じて実現したい「上司と部下のコミュニケーションの活性化だけではなく、デザイン・アサイン・サポートを促進し、フロー状態の人を増やす」ことを常に念頭に置いて検討を進めていたことでした。
手挙げ制のなかでより多くの人に研修を受講してもらうために、自作のマンガも活用して受講者により分かりやすく1on1を届けるという取り組みは、1on1の仕組み浸透への本気度の表れであり、私もより一層強く支援したいと感じました。
今回、研修プログラムの面では受講者特性に合わせ、3時間という短いセッションのなかでもペアワークを中心に実技を多く取り入れて実施しました。受講者の方が職場に持ち帰ったときに実践しようという気持ちになること、実践するためのスキルが身につくことにフォーカスして研修講師と共にプログラムを考えました。
結果、研修を受講してから1on1をメンバーに実践していくという声を多数伺うことができました。
今後の丸井グループ様が目指す、失敗を許容し挑戦を奨励する文化の浸透に向けて弊社一丸となってこれからも支援させていただきたいと思っております。
取材日:2024/07/30

企業紹介

株式会社丸井グループ
丸井グループは創業以来、小売とフィンテックが一体となった独自のビジネスモデルで、他社にはない強みと地位を確立してきた。さらに近年では小売×フィンテックに、コアバリューである「信用の共創」を活かした共創投資と新規事業投資からなる未来投資を加えた三位一体のビジネスモデルに進化させてきた。このビジネスを通じて、インパクト(社会課題の解決)の実現と利益の両立を目指している。
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