IT人材を取り巻く大きな環境変化を見据えた「人事制度改革」

公開日:2024/03/11
更新日:2024/03/14
IT人材を取り巻く大きな環境変化を見据えた「人事制度改革」

プロジェクト概要

背景・課題

私たちは、2020年の新中期経営計画で「人財投資」を基本戦略に位置づけました。それと共に、経営陣の強い要望を受けて人事制度の改定を決め、2018年に社内横断プロジェクトを立ち上げました。しかし、新人事制度の議論はなかなかまとまらず、難航しました。そのとき、私たちは社内だけで制度づくりを進めることに限界を感じ、社外のノウハウや着眼点を取り入れてみることにしたのです。

検討プロセス・実行施策

コンサルタントのおかげで経営陣と人事の合意形成がスムーズになり、2020年7月に新人事制度を導入できました。単線型から「複線型人事制度」に改定し、入社1〜4年目を育成期間と定めて「総合職掌」としました。さらに、従来型ビジネスとDXビジネスの「両利きの経営」を推し進めるために、主軸となる「基幹職掌」の他に「GM職掌」と「ADV職掌」を新設し、一人ひとりの自律的な成長を促すために「役割判定」を取り入れました。

成果・今後の取り組み

新人事制度の導入から4年以上が経ち、成果と課題が見えつつあります。「総合職掌」を卒業した社員は、従来よりも高い等級に格づけられる者が明らかに増えており、新人・若手育成についてはすでに一定の成果が上がっています。役割判定も全社的にかなり浸透しました。GM職掌とADV職掌はもっと活用を進めたい領域です。新人・若手のリテンションのため、「ウェルビーイング向上」にも取り組み始めています。

背景・課題

基本戦略「人財投資」の一環として、新人事制度の導入を決定

小林:私たちが人事制度の見直しを検討し始めたのは、2018年でした。私たちSCSKはもともと人に関心の高い会社です。IT業界は社員一人ひとりのスキルがすべての源泉であり、人材の実力が経営に直結するからです。特に2020年度以降の中期経営計画では、一貫して「人財投資」を基本戦略に位置づけてきました。その背景には、DXの浸透によって、IT人材の採用やリテンションがますます難しくなったこと、AIスペシャリスト、データサイエンティスト、IoTの専門家などの高度人材や異業種人材の必要性が増したことがあります。私たちは経営陣の強い要望を受け、2020年の中期経営計画策定をめどに人事制度を改定することを決め、2018年に社内横断プロジェクトを立ち上げました。


和南城:2019年、社内横断プロジェクトのメンバーたちは、現場の意見を反映した新人事制度の素案を経営会議に諮りました。しかし、実現したいことをどう制度に組み込むかなどの議論がなかなかまとまらず、難航しました。そこで私たちは、社内だけで制度づくりを進めることに限界を感じ、社外のノウハウや着眼点を取り入れてみることにしたのです。複数の会社から提案してもらいましたが最終的に、リクルートマネジメントソリューションズにコンサルティングをお願いすることに決めました。この人たちなら、私たちの現場実務に寄り添って、SCSK固有の事情を考慮したコンサルティングをしてくれるだろう、と感じたからです。

検討プロセス・実行施策

経営陣の了承を得て、2020年7月に新人事制度を無事導入できた

小林:リクルートマネジメントソリューションズのコンサルタントには、まずこれまでの議論を整理し、方針を固めて経営陣の了承を得るプロセスに協力してもらいました。そのうえで、具体的な制度改定の支援をしてもらいました。その結果、私たちは2020年7月に新人事制度を無事導入することができました。


和南城:コンサルタントが、私たちの議論に世のなかのトレンドや一般的な見方を持ち込んでくれたことで、経営陣と人事の合意形成がスムーズになりました。多様なステークホルダーがいるときには、第三者視点をもたらしてくれる存在が大切であることがよく分かりました。

一人ひとりの自律的成長と両利きの経営を支援する「複線型人事制度」を開始

和南城:新人事制度の最も大きな変更点は、単線型の資格等級体系から「複線型人事制度」に変えたことです。入社1〜4年目が区分される「総合職掌」、5年目以降の社員が区分される「基幹職掌」、部室長級以上が区分される「GM職掌」、極めて高度あるいは希少な知識と経験を持つプロフェッショナルだけが認定される「ADV職掌」の4つの職掌を用意しました。


小林:複線型人事制度の1つ目のポイントは、入社1〜4年目を育成期間と定めて「総合職掌」にひとまとめにしたことです。実は私たちは2020年時点で、すでに働き方改革をいち早く推し進めて残業時間を大幅に減らし、年次有給休暇の取得率を劇的に高めることに成功していました。その結果、優秀な新卒社員の採用に成功していました。だからこそ、新人・若手人材の育成にドライブをかけ、彼らに一人前になってもらうまでの時間を短縮したいと考えていました。そこで、4年間で8年分のレベルアップを果たしてもらうことを目標に掲げて、総合職掌を設け、研修制度を一新しました。さらに、管理職を対象に人材育成意識を高める施策にも取り組んできました。


和南城:2つ目のポイントは、「GM職掌」と「ADV職掌」を新たに設けたことです。その背景には、「両利きの経営」を推し進めたいという事業戦略上の理由がありました。私たちは長らく、ITシステムの開発・保守運用を中心としたビジネスを展開してきました。私たちは今、こうした従来型ビジネスに引き続き力を入れる一方で、お客様の共創ITパートナーとしてDX推進をサポートする「DXビジネス」を拡大する必要があります。さらに、車載システム開発などの新たなニーズにも応えていくことが求められています。


そのためには、社外の「高度人材」や「異業種人材」を積極的に受け入れる必要があります。例えば、自動車の車載システム開発に注力するためには、自動車業界の豊かな経験・知見を持った人材を採用するのが早道です。また、AIスペシャリストやデータサイエンティスト、IoTの専門家などの高度人材も欠かせません。ADV職掌は、そうした高度人材・異業種人材をスムーズに受け入れるために設けた区分です。また、GM職掌は、このようなビジネスの急速な変化に対応できる次世代経営者の育成を最大の目的としています。部室長級のときから経営視点を強く意識し、経営者への道をはっきりと見据えてもらうためにGM職掌を新設したのです。


小林:併せて、人事評価の仕組みも変えました。最も大きな変更は、「役割判定」を新たに取り入れたことです。役割判定とは、MBOで設定した目標(役割)がどの等級相当かを評価するもので、より高い水準の役割にチャレンジし、成長することを期待する仕組みです。本人と上司が業務のレベル感を意識し、より高いレベルの仕事を生み出して、一人ひとりの自律的な成長を促すために導入しました。さらに評価の柔軟性・客観性・納得感の向上も目指しています。いわゆるジョブ型雇用や役割等級制度とは異なりますが、それらのメリットを取り入れることを考えた仕組みです。この役割判定はリクルートマネジメントソリューションズの提案で、私たちだけでは生み出せないアイディアでした。

成果・今後の取り組み

新人・若手の育成スピードが上がり、役割判定も浸透した

小林:2020年7月に複線型人事制度を導入して、2023年12月現在で4年以上が経ち、その成果と課題が見えつつあります。


最初に、入社1〜4年目の新人・若手人材育成に関して言えば、ようやく4年経ったところですから、本当の成果が分かるのはこれからです。とはいえ、総合職掌を卒業して入社5年目を迎える社員は、従来よりも高い等級に格づけられる者が明らかに増えており、すでに一定の成果が上がっています。新人研修や実務でのインプット量も高まり、新人たちの知識・スキルは目に見えて向上しました。また、上司の育成意識も間違いなく高まっており、新人により上位の役割が与えられる傾向があります。


和南城:また、役割判定は基幹職掌と総合職掌を中心に、全社的にかなり浸透しました。小林が話した通り、総合職掌の導入や役割判定の運用から、管理職が新人や若手社員を中心に、よりストレッチした役割を与えるようになり、彼らの能力が総じて高まっています。私が今回の人事制度改定で得た最も大きな気づきは、「一人ひとりの自律的成長を促すうえで最も大切なのは、良いアサインメントだ」ということです。成長機会の提供が一番効果的なのです。それから、こうして新人・若手の育成スピードを上げると共に、「報酬アップ」をセットで実現できたことも大きな成果だと捉えています。


ただ一方で、中堅リーダー層以上の社員により良いアサインメントをするという面では課題を抱えています。この点を強化できれば、私たちの組織はさらに強くなれるはずです。

次世代経営者育成、異業種・高度人材の採用、エンゲージメントに力を入れたい

小林:GM職掌とADV職掌は、これからもっと活用を進めたい領域です。GM職掌の枠組自体は社内に浸透しましたが、次世代経営者育成の仕組みにはなりきっていません。次世代経営者育成の強化は、今後の課題の1つです。


和南城:ADV職掌については、試行錯誤を繰り返した結果、各事業部と人事が一緒になって動かなければ十分に機能しないことが分かってきました。例えば、自動車の車載システム開発ビジネスを伸ばすためには、どのような自動車業界経験者が必要なのかをよく話し合い、ADV職掌を活用してピンポイントで採用につなげる必要があるのです。さらに、外部から採用した異業種人材や高度人材がSCSKに早く馴染んで力を発揮できるようにするためには、ダイバーシティ&インクルージョンや文化の面でも整えていくことが大切です。以上は現在、私たちが最も力を入れている取り組みの1つです。


小林:人事制度改定から4年経ち、新たな課題も出てきています。その1つが「エンゲージメント」です。これまでお話ししてきたとおり、私たちは優秀な新卒・若手社員の早期育成に成功しつつありますが、それは彼らが社外から見てもより魅力的な人材になってきたことを意味します。さらに、DXが盛んになったことで、事業会社などさまざまな企業がIT人材を新たに採用するようになりました。優れたIT人材は争奪戦になっているのです。そのため、新人・若手のリテンションをこれまで以上に考慮しなくてはならなくなりました。そこで私たちは今、「ウェルビーイング向上」にも取り組み始めており、SCSKにとってのウェルビーイングとは何かを定義しようとしています。


人事制度改定は一定の成果を上げましたが、それで終わりではなく、むしろこれからが勝負だと考えています。今後も、制度のより良い活用や時代に合った改善を続けていきます。

ソリューションプランナーの声
佐伯と井関の写真

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
ソリューションプランナー 佐伯 愛理

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
シニアコンサルタント 井関 隆明


IT業界の先陣を切って、“人を大切にし、活かす”ことに挑戦されているのがSCSK様です。

人手が求められ続ける業界だからこそ、人事制度の改定・研修等の教育施策を連動させて、「若手の早期育成」「専門人材・次世代リーダーの獲得・育成」を推進されてきました。

新人事制度を運用され、実際に、若手の昇格時期の早期化など、目に見えた変化が起こっていると伺いました。想いを込めた制度が、事業推進の後押しとなっていることを大変うれしく感じます。

一方で、育て上げた人材に、自社で活躍し続けてもらうために、組織の求心力を高めていく必要があります。これまでの働き方改革で、業界の常識を覆してきたSCSK様だからこそ、次は社員の働きがいを高め、“人材の流動性が高い”という業界の概念を塗り替えてほしいと思っています。

引き続き、新制度運用に伴走しながら、変革の要であるマネジメント層の育成支援を行い、企業の価値をどのように高め続けられるか、一緒に模索していきたいです。

企業紹介

SCSK株式会社

SCSKグループは50年以上にわたり、ビジネスに必要なITサービスからBPOに至るまでフルラインアップで提供し、8000社以上の顧客のさまざまな課題を解決してきた。現在は次の飛躍に向け、ITを軸とした顧客やパートナー、社会との共創による、さまざまな業種・業界や社会の課題解決に向けた新たな挑戦に取り組んでいる。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。