新卒新人を短期間でデジタル人財に育てるためのCDPと新人研修体系を構築

NTT東日本(東日本電信電話株式会社)

プロジェクト概要

背景・課題

「デジタル事業」を新たな事業の柱にすることは、NTT東日本の最優先経営課題の1つです。デジタル事業の拡大を最も左右するのは人財であり、「デジタル人財を増やすためには、自社で育成するしかない」という結論に達しました。2019年4月、デジタル革新実現プロジェクトが発足し、デジタル人財育成にはどうしたらよいかを検討し始めました。

検討プロセス・実行施策

2019年12月から、新卒新人を短期間でデジタル人財に育て上げるためのCDP・研修体系構築を構築しました。誰も正解が分からないため、デジタル革新本部と4本部による「チームDX」の議論は紛糾したものの、サポートもあって2020年3月に予定通り構築が完了しました。新型コロナウイルス感染症拡大により、急遽オンライン研修に切り替えましたが、4月、無事に30名ほどの新卒新人を迎え入れました。

成果・今後の取り組み

1期生はオンライン新人研修後、チームDXの各本部に散らばり、現場でデジタル実務に取り組んでいます。彼・彼女らが現場でスピーディーに育つ環境に置かれているかを、経営幹部が直接チェックするほど、本気で育成に力を注いでいます。DXインターンをスタートし、今後は既存社員のリスキルにも取り組みます。社会や業界の変化に合わせ、デジタル人財の実際の成長を見ながら、育成プランを絶えず更新していきます。

背景・課題

デジタル事業を第3の柱にするためには、デジタル人財の自社育成が必須

細川:私たちNTT東日本は、1999年の設立以来、固定電話などの「音声サービス事業」と、フレッツ光をはじめとする「光サービス事業」の2本柱で長らくビジネスを続けてきました。現在の私たちの大命題は、新たな事業の柱を創出することです。地域活性化・農業・スマートシティ・eスポーツなど、新たな事業のキーワードはいくつかあるのですが、「デジタル」の一言でまとめることができます。つまり、私たちは「デジタル事業」を第3の柱にしようとしているのです。これは、最優先の経営課題の1つです。その証拠に、2019年7月に立ち上がった「デジタル革新本部」の本部長は、代表取締役副社長との兼務です。私たちは今、経営幹部の指揮のもと、デジタル事業の急拡大を本気で実現しようとしています。

具体的には現在、デジタル事業として、AI・IoT技術を活用したビジネスモデルの実現を加速する「スマートイノベーションラボ」を立ち上げたり、地元で活躍する企業や大学、自治体の方々と共に、農業IoTソリューション、スマートアグリシティ、自営無線ネットワーク、eスポーツビジネスなどに取り組んでいます。

デジタル事業の拡大を最も左右するのは、「人財」です。しかし、デジタル人財はレアリソースで、優れた即戦力を社外から数多く採用するのは大変難しく、私たちは早々に、「デジタル人財を増やすためには、自社で育成するしかない」という結論に達しました。かくして、2019年4月、デジタル革新本部の前身「デジタル革新実現プロジェクト」が発足し、下條が中心となり、デジタル人財を育成するにはどうしたらよいか検討し始めました。

検討プロセス・実行施策

4本部の意見の相違を乗り越え、コロナ禍のテレワーク要請直後に完全リモート研修を実現

下條:新卒や中途採用でデジタル人財を採用していくという方向性もあるかと思いますが、「デジタル人財を自社で育成する」という方針を決めました。AIベンチャー企業には学生インターンが多く在籍しており、そのまま就職することも珍しくありません。そういった企業をみてみると、企業内でデジタル人財育成が可能であることは確かでした。しかし、どうしたら実現できるのかノウハウを持ち合わせていなかったため、私たち、新入社員に対象を絞り込み、新卒新人を短期間でデジタル人財に育て上げるためのCDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)と新人研修体系の構築をサポートしてくれるパートナー探しを始めました。7月にデジタル革新本部が立ち上がる前の、2019年5〜6月のことです。

パートナーとしてリクルートマネジメントソリューションズを選んだ理由は、汎用的な提案ではなく、「NTT東日本のデジタル人財のCDP・新人研修体系はどうあるべきか」を親身になって提案してもらえたからです。リクルートマネジメントソリューションズは、きっと私たちの助けになってくれる、と感じました。デジタル革新本部の立ち上げ後、2019年12月から2020年3月までの4カ月間、CDP・新人研修体系構築のコンサルティングをお願いしました。


浦壁:NTT東日本では、デジタル革新本部のほかに4本部がデジタル事業に取り組んでいます。そこで、私たちと4本部で「チームDX」を結成し、デジタル人財育成を一緒に取り組むことに決めました。2019年12月から、チームDXで週1回のミーティングを行い、デジタル人財をどう育成するかを話し合ったのですが、議論は紛糾しました。各本部の意見や見方が異なるうえに、誰も正解が分からなかったためです。そこで毎週、リクルートマネジメントソリューションズのコンサルタントの方々に全員の意見を丁寧に集約してもらいながら、全員の目線を少しずつ合わせていきました。

例えば、デジタル技術として定義したAI・IoT・クラウドのいずれかに強いエキスパートを育てるのがよいのか、3領域全体の基礎を把握するコーディネータを育てるのがよいのか、という問題があり、意見は分かれました。全員が納得いくまで話し合った結果、以下のように決まりました。

まずは、デジタル人財候補の新人全員がすべての技術の基本を理解して、技術コーディネータになれるように育てる。ただし、適性と意欲がある人財は、その後にエキスパートや、ビジネスに詳しいビジネスファシリテータへの道にも進めるようにする。そして、最終的には、技術コーディネータ・技術エキスパート・ビジネスファシリテータの3つの方向性でキャリアを磨けるようにする。私たちは、こうしたことを一つひとつ決定しながら、CDPと新人研修体系を構築していきました。

2020年3月、CDP・新人研修体系の構築は予定通り完了したのですが、そこで大問題が発生しました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面研修が一切できなくなってしまったのです。急遽、全面的にオンライン研修に切り替えました。リクルートマネジメントソリューションズのサポートを得ながら、オンライン会議システムの設定から研修プログラムの変更まで、急ピッチで進めました。結果として当初計画していた内容を全て考え直すことになりましたが、オンラインでもライブでの研修にこだわるなど、新型コロナウイルス禍における最善の研修を準備できたと自負しています。2020年4月、私たちは40名ほどの新卒新人を迎え入れ、無事にデジタル人財向けオンライン新人研修を実施することができました。

ソリューションアーキテクトの声

デジタル人材育成にあたって
株式会社 リクルートマネジメントソシューションズ
ソリューションアーキテクト 千秋毅将
ソリューションプランナー 久保田極光

AI、IoTなどのデジタル領域を担う人材として新卒採用したものの、配属後に課される業務内容はこれまでの新卒採用と変わらないものが大半を占める。結果としてデジタル人材として育たない、あるいは離職してしまうという声を伺います。
新卒採用に限らず、デジタル領域を担う人材要件やCDPを定める際には、担う業務や必要なスキルを定義すると同時に、担わない業務や身につけなくともよいとするスキルを定義することが肝心です。

NTT東日本様のデジタル人財のCDPを作成する論点においては、通常の新卒新人が担う業務や必要なスキルのうち、どの業務、スキルを「省く」のか、省いた業務をどのようにカバーするのかに時間を費やしました。
これまで担っていた業務や、その業務遂行に必要なスキルに加えて、デジタルスキルとそれを用いた業務遂行できる人材を定義しがちですが、両面を兼ね備えたスーパーな人材を、これまでと同様の報酬で採用する、同様の期間で育成することは困難です。
デジタル領域の推進にあたっては、スーパーな人材を採用・育成しようとするのではなく、これまでの人材とデジタル領域を担う人材での分担・協業が求められると考えます。

成果・今後の取り組み

現場での人財育成に力を注ぎながら、育成プラン仮説を絶えず更新

下條:2020年入社の1期生は、デジタル革新本部でオンライン新人研修を受けた後、チームDXの各本部に散らばりました。スピーディーに育成するため、「デジタル人財にはできるだけ技術スキルを身につく業務のみに集中させる」というルールを決め、彼・彼女らは1年目から、現場でデジタル実務に取り組んでいます。経営幹部が、現場でスピーディーに育つ環境に置かれているかを直接チェックするほど、本気で新人デジタル人財の育成に力を注いでいます。1期生も私たちの期待に十分応えています。例えば、研修の一環として、AI・IoT・クラウドの1年目必須資格をそれぞれ設けたのですが、今のところ、受験した全員が合格しています。

2021年以降も、毎年DX人財の新卒新人を受け入れ、同様に育成していく予定です。また、デジタル人財研修プログラムをインターンに転用した「DXインターン」の実施もスタートしました。さらに今後は、新卒新人だけでなく、既存社員のリスキルにも取り組んでいきます。

一方で、CDPは柔軟に書き換えていくつもりです。社会や業界の変化に合わせながら、またデジタル人財の実際の成長を見ながら、育成プランを絶えず更新していきたいと思っています。当然ながら、技術進化が起これば、新たな技術を積極的に取り入れていきます。技術コーディネータ・技術エキスパート・ビジネスファシリテータの3つの方向性も、今後変わる可能性がおおいにあります。ただし、他社に引き抜かれるレベルにまで育て上げながら、NTT愛も育んで、長く一緒に働いてくれる優れたデジタル人財を増やしていく、という方針は、おそらく変わらないでしょう。

企業紹介

NTT東日本(東日本電信電話株式会社)
NTT東日本グループはすべての事業活動を通じ、社会の持続的な発展に貢献していくことを経営の基本姿勢として、社員一人ひとりが事業活動を通じてCSR活動に取り組んでおり、ICTを活用した付加価値の高いサービスをさまざまな分野に提供することで、「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて邁進してまいります。具体的には、事業の核である光サービスに加えWi-Fiやセキュリティ等の付加価値サービス拡大等の通信事業の成長に向けた従来の取り組みを進めるだけでなく、IoTやAI等の技術やマンパワー(人財)等、グループ会社も含めたあらゆるアセットを活用し、労働人口の減少に代表される地域社会の課題解決に向け取り組んでいます。