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インタビュー

カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO 松本 晃氏

長時間労働の撲滅にとどまらない真の働き方改革を

  • 公開日:2017/06/19
  • 更新日:2024/03/26
長時間労働の撲滅にとどまらない真の働き方改革を

働き方改革が経営の重要課題の1つとなった今、多くの経営者が積極的な発言を続けている。最も熱心な経営者の1人がカルビーの松本会長である。残業を減らせば、あるいは在宅勤務を勧めれば問題が片づくのか、そもそもホワイトカラーの仕事の性質はどんなものなのか、見過ごされがちな大前提の話から伺った。

時間で評価される仕事、成果で評価される仕事
難しいのは百も承知 まずは成果で測ってみる
「モデルデイ」を想定し自分なりの働き方改革を

時間で評価される仕事、成果で評価される仕事

今、世間を賑わせている長時間労働議論は、どうもピントが外れているようにしか思えません。僕は毎朝、電車で通勤しています。その間もその日の仕事の段取りや中身、あるいは会社をもっとよくするにはどうしたらいいかを、絶えず考えています。

休日も家の周りを散歩しながら考えていますし、コンビニとスーパーでどんな商品が並んでいるかを探る定点観測も欠かしません。通常は労働時間と見なされない通勤時間も休日も、僕にとっては立派な仕事の時間です。

逆に会社に来て机に座りパソコンを操作しているだけで仕事した気になっている人がいる。それが労働時間と見なされるのはおかしい。

世の中には時間で評価される仕事、成果で評価される仕事の2つしかありません。ホワイトカラーの場合は後者です。会社にいようがいまいが、平日に休もうが休日に働こうが関係ない、その人が期限内に成し遂げた仕事の質で評価されます。労働時間を短縮せよ、残業手当をきちんと払え、という世間の議論はホワイトカラーにはあてはまらないはずです。

第二次産業中心の高度成長期からバブル期までは、時間評価でよかったんです。製造機械は長時間動かした方が効率がいい。その機械が動く時間に合わせて、ホワイトカラーも仕事をしなければならなかった。おまけに、社員は一握りのエリートと大多数の均質な人材とに分けられ、前者が考えたことを、後者が粛々と実行すれば会社が回りました。時間で評価できる仕事が大多数だったのです。

そんな時代がバブル崩壊と共に終わり、第三次産業が主役になりました。一部のエリートだけではなく、女性や高齢者を含めたすべての社員が頭を使い、自律的に働かなければ企業が立ち行かない時代に入りました。製造現場も様変わりし、AIやロボットを使えば、人間がいなくても工場が稼働できるようになりました。仕事の評価は時間ではなく成果によってなされるべき時代になったのに、そうなっていない。困ったことです。

難しいのは百も承知 まずは成果で測ってみる

こういうと、「成果を測りやすい仕事はいいが、そうでない仕事もある」という人がいますが、測りにくい仕事も測るようにすればいいだけでしょう。カルビーの場合、あらゆる仕事について数字で表現できるシンプルな基準を作り、社員一人ひとりと契約書を交わしています。その年、うまくいかなかったら翌年に改善すればいい。それを繰り返すうち、最適な仕組みができるでしょう。

「成果には短期と長期があるから評価が難しい」という意見もあります。プロ野球選手の場合、「来年3割打ちますから、年俸を上げてくれ」と言っても通りません。要は今期の成果で評価されるわけです。来年以降のことも考えなければプロとして持続できませんが、成果の基準は1年。会社員も同じでしょう。

というものの、カルビーも、あらゆる仕事を成果で測る段階にはまだ到達していません。それを「働き方3.0」と呼ぶならば、労働時間を短縮させる「1.0」を脱し、会社に限らず、働く場所はどこでもいいという「2.0」を通過した後、3.0への移行期にあります。

日本の多くの企業がこの1.0でもがいています。なかには、それによって残業手当が減れば利益が増えると思っている経営者がいて唖然としますね。働く側は手取りが減って困る。そんなことが日本全体で横行したら、消費が減少し、経済全体のパイが縮小し、本末転倒です。

そうではなくて、「残業を減らせ。でも、今までの給料は保証する」というのが本筋です。その空いた時間の何分の一かを使って、より高い成果が上げられるように自己研鑽してもらう。仕事の生産性を上げ、より高い成果を出すために働き方改革が必要なのに、その重要なことが共有されていない気がするのです。

「モデルデイ」を想定し自分なりの働き方改革を

僕がなぜこんなに成果に固執するのか。成果を上げられなかったら、会社は設備投資ができません。新商品開発も無理で、月給もボーナスも増やせません。税金も払えないし、株主への配当も社会貢献もできません。だから会社は成果を上げ続けなければならないのです。

もちろん、長時間労働を勧めるわけではなく、短く働いて成果を上げられるのが一番です。それには、働く側の意識や行動も変えなければなりません。

仕事には、やらなければいけない仕事、やった方がいい仕事、やらなくてもいい仕事の3つがあります。多くの人は、やらなくていい仕事から手をつけ、次にやった方がいい仕事に移り、やらなければいけない仕事には最後に取りかかります。それは大概、頭を使ったり根回しが必要だったり、面倒な仕事ですから、時間がかかり、結果、長時間労働になってしまう。

それを防ぐのは簡単です。やらなければならない仕事だけを一心不乱に片づけ、終わったら帰ればいい。私がまさにやってきたことです。

もう1つアドバイスを。働いていると、ああ、今日はよく働いた、いい一日だったな、としみじみ実感できる日があるはずです。それを個々の「モデルデイ」にして、毎日がそれに近づくように努力してみる。労働時間の短縮に汲々とするより、ずっと実のある働き方改革です。

【text :荻野進介】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.46 特集1「労働時間をめぐる5 つの視点」より抜粋・一部修正したものです。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE
松本 晃(まつもとあきら)氏
カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO

伊藤忠商事で産業機器・農業機器などのビジネスに携わった後、同社の子会社であるセンチュリーメディカルの取締役営業本部長などを経て、1993年現ジョンソン・エンド・ジョンソン入社。代表取締役社長、最高顧問を歴任した後、2009年より現職。

この他にも「働き方改革」についての記事をまとめた特集ページをご用意しています。こちらもぜひご覧ください。
働き方改革」とは? いまさら聞けない基本から、今後のトレンドまで

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