- 公開日:2023/11/27
- 更新日:2024/05/16
流動性とは、その文字に表されるとおり、流れ動く性質のことである。本調査では、周りにいる人や関わる人が固定的でなく、入れ替わったり新しく関わり合ったりする程度として流動性を捉える。個人と組織の流動性の実態を確認し、特に組織の流動性についてはその違いがもたらす影響や、流動性をマネジメントする可能性を検討する。その際、職場に所属する人が入れ替わる「所属流動性」と、職場に所属する人が新しく人と出会う可能性としての「関係流動性」に着目して分析を試みた。
- 目次
- 調査概要
- 個人の流動性(1)転職・異動の経験
- 個人の流動性(2)社外活動への参加経験
- 個人の流動性(3)問題解決の重要な情報源
- 職場の流動性(1) 人の入れ替わり:所属流動性
- 職場の流動性(2)新しい人との出会い:関係流動性
- 所属流動性×関係流動性:職場の信頼や助け合いの違い
- 所属流動性×関係流動性:仕事・会社への動機づけ・愛着
- マネジメントのヒント(1) 冷ややかな職場を避けるために
- マネジメントのヒント(2) 新しい出会いの機会を生む環境
- 高流動性職場では多様さの包摂、低流動性職場では自律性がカギ
調査概要
本調査は、企業の職場で経験される流動性の実態と、それに関連する心理的・組織的な変数との関係を明らかにすることを目的として実施した。調査概要を図表1に示す。
部署異動や離職・入職が社内で一定程度以上起こり得る環境に条件を揃えるため従業員規模300名以上の企業に限定し、所属組織について一定の理解をもって回答できるよう入社して半年以上が経過している人を対象とした。
<図表1>調査概要「個人と職場の流動性に関する実態調査」
個人の流動性(1)転職・異動の経験
まずは、回答者個人における流動性の経験を確認する。流動性というと労働市場の流動性といった社会レベルの現象がまず想起されるが、本稿では、人の入れ替わりや新しい人との出会いといった個人や職場の流動性に着目する。「所属する企業や部門を移ることがない」「職場もいつも同じ顔触れで人が入れ替わらない」「新しい人とも出会わない」といった固定的な状態とは反対の状態を流動性が高いと考える。そこで、転職や異動で所属が変わる経験や、社外活動や社内他部署の人と関わる経験を、個人の流動性の実態として捉え確認する。
図表2に「転職経験」と「現在の所属企業における業務内容が大きく変わる異動経験」の数を、年齢層別に集計したものを示した。全体で見ると転職経験が1度もない(0回)人が46.5%と半数弱いる一方、3回以上の人も20.5%と約2割を占める。年齢層別に見ると40~49歳の転職経験率が高いようである。
<図表2>年齢層別、転職経験/現在の所属企業における業務内容が大きく変わる異動経験
〈単一回答/n=782/%〉
現在の所属企業において職種など業務内容が大きく変わる異動をした経験については、全体としては転職経験と似た分布であり、1度もない(0回)人が44.8%、3回以上の人が13.3%である。年齢層別に見ると50~59歳で大きな異動の経験数が多いようである。
ちなみに、転職経験も現在の所属企業における大きな異動経験もない人は17.3%である。転職経験はあるが大きな異動経験がない人は27.5%、大きな異動の経験はあるが転職経験がない人は26.2%である。
個人の流動性(2)社外活動への参加経験
次に、新しい人との出会いの機会に関連するであろう「社外活動への参加経験」を見てみよう。いわゆる「越境経験」と呼ばれるような活動への参加経験を図表3に示した。
<図表3>経験したことのある社外活動〈複数回答/n=782/%〉
「社外活動に参加したことがない」人は52.0%にのぼり半数以上である。他方で、リストに挙げたうちのいずれか1つの社外活動に参加している人が28.6%、2つ以上の活動をしている人が19.3%存在する。最も多いのは「3.趣味の集まりやサークルへの所属」で22.3%、「5.勉強会・研究会・学会などへの所属・参加」が17.1%、「1.PTA・自治会など、地域活動に、役員や中心メンバーとして参加」が15.7%と続く。
ここで前述の「転職経験」「所属企業における大きな異動経験」と掛け合わせてみよう。集計結果を図表4にまとめた。「社外経験・転職・大きな異動がすべてある」人は14.2%いる。「転職・大きな異動のいずれもなく、社外経験のみある」人は6.6%、反対に「社外経験がなく、転職・大きな異動経験の少なくともいずれかはある」人は38.6%であった。個人の流動性経験は多様である。「社外経験・転職・大きな異動のいずれもない」人は10.6%であった。
<図表4>社外経験の有無と、転職経験および大きな異動経験のクロス集計〈複数回答/n=782〉
個人の流動性(3)問題解決の重要な情報源
仕事上で多様な所属の人と関わる機会についても見てみよう。研究開発職の人的ネットワークが特許取得などのイノベーションに及ぼす影響を検討した青島(2005) *1 を参考に、より一般的な情報源のリストを作り、回答者自身の仕事の問題解決上の重要な情報源としてあてはまるものを尋ねた。結果を図表5に示す。
<図表5>仕事の問題解決上の重要な情報源〈複数回答/n=782/%〉
多くの人が、「1.同じ職場の同僚」(71.2%)や「2.職場の上司」(60.7%)を頼りにしている。職場外では、「3.社内他部署の社員」(30.1%)や「4.社内他部署の管理職社員」(12.4%)のほか、社外の「5.取引先企業の社員」(12.8%)、「10.社外の友人・知人」(10.5%)を頼る場合もある。文献などでは「15.インターネットに掲載されている情報」(18.3%)のほか目立つものはなく、問題解決上の重要な情報源は「人」が中心であることがうかがわれる。
職種別に他の職種より高い選択率だった情報源は、営業職では「5.取引先企業の社員」(19.9%)、企画・事務職では「3.社内他部署の社員」(37.1%)や「4.社内他部署の管理職社員」(19.5%)、専門・技術職では「2.職場の上司」(69.1%)や「5.取引先企業の社員」(17.7%)、「13.学術誌、専門誌などに掲載されている文献」(13.1%)、「15.インターネットに掲載されている情報」(28.0%)、「17.chatGPTなど生成AI」(4.6%)であった。
職場の流動性(1) 人の入れ替わり:所属流動性
ここまで回答者個人の経験における流動性を確認してきた。ここからは視点を変え、回答者が現在所属している組織や職場に着目する。まずは人の出入りする量や頻度の観点から流動性を確認してみよう。
全社の異動方針は、図表6のように分散している。最も多いのは「(3)人の異動が比較的少ない方で、何年も同じ顔触れで仕事をする職場の方が多い」(33.6%)で、「(4)人の異動がほとんどなく、個人にとっても異動はまれな経験である」(16.4%)と合わせると、半数の回答者が所属する企業では異動がほとんどないか少ない。
<図表6>所属企業の全社的な異動方針〈単一回答/n=782/%〉
回答者が所属する職場も、半数は改組の見込みが少ない安定的な職場である。図表7に示したように、「(3)常設の課・チーム・グループであり、比較的長期にわたり安定的に継続する見込みである」が50.0%と最も多い。ただし、日常的に最もやり取りの多い職場を1つ選んで回答してもらったため、実際には複数タイプの職場に所属している可能性もある。
<図表7>所属している職場のタイプ別、職場の所属流動性/関係流動性の平均値〈単一回答/n=782〉
これらの職場では、どのくらい人が入れ替わっているのだろうか。直近の1年間で入れ替わった人の割合(「1年前から今の職場に所属している人のおよその割合」をパーセントで回答してもらい、100%から引いて算出した)を図表7に示した。このような人の量的な入れ替わりを本稿では「所属流動性」と呼ぶこととする。例えば、所属流動性が0%ということは1年前からほぼ人が入れ替わっていないことを表すため、「低所属流動性」の職場と解釈する。
回答は0~100%に分布し、平均値は24.0%だが、0%の割合が31.6%であるなど分布は大きくゆがんでいる。半々の回答者数に分かれる中央値は10.0%であった。図表7で見た時限性-安定性の違いによる職場タイプごとに所属流動性の水準を比較したところ、統計的に確かであるほどの差は見いだされなかった。
職場の流動性(2)新しい人との出会い:関係流動性
次に、「関係流動性」の概念を用いて、職場における人との関わりの面の流動性を確認しよう。関係流動性は、「社会環境のなかで、必要に応じて新しい相手と相互作用をすることができる機会の多さ」と定義される。本調査では、その下位概念の1つとされる「新規出会いの機会の多さ」を取り上げる。自分個人のことではなく、職場の同僚全般について「彼らには、人々と新しく知り合いになる機会がたくさんある」などの項目に推測で回答してもらった。「まったくあてはまらない~非常にあてはまる」の選択肢を1~6点に変換した。関係流動性の水準でも、図表7で見た時限性-安定性の違いによる職場タイプごとの有意な差は確認できなかった。
これらの傾向から、所属流動性、関係流動性ともに、時限性-安定性の違いによる職場タイプとは同義ではないことが分かる。すなわち、プロジェクトチームにも人が入れ替わる場合と入れ替わらない場合があるし、長く設置されている安定的な組織にも新しく人と知り合う機会が多い場合と少ない場合があることになる。
所属流動性×関係流動性:職場の信頼や助け合いの違い
ここからは、所属流動性や関係流動性が職場にどのような影響を及ぼしているのかを検討してみたい。先行研究では、国別の比較などから、流動性が高い社会では意識的に信頼を形成したり助け合ったりする行動が動機づけられることが知られている。流動性と他者との関わりにおけるそのような関係は、企業の職場でも同様に見られるのだろうか。
所属流動性と関係流動性の相関係数は0.03であり無相関である。つまり、所属流動性の高低群と関係流動性の高低群の組み合わせの4群がいずれも存在することになる。この4群の間で、職場の特徴の比較を行った(図表8)。
<図表8>所属・関係流動性の組み合わせ別、協力/モチベーション/愛着〈単一回答/n=782/%〉
まず、職場の人たちは信頼し合っているという信念である「信頼規範」、この職場では困ったときは助け合えるという信念である「互酬規範」、そしてそのような温かさとは反対に、冷ややかでギスギスしているという認知である「冷ややかな職場」についての測定結果の違いを図表8で見てみよう。
信頼規範と互酬規範は、所属流動性の高低によらず、関係流動性の高低で差が生じていた[(3)(4)が(1)(2)より有意に高い]。職場の人が入れ替わる度合いによらず、新しい人と出会う機会が多い場合は職場のなかでお互いへの信頼や助け合いが育まれている。
回答者自身の「組織市民行動」と呼ばれる協力行動についても同様の傾向が見られた[(3)(4)が(1)(2)より有意に高い]。同僚に前向きな提案をしたり提案を引き出したりする「組織市民行動(発言)」、喜んで同僚を手伝うなどの「組織市民行動(援助)」は、いずれも新しい人と出会う機会が多い場合に高い。
職場の顔触れが変わらなければ、相手を知る機会も多く、信頼や援助をしやすいように思われる。もし本当にそのとおりならば、(2)(4)群より(1)(3)群の方が信頼と互酬の規範が高くなるはずであるが、実際はそうではない。むしろ新しく人と知り合う機会が多いかどうかといった関係流動性の高低によって(3)(4)と(1)(2)の間に差が生まれている。これは社会全体についての先行研究で分かっていることと概ね整合的な結果といえる。同じ顔触れで長く過ごすことよりも、新しく人と知り合う機会が多いことが能動的な信頼形成と助け合いの行動を生むようだ。
しかし、「冷ややかな職場」だけは状況が異なる。高所属流動性の職場同士の比較[(2)と(4)]において、関係流動性が高い(4)の方が、統計的に有意に冷ややかさが高い。所属流動性と関係流動性が両方高い場合には、冷ややかな職場となるリスクがありそうだ。信頼もあるし助け合いもするがドライな職場というイメージだろうか。(4)のような高流動性職場で冷ややかさを避けるためのマネジメントのヒントは後段で分析・考察する。
所属流動性×関係流動性:仕事・会社への動機づけ・愛着
個人の仕事や会社に対する態度の違いも確認したい。競争・協力・達成・学習に対する4種類のモチベーションと、組織への愛着の度合いである組織コミットメントの平均値についても図表8に示している。
信頼や助け合いと同様に、所属流動性にかかわらず、関係流動性が高く新しい人と出会う機会が多い職場で働く人は、4種類すべてのモチベーションが高い[(3)(4)が(1)(2)より有意に高い]。また、職場よりもさらに大きな所属単位である会社に対する愛着的なコミットメントも同様である。
人の出入りが多い、少ないにかかわらず、新しく人と知り合う機会が多く開かれた職場であれば、仕事や会社への思いが薄まってしまうことはないことが分かる。
マネジメントのヒント(1) 冷ややかな職場を避けるために
所属流動性と関係流動性が両方とも高い高流動性職場では、信頼や助け合いはあるが同時に冷ややかな、いわばドライな雰囲気の職場となるリスクがあることを先に述べた。このことはどのようにしたら回避できるだろうか。流動性以外の職場や仕事の特徴に関わる変数との関係からヒントを得たい。
図表9は、「冷ややかな職場」を被説明変数として、企業属性、職場特性、職種、職務特性といった仕事の特徴に関連する変数からの影響を重回帰分析の手法を用いて比較した結果をまとめたものである。統計的に有意な影響が見られたものだけ数値を記載している。数値の正負・大小関係は、被説明変数である冷ややかな職場の数値(高いほど冷ややか)の高低への影響の大きさを表している。
<図表9>「冷ややかな職場」を被説明変数とした重回帰分析の結果
所属流動性の高い群(直近1年の人の入れ替わりが10%以上)と低い群(同10%未満)を分けて分析したところ、それぞれ別の要因が見いだされた。
所属流動性の高群では関係流動性が冷ややかな職場の度合いを高めており、2つの流動性がどちらも高い高流動性職場は、冷ややかな職場となるリスクがあることが再確認された。
しかし同時に、冷ややかさを抑制する要因も見いだされた。抑制への影響度が大きい(負の数値)のは、職務特性のうち「目標の相互依存性」である。目標の相互依存性とは、チームとしての役割や目標を理解し、協同で責任を担っているという意識を指す。
他方で、「タスクの相互依存性」は、冷ややかさを高めている。タスクの相互依存性とは、他の人が仕事をしないと自分の仕事が完了しない、あるいはその逆といった業務の相互影響の強さを指す。目標とタスクの相互依存性は、同じ職務において共存し得る特性であるが、重回帰分析ではそれぞれの独自の特徴の影響が分解されて示される。仕事における相互依存性の、目標の重なりとタスクの相互影響の強さは、職場の冷ややかさに対して正反対の影響力をもっていることになる。
このことからは、仕事が密接に関連し合う職場において、それが単純にタスクの相互影響と認識されるのか、「同じ目標に向かってチームで役割を担っている」と認識されるのかで、職場の雰囲気に大きな違いが生じる可能性が示唆される。管理職が、情報や機会の提供によってマネジメントできる余地があると考えるべきだろう。
所属流動性の低い職場でも、タスクの相互依存性は冷ややかさを高め、目標の相互依存性は冷ややかさを抑制する。しかし、それ以上に冷ややかさ抑制への影響が大きいのは「職務自律性」である。職務自律性とは、業務の進め方を自分で決められる裁量の程度を表す。ちなみに所属流動性の高低群の間で、職務自律性の水準や分布には有意な違いがない。社会全体についての先行研究では、流動性が高い社会の方が意識的に関係性を良好にしようと働きかける傾向があることが分かっている。そのことと照らし合わせると、固定メンバーで仕事をし続ける職場では、関係性を良好にしようとする働きかけが薄れやすい可能性がある。そのような職場では、互いのタスクが影響し合う煩わしさを帳消しにするために、業務遂行上の裁量がより必要とされるのかもしれない。
低流動性職場で有効な自律性促進は、高流動性職場では冷ややかさの解消に効果が見られない。流動性が高いことで目的意識が分散しがちだからこそ、自律性よりも目標の相互依存性を強調することが冷ややかさを抑制すると考えられる。
マネジメントのヒント(2) 新しい出会いの機会を生む環境
新しく人と出会う機会の多さとしての関係流動性は、職場を開かれた空間とし、相互信頼や助け合いを高め、個人の多様なモチベーションや会社への愛着を引き出していた。関係流動性の高い職場には、上司や人事管理(HRM)施策によるどのような働きかけがあるのだろうか。
図表10に、関係流動性を被説明変数として、先ほどと同様に所属流動性の高低群別に重回帰分析を行い、仕事・組織要因に加えて上司とHRM施策の影響を検討した結果を示す。
<図表10>「関係流動性」を被説明変数とした重回帰分析の結果
職種については企画・事務職と比較した場合の影響の高低が分析結果として示されている。所属流動性の高群では企画・事務職と比べて生産・製造職の関係流動性が低くなる傾向が、低群では専門・技術職の関係流動性がやや高くなる傾向が見られる。
興味深いのは所属流動性の高低群で、関係流動性に影響する上司のリーダーシップの種類が異なることだ。高群では、多様な経歴や立場のメンバーをうまくマネジメントしているといった内容の「多様性志向リーダーシップ」が関係流動性にプラスに影響している。人の入れ替わりが多い職場では、メンバーの経歴や立場が多様になるため、多様性への理解や働きかけが風通しの良い職場に一役買うのだろう。
所属流動性の低群では、「自律支援型リーダーシップ」が関係流動性にプラスに影響している。自律支援型リーダーシップは、意思決定への参加機会・仕事の意義の理解・能力への信頼・自律性の提供を特徴とする。人の入れ替わりがほとんどない職場では、意思決定への参加や自律性を獲得する上で上司の仲介が重要である可能性が考えられる。また、固定的なメンバーのなかでは仕事の意義や自分の強みの理解がおろそかになりやすく、それらを促す上司の働きかけの影響が大きいのかもしれない。そのような状況下で、上司が促す意思決定の機会への参加や自律的な行動が新しい出会いをもたらし、仕事の意義や自分の強みの理解が人との出会いを良い方向に導くことが想像される。
またHRM施策のなかでは、所属流動性の低群で、「希望する研修や講習を受講できる制度」があると、関係流動性が高いという関係が見られた。新しい知識・スキルを学ぶことで新しい仲間ができたり、人と関わるきっかけが増えたりすることが考えられる。
高流動性職場では多様さの包摂、低流動性職場では自律性がカギ
以上、個人の流動性経験の種類が多様であることを概観した上で、職場で「所属流動性」と「関係流動性」という2種類の流動性を測定し得ることを確認した。所属流動性の高低によらず関係流動性の高い職場と低い職場がある。しかし、おしなべて関係流動性の高さが信頼・助け合いの規範や多様なモチベーション、組織への愛着に関係していることが示された。高流動性職場には冷ややかでドライな職場になるリスクもあるようだが、それを避けながら関係流動性を高める要因を検討した。所属流動性が高く人の入れ替わりが多い職場では、共通の目標や役割を担っているという目標の相互依存性の意識を高めることと、多様な経歴や立場を思いやり包摂することが、流動性マネジメントのヒントとして見いだされた。さまざまな過去があり、新しく人と出会っていく機会も多いメンバーが集まっているからこそ、今ここでチームとして一緒に仕事をする意味や目標を明確にする対話的なマネジメントが有効と考えられる。
所属流動性が低く人の入れ替わりが少ない職場では、自律性を高めるマネジメントが求められている。その内容としては、仕事の進め方の上での裁量を高め、ルールを減らし、意思決定への参加機会を作ることなどが考えられる。また、仕事の意義を見いだし、仕事で自分の強みを生かしていけるよう、上司が情報や前向きなフィードバックを与えていくことが有効といえる。
社外の労働市場が活性化し人の出入りが増え、社内の組織も戦略に応じて柔軟に組み替えられたり手挙げの異動が増えたりして、これから人の入れ替わりが増えていく職場もあるかもしれない。しかし、むやみに恐れる必要はない。開かれた職場が得るものも多くあることを理解し、より良いマネジメントを模索することは可能である。
*1 青島矢一(2005)「R&D 人材の移動と技術成果」『日本労働研究雑誌』 541, 34-48.
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.72 特集1「組織の流動性とマネジメント」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
執筆者
技術開発統括部
研究本部
組織行動研究所
客員研究員
藤澤 理恵
リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所主任研究員を経て、東京都立大学経済経営学部助教、博士(経営学)。
“ビジネス”と”ソーシャル”のあいだの「越境」、仕事を自らリ・デザインする「ジョブ・クラフティング」、「HRM(人的資源管理)の柔軟性」などをテーマに研究を行っている。
経営行動科学学会第18回JAAS AWARD奨励研究賞(2021年)・第25回大会優秀賞(2022年)、人材育成学会2020年度奨励賞。
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