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調査レポート新卒入社1年目オンボーディング実態調査

リモート前後の新入社員に聞く、入社1年目オンボーディング実態調査

リモート前後の新入社員に聞く、入社1年目オンボーディング実態調査
執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
藤村 直子

プロフィール

2020年4月入社の新卒新入社員は、2020年4〜5月に発出された緊急事態宣言によって、その多くが入社直後からのテレワークを余儀なくされた。OJTや社内ネットワーク構築上の課題、孤独感についての懸念がある一方で、思っているよりうまく適応できているという声も聞かれる。入社から1年経った今、その適応の実態はどうだろうか。2020 年入社者と前年入社者の相違点について考察し、今後のオンボーディングの留意点を考える一助となるよう、2021年6月に調査を実施した。

調査概要とテレワークの実施状況

調査は、2020年4月〜2021年3月に1度でもテレワーク(リモートワーク、在宅勤務)を経験したことがある2020年4月入社者(以下、20入社)と2019年4月入社者(以下、19入社)を対象に実施した。最終的な分析対象人数は20入社196名、19入社197名の計393名である(図表1)。


<図表1>調査概要「新卒入社1年目オンボーディング実態調査」

<図表1>調査概要「新卒入社1年目オンボーディング実態調査」

本調査の回答者の1年目研修期間、1年目配属後、現在の3時点でのテレワーク実施状況を確認しておく(図表2)。


<図表2>入社1年目と現在のテレワークの状況

<図表2>入社1年目と現在のテレワークの状況

20入社の約8割は1年目研修期間にテレワークを経験していた。約4割だった「ほぼ毎日」という割合は配属後には減少するが、3時点とも全体の約8割がいずれかの頻度でテレワークを経験している。一方、19入社の1年目(2019年時点)は、研修期間には8割近くが、配属後も約6割がテレワークをまったく経験していなかった。現在は、19入社の方がテレワーク頻度がやや高いという状況で、3時点ともに年次間に統計的に有意な差があった。

期待役割レベルの認識に差はなし

それぞれの1年目のテレワーク状況は異なっていたが、オンボーディングの実態に違いはあったのか。ゴールが違っていれば、そこに至る打ち手も異なることから、まず入社1年目の「期待された到達像」を見ておく。

図表3は期待役割レベルを本人がどう認識していたかを尋ねたものである。


<図表3>期待役割レベルの認識

<図表3>期待役割レベルの認識

全体で見ると、「2.与えられた仕事について、上司や先輩の指示のもとにきちんとこなせるようになること」(35.6%)、「1.社会人としての基本的なマナーや規律を身につけ、会社や職場に慣れること」(29.3%)の順に多く、「3.与えられた仕事について責任をもち、自ら周囲の協力を引き出しながらやりきれるようになること」(18.6%)がそれに続く。認識しているレベルにばらつきはあるが、年次間に統計的な有意差はなかった。

社内コミュニケーションや学びの充足度に違い

仕事をうまく進めたり組織や職場になじんだりする上で、役に立ったもの、不足を感じたものに違いはあるのか。図表4に選択結果と年次間に有意差があった項目を薄緑の網掛けで示した。


<図表4>入社1 図表4 年目に役に立ったもの・もっとあったらよかったもの

<図表4>入社1 図表4 年目に役に立ったもの・もっとあったらよかったもの

業務支援・相談については年次間で有意差はなく、1.上司、2.育成担当者、3.職場の先輩たちからの面談や支援については5割から6割近くが役に立ったとの回答で、不足は約2割と全項目のなかでも相対的に低い選択状況だった。「4.人事担当者からの支援」については、約3割が不足を感じていた。

社内コミュニケーションでは、「5.同期との交流」「7.職場メンバーとの業務外の交流」は、役に立ったものの選択率は19入社で、不足の選択率は20入社で高く、テレワークの影響が示唆される結果となった。「6.社内の他の職場の人との交流」は両年次とも相対的に不足が多く、約3割が選択していた。

学び・インプットでは、役に立ったものとして、20入社の方が「12.社内の意思決定ルートについて知ること」が多いのも、テレワーク下での仕事の進め方の影響が考えられる。また、すべての項目で19入社の方が不足の割合が高いのが特徴的だ。3年目になって、1年目のときにもっとこうしておけたらよかった、こうだったらよかったと思いあたることも増えてくるのかもしれない。

周囲からのサポートや会社の制度・仕組みに関する課題について、20入社の自由記述回答からも見ていく(図表5)。


<図表5>周囲からのサポートや会社の制度・仕組みに関する課題

<図表5>周囲からのサポートや会社の制度・仕組みに関する課題

業務支援・相談に関しては、テレワーク下での相談のしづらさが散見された。どの程度の自律性を期待するのか、案配の難しさも感じられる。仕事自体がないこともあったようだ。

社内コミュニケーションに関しては、同期や他部署の人との交流の少なさを挙げる人がいる一方で、意味の感じられないオンラインでの交流イベントについても語られていた。

学び・インプットについては、目的が明確でないために無駄に思えてしまうようなインプット機会や、教育制度の未整備などについての記載があった。他、期待が分からない評価制度、競争させられること、周囲からのステレオタイプ的理解などに関するコメントがあった。以前より課題だったことが、テレワークでより浮き彫りになった部分もありそうだ。

上司による支援の違い 適応している20入社

1年目の直属上司からの関わりについて、もう少し詳細に見ていこう。20入社が有意に高い3項目(項目1、3、5)と、有意差のなかった項目の抜粋をあわせて図表6に示す。テレワークやコロナ禍といった不安を感じる状況において、上司が受容的な態度を意識して、仕事の意義や価値を伝え、構築しづらい社内ネットワークの支援をしていた様子がうかがえる。


<図表6>入社1年目の上司の特徴

<図表6>入社1年目の上司の特徴

ここまで見てきたように、20入社は1年目のテレワーク頻度が高く、社内コミュニケーションの不足など置かれた環境に違いがあったが、上司からの配慮も感じられていたようだ。結果としての現在の適応状況についてはどうだろうか。抜粋した結果を図表7に示す。仕事のやりがい(1)、組織コミットメント(5、6)、キャリアの見通し(9)、社外ネットワーク構築(10)、継続勤務意向(12)、仕事の中心性(13、14)は、20入社の方が有意に高かった。


<図表7>現在の適応状況

<図表7>現在の適応状況

それぞれ入社2年目、3年目となる現在の適応感であるため、1年目の環境の違いだけでなく、19入社は2年目の1年間をどう過ごしてきたのかということも関係するだろう。オンボーディング期間をどう捉えるかは各社各様だろうが、2年目へのサポートの重要性も見過ごせない。そこで、次からは2年目の変化について見ていきたい。

入社2年目支援 必要性の高まりと実際の支援状況

2年目になって、1年目と比べてどのような変化があったかを尋ねたものが図表8である。年次間で有意な差がなかったため両年次合算した結果を、増加の選択率が高い順に並べた。


<図表8>入社2年目の変化

<図表8>入社2年目の変化

増加が半数を上回るものは、「1.自分で判断し、主体的に進める度合い」(増加59.8%)、「2.仕事量・労働時間」(同51.9%)、「3.周囲からの期待の大きさ」(同50.1%)である。

「4.新しいことを勉強する時間や機会」は増加38.9%、変わらない37.2%、減少23.9%とばらついていた。

「5.自分から周囲に対して支援を求める必要性」は35.9%が増加しているが、実際の支援については、6.職場、7.上司いずれも増加は24.1%、21.6%にとどまり、変わらないが54.5%だった。

よく聞かれる、入社2年目になったら周囲からの支援が減ってしまうということからすると、一見すると実際の支援はそれほど減っていないようにも見える。現在の適応状況との関係も踏まえながら、詳しく見ていきたい。

図表9は「5.自分から周囲に対して支援を求める必要性」が増加した(増えた・やや増えた)人のうち、「6.職場の人からの業務上の支援」が増えた人と、そうでない人とで、適応状況に違いはあるのかを確認した結果である。実際の支援が増えた群に比べて、変わらない・減った(減った・やや減った)群は、職務適応、職場適応ともに低いことが分かる。


<図表9>入社2年目の変化 支援要請必要度・実際の職場支援状況と現在適応の関係

<図表9>入社2年目の変化 支援要請必要度・実際の職場支援状況と現在適応の関係

自分で判断し主体的に進める度合いが高まるにつれ、自分から支援を求める必要性も増える。その際、実際の支援が増えないと適応が難しくなる可能性が示唆された。主体的に仕事を進めるタイミングで、支援を絶やさないようにしたい。

20入社は上司伴走支援と心理的安全性が適応に効く

1年目の上司の支援行動と2年目の職場からの支援状況の変化について紹介してきたが、それらを合わせて職務適応、職場適応への影響を見るとどうなるか。本人のプロアクティブ行動や職場の心理的安全性、テレワーク頻度も加えて、職務適応・職場への影響を、重回帰分析を用いて確認した結果の抜粋が図表10である。数値の横に印の付いている変数をご覧いただきたい。


<図表10>職務適応・職場適応に影響を及ぼす変数(重回帰分析結果の抜粋)

<図表10>職務適応・職場適応に影響を及ぼす変数

両年次、職務・職場適応いずれにも共通していたのは、本人の主体的、先取り的な行動を表すプロアクティブ行動である。先行研究にも符合する。

20入社の職務・職場適応に共通しているのは、プロアクティブ行動に加え、上司伴走支援と職場の心理的安全性である。職務適応ではさらに、上司自律支援と2年目の職場支援、自分からの支援要請の必要性(マイナス)の影響がある。また、1年目研修期間テレワーク頻度(マイナス)、現在テレワーク頻度の影響も確認された。

対して、19入社では、職務・職場適応ともに、プロアクティブ行動や上司伴走支援に加え、上司自律支援が影響していた。1年目の上司自律支援が、自律性をより求められるようになる3年目の適応に効いてくる可能性が示唆された。

なお、20入社のテレワーク頻度別の職務適応について確認しておくと、研修期間は「ほぼ毎日」に比べて「週に複数回」「週に1回程度」で有意に職務適応が高く、現在は「まったくなし」と比べてそれ以外の頻度で職務適応が有意に高かった。緊急事態宣言下であった昨年特有の事情なのか、研修期間の長さや内容によって異なるものなのか、継続した検討が必要だろう。

6割が違和感や疑問を率直に出し、周囲に影響

新人の適応だけでなく、受け入れ側への影響についても考えてみたい。入社1年目が終わった時点で「仕事・職場についての違和感や疑問を率直に出し、周囲に影響を与える」ことが「できていた」(十分できていた〜ややできていた)と回答したのは60.3%だった(図表11)。


<図表11>入社1年目に周囲に影響を与える程度

<図表11>入社1年目に周囲に 影響を与える程度

他の変数との関係を見たものが図表12である。本人のプロアクティブ行動に加え、上司支援や職場の心理的安全性において、できていた・できていなかった群の間で統計的に有意な差が確認された。


<図表12>入社1 年目に周囲に影響を与える程度と他変数との関係(単一回答/ n=393)

<図表12>入社1 年目に周囲に影響を与える程度と他変数との関係

自分の発言がきっかけになって、職場での仕事の進め方や社内のルールが変わった経験について聞いた自由記述でも「仕事の進め方について、上司が提案をする場を設けてくれた」「風通しはいい会社なので、発言すれば何かしら動いてくれる」といった周囲の環境についてのコメントがあった。内容としては、「書類のペーパーレス化」「情報共有できる定例会を提案」「新しい支店に行った際に、顧客目線でインテリアや利用しやすい環境を提案して採用された」「業界知識がない新入社員向けに勉強会の実施を要望して実現した」などが挙げられていた。

結びにかえて 多面的な適応の様相

入社直後の研修期間にその多くがテレワークを経験した20入社は、社内コミュニケーションの不足などを感じながらも、上司からの配慮や伴走支援、職場の安心・安全なコミュニケーション風土によって、職務適応・職場適応が促進されていた。ただし、2年目が始まったばかりの今ではまだ気づかないこともあるだろうし、この後の2年目の経験によってその後の適応状況は変わるだろう。2年目になってからの変化として、支援要請の必要度に応じて実際の支援が増えないと、適応に苦労する可能性が示唆されたことからも、現在2年目となる20入社に対しても継続的な支援が必要だろう。

加えて、適応の中身にも留意したい。図表7に適応の複数項目を提示したが、いくつか組み合わせたものを図表13に示した。


<図表13>各適応項目の組み合わせ

<図表13>各適応項目の組み合わせ

(1)職務適応と職場適応では、両方高いのが48.1%と最多だが、ギャップも存在している。20.1%は職場に居場所があっても力を十分に発揮できていないと感じている。職務・職場適応マトリックスのどの象限にいるかによって、支援の仕方も異なるだろう。

(2)では「定年まで現在の会社で働きたい」が低く「良い機会があれば転職したい」が高い群が45.5%と最多だが、いずれも高い群が29.0%も存在する。できれば一社に長く勤めたい、良い機会があれば転職もいとわないという気持ちは併存し得るので、離職意思の確認の仕方に注意が必要だ。

(3)では、「仕事以外の生活を充実させたい」という一方で、「打ち込める仕事であれば、仕事中心の生活になることもいとわない」という人が42.7%いる。若者はプライベート重視だからとステレオタイプ的に語ることは避けたい。新入社員の適応は、その内容的にも、1年目、2年目といった時間軸においても、多面的に見ていく必要があるだろう。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.63 特集1「変わるオンボーディング」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

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