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THEME キャリア自律

調査レポート会社員の自律的な学びに関する実態調査

社会人が学びを継続していくためにカギとなることは何か?

社会人が学びを継続していくためにカギとなることは何か?
執筆者情報
組織行動研究所
研究員
佐藤 裕子

プロフィール

変革の時代を背景に、企業では従業員の自律的な学びを促す動きが加速しています。従業員も、キャリア自律の意識を高め、自ら新しい学びを求める人が増えていますが、始めたいと思っても何を学べばいいか定まらない、どのように継続できるのかイメージできないなどの理由から、学び始めるにいたらない、始めても長続きしない、という人も多くいます。自律的な学びをうまく継続している人は、何をどのように学んでいるのでしょうか。社会人が学びを継続していくためにカギとなることはどのようなことでしょうか。本稿では、1年以上継続的に自ら興味をもった学びに取り組んでいる会社員489名に対する調査結果から、(1)興味をもち取り組んでいる学びの内容、(2)学び始めた理由・きっかけと取り組みから得ているもの、(3)自律的な学びを継続するための方法、について報告します。

「人生100年時代に働きながら学ぶこと」実態調査, 2019, リクルートキャリア

はじめに

「人生100年時代」や「デジタル変革時代」のなかで、大人が生涯学び続けることの重要性が高まっています*1。会社員は、生活のなかで多くの時間を費やす職場において、その仕事経験や教育施策を通して多くの学びを得ています*2。しかし、日本では、勤務先以外で自分の成長のための学びの活動を行う人の割合は他国と比べても低い傾向です*3。先の読めない環境変化に対応し、新しい価値を生み出したり、会社主導でなく自らキャリアや人生の可能性を切り拓いたりするためには、所属組織や行ってきた仕事の枠組を超え、個人がそれぞれに新しい学びを広げていくことが、これまで以上に必要になってきます。

特に大手企業においては、これまで比較的安定した環境と長期雇用を背景に、従業員のキャリアの方向づけやそのための教育の多くを会社が担う傾向が見られました。しかし昨今の環境変化により、「それぞれが置かれた環境から刺激や影響をうけながら、自ら何を学ぶかを選択し、セルフコントロールして学びを継続し、その結果を自分のキャリアや人生に生かす」というような、自律的な学びを従業員に促す動きが加速しています。

そこで今回は、従業員1000名以上の会社勤務の正社員の学びの実態を明らかにすることを試みました。学びの対象としては、仕事に直結するものに限らず、自ら興味をもって継続している「学習・趣味・活動」に広げて尋ねています。

*1 人生100年時代のキャリア形成と雇用管理の課題に関する調査, 2020, 独立行政法人労働政策研究・研修機構
*2 「創造する」大人の学びモデルvol.2, 2019, リクルートワークス研究所
*3 APAC就業実態・成長意識調査, 2019, パーソル総合研究所


調査概要「会社員の自律的な学びに関する実態調査」

調査概要「会社員の自律的な学びに関する実態調査」

(1)興味をもち取り組んでいる学びの内容

『語学/仕事系』が約4割、『生活/文化系』が約6割
まず、「1年以上にわたり継続的に、自ら興味をもって取り組み、上達したり詳しくなったりしたと感じていること(学習、趣味、活動など)」があると答えた人に対して、そのうち最も熱心に取り組んでいることを1つ選んで、具体的な内容とそれを継続している理由を記入してもらいました。

内容から、『語学/仕事系』(語学、ビジネス知識・スキル、IT・情報処理)、『生活/文化系』(金融・投資、生活、文化・芸術、スポーツ・健康)に分類・集計したところ、『語学/仕事系』が約4割、『生活/文化系』が約6割、小分類では多い順に「スポーツ・健康」「語学」「ビジネス知識・スキル」となりました(図表1)。


<図表1>学びの領域  (n=489/自由記述をもとに分類)

<図表1>学びの領域

属性別に特徴が見られたのは、年代、職種です(図表2)。年代では、『語学/仕事系』は20代から30代で増加し、いったん40代で減少しますが、50代で再び増加しており、『生活/文化系』はその逆でした。かつては引退間近と考えられた50代でも、『語学/仕事系』の学びが必ずしも低下しないことを示唆しています。職種では、開発職で『語学/仕事系』が多く(特に語学、IT・情報処理)、営業・サービス職で『生活/文化系』(特にスポーツ・健康)が多い傾向が見られました。携わる仕事により、学びの必要性や興味の対象が異なる可能性があります。


<図表2>学びの領域 (属性別/自由記述をもとに分類)

<図表2>学びの領域

具体的な学びの内容についての自由記述を一例ですが抜粋したのが図表3です。489件のなかには、英語学習やランニング、ジムなど比較的多く見られたものもありましたが、それ以外にも、それぞれの仕事や生活の環境に応じて多岐にわたるテーマを選択し、こだわりや面白さを感じながら継続していることが見てとれます。


<図表3> 1年以上継続している学びの内容/続けている理由 (自由記述・抜粋)

<図表3> 1年以上継続している学びの内容と続けている理由

1年以上学んでいる人のうち、約6割が週に2〜3日以上
1年以上にわたり継続的にこうした学びの取り組みをしていると答えた人は、どのくらいの頻度と期間、活動を行っているでしょうか。

取り組みの頻度については(図表4)、週に4日以上が27.0%、週に2〜3日が32.7%で、約6割が週に2〜3日以上でした。ただし、学びの領域ごとに違いが見られ、特に頻度が多いのは「語学」「IT・情報処理」、比較的少ないのは「生活」「文化・芸術」です。


<図表4>学びの頻度 (単一回答)

<図表4>学びの頻度

取り組み期間では(図表5)、1〜3年が41.9%と最も多く、ついで5年以上が38.7%でした。5年以上が半数以上と多いのは、「文化・芸術」「スポーツ・健康」、逆に1〜3年が半数以上と多いのは「ビジネス知識・スキル」「IT・情報処理」「金融・投資」となっています。これらから、適切な学びのペースや期間は、取り組む対象の特性や取り組みの目的により異なると考えられます。学びの領域を選ぶのと同様、ペースや期間についても、選択的にコントロールしていく必要があります。


<図表5>学びの継続期間 (単一回答)

<図表5>学びの継続期間

(2)学び始めた理由・きっかけと取り組みから得ているもの

実用的な動機と興味的な動機が混在、浅い興味から始まることも
では、当初、興味をもち学び始めた理由やきっかけは、どのようなものだったのでしょうか(図表6)。語学/仕事系では、「今の仕事に役立てたいと思った」が5割以上、「将来の仕事に役立てたいと思った」が4割以上と実用的な動機から始めた人が多いですが「面白そうだと思った」という興味的な動機も4割弱見られます。

生活/文化系では、「面白そうだと思った」が5割以上と多く見られますが、「たまたま触れる機会があった」「人から誘われた」という浅い興味から始めた人も2割程度いました。


<図表6>学び始めた理由・きっかけ (複数回答)

<図表6>学び始めた理由・きっかけ

なお、該当の学びへのエンゲージメント(学習課題に没頭して取り組んでいる心理状態)の高さと相関が見られたのは「面白そうだと思った」「そのことを人の役に立てたいと思った」、また「たまたま触れる機会があった」「将来の仕事に役立てたいと思った」も有意傾向が見られ、必ずしも目的的な動機でなくても、充実した学びにつながる可能性が示唆されます。

「そのことに関係する情報にはいつも注意を払っている」「それについて知らない人に教えることができる」「そのことに取り組むことを楽しんでいる」など5項目(6段階)の平均で算出


強く感じているのは「取り組み自体の楽しさ」「上達や成長感」
では、継続的な取り組みをしている人は、どのような感情を得ているのでしょうか(図表7)。


<図表7>取り組みから得ているもの (単一回答: 6「とてもあてはまる」〜 1「全くあてはまらない」)

<図表7>取り組みから得ているもの

取り組みを通して得ているものについて尋ねた結果からは、語学/仕事系、生活/文化系ともに「そのことに取り組むのが楽しい」「自分が上達したり成長したりするのを感じる」と、楽しさと成長を感じていることが分かります。語学/仕事系では、「仕事や生活に役立つ」「収入アップや仕事の獲得につながる」という仕事上の実用性や「周囲から一目置かれる」という優越感、「新しい知識や能力が獲得できた」「新しいものの見方ができるようになった」という能力の獲得実感において高い傾向があります。生活/文化系では「毎日が楽しくなった」という情緒的な満足感や「その話題になるとたくさん話せる」という関係性の充実感が高くなっています。当初の動機やきっかけから、興味を広げたり深めたりしながら、複合的なプラスの変化を獲得し、学びが継続していくと考えられます。

(3)自律的な学びを継続するための方法

「なじみのある領域を選ぶ」「興味のある領域に特化し深める」
今回、1年以上にわたり継続的にこうした学びの取り組みをしていると答えた489名の人も、常にうまく学びを継続できているとは限りません。「1年以上継続することなく一過性に終わったことがある」と答えた人は全体の62.6%でした(306名)。その理由の自由記述からは、「忙しくて時間がとれない(25.2%)」「成果が感じられない、難しすぎた(14.1%)」「コロナで通えない、生活が変わった(10.5%)」「始めてみたが興味をもてない、目標をもてない(5.9%)」などが見られました。生活状況が変わったり、期待するものと違ったりした場合は、柔軟に次の機会や対象へと行動を変化させていくことも必要です。ただ、自律的な学びを支える効果的な学習方法があるのなら、それを知り意識的に行動することは有効だと思われます。強い強制力がない状況で、自律的な学びが継続するためには、何が必要でしょうか。

一般に自律的な学習を促すと考えられる方法のうち、目標や見通しをもつ(プランニング)、行動や認知を自己管理する(コントロール)、振り返りと調整を行う(モニタリング)、仲間や指導者との関係性を構築する(リレーションシップ)について、どのくらい行っていたかを尋ねた結果が図表8です。学びが継続したときと、継続しなかったときについて、それぞれ尋ねています。


<図表8>自律的な学びを継続するための方法
(単一回答: 6「とてもあてはまる」〜 1「全くあてはまらない」)

<図表8>自律的な学びを継続するための方法

語学/仕事系、生活/文化系のいずれも、継続しなかったときに比べて、すべての項目が高い結果となっており、これらが継続のカギであることを再確認できます。特に、継続したときと継続しなかったときで、差が大きかったのは「すでにある程度の興味や知識がある領域である」「自分がより興味をもてる領域に特化してさらに深く取り組む」「やる気が薄れたときも、自分で気持ちをコントロールする」です。何を始めたらいいか定まらない、とはよく聞かれる悩みですが、すでに学んだことや経験したことは、大人の学びにとって豊かな資源になりますから、迷ったら、すでにある程度の興味や知識がある領域から深めたいものを絞り込んで取り組むのは、1つの有効な方法だと思われます。

語学/仕事系が生活/文化系に比べて特に高かったのは「自分の状況・状態が分かるようなフィードバックを得られる」「発表したり使ったりなどアウトプットの機会がある」、生活/文化系が語学/仕事系に比べて特に高かったのは「自分にあったやり方・ペースで取り組める」「情報交換したり一緒に取り組んだりする仲間がいる」でした。「プランニング」「コントロール」「モニタリング」「リレーションシップ」の各項目は循環的、複合的に行われるもので、いずれも自律的な学びを支えるものだといえますが、学びの領域や置かれた状況に応じて、取り組みやすく必要性の高いものから条件を整えることで、好サイクルを生み出せる可能性があると思われます。

自分なりの継続のコツを模索する
最後に、「自ら興味をもったことを、継続的に学んだり取り組んだりするために、あなたが大事だと考えるコツや工夫(持論)」についての自由記述を紹介します(図表9)。ここでも、前述の「プランニング」「コントロール」「モニタリング」「リレーションシップ」に該当する具体的な工夫に関する記述が見られました。


<図表9>自律的な学びを継続するための持論(自由記述・抜粋)
※語学/仕事系、生活/文化系それぞれで、高いエンゲージメント状態にある人の記述から任意に抜粋

<図表9>自律的な学びを継続するための持論

これらの持論はそれぞれの人の経験から形成された仮説にすぎませんが、自分に合った学び方を考えるヒントになれば幸いです。うまく学べた経験やそうでない経験を生かし、自分なりのよく考えられた持論をもつことは、新しい学びを促進すると考えており、引き続き検証していく予定です。

今回の調査では、従業員の自律的な学びを促すために企業側ができることや、従業員が自律的に学ぶことで組織がどのように変わっていくかについては検証していません。しかし、今回の結果や過去の調査から考察するに、新しい興味をもつきっかけとなる社内外の人との交流の場を増やす、アウトプットやフィードバックの機会を提供する、お互いの学びや成長に関心をもつ職場づくりを意識する、学びに使う時間の自由や金銭を支援する、などは、従業員の自律的な学びを活性化させ、組織にもよい影響をもたらすと考えられます。今後、さらに検討していきたいと思います。


 職場での個人の学びに関する実態調査: 20代〜50代の会社員457名に聞く、仕事に関する学びの実態, 2019, リクルートマネジメントソリューションズ, 「学びにつながる職場風土」「従業員の学びを支援する制度・仕組み」

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