「チームにおける多様性経験」に関する実態調査 多様なチームは成果をあげているのか

執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
藤村 直子

日本企業の社員は、どれくらいメンバーが多様なチームに属しているのか。メンバーが多様であることについて、どのように認識しているのか。
20代から50代の会社員351名の声をもとに、チームにおける多様性経験の実態について明らかにしたい。


調査概要

日本企業のチームにおける多様性経験の実態を明らかにするにあたり、本調査では、大きく2つの視点から捉えることにした。1つ目は、現在所属しているチームのうち、メンバーの多様性が最も高いと思うものを想起して、回答を得るものである。過去にさらに多様性の高いチームに所属した経験をもつ人もいるかもしれないが、時間と共に変化するチームの状態を想起することの難しさを考慮して、現在の状態について回答してもらうこととした。そのため、2つ目として、これまでのチーム経験を広く振り返り、回答してもらうことにした。調査概要は図表1のとおりである。

想起したのはどのようなチームか

まず、「現在あなたが所属している職場・チーム・プロジェクト(以下、チーム)のうち、メンバーの多様性が最も高いと思うチームを1つ思い浮かべてください。多様性の種類(年齢、国籍、雇用形態、勤務先企業、経歴、価値観など)は問いません。」という質問への回答から紹介していく。

想起されたチームの属性は、図表2のとおりである。人数としては5-10名、11-20名が多く、期間としては3年以上が過半数を占めた。期間の長さからも分かるように、約6割が定常的な組織である。職務系統別に見ると、営業は定常的な組織が多く、技術は期間限定、複数の部署・職種の人が集まるものが多かった。

多様性の種類と程度

回答者が想起した多様性が最も高いチームとは、どのような多様性がどの程度ある状態なのだろうか。10の多様性の種類ごとに、あてはまる程度を尋ねた結果が図表3である。全体で見ると、「1年齢層」「8.知識・スキルレベル」が相対的に多く選択された(「あてはまる」「ややあてはまる」の合計が80.6%、72.6%)。

職務系統別には、「4.勤務地」は営業とサービス、「5.勤務形態」「6.雇用形態」はサービス、「7.専門性」は事務と技術において、多様である程度が大きいようだ(図表4)。

詳細は割愛するが、期間限定の場合に、「3.国籍」「4.勤務地」「7.専門性」「8.知識・スキルレベル」「9.職務経歴」「10.価値観」がそうでない場合に比べると多様であることが確認された。また、人数が多いほど、「1.年齢層」「5.勤務形態」「6.雇用形態」「7.専門性」は多様だった。チームの発足からの期間に比例して傾向が変わることはなかったが、半年以内と3年以上を比較すると、3年以上の方が「5.勤務形態」「6.雇用形態」が多様で、「9.職務経歴」は多様でなかった。

半数近くが「業務、人間関係、共に良好」

それでは、多様性が高いチームは、総じて、うまく行っているのだろうか。業務推進状況と人間関係、それぞれ良好か問題があるかの組み合わせから、チームの成果として4パターンを選択肢に用意して回答してもらった(図表5-(1))。「業務、人間関係、共に良好(以下、共に良好)」が最も選ばれており、45.0%と半数弱であった。「業務問題、人間関係良好」21.7%、「業務良好、人間関係問題」19.9%、「業務、人間関係、共に問題(以下、共に問題)」13.4%と続く。

職務系統別には、いずれも「共に良好」が最も選ばれているが、サービスは相対的に少なく、「業務良好、人間関係問題」が他より多かった。一方、営業は、「業務問題、人間関係良好」が他より多く選ばれていた。チームの属性による傾向の違いとしては、位置づけや人数によるものは見られなかったが、期間において、3年以上に「共に問題」が、半年以内に「業務問題、人間関係良好」が多く見られた。

回答理由や具体的なエピソードについて、図表5-(2)に抜粋して掲載した。「共に良好」「共に問題」の回答を見ると、人間関係の良否が、業務推進にそれぞれプラス、マイナスの影響を及ぼしている様子がうかがえる。「共に良好」では、属性や立場の違いにかかわらず安心して発言できるといった、いわゆる心理的安全性やサポートし合える職場であるというような記述が散見された。「業務良好、人間関係問題」の場合には、業務は滞りなく進んでいるが、少数派の意見が顧みられないといった内容など、チーム内の人間関係、コミュニケーションに不満や課題意識を感じているようだ。一方、「業務問題、人間関係良好」の場合には、プロセスは良好だが外的要因のせいで結果が伴わない、業務に直結しない人間関係の良さなどの記述が見られた。

多様性の種類によって成果やプロセスとの関係は異なる

多様性の種類によって、成果やプロセスとの関係は異なるのだろうか。4つのチームの成果別に、多様性の種類それぞれがあてはまる割合を確認したのが図表6-(1)である。「共に良好」「共に問題」を比較すると、「2.性別」と「7.専門性」は、「共に良好」な方が多様である割合が多い。つまり、多様であることとチームの成果との間にポジティブな関係があるようだ。一方、「4.勤務地」「8.知識・スキルレベル」は、「共に問題」の方が多様である割合が多く、多様であることがチームの成果にネガティブな影響をもたらす可能性が示唆される。なお、この4項目のみ、「共に良好」「共に問題」間に統計的に有意な差が確認されている。

続いて、チームプロセスとの関係を見ていくにあたり、チームプロセスの設問および回答結果について、図表7を参照いただきたい。

あてはまる(「とてもあてはまる」〜「ややあてはまる」)という回答が8割を上回ったのは、「1.助け合いながら仕事を進めている」「2.メンバーは、チームで成果をあげることに貢献しようとしている」である。一方、「9.お互いの成長に関心をもっている」「10.会社が期待する以上の成果を上げている」「13.お互いのバックグラウンドや価値観について知っている」「14.お互いに期待を伝え合っている」があてはまるという回答は6割強である。職務経歴や価値観の多様さの状況が確認されているが、相互理解を深めようとする状況ばかりではないようだ。

また、「18.チームのメンバーには、心身に疲れが見られる」にあてはまるとの回答は7割弱だった。「19.チームの雰囲気が殺伐としている」は半数以下だったので、そこまで悪化した状態ではないものの、やや疲弊した状況であることがうかがえる。

そして、多様性の種類と、これらのプロセス項目を要約したものとの関係を表したのが図表6-(2)である。20項目を因子分析の結果をもとに協働、共創、改善、疲弊の要素に分け、それぞれの平均得点を算出した。これまで本誌でも扱ってきた心理的安全性(12項目の平均得点)を合わせた5つの要素得点と、多様性10項目との相関係数を算出し、統計的に有意であったもののみを掲載している。

チームプロセスに影響を及ぼす要因はさまざまであるため、解釈は容易ではないが、多様性の種類によって、チームプロセスのどの部分に関係するかが異なることが分かる。例えば、「5.勤務形態」「10.価値観」の多様さは協働、共創、改善とプラスの相関があるが、疲弊ともプラスの相関がある。多様であることが、ポジティブ、ネガティブ、両方の側面をもたらすことがうかがえる。一方、「7.専門性」は協働、共創、改善、および心理的安全性とプラスの相関があるが、疲弊との関係は確認されていないため、総じてポジティブな影響がある多様さといえそうだ。「2.性別」の多様さは疲弊とはマイナスの相関、心理的安全性とはプラスの相関があるが、協働、共創、改善との関係は確認されなかった。プロセスに直接ポジティブな影響があるわけではないが、職場風土に影響している可能性が示唆される。

知識・スキルレベル、価値観の多様さは障害に

ここからは、現在所属している特定のチームについてではなく、これまでのチーム経験からの回答について紹介していく。まず、チームをうまく進めていく上で、多様性のどの特徴が障害となると思うかを、複数回答で選んでもらった結果が図表8-(1)である。「8.知識・スキルレベル」が最多で33.0%、「10.価値観」28.2%、「1.年齢層」21.7%と続く。

また、職務系統別、年代別に、特徴的だった部分を抜粋した(図表8-(2)(3))。職務系統別には、営業は「1.年齢層」「10.価値観」を、技術は「4.勤務地」「7.専門性」「8.知識・スキルレベル」を障害として感じる傾向があるようだ。年代別には、20代は「1.年齢層」「4.勤務地」の選択割合が高いのが興味深い。「5.勤務形態」は20代の選択割合は1割に満たないが、50代は2割以上が障害だと感じている。障害だと感じる多様性の種類も、それぞれに異なる様子がうかがえた。

多様性が難しくするコミュニケーションとサポート

これらの多様性がある結果、実際にはどのような苦労を経験しているのだろうか。メンバーが多様であることで困った経験や不安について、自由記述で回答を求めた(図表9)。

まず、合意形成・意思疎通に関する記述が最も多く見られた。前述のように、多様な専門性はポジティブな効果をもたらすことが期待されるが、合意形成を困難にする側面もあるようだ。勤務地や勤務形態の多様さ、知識・スキルレベルのバラつきなどによる意思疎通の苦労も垣間見える。

続いて、いわゆるチームワークの側面である、サポート・協働に関する記述が多かった。お互いサポートし合う気持ちや、立場が違う相手への配慮の不足、多様さゆえのサポート要請の難しさなどが挙げられた。そして、業務推進、人間関係構築上のベースの考え方に関する記述も多く見られた。判断基準が異なったり、直面する問題の捉え方、対処の仕方が異なったりすることによる大変さが感じられる。なかでも、世代間ギャップについての具体的な記述が散見された。

ここまでは、影響する多様性の種類として、ある程度想定していたことであるが、それ以外のものとして、やる気・意欲のバラつきに関する記述が複数見られた。また、大きなテーマであるため、本調査ではあえて組み込まなかったチームマネジメントやリーダー的な役割について、多様なチームのマネジメントの難しさを感じさせる記述も確認された。

心理的安全性を損なわないようにしつつ業務の質に関連する指摘をし合うこと、お互いにサポートを求めることの難しさが、多様性のなかでは増大しやすく、これから多くのチームで課題となるのではないか。同時に、多様なチームにおけるリーダーのあり方についても、検討が必要だろう。

最後に、多様でよかったとき、もっと多様だといいと思うときに関する自由記述を紹介して、本報告を終わりとしたい(図表10)。

内容を見ると、異なる意見によって、チームの成果があがる、個人としても刺激がある、楽しい、といったものが多かった。今回の調査を通して、個人が感じる多様性の対象や程度はさまざまであることや、その大変さも見えてきたが、ポジティブな声も多く集まったことをお知らせしたい。

なお、チームの状態を確認するには、本来はチームメンバーの回答の平均やバラつきなどを用いることが望ましいが、調査の制約上、一人ひとりの回答から多様性経験の実態について探ることを試みた。チームの状態を構造的に把握することには課題が残るが、幅広く個人の認知を把握することができたのは収穫であった。組織行動研究所では、これからも継続して、チームに関する調査・研究に取り組んでいきたい。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.56 特集1「多様性を生かすチーム」より抜粋・一部修正したものである。
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