職場におけるソーシャル・サポート実態調査 職場でのサポートに影響を及ぼすのは何か

執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
藤村 直子

人と人とが支え合うことのメカニズムやその効用について「ソーシャル・サポート」という概念を用いて研究が行われている。その多くは、健康や医療などの分野でのもので、企業組織における研究はあまり進んでいないようだ。

仕事で困ったとき、人は誰からどのようなサポートを得たいと思っているのか、それは十分に得られているのか。職場では、必要なときに必要な相手にサポートを求めることはできているのか。職場での人間関係構築や必要なサポートの獲得に役立つ制度・仕組みとは何か。会社員へのアンケート調査をもとに、その一端を明らかにしたい。


調査概要とサポート内容の分類

20〜40代の正社員・一般社員にアンケート調査を実施した(図表1)。性別、年齢層、職務系統がそれぞれ均等になるように回収した。有効回答数は603名である。

今回の調査では、職場でのサポート内容を4種に分類してその実態を捉えた。定義については後述する図表2を参照されたい。ソーシャル・サポートに関する先行研究では、2種(道具的・情緒的)や3種(道具的・情報的・情緒的)など分類方法は多岐にわたるが、ハウス(House,J.S.,1981)の概念規定を参考に4種で分類することにした。これは、評価的サポートを、情緒的サポートから分離して独立した概念としたもので、その方が、職場での実態に即していると考えたためである。また、一般回答者への理解のしやすさを考慮して「道具的」という表現を「直接」と置き換えた。

8割以上がサポートを必要 十分なのは6割

まず、仕事を進めるにあたって周囲からのサポートをどれくらい必要とし、十分にサポートを得られていると感じているのだろうか。4種のサポートごとに必要度・十分度を示したものが図表2である。

「どちらかといえば必要」まで合わせると、いずれも8割以上が必要と回答している。十分度はそれを下回り、「どちらかといえば十分」まで合わせて約6割が十分と回答している。「どちらかといえば十分」を除くと、十分との認識は3割にも満たない。「まったく十分ではない」という人も1割前後いる。4種間で必要度と十分度の乖離が最も大きいのは、評価的サポートだった。

相手によって期待するサポートは異なる

それでは、4種のサポートは、それぞれ誰からしてもらいたいのだろうか。複数選択で回答を得たところ、情緒的サポート以外の3つのサポートは、上司への期待が最も高かった(図表3(1))。特に、評価的サポートは半数近くが上司に求めていた。精神的な支えとしての情緒的サポートは、同じ職場の同僚への期待が最も高かった。社外の知人・友人や家族に対しては、情緒的サポートを求める回答割合が高かった。

過去半年間、40代の3〜4割は誰からもサポートされていない

実際に過去半年間にサポートされた経験(4種のサポートを誰がしたか)は、評価的サポートを除いて、上司よりも同じ職場の同僚からのサポートの方が多かった(図表3(2))。また、自分がサポートした経験(4種のサポートを誰にしたか)は、サポートされた経験と比べると、上司に対しては下回ったが、同じ職場の同僚に対しては、大きく上回った(図表3(3))。

ここで着目したのは、どの相手も選ばずに「ない」を選択した人が、期待、サポートされた経験、サポートした経験いずれも一定数いることだ。属性別に傾向を確認したところ、期待とサポートされた経験では、年代と性別において統計的に有意な差があった。年代が上がるほど「ない」の選択割合が上昇している。20代ではいずれも1割程度であるのに対して、40代の約2割が「必要ない」、3〜4割が「サポートはない」を選択していた。性別では男性の方が「必要ない」「サポートはない」の選択割合が高い。一方、サポートした経験については、情緒的サポートのみ、年代、性別において差が見られた。年代が上、また男性の方が「サポートはしていない」という選択割合が高かった。

実際にサポートすることの難しさ

個々人のサポートに対する期待は異なり、良かれと思ってしたサポートでも必ずしも相手に受け入れられるとは限らない。自分がされたサポートで期待はずれだったもの、自分がうまくできなかったサポートについて、自由記述でエピソードを募った。

期待はずれだった上司や同僚からのサポートとして挙げられていた記述としては(図表4)、(1)知識・スキル不足によるもの、(2)自分本位、親身になってくれていない、もしくは精神論のみであると感じられるもの、(3)フォローがなく教えてもらえないといった、内容、態度、タイミングが期待と異なるといったものが散見された。

自分がうまくできなかったサポートについては(図表5)、(1)自分の知識・スキル不足によるもの、(2)相手の期待にそわない、ネガティブな反応があったというもの、(3)遠慮、自分の余裕のなさ、方法の失敗でうまくフォローできなかったというものが挙げられていた。これら(1)〜(3)は表裏ともいえる。サポートされる側・する側のそれぞれの立場から問題点を把握することが、お互いにとって有用なサポートとは何かを考える視点に役立つかもしれない。

5人に1人は援助要請していない

ここまで見てきたように、人によって、必要なサポートの相手、程度、期待する内容やタイミングは異なるため、サポートし合うことはそう簡単なことではない。よって、必要なときに、必要な相手に、自分からサポートを求めるという行動も求められてくる。そこで、そのような援助要請行動がどれくらいできているのかを見ていきたい。

勤務先企業における援助要請行動を聞いたところ、「どちらかといえばしている」も合わせると4人に3人は援助要請をしていると答えた(図表6(1))。一方、5人に1人は援助要請していないようだ。

続いて、援助要請している人、およびしていない人にその理由をそれぞれ選択してもらった(図表6(2)(3))。している理由として多く選ばれたのは成果基準に関する2項目で、過半数が選択した。次に多かったのは「困ったときにはお互いさま」で、3人に1人が選択した。「信頼関係」「すぐ声をかけられるような執務環境」「協働・助け合いをよしとする職場の風土」といった職場環境に関する回答がそれらに続いて多く選ばれた。

一方、していない理由として多く選ばれたのは、「皆、自分のことで手一杯で、声をかけづらい雰囲気があるから」で、「信頼関係が築けていない」がそれに続く。している理由と同様に、成果基準に関するものも多く選ばれている。本人の意識としては、「助けを求めること=能力が低いと思われてしまいそう」といった自尊心を脅かすようなものが相対的には多く選ばれ、「仕事で貢献できていないのに、申し訳ないと思う」「時短の風潮のなかで(中略)申し訳ないと思う」といった遠慮に関するものは、あまり選択されなかった。

それでは、援助要請行動の有無は、どのような変数と関係しているのか(図表7)。因果は特定できないものの、まず、援助要請している人はしていない人より、サポートの必要度・十分度ともに高い傾向が見られる。本人の適応感は高く、孤独感は低い。「思いやりとあたたかさ」「連帯感とチームワーク」「信頼関係」がある職場、「他者の仕事に無関心」「孤立している人がいる」ということがない職場、心理的安全性が高い職場では援助要請行動をとりやすいことが示唆された。

5年前より職場の人間関係が希薄化しているのは半数弱

職場の特徴と援助要請行動の関係について述べたが、職場の人間関係は変化しているのか。職場での孤独、人間関係の希薄化についてはメディアなどでも取り上げられているが、今回の回答者の実感値はどうだろうか。5年前と比べて職場の人間関係が希薄化しているかどうかを聞いたところ、半数弱の44.6%が希薄化していると回答した(図表8)。属性を確認したところ、男性、年齢が高い、社歴が長いほど希薄化していると回答していた。

回答理由についての自由記述を抜粋したものが図表9である。希薄化を感じる理由としては、労働時間や忙しさ、業績圧力、仕事以外の対話機会、人員構成に関するコメントが複数見られた。希薄化していないという理由のなかに、ずっと希薄で変わらないという意味合いでのコメントも散見されたことから、この結果よりも多くの割合の人が、現状、職場の人間関係は希薄であると感じていることが推察される。

職場への貢献感や制度・仕組みとの関係

最後に、職場での人間関係や必要なサポートの獲得について、本人の職場への貢献感と、組織の制度や仕組みという2つの観点から概観したい。

まず、職場への貢献感が援助の求めにくさにつながるとの先行研究もあり、年齢が高いほどその傾向は増すのではないかと考え、20代と40代で各変数の傾向を確認した(図表10)。

職場への貢献感としては、適応感(力の発揮)への回答結果による群分けを行った。サポート必要度、サポート十分度、援助要請ともに20代の方が総じて得点が高い。20代では力が発揮できているほど、援助を求め、得られる傾向が見られたが、40代では力の発揮が低い群でのみ、サポートを求めることも、十分に得ることもできていない。力の発揮ができていない40代は、職場の希薄化を感じる傾向が見られる。また、20代、40代ともに力を発揮できていない群では孤独感が強い。

続いて、人間関係構築や必要なサポートの獲得に役に立っている制度・仕組みとして、導入割合が高い順に示した結果が図表11である。

導入割合・役立ち度ともに高いものとしては、「上司との定期的な面談」「定期異動・ローテーション」「集合研修・ワークショップ」が、導入割合がそれほど高くはないものの役立ち度が高いものとしては、「社員同士での飲食の金銭的補助」「社員が集まる場所の設置」「社員による自主的な勉強会」「社内コミュニケーションツール」「業務以外の社内コミュニティ」「会社主催の懇親イベント」などが挙げられる。

職場で必要なときに必要なサポートを受けられると思えるかどうか、自分からサポートを求めることができるかどうかは、職場の人間関係や個人の意識と関係する部分も大きいが、全社的な制度・仕組みを通じて、人間関係構築やサポートし合う風土が醸成できる可能性が示唆された。本調査が、サポートし合う職場づくりを考える一助となれば幸いである。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.54 特集1「職場におけるソーシャル・サポート希薄化する人間関係にどう向き合うか」より抜粋・一部修正したものである。
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