職場での「自分らしさ」に関する実態調査 会社員はどんなときに「自分らしさ」を失っているのか?

執筆者情報
組織行動研究所
主任研究員
荒井 理江

企業に入れば、職場で会社員らしく役割を全うせねばならない。
一方で、会社員としての行動が、必ずしも自分らしさとマッチしない可能性もある。
人は、職場で自分らしく振舞っているのだろうか。その実態を調査した。


はじめに

職場で「自分らしさ」を自由に表現するのは、そう簡単ではない。たとえば、「上司には、言いたいことは言えない」「部下の手前、自分らしくは振舞えない」「営業なので、お客様に自分の本音は出せない」……など、組織内役割が「自分らしさ」を抑圧することもあるだろう。一方、私たちが調査・研究活動を通じ「個を生かす」あり方を探求する中においては、「自分らしさ」を発揮することが仕事を魅力的なものへと変えうる、という実感もある。個人と組織の関係がますます複雑化・多様化していく今、改めて職場での「自分らしさ」はどうあるべきなのかを検討すべく、今回は実態を探る調査を行うこととした。調査は、20〜59歳の会社員(役員クラスを除く一般社員・管理職)を対象として実施した。以下、有効回答数537名についての集計・分析結果を紹介する。

自分らしさの感覚とは

「自分らしさ」とは、なかなか捉えどころのない感覚かもしれない。今回の調査では、まず自分らしさについて、回答者がどう捉えているのかを確認した(図表2)。結果、7割以上が、仕事の選択と自分らしさが強く関係すると認識していた。また、自分らしさを貫くことが大切だと感じている群が6割強存在している一方で、現実には人に見られている自分と本当の自分は違う、または意識して使い分けている、と回答した人や、どこかに本当の自分がいるのではないかと感じる人は約6割、「自分がない」と感じることがある人も半数近く存在していた。

職場で自分らしく振舞えるか

では、実際に日々仕事をしている現場でどう感じているのか。ここからは、傾向が異なった役職別に結果を見ていく。まず、職場で自分らしく振舞いたいかという設問に対しては、各群約9割の人が、振舞いたい(「とてもあてはまる」「あてはまる」「ややあてはまる」合計)と回答した。一方、実際に職場で自分らしく振舞えていると回答したのは、一般社員・係長群では6割強にとどまり、課長・部長群では7割強となった(図表3)。

なぜ職場で「自分らしく振舞いたい」のか

なぜ、「自分らしく振舞いたい」と感じるのだろうか。その理由として、あてはまるものをすべて選んでもらった。特に選択率が高かった回答を抜粋したものが、図表4である。一般社員群、係長群、課長群に最も選択された理由は、「ストレスが少なく楽だから」であった。また、係長・課長群は、「仕事への意欲が高くなるから」も4割を超えて高く、課長群は5割にせまる選択率となった。一方部長群は、「仕事を通じて、自己実現をしたいと思っているから」の選択率が最も高かった。

自分らしく振舞えると感じる理由とは

では、「自分らしく振舞える」と回答した人は、なぜそう感じるのだろうか。理由を聞いたところ(図表5)、一般社員群の選択率が最も高かったのは、「本音や気持ちを素直に伝えることができているから」だった。係長群と部長群は「自分の力や強みを発揮できているから」が最も高かった。課長群は、「組織の中で自分の役割・立場が尊重されていると感じるから」が最も高く、僅差で「自分の力や強みを発揮できているから」も高い選択率であり、4群のなかでも最も高い値であった。

その他では、「やりがいのある仕事に取り組めているから」「上司が自分のことをよく理解し、受け止めてくれているから」という選択肢は、一般社員群、係長群、課長群と役職が上がるにつれ高い結果となった。

自分らしく振舞えないと感じる理由とは

次に、「自分らしく振舞えていない」と回答した人に、その理由を聞いた結果が図表6である。一般社員では、「自分の考えや意見を気兼ねなく言うことができないから」の選択率が最も高く、係長・課長群では、「本音や気持ちを素直に伝えることができていないから」、部長群では「自分の力や強みを発揮できていないから」が最も高い選択率となった。

また、一般社員群は、「生活にゆとりがないから」、課長群は、「組織の中で自分の役割・立場が尊重されていないと感じるから」について、他群より10ポイント以上差をつけて選択される結果となった。

自分らしくない瞬間はどんなときか

実際に、職場で自分らしく振舞えなかった場面には、どのようなものがあるのか。具体的なエピソードについて、自由記述で挙げてもらったところ(図表7)、最も多かったのが「上司の望む答えを言わなければ」といった上司に関わるエピソードであった。上司に限らず、意見や主張が伝えられない・尊重されないエピソードも多く挙げられた。その他には、職場の雰囲気が悪い場面や、仕事・職場への適応が難しい場面、業務負荷が高い場面、役割行動を求められる場面なども挙げられた。

所属組織や仕事への意識との関係は

職場に対する印象や、仕事・会社へのコミットメントとの関係はどうなっているのか。結果の一部を図表8に紹介する。先の「自分らしく振舞えているか」という設問に対して、「とてもあてはまる」「あてはまる」を選択した群(自分らしく振舞える群)、「ややあてはまる」を選択した群(どちらかといえば自分らしく振舞える群)、「ややあてはまらない」「あてはまらない」「まったくあてはまらない」を選択した群(自分らしく振舞えない群)の3群に分け、回答の平均値を比較した。結果、まず職場について、「自分らしく振舞える」群は、「自分らしく振舞えない」群よりも各項目の値が総じて高かった。日頃から困ったときには相談でき、思ったことを言い合え、多様な意見を受け入れて既存の枠組みにとらわれない挑戦ができる職場であるようだ。

仕事や会社に対しても、「自分らしく振舞える」群のほうが、「やりがいを感じている」「力を十分に発揮できている」「会社が気に入っている」の値が高い結果となった。なお、職場で「自分らしく振舞える」群が仕事一辺倒なのかというとそうではなく、「仕事よりも趣味や家庭を大事にしたい」については、群間で差は見られなかった。

管理職は部下に自分らしくいてもらいたいのか

職場で自分らしく振舞えると仕事上も都合がよさそうではあるが、マネジメント上は不都合もあるかもしれない。先ほどの自分らしく振舞えなかった瞬間では「上司」に関して言及するコメントも多数見られた。

そこで、回答者のうち課長以上の管理職に対して、部下の個性を生かしたマネジメントを行うべきだと思うかどうかを尋ねた結果を、前述と同様管理職者本人が自分らしく振舞えている程度によって3群に分けて確認した。結果としては、いずれの群も、部下には自分らしくいてほしいと思っている比率がおおむね9割となった。一方で、実際に個性を生かしたマネジメントができていると思うかという設問に対しては、「自分らしく振舞えている」群は8割以上が肯定したが、「自分らしく振舞えていない」群については、4割にとどまる結果となった(図表9)。

おわりに―自分らしく振舞う健全さ

人は自分らしくありたいと思いつつも、その感覚は変化したり、一義的ではないようだ。ただ、少なくとも働く個人の多くにとって、職場は「自分らしく振舞いたい」場であることが確認できた。さらに本結果から垣間見られたのは、職場で「自分らしく振舞える」状態とは、抑圧のストレスがなく、存在を尊重されており、自分の感情や意見を伝えられ、能力を生かせている感覚を得られるような状態を指すようだ。また、自由記述コメントからは、現実にはそれらが損なわれる場面も多々あり、それによって心的ストレスを感じる様子も垣間見られた。鍵になる上司のマネジメントについては、あくまで本人の回答ではあるが、上司自身が自分らしく振舞えているほうが、部下の個性を生かしたマネジメントができるようである。また、心理的に安心・安全な職場環境かどうか、組織コミットメントの度合いなどとも関連がありそうだ。

人が職場で自分らしくあることで、それぞれのもつ能力を抑圧せず発揮できるのであれば、「自分らしさ」を生かす職場づくりは、多くの人材の眠る才能を開花させることにつながるはずである。また、さまざまな個性が職場で生かされていくことで、個人にとっての「働くこと」の意味が、生き生きとしたものへと変わっていくかもしれない。

自分らしく振舞えるかどうかを分かつ要因や、効能について、これらの心理概念との関連性を含め、今後も分析を行い明らかにしていきたい。


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.47 特集1「職場での「自分らしさ」を考える」より抜粋・一部修正したものである。
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