会社員518名の声から見る「大企業病」のサイン 「大企業病」を患う組織の実態

執筆者情報
経営企画部
シニアスタッフ
荒井 理江

組織の拡大に伴い、内部統合の仕組みや意識が強化されていくと、組織はある一定の特徴を呈しはじめる。「大企業病」と呼ばれるこの諸症状とは、どのようなものなのか。以前から語られてきたこの病について、今回は企業人518名にアンケート調査を行い、どのようなときに「大企業病」だと感じるのか、個人の視点から捉えることとした。


調査概要

2015年12月、従業員数500名以上の企業で働く男性正社員を対象に、定量調査を実施した。調査概要は図表1のとおりである。

回答者の年齢は25歳から49歳、企業の従業員規模や、業種・業態に影響を受ける可能性を想定し、従業員規模の分布と、製造/非製造業比率が均等になるようデータを収集した。

5割は「大企業病」と認知 要因は規模だけではない

回答者に、自分の勤める企業が「大企業病」だと感じているかどうかを尋ねた結果が、図表2である。なお、「大企業病」の定義については、自由に想定して回答してもらった。

結果、5割以上の回答者が、自分の勤める企業が「大企業病である」と回答した。その名のとおり、企業が大きくなるにつれて「大企業病」と感じる比率が高まるのではないかと想定し、従業員規模別に比較してみたところ、10000名以上の企業に勤めている回答者は7割以上が「大企業病」と回答し、最も多くなった。しかし、他4群には大きな違いは見られなかった(図表3)。したがって、規模ではない要因によって「大企業病」と認知されるかどうかが分かれている可能性がある。なお、業種による顕著な違いは見られなかった。

意思決定は遅く、現場の意見は通りにくい

では、回答者はどのような場面から「大企業病」だと感じているのか。具体的な情報を得るため、「大企業病である」と回答した284名に、なぜ大企業病にかかっていると感じるのか、自由記述で回答を求めた(図表4)。

結果、最も多く言及されたのは、企業内の「意思決定の遅さ」であった。「判断の先送り、即断即決ができていない」「物事の決定に時間がかかりすぎる」といったコメントが多数見られた。

また、「内向きで現場・市場の声が通らない」ことを指摘するコメントも多く見られた。「サービス業なのにお客様のことより会社の都合を優先する」「白書などのデータばかり見ていて客のナマの声を聞こうとしないし、聞いても理解しない」など、組織の判断が内向き・独りよがりになっていることが多く指摘されていた。次いで、「はんこが多い」「会議が多い」など主に組織内での意思決定のための形式的な煩雑さを挙げるコメントも多く見られた。

その他、「各部署の利害により物事の決定が進まない」などの部門間の断絶や、「リーダーや次長は上司(部長)に意見などは言わず、常にYesマン」といった、マネジメントの行動への言及、組織風土として「できない理由を考えるのが上手い社員が多い」など、事なかれ主義や挑戦しない風土を指摘するコメントもあった。

なお、逆に「大企業病ではない」と感じる群に、なぜそう思うかを自由記述で聞いたところ、「意思決定が速い」「現場の意見が通る」「チャレンジをしている」といった、対照的なコメントが見られた。

形式的な管理職 細分化する組織

さらに、大企業病の症状について設問を作成し、あてはまるかどうかを尋ねた(図表5)。これらは弊社が、組織が「形式化」を進めた際に生じると想定する状態例である。回答者には、各設問に対し、5.あてはまる、4.どちらかといえばあてはまる、3.どちらともいえない、2.どちらかといえばあてはまらない、1.あてはまらない、の5段階で回答を求めた。図表5は、各群が5.あてはまる、4.どちらかといえばあてはまると回答した比率の合計である。

全体を通じて、「大企業病である」と回答した群は、各設問に「あてはまる」と回答する比率が高く、「大企業病ではない」と回答した群と大きく差が開く結果となった。なかでも差が大きかったのは、「中間管理職は慣例やルールにとらわれて、非効率な業務や本質的でない施策を増やしている」「職場内の役割の細分化が進み、重要であっても自身の業務に関係しないテーマに関してはコミュニケーションがなされなくなっている」という職場の上司・同僚との接点に関するもの、次いで、「人事制度上のルールや制約が多く、社員のやる気が低下したり、異動や人材育成が機能しづらくなっている」「経営者と一般社員間の直接の接点はあまりなく、全社や他部門に対する一般社員の関心が低下している」といった設問であった。

成果が見えやすく、個人が柔軟に変化できるかが大きな分かれ道に

さらに、組織風土を比較した調査結果からも検討する素材を得ることとする。組織風土の特徴について、AとBどちらがより近いかを回答してもらった(図表6)。

全13項目について回答を求めた結果、2群の特徴が最も大きく異なったのは、「仕事の成果の見えやすさ」についてであった。成果が見えやすいと回答した比率は、「大企業病である」と回答した群では28.5%であったのに対し、「大企業病ではない」と回答した群は50.7%であった。

仕事を進める上では、両群とも、「計画にそった確実な遂行」より「臨機応変な対応」を重視すると回答していたが、その比率は「大企業病ではない」群の方が高く、15ポイント以上の開きがあった。

組織内の判断基準では、「個人の主体的な判断」を重視するか、「ルールに従った判断」を重視するかを尋ねたところ、「大企業病」群の5割が「ルール」の方を選択した。「創造や変革」か「現実的な問題解決」かについては、「大企業病」群の5割が「現実的な問題解決」を選択していた。

同僚との関係については、「切磋琢磨する」か「助け合う」かを尋ねたところ、「大企業病ではない」群は5割が「助け合う」を選択。「大企業病」群と比べて約10ポイント高かった。一方、「大企業病」群は、「どちらともいえない」の比率が10ポイント以上高く、同僚との希薄な関係がうかがえた。

どうしたらいいか分からない閉塞感 「外」の目にさらす必要も

最後に、大企業病にならないために、どうするべきだと感じているかを紹介したい。自由記述で回答を求めた結果が、図表7である。

最も多かったのが、「ない/分からない」というコメントであった。確かに、経営層の意識や組織構造・制度全体にまで及ぶこの問題を解決する糸口は、容易に見出せるものではないだろう。

そのほかでは、前述の問題意識の裏返しではあるが、組織構造のフラット化や、意思決定の手続きの簡略化、現場への権限委譲など、構造を改善して意思決定スピードを速めるべきとのコメントが多数見られた。また、組織の風通し向上に関するコメントも見られたが、タテ・ヨコといった組織内の風通しだけでなく、「外」の目を入れるべきとのコメントもあった。

経営陣、管理職の入れ替えや、評価制度の改変など、正しいリーダーを選抜・評価してほしいという主旨のコメントも見られた。

さいごに――何のために働いているのか? 「顧客」を見失う病のサイン

意思決定が遅く、内向きで、チャレンジが行われない組織状態を見たとき、人は「うちは大企業病だ」と感じるようだ。経営・管理職との意思疎通を欠き、同僚同士のつながりも弱く、既存のしきたりやルールを疑う変革・創造に対しても必ずしも前向きではない組織風土がうかがえた。

なかでも特に着目したいのは、「成果」の見えにくさである。では、この「成果」とは何か。ここまでの内容から想像するに、個々人の業績というよりも、仕事の本質的な意義や顧客志向を指しているように思われる。それらが見失われていると感じたとき、社員は「大企業病にかかっている」と感じるのではないだろうか。

それでも、既存のルールの下、うまく組織が回り続けられるのであれば、企業としては存続するかもしれない。しかし、少しでも変化・変革を志向するのであれば、話は違う。

組織の変革は、個人に苦労や不都合を強いる。しかし、同じ目的の下に集まっているからこそ、目的に向けた変革が、苦ではなくなるのである。「誰/何のために」働くのかを見失うことは、その目的を見失うことでもある。そのような状況で、既存のルールを壊しても、新たな取り組みを決めて進めていくエネルギーが生まれにくいのは想像に難くない。

一度こうなってしまっては、挽回は一筋縄ではいかない。「何のために?」という問いは、顧客の方を向いて働きたいと願う心ある社員からの大切なサインかもしれない。察知して動くのに、早すぎることはない。

※本稿は、弊社機関誌RMS Message vol.41特集1「大企業病にならない組織における自律と規律」より抜粋・一部修正したものである。

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