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これからの時代の個と組織を生かすヒント

Z世代と共に創る未来 ~異質さに学び組織をアップデートする

  • 公開日:2024/04/26
  • 更新日:2024/05/16
Z世代と共に創る未来 ~異質さに学び組織をアップデートする

時代の変化と共に、各所でこれまでの考え方ややり方の限界が顕在化している。Z世代の育成・定着への悩みもまたしかりだが、こうしたハレーションは新時代に向けた組織アップデートのヒントも秘めている。一見、異質な存在にも見えるZ世代への理解を深めることで、これからの時代の個と組織を生かすヒントを探っていく。

変化の時代は異質から学ぶことでアップデートしていける
Z世代は時代の鏡 強みを知り、生かす
早期離職問題から見えるエンゲージメントのヒント
Z世代の育成は、自律学習型組織へアップデートする機会ともなる
ジェネレーションGAP問題から見える共創型組織づくりへのヒント

変化の時代は異質から学ぶことでアップデートしていける

時代の変化のなかで、今日の組織マネジメントは、VUCAとWell-beingへの対応が急務となっている(図表1)。正解がなく先も見えにくいVUCA的なビジネス環境では、新価値創造(イノベーション)のできる組織へアップデートしていく必要がある。働く価値観における仕事のやりがいやライフ面も大切にするWell-being意識が高まると、一人ひとりの個の尊重を通じてエンゲージメントを高めていく組織運営が大事になってくる。これらは、組織マネジメントにおいてこれまでの「組織中心の世界」から、「個と組織が生かし合う世界」へのシフトが求められていることを意味する。

<図表1>求められる組織アップデートの方向性

<図表1>求められる組織アップデートの方向性

現在のマネジメント層は組織中心の世界での成功体験が多いゆえ、個の尊重を通じて成果やエンゲージメントを高めるアプローチにとまどいや葛藤を感じながら試行錯誤されている声をよく聞く。このような環境では異質との向き合い方が鍵となる。変化の少ない平時では組織の同質性がプラスに働くが、異質は既存組織にない新しい視点・やり方をもたらす存在でもあり、変化が大きい環境では無理に排除せずに、うまく付き合い組織のアップデートにつなげることが重要だ。

今日、Z世代(1990年代後半以降生まれ)が社会に出てくるなかで、育成や定着においてさまざまな問題や悩みが寄せられる。組織にとっては、これまでの育成や関わり方が通用しない、異質でやっかいな相手と感じることもあるだろう。これまでなら、異質は既存組織の価値観やルールに適応させていく存在だったが、VUCA×Well-beingの新時代においては、その異質性を組織のアップデートにつなげていく視点も取り入れていきたい。

Z世代は時代の鏡 強みを知り、生かす

そのための第一歩は、Z世代への理解を深めることだ。図表2は、弊社で毎年実施している新入社員意識調査において、理想の職場・上司像の2013年と2023年の結果を比較したものである。かつて理想として挙げられた要素(橙)が減り、代わりに「個性の尊重・助けあう・一人ひとりへの丁寧な指導・ほめる」(緑)が増えている。

<図表2>新入社員の理想の職場・上司像の変化

<図表2>新入社員の理想の職場・上司像の変化

この変化の背景として、Z世代は生まれたときからVUCA×Well-beingの環境で育った新時代ネイティブであることに注目したい。Z世代は、これまでの成功をもたらした「組織中心の世界」の価値観ややり方には不慣れかもしれないが、これから企業が対応を強化しようとしている環境にはむしろネイティブで、強みや生かせるものをもっている。

新価値創造においては、立場や経験に関係なく誰もが意見を言い、一人ひとりの強みや個性を発揮していくことが有効だが、緑色の要素はそれに近い。また現代のストレスと不安がうずまく環境下では、お互いに助け合い、プラス面に目を向けてメンタルやモチベーションを高める方がエンゲージメントやパフォーマンスにつながり、働きやすい組織として人材採用にも効果がある。

Z世代の変化は時代の鏡ともいえ、Z世代の生かし方を考えることは、新時代に対応できる組織にアップデートする機会にもなるのである。

企業の外を見渡すと、さまざまな領域(スポーツ、芸能、NPOなど)でかつてないほど若者の活躍が目覚ましい。従来は、一定の経験を積むことでスキルを磨き第一人者になっていったが、現在では若者ほどスキルが高く第一線で活躍するシーンも増えてきている。

今日の若者は、世界中の情報にアクセスできる。YouTubeを見れば、世界の第一線で活躍しているアスリートや専門家から、最新の知識・技術が学べる。小さな頃から、身近な先生や指導者の知識・経験に限らず、最新の情報、さまざまな価値観や方法論に接していくことで、若者の方が詳しく優れている領域が生まれている(図表3)。

<図表3>Z 世代がもつスキル・経験・価値観

<図表3>Z 世代がもつスキル・経験・価値観

「若手に関する意識調査」では、「若手には自分たちの世代にはない良いところや学ぶところがあると思いますか」という設問に対して「そう思う」(20.8%)、「ややそう思う」(40.2%)という回答を合わせると約6割が肯定的な回答で、学ぶところについて「新しい発想」「SNSやデジタルデバイスの活用」などの選択が見られた(図表4)。

<図表4>若者から学べること

<図表4>若者から学べること

若者は経験不足で未熟な面がある一方、変化にはいち早く適応し、新しい知識や方法論を身に付けていく存在でもある。そうしたZ世代は“組織に適応させる”存在としてだけでなく(これはこれで必要である)、新たに“学び生かす”存在としても捉え関わっていくことで、組織にも大きな恩恵をもたらしてくれるはずだ。

Z世代に学び生かすには、具体的にどのように関わっていくとよいのだろうか。実際に、私たち開発チームが実践し効果を感じている取り組みをいくつか紹介したい。

1)まずは相手をよく知る
これまでの経験、強みや得意分野、大切にしている価値観などを理解する

2)違和感を味わい疑問を掘り下げる
話しているなかで感じる違和感や疑問があれば、否定せずに、興味をもって聴いてみる。なぜかを掘り下げると自分にはない視点や意外な発見に出合える

3)選択肢を増やす
どっちが正解かというスタンスは脇に置く。すべてはより良い判断のための選択肢として、評価せず意見や考えを聴いていく

4)共に創る
仕事の目的実現に向けて、Z世代を積極的に巻き込む。意見を出してもらい、共に創ってもらいながら取り組む

早期離職問題から見えるエンゲージメントのヒント

前段で、新人・若手を「生かす」という視点で論じてきたが、うまく生かすことができないことから問題も生じているのが現実的なところだ。その問題に対し、どのようなスタンスで向き合っていけばよいのだろうか。

例えば、近年、さまざまな企業から新人・若手の「早期離職」に対する相談が増えている。上司からは「『石の上にも3年、続けないと何も分からない』『苦手なことに向き合ってこそ、自分の新しい可能性が見えてくる』のではないか、やる気がないのか?」と新人・若手の行動にフラストレーションを感じるという声も聞こえてくる。

一方、2023年新人・若手の早期離職に関する実態調査で、離職を想起したことがあると回答した新人・若手に、そう思った理由を聞くと、1位と3位に「仕事にやりがい・意義を感じない」「自分のやりたい仕事ができない」という選択肢が入った(図表5)。

<図表5>退職を想起した理由

<図表5>退職を想起した理由

この結果は、新人・若手が、個性ややりがい重視の教育施策を受けていることや、SNSが発展し、さまざまな価値観や成功事例に日常的に触れられる環境下に置かれていることが背景にあると考えられる。やりがいや意義への感度が上がり、そこへの期待や焦り、不安など、かつてでは生じにくかった思考や感情が、離職の背景にあることが想定できる。

新人・若手の行動の背景には、本人のやる気の問題では片付けられない社会の大きな変化が影響している。さらに、社会変化のスピードが増す近年は特に、世代間における価値観のギャップは広がりやすくなっているといえるだろう。

そのような状況で新人・若手と接する上で、ぜひもっていたいスタンスは、表面の行動や言動のみで判断するのではなく背景に関心をもち、「それを生かすには?」という視点で向き合うことだ。

例えば、「もっと仕事にやりがい・意義を感じたい」という理由で悩んでいる新人・若手に対して、「若手のうちからそんなことを考えるのは我儘だ」と捉えることもできるだろう。しかし、「どうしてそう思ったの?」などの深掘り質問をしていくと、自分では想像し得ない答えが出てくることも多々ある。ぜひ、その声を組織の向上に活用していただきたい。

実際に、若手の声に向き合った成功事例も出てきている。当初「現業務ではやりたいことができない」という悩みだったが、若手の意見を深く聞いていくと、組織運営がトップダウンになり、メンバーの特徴や思いを生かす視点が不足していたことが分かった。組織長は、その状況が組織のエンゲージメントに悪影響を及ぼしていると考え、新人・若手にも意見をもらいながら組織全体で、自己分析ツールの導入や本人の特徴を業務差配に生かす仕組みを取り入れていったという。すると、悩んでいた若手のみではなく、組織全体のエンゲージメントや主体性が高まっていったのである。

新人・若手の声は、本人のエンゲージメント向上にとどまらず組織のメリットにつながる可能性を秘めている。

Z世代の育成は、自律学習型組織へアップデートする機会ともなる

VUCA環境への対応として、組織を自律学習型にしていく動きが進んでいる。しかし組織中心の世界でトップダウンに慣れたなかでは、個も組織も自律学習型への転換は簡単ではない。

このテーマへの取り組みにおいて、Z世代を効果的に育て生かす方法論が実はおおいに役立つ。

Z世代の育成現場では、「言われたことはやるが自分で考え動くことは苦手」「失敗すると落ち込む」など、自律学習の力に課題感を感じているケースが多い。要因として、本人側の問題もある一方、周囲の関わり方・育て方が自律学習を高めるものになっていない点も挙げられる。

伝統的な育成スタイルは、これまでの成功体験を伝承していくことや、ダメ出しからの反省で成長を促すなどが特徴だが、個の尊重や内発的な動機を重視するZ世代にはフィットしないケースが多い。

そこでZ世代の特徴をふまえた効果的な育成スタイルが新たに模索され、成果を上げ始めている(図表6)。これらの育成スタイルは、実はZ世代だから有効というよりも、人の自発性を引き出し、エンゲージメントを高める原理原則的なものに近いものである。

<図表6>新たに加えたい育成スタイル

VUCA環境への対応として、組織を自律学習型にしていく動きが進んでいる。しかし組織中心の世界でトップダウンに慣れたなかでは、個も組織も自律学習型への転換は簡単ではない。  このテーマへの取り組みにおいて、Z世代を効果的に育て生かす方法論が実はおおいに役立つ。  Z世代の育成現場では、「言われたことはやるが自分で考え動くことは苦手」「失敗すると落ち込む」など、自律学習の力に課題感を感じているケースが多い。要因として、本人側の問題もある一方、周囲の関わり方・育て方が自律学習を高めるものになっていない点も挙げられる。  伝統的な育成スタイルは、これまでの成功体験を伝承していくことや、ダメ出しからの反省で成長を促すなどが特徴だが、個の尊重や内発的な動機を重視するZ世代にはフィットしないケースが多い。  そこでZ世代の特徴をふまえた効果的な育成スタイルが新たに模索され、成果を上げ始めている(図表6)。これらの育成スタイルは、実はZ世代だから有効というよりも、人の自発性を引き出し、エンゲージメントを高める原理原則的なものに近いものである。   <図表6>新たに加えたい育成スタイル

例えば否定せず安心と信頼で自律を引き出す方法は「心理的安全性」として、Google社をはじめ世界の多くの組織でエンゲージメントやパフォーマンスにつながる成果が報告されている。

一人ひとりの個性や多様性を尊重し自己決定を支援していく方法は、内発的動機づけや自己決定理論(Deci & Ryan, 1985)として、自律や創造性を引き出すさまざまなメソッドの原点となっているものである。

これまでの育成が通じず異質な存在と感じることがあるZ世代であるが、正解がなく不確実性の高いVUCA環境のなかで生まれ育ち、組織中心のやり方の限界も見てきたなかで、心理的安全性や自己決定の重要さを本能的・体験的に身に付けてきているとも考えられるのである。

もちろん伝統的な育成スタイルを捨てる必要はない。重要なのは、これまでのものも新たなものもすべてを目的実現の選択肢と捉え、相手や状況によって効果的なものを取捨選択し取り組んでいくことだ。こうしたスタイルは、どんな世代にも自律学習を引き出す上で有効であり、組織全体が自律学習型になっていくことにつながるだろう。

ジェネレーションGAP問題から見える共創型組織づくりへのヒント

最後に、Z世代と上司世代の双方から寄せられるジェネレーションGAP問題を組織アップデートにつなげる可能性を考えてみたい。

例えば、「リバースメンタリング」を取り入れる企業が出てきている。これは、若者が経営層や上司のメンター・指導役になる取り組みで、若者がもつ最新知識・技術の習得や、新たな価値観をビジネスやマネジメントに生かそうとする試みだ。

また、上司世代とZ世代は普段はお互いの違い(異質性)に目がいきがちで、ジェネレーションGAPとしてネガティブに捉える傾向がある。しかし見方を変え、お互いの強みに目を向ければ、正解のないVUCA環境においては、自分たちにはない力をもった頼もしい存在となる。お互いの強みを理解し力を合わせていくことで、今までにないことができたり、新しい価値を創造したりすることも可能になる(図表7)。

Z世代は教え育てる存在にとどまらず、その異質性に学び生かすことで、共に未来を創っていける頼もしい存在でもある。共創的関係を築くことで、VUCAとWell-beingの時代における、より良い個と組織の在り方を生み出していけるだろう。

<図表7>世代を超えて共創的関係へ

<図表7>世代を超えて共創的関係へ

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.73 特集2「Z世代と共に創る未来」より抜粋・一部修正したものである。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら

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主任研究員

桑原 正義

1992年4月人事測定研究所(現リクルートマネジメントソリューションズ)入社。 営業、商品開発、マーケティングマネジャー、コンサルタント職を経て2015年より現職。 探究領域:VUCA×Z世代の新人育成のアップデート、“個を生かす”生成アプローチ NPO法人青春基地(プロボノ)。立教大学経営学部BLP兼任講師

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研究員

武石 美有紀

2014年大学在学中に個人事業開始。 2016年リクルートキャリア(現リクルート)入社。企業の採用領域の課題解決支援や社内の新人研修の企画・研修講師業務に携わる。現在は、リクルートマネジメントソリューションズ にて、主に新人・若手社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。

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関根 彩夏

2017年リクルートマネジメントソューションズ入社。営業職を経て、アセスメント研修・多面(360度)評価などの商品開発に携わる。現在は、主に新人・若手社員、中堅社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。

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