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2023年 新人・若手の早期離職に関する実態調査 第3回

“もったいない離職”を引き起こす本人側の要因と対応策

  • 公開日:2024/01/22
  • 更新日:2024/05/16
“もったいない離職”を引き起こす本人側の要因と対応策

第1回を通して、早期離職問題は、特定の条件を整えれば改善するような問題ではなく、社会の大きな変化や、そのなかで醸成された個人の仕事観や人生観と密接に関係してくる問題だということ、第2回では、3つの早期離職パターンがあり、その中でも環境比較により生じる“もったいない離職”が近年増加していることをお伝えしました。 続いて、“もったいない離職”を引き起こす要因を本人側と企業側の2つの側面から見て、それぞれ、問題と重要な支援を考えていきます。第3回は、本人側にフォーカスします。  

本人側の問題
本人側への重要な支援

本人側の問題

まず、本人側の問題について考えていきます。

本人側の問題を掘り下げてみると、「タイパ意識」「早期の見切り」などの世代的な特徴(※1)が出すぎてしまうと、本人は、経験からの学びを得にくくなるということが分かりました。

「タイパ意識」とは、タイムパフォーマンスの略で、かけた時間に対し、より満足度を得ようとする意識です。一見、パフォーマンスを出す観点で良い考え方だとも思えますが、いきすぎると、結果が出にくいと感じることに、早い段階でやるメリットを感じにくくなる可能性があります。本人にとって、腰を据えて試行錯誤することの心理的ハードルが上がってしまうのです。

また、「早期の見切り」は、自分に合うか否かのマッチング的思考で、複数の選択肢を比べるがゆえ、物事を表面的に判断してしまう行動です。この特徴が職業選択で出てくると、仕事の奥深さを知らぬまま退職や転職を決めてしまうため、機会損失となるケースも発生します。例えば、日々の業務に向き合うことで見えてくる仕事の醍醐味を味わったり、向き合うなかで新たな自分の特徴に気づいたりなど、ビジネスパーソンとして大きく成長できる機会を逃す可能性が高いでしょう。

これらの特徴が、かつてよりも表に出てきたのは、社会の大きな変化による影響も関係しています。本人の個人的な資質の話だけではない、時代の変化を受けた世代的な特徴(※1)であるということを念頭に入れておきたいです。

※1 参考:「個」の尊重へ向かうZ世代を生かすための鍵

そして、経験からの学びを得られずにいると、本人のなかにやりたいこと(WILL)が生まれにくく、できること(CAN)が増えにくくなる、不のサイクルが回り始めます。

不のサイクル

【WILLが生まれにくいサイクル】(上図の左側)

経験からの学びを得にくくなると、本人のものの見方が広がらなくなります。ものの見方は、自分の思いどおりにならない環境で特に重要です。ものの見方を広げられず自分が見えている世界だけに固執してしまうと、自ら環境に働きかけたり、自分のなかの要因に目を向け自分をアップデートしていったりすることが少なくなります。そのような状態では、自分が理想とする環境でないと物事を肯定的に捉えられず、本来持つ力を発揮しにくくなります。

もともと自分が希望したり、興味があったりする仕事にアサインされた場合は、問題として表出しにくいでしょう。しかし、そうではない場合、仕事への捉え方が「やらされている仕事」「意味のない仕事」とネガティブなものでとどまり、仕事への支障が出てきます。具体的には、自ら進んで仕事をつくりにいったり、自分の頭で考えて物事を進めたりすることが少なくなります。受け身のスタンスのままだと、物事の意味や価値、楽しさに気づけず、「やりたい」という内発的動機(自分自身のWILL)が生まれにくくなるのです。

【CANが増えにくいサイクル】(上図の右側)

経験からの学びを得にくくなると、物事からの成長・貢献実感も乏しくなります。成長・貢献実感を得られないと、いつまでも自己肯定・効力感が高まっていきません。新人・若手世代は、世代特徴として自律的行動に苦手意識を持ち、一歩踏み出すことに不安と怖れを感じやすい傾向(※2)があります。経験したことに対するプラスのフィードバックが少ないと、不安と怖れはどんどん大きくなってしまうでしょう。それによって、主体的な行動が取れなくなり、できることを増やすチャンスを掴みにくくなってしまいます。

※2 参考:Z世代の新人・若手の育て方・生かし方

本人のなかにやりたいこと(WILL)が生まれにくく、できること(CAN)が増えにくくなる、不のサイクルに陥ると、本人は、現状に不満を感じやすくなり、「他にもっと自分に合った仕事があるかも……」「スカウトを受けた会社なら認められるかも……」と外の選択肢に目がいくようになります。その状態で、不満を抱く現状とより自分に合うように見える他の選択肢を比較すると、事実以上に後者に魅力を感じてしまうことも増え、“もったいない離職”につながってしまうのです。

不のサイクル2

本人側への重要な支援

では、このような新人・若手に対し、どのような支援が効果的でしょうか。

本人側への効果的な支援として、「ものの見方が広がる経験」と「成長・貢献実感を得られる経験」を促し、WILL・CANサイクルを回す後押しをすることをお薦めしています。

経験から学んでいく力を本人につけてもらう支援

【ものの見方が広がる経験】

ものの見方が広がる経験は、現業務から離れることで、自分を客観視したり、新しい出会いや情報を通して、今までに得られなかった視野・視界を獲得したりする経験です。少しでもよいので、普段とは異なる刺激を受けることで、日常業務では得にくい気づきを得られます。

ものの見方が広がる経験を積んでもらう具体的取り組みは、下記のような事例があります。

取り組み事例

※3 参考:新価値創造リーダーを育てる越境経験のデザイン

【成長・貢献実感を得られる経験】

成長・貢献実感を得られる経験は、物事をやり遂げられた喜びや関係者からの感謝などを通して、自分自身への成長実感や自分がしたことへの貢献実感を得られる経験です。過去の出来事を振り返り、成長・貢献できた事実に気づく経験もこれに含まれます。

取り組み事例2

次回は、“もったいない離職”を引き起こす、企業側の要因と解決策についてお伝えします。

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