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部長職に対する育成施策のご提案

なぜ、部長職にコーチングが必要なのか

  • 公開日:2023/03/17
  • 更新日:2024/05/16
なぜ、部長職にコーチングが必要なのか

昨今、人事部の方から「課長職の役割を抜け出せない新任部長や、改善が必要なベテラン部長」に対するご相談を頻繁にいただくようになりました。以前から、このような相談はあったものの、頻繁に聞かれるようになったのは、部長職に対する、社長の問題意識が高くなった表れだと感じます。ただ、社長の命を受けた人事部の方が、支援施策を検討する段階に入ると、部長職の置かれている現状や求めていることが分からず、停滞してしまうことが多いようです。 そこで本稿では、部長職に求められる役割・期待、取り巻く問題、最適な支援施策とその理由についてご紹介いたします。

7分で解説!「シニアマネジメントコーチングとは?」
部長職の役割・期待は、変革の主導
部長職前期の負のサイクル:自らの役割を設定できない
部長職後期の負のサイクル:自分らしい変革を主導できない
部長職通期の負のサイクル:自らの言動を改善できない
3つの重要課題に対する最適なソリューションであるコーチング

7分で解説!「シニアマネジメントコーチングとは?」

部長職の役割・期待は、変革の主導

部長職は、経営と現場の結節点であり、職務機能の責任者として、組織を創る・変える立場にあります。そのような立場の部長に求められるのは、直接的な関わりと間接的なリーダーシップを駆使して、組織の変革を主導することです。

ではどのような視点で、変革を主導すればいいのでしょうか。それは、「現場視点」と「経営視点」の両視点です。部長は担当組織の統括者として、当期目標の達成、次々に起こる問題の解決や組織統制、課長のパフォーマンス支援などを意識しなくてはなりません。その一方で、中長期的な戦略目標を実現するためのシナリオ構想や、中長期的視点での課題形成、組織変革も部長の責務です。つまり、短期的な現場視点と中長期的な経営視点の両方をもたなくてはならないのです。

しかし、人事の担当者の方や経営の方にインタビューすると、日本の部長の大半は、現場視点に偏っていることがうかがえます。本来は、次の経営人材として、経営視点に重心を置くべきですが、現実がそうはさせてくれません。なぜなら、一階層下である課長の大半は、多忙なプレイングマネジャーであり、部長も課長の役割の一部を担わないと、現場が回らないことも多いからです。

そのため部長職は、現場視点と経営視点の両視点で変革を主導することを求められる立場ではありますが、現実には現場視点一辺倒になり、役割を全うできないケースが多いのです。

<図表1>部長職の役割

<図表1>部長職の役割

次は、変革を主導できない部長を取り巻く問題について、前期・後期・通期の3つのフェーズに分けて解説していきます。

部長職前期の負のサイクル:自らの役割を設定できない

1つ目は、「部長職前期の負のサイクル」です(図表2)。課長から部長に昇格した際に、多くの部長は、自らの役割をうまく設定できないことに悩みます。部長職は、部署や規模によって、求められる役割が大きく異なるため、自らの役割を自分で設定しなければなりません。その材料として、部長の上司や人事が期待・役割を伝えることが必要ですが、しっかりと明示されないことが大半です。

期待・役割が明示されず、一律の研修のみで、自らの役割を設定する機会もないため、新任部長は、これまで培った課長時代のマネジメント手法で、部長業に取り組むしかありません。それであれば、期待・役割を果たせないのは当然です。そもそも、課長層のマネジメントは「監督・推進」、部長層のマネジメントは「変革の主導」と役割と期待は大きく異なるのです。

加えて、人材開発内における育成対象としての優先順位は低く、周囲からのフィードバックもあまり期待できません。そうして多くの部長は、自分が抱えている問題を認識できず、役割を設定する機会も得ることができないまま部長としての期待・役割を果たせないサイクルに陥ってしまいます。この負のサイクルの渦中にある部長は、しばしば周囲から「大課長」と呼ばれます。部長になりきれていない様子を象徴するような呼び名です。

<図表2>部長職前期の負のサイクル

<図表2>部長職前期の負のサイクル

部長職後期の負のサイクル:自分らしい変革を主導できない

2つ目は、「部長職後期の負のサイクル」です(図表3)。部長になって何年か経った頃には、優れた部長は1つ目の負のサイクルを何とか脱し、自らの役割を主体的に設定していることでしょう。しかし、部長職後期には別のサイクルがあります。それは、「自分らしい変革を主導できない負のサイクル」です。

実は、組織を変革するうえで最も重要なのは「自分らしさ」です。大胆な意思決定を伴う組織変革には、異論・反論や抵抗がつきものです。そうした状況下で変革をやりきるためには、「自分は何としてもこの変革を実現するのだ」という、その人らしさから生じる「覚悟」が欠かせません。また、自分の影響力をよく自覚することも大切です。部長は組織変革をするために、自分らしさを深く理解する必要があるのです。

しかし、部長職には多くの役割と重い責任があるため、自分らしさを見出しづらい状況にあります。一律の部長向け研修では、変革主導の方法やコツを学ぶことは出来ますが、自分らしさを内省する時間を充分に持つことは難しいでしょう。組織変革をやりきるためには、様々な壁にぶつかり、痛い思いをすることもあります。そのため、最初は「大胆な変革を遂行する」と意気込んでいた部長の多くが、途中で挫けてしまい、最終的には前例踏襲に陥ってしまうのです。変革をしなければ、部長の労力は減り、現場にも嫌われません。そうして変革が先延ばしになっていく、というのが2つ目の負のサイクルです。

<図表3>部長職後期の負のサイクル

<図表3>部長職後期の負のサイクル

部長職通期の負のサイクル:自らの言動を改善できない

3つ目は、「部長職通期の負のサイクル」です(図表4)。大きな影響力と権限をもっている部長職は、当人の価値観や言動が組織に反映されやすい、という特徴があります。影響力が良い方向に働けばよいのですが、悪い方向に働くことも少なくありません。極端に悪い方向に行くと、ハラスメントなどにつながってしまいます。ところが、悪い影響力について、部下(課長・一般社員)からフィードバックを受ける機会はほとんどありません。部下は部長との関係性を悪化させたくないからです。

他方、上司(事業部長)からのフィードバックは経営視点がメインで、現場視点のフィードバックはあまり期待できません。そのため、部長はよほどのことがない限り、現場視点での改善すべき言動や影響力に気づけないのです。

たちが悪いことに、部長主導の組織変革がうまくいき、自分のスタイルに自信がつくほど、この負のサイクルから抜け出すのは難しくなります。部長職が務まる人材は決して多くありませんから、会社も簡単には降格させません。そうして、「自らの言動を改善できない負のサイクル」を長く回し続ける部長が一定数いるのです。

<図表4>部長職通期の負のサイクル

<図表4>部長職通期の負のサイクル

これまで、前期・後期・通期の負のサイクルを解説してきましたが、各サイクルの重要課題を設定したのが下記になります(図表5)。

<図表5>部長職の重要課題

<図表5>部長職の重要課題

3つの重要課題に対する最適なソリューションであるコーチング

以上の3つの重要課題を解決する際に効果があるのが「コーチング」です。

コーチングとは、1対1の対等な協働関係を土台に行う専門的対話を通じて、受講者の成長と目標達成を促進するための手法です。なぜ、3つの重要課題にコーチングが有用なのでしょうか。それはコーチングの特徴である、個別性・継続支援・心理的安全性が高い場(図表6)に起因しています。

<図表6>部長職の重要課題に対する最適なソリューション:コーチング

<図表6>部長職の重要課題に対する最適なソリューション:コーチング

以上、3つの特徴からコーチングサービスが、研修やサーベイといった他施策以上に重要課題の解決の可能性を高めるといえるでしょう(研修・サーベイを組み合わせると、尚良いのは言うまでもありません)。さらに、部長職に良い変化が起きると組織全体への波及効果が期待できるため、効率的なサービスといえます。

各サイクルに対する具体的なコーチング支援策が、図表7・8・9です。

1つ目の「自らの役割を設定できない負のサイクル」に陥っている部長には、組織からの要請を踏まえたうえで、内省的対話によって自分らしさを認識してもらいます。そして、組織要請と自分らしさを統合させて、どちらも実現できるような自らの役割を見出してもらうのです(図表7)。

2つ目の「自分らしい変革を主導できない負のサイクル」に陥っている部長には、まずコーチが内省を促して、自己認知を深めてもらいます。そして、自分らしい変革主導の道筋を一緒になって見出していきます。次に、コーチと事業部長が両輪となって、部長の組織変革に伴走します。社内の事業部長は事柄の伴走(事業推進の支援)を、社外のコーチは人柄の伴走(価値観や、ビジョン、社内では相談しにくい悩みや不満を解消する支援)を行うと効果的です。さらに、部長自身の部署への影響力を自覚してもらい、その影響力やインパクトを有効活用する方法を考えてもらいます(図表8)。

3つ目の「自らの言動を改善できない負のサイクル」に陥っている部長には、最初に360度評価や上司との面談を通じて、周囲の期待・要望を理解してもらいます。次に、コーチと共に「部長としてのありたい姿」を明確化してもらいます。そのうえで、コーチが言動の改善に伴走して、勇気ある新たな一歩を称え、失敗を祝福しながら一緒になってありたい姿を目指すのです(図表9)。

「人は変わりたくないわけではない。変えられたくないのだ」は、『学習する組織』の著者ピーター・センゲ氏の有名な言葉です。特に部長ともなれば、誰かが変えようとするのは困難です。だからこそ、自らのありたい姿に向けて、変容支援するコーチングに効果があるのです。

コーチング施策は、受講した部長からの反響が大きく、大半の企業様がリピートされる支援施策になっています。今後、部長にコーチを付けることが当たり前になる社会がくると考えています。

<図表7>部長職前期:自らの役割を設定するためのコーチング支援策

<図表7>部長職前期:自らの役割を設定するためのコーチング支援策

<図表8>部長職後期:自分らしい変革を主導するためのコーチング支援策

<図表8>部長職後期:自分らしい変革を主導するためのコーチング支援策

<図表9>部長職通期:自己改善を促すコーチング支援策

<図表9>部長職通期:自己改善を促すコーチング支援策

執筆者

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シニアソリューションアーキテクト

星野 翔次

ベンチャー企業・商社勤務を経て、2013年に現在の株式会社リクルートに入社。 管理職として、部下がパフォーマンスを最大限発揮できるコミュニケーションを追求。 最近では、コーチングサービスを提供する部門にて、部長職の育成やコミュニケーション変革などに携わっている。

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