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360度評価を活用した人材開発施策

360度評価を活用してマネジメント行動の変容につなげるには

  • 公開日:2022/03/28
  • 更新日:2024/05/16
360度評価を活用してマネジメント行動の変容につなげるには

「360度評価」を導入する日本企業が増えている。つい数年前までは日本企業全体を見ても導入数はわずかと言われていたが、2020年には31.4%に達した(2020年3月弊社調査『人事600名の360度評価導入と活用の実態』)。そのなかで最近、顕著に見られるのが、360度評価を「人材開発・能力開発」に活用しようとする傾向だ。そこで、360度評価を活用した人材開発施策の概要と実例を紹介する。

360度評価を活用した人材開発を外部に委託するケースが急増している
「3つの壁」を乗り越えるには社外の第三者のサポートが必要
「ありたい姿」を自ら明確化することがマネジメント行動を自分で変える第一歩だ

360度評価を活用した人材開発を外部に委託するケースが急増している

最近になって、360度評価を「人材開発・能力開発」に活用しようとする日本企業が増えている。図表1・図表2では、そうした傾向がはっきり見て取れる。一方で、360度評価の結果を対象者本人に返却していない企業が24%に上ることも分かっている(2020年3月弊社調査『人事600名の360度評価導入と活用の実態』)。360度評価を人材開発・能力開発につなげるためには、結果の返却とそれ以降の対応が肝要なのだが、それが十分に行われていない企業が多く見受けられるのだ。

<図表1>360度評価を導入したきっかけ

<図表1>360度評価を導入したきっかけ

<図表2>360度評価の活用方法

<図表2>360度評価の活用方法

実は、360度評価の結果返却は決して簡単ではない。その原因には下記3つのことが考えられる。

(1)結果が著しく低い対象者への対応難度が高い
(2)対象者への忖度が働き、結果が上振れすることで、誤った自己認識を促す可能性がある
(3)低い回答をした評価者を特定しようとする「犯人探し」を行うなどして、職場の人間関係を壊してしまう

このように、360度評価の結果返却には、さまざまなリスクが伴うのだ。

そのために最近、360度評価を活用した人材開発を外部専門機関に委託するケースが増えている。弊社も、360度評価をマネジメント行動の変容につなげる「360度評価を活用したコーチングプログラム」を提供している。ここでは、弊社を事例としながら、360度サーベイを活用してマネジメント行動の変容につなげる手法を紹介する。

「3つの壁」を乗り越えるには社外の第三者のサポートが必要

360度評価を人材開発・能力開発に活用するときには、留意すべき「3つの壁」がある(図表3)。

(1)結果をありのままに受け入れられない「受容の壁」

高低の差はあるが、結果に対する受容の壁は大半の人に発生する。なぜなら、360度評価とは「ありのままのあなたではいけない」と伝えるツールでもあり、自身の360度評価の結果に否定的な感情を持つ可能性が高いからだ。360度評価は、そもそも1人で受け止めるのが難しいものなのである。

(2)自己変革の決意までには至らない「決意の壁」

ある程度のパフォーマンスを出しているマネジャーは、360度評価の結果を受けても、自分のスタイルを変える必要性を感じないケースが多い。しかし、本人に自己変革の決意をしてもらわなければ、人材開発にはつながらない。

(3) 行動を変えていく具体的なイメージが湧かない「行動の壁」

行動の壁があるマネジャーは、多い。なぜなら、マネジャーは忙しく、自分の行動を変えるための具体的な方法やイメージを考える時間がないからだ。「自分を変える必要はあるが、今は忙しいから後にしよう」と考えがちなのだ。

<図表3>3つの壁

<図表3>3つの壁

この3つの壁を乗り越えるためには、周囲のサポートが不可欠だ。ただし、上司や人事では、それが機能しないことも多い。人事評価や社内の評判への悪影響を気にするあまり、対象者が本音で話せないことや、素直になれないことがあるからだ。だからこそ、社外コーチなどの第三者が介入すると効果があるのである。

「ありたい姿」を自ら明確化することがマネジメント行動を自分で変える第一歩だ

では、どうすればいいのか。図表4は、弊社の課長・部長向けのプログラム概要だ。一般的に、3回のコーチングで課長・部長の認知・行動変容を起こしていく。特に重要なのが、2回目で「ありたい姿の明確化」を行うことだ。なぜなら、「人は変わりたくないわけではない。変えられたくないのである」(ピーター・センゲ『学習する組織』英治出版)からだ。ありたい姿を自ら明確化することが、マネジメント行動を自分で変えるための第一歩なのである。その際、企業ニーズ(Must)と、個人ニーズ(Will)を統合することを大切にしている。企業の求めることだけでは、人が本質的に変わることは難しい。だからこそ、個人の希望をベースに、企業の求めることを加味したうえで、認知・行動変容を促すのである。

<図表4>リクルートのコーチングプログラム(課長・部長向け)

<図表4>リクルートのコーチングプログラム(課長・部長向け)

図表5は、コーチングプログラムの実例だ。こちらの対象者は、結果返却の時点では360度評価の否定的なコメントを受け入れられずに反発した。受容の壁ができた状態である。1回目のコーチングでは、この受容の壁を取り払うために「相互理解&結果の受容」を深めていく。360度評価の否定的なコメントに反発する背景には、対象者が「そうせざるを得なかった理由」があることが多い。例えば、「新たな提案を聞き入れてくれない」というコメントに対して、少しのミスも許されない環境下に置かれている対象者の立場からすると、個人的には聞き入れたいが、役割上、聞き入れることが難しい事態が発生するのである。コーチは、こうした背景・理由に理解を示し、敬意を払うことで、本音で話し合える信頼関係を築いていく。 

そのうえで、2回目で「ありたい姿の明確化」を行う。コーチは対象者に「自分が大事にしたいことは何か?」「本当はどんな自分でありたいのか?」「どんな自分であるときに心が震えるのか?」などの問いを投げかけて、ありたい姿を明らかにしていく。最後の3回目では、「行動改善の伴走」をする。ここでは対象者自身に、どのような行動を取るのかを具体的に決めてもらうのだ。コーチはその伴走を行い、勇気ある新たな一歩を称えて対象者を送り出す。

<図表5>コーチングプログラムの実例(対象者・コーチの内面)

<図表5>コーチングプログラムの実例(対象者・コーチの内面)

コーチングプログラムの効果をまとめると、図表6のようになる。対象者の受容・意思決定・行動を促進し、受容の壁・決意の壁・行動の壁を乗り越えるサポートをするのが、コーチングプログラムなのである。

<図表6>コーチングプログラムの効果

<図表6>コーチングプログラムの効果

ここまで、360度サーベイを活用した人材開発施策について概要をご紹介してきました。
具体的なテーマや企業事例なども紹介していますので、ぜひお問い合わせください。

執筆者

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シニアソリューションアーキテクト

星野 翔次

ベンチャー企業・商社勤務を経て、2013年に現在の株式会社リクルートに入社。 管理職として、部下がパフォーマンスを最大限発揮できるコミュニケーションを追求。 最近では、コーチングサービスを提供する部門にて、部長職の育成やコミュニケーション変革などに携わっている。

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