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THEME マネジメント/リーダーシップ ビジネススキル

インタビュー株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 高田貴久氏

不確実な時代には仮説思考が重要性を増す

論理的思考や問題解決思考、戦略立案など、マネジャーに求められるビジネススキルは多岐にわたる。ビジネススキルの体系化と普及に取り組んでいる高田貴久氏によれば、なかでも重要性を増しているのが仮説思考だ。仮説思考が求められる時代のマネジャーの役割とは何だろうか。

確かな情報に基づいて当たりをつける

外資系コンサルティング会社などを経てビジネススキルの体系化と普及を目指し、人材育成ファームを立ち上げ15年目になります。15年前と現在を比較して感じるのは、ビジネスに必要な普遍的スキルのなかで仮説思考の重要性が増している点。これはマネジャーに限らず、すべてのビジネスパーソンに言えることです。では、仮説思考とは何でしょうか。これを説明する前にまず、ビジネススキルにおける問題解決思考と仮説思考の位置づけについて説明したいと思います。

ビジネスをする上では、あるべき姿と現状とのギャップが問題となって表れます。問題を解決するためにはまず、情報に基づいて課題を絞り込み、その根本的原因を特定した上で対応案を練り、実行計画へと落とし込んでいく。この一連の流れで必要とされるスキルを問題解決思考と呼びます。

問題解決思考の基本は情報を精査するファクト思考であり、一貫したつながりを作っていく論理的思考です。一般的に知られているPDCAの流れでいうと、Pの段階で「What(何を)」「Where(どこで)」「Why(なぜ)」「How(どうする)」を明らかにした上で、DCAへと進みます。よくあるのがPDCAサイクルのうち、ひたすらPとDだけに力を注ぎ、CとAが疎かになっているケースです。新任のマネジャーにありがちですが、前任者を否定し、せっかく積み上げてきたそれまでの実績をすべて捨て、ゼロからまったく違うことに挑戦することばかりを繰り返していると、一生懸命積み上げたつもりが実際は思っていたよりも積み上がっていなかった、ということにもなりかねません。マネジャーに就任したら、まずは前任者が何をやっていたのかを振り返る。つまりCheckから入り、CAPDという流れで取り組んでいくことが大事だと思います。

一方、かつては、論理的思考や問題解決思考に比べて重要性が理解されなかった仮説思考が、近年注目されてきています。同じようなことを同じようにやってもビジネスが回るのであれば、仮説は特に必要ありません。しかし、名だたる企業の多くが「過去の延長線上に未来はない」と言い始め、99点の状態を100点にするアプローチから、ゼロから60%を作るアプローチを求めています。必要な情報は社内にも社外にもない場合が多く、仮説を立てることが重要になってきます。

仮説を立てるとはつまり、当たりをつけること。単なる勘と違うのは、それが確かな情報に基づいているという点です。売上がおちている場合、すべての顧客データを分析すれば答えは出るかもしれませんが、それをやっていたら時間的にとても間に合わない。あるいは、そもそもこれまでにない商品を扱っているため、分析しようにもデータそのものがない、というケースもあるでしょう。その場合、とりあえずの仮説を立てて前に進み、結果を見た上で再び仮説の検証に戻るという仮説思考のアプローチが必要不可欠です。

戦略に基づく優先順位づけ部下の能力を引き出す工夫を

ものごとを筋道立ててつなげていく論理的思考を身につけていれば仕事をこなせた時代に比べると、ビジネスパーソンに求められるスキルは高度になっています。問題解決思考をより精緻に回すためには仮説思考に加えてファクト思考、つまり事実に基づく情報分析力やそこから示唆を導き出す力も重要です。情報ソースが限られていた時代には、情報をとってくることそのものに価値がありました。しかし今では、全員が等しく同じ情報にアクセスできるため、そこに何か違うもの──例えば、他者とは違う経験や他業界のアナロジーなど──を組み合わせ、新たな発想を生み出す力が求められています。企業が社員の副業を認めたり、開発の部隊をあえて雑居ビルに入居させ、社外との接触の機会を増やしたりするなどの取り組みを始めているのも、社外の人脈や知識、経験にアプローチしなければ新しいものが生み出せなくなっているからです。

必要なビジネススキルが高度化する一方で、マネジャーは忙しくもなっています。仕事は増えているのに部下は増やせず、働き方改革で残業もできない。そんな状況のなか、目の前の仕事を優先順位づけすると、どの仕事も優先で緊急ということになりがちです。しかしその際に考えてほしいのは、それらの仕事が会社の中長期的な戦略やビジネスモデルにどれだけつながっているかという点です。マネジャーには1、2段上の視点が求められます。戦略なりビジネスモデルなりの視点をもち、会社の中長期的競争力に貢献するかどうかで仕事の優先順位を判断しなければなりません。

もう1つ、仮説思考が重要性を増す時代、マネジャーに求められているのは、「部下は自分と違う成長をしていく」という前提に立って考えることでしょう。未来は過去の延長線上にないのですから、自分のやり方を部下に押し付けても意味がない。自分が分からないことを部下が手がける場合もあるでしょう。その際、上司だから上とか、上司だから部下よりも知っているという前提に立つのではなく、部下のやり方を認め、その人の能力を引き出してあげたり、気持ちよく仕事をさせて成果が出せるようお膳立てをしてあげたりすることが、大事になってきます。

職場づくりのアプローチがますます重要になってくる

マネジャーという立場から問題解決にアプローチするには、大きく2つの方向性があります。1つは仕事そのものにアプローチするやり方。開発がうまくいっていない場合、「こうしたらうまくいくよ」とアドバイスすることなどがそれにあたります。しかし先にも説明したように、仮説思考が重要性を増している時代には上司といえども答えをもたないわけですから、こうしたアプローチはあまり機能しなくなっています。半面ウエイトが増しているのは、部下や後輩が仕事で行き詰まったり、悩みを抱えたりしている状況があった場合、その状況に対してアプローチしていく方法です。

野球に例えると、試合に勝つためには野球そのものを練習する必要があります。しかしそれだけでは不十分で、グラウンドを整備したり、ボールを磨いたりといった環境整備も大事です。会社でいうと、これは人間関係を含む職場づくりに相当します。仕事の仕組み化、標準化、優先順位づけなどはその1つですね。

とはいえ、実際は、職場づくりにまでとても手が回らないというマネジャーも多いでしょう。根本的に人が足りておらず、マネジャーがプレイヤー化しているケースも多く見受けられます。しかしこれではいつまで経っても部下は育ちませんし、組織の成長余力も削がれてしまいます。

忙しいからより忙しくなるという悪循環を断ち切るためにも、忙しいときほどマネジャーはあえて立ち止まり、本当の問題は何かを考え、場当たり的な対策に終始していないかを検証すべきです。戦略をしっかり描けば仕事の量は減らせますし、采配がしっかりしていれば、仕事の無駄をなくせます。同じ職場でも多忙な人とそうでない人がいるなどムラもある。人事制度そのものが硬直化していないか見直すと同時に適材適所を徹底し、人員の面でも全体最適化に取り組むことが大事だと思います。

【text:曲沼美恵】


※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.58 特集1「マネジャーの役割再考「あれもこれも」からの脱却」より抜粋・一部修正したものです。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE
高田 貴久(たかだ たかひさ)氏
株式会社プレセナ・ストラテジック・パートナーズ 代表取締役社長 グローバルCEO

東京大学理科I類中退、京都大学法学部卒業。シンガポール国立大学アジアパシフィック エグゼクティブMBAコース卒業。アーサー・D・リトル、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、2006年プレセナ・ストラテジック・パートナーズ設立。『ロジカル・プレゼンテーション』『問題解決』(いずれも英治出版)などの著書がある。

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