導入事例
「人財育成ポリシー」と「人財育成のエコシステム」を創り、人的資本経営の基盤を整えた
大和ハウス工業株式会社
- 公開日:2024/11/11
- 更新日:2024/11/11
事例概要
背景・課題
私たち人財・組織開発部は、大和ハウスグループのパーパス“将来の夢”を受けて、人財育成のあり方を一から見直すことに決めてから、1年ほど社内のさまざまな人と対話を重ね、2023年の年末に「人財育成ポリシー」を完成させました。ポリシーの上段には、社是の1つ「事業を通じて人を育てる」という一文を掲げ、中段には「成長Story」を明文化し、下段には「3つの基盤づくり」を定義しました。
検討プロセス・実行施策
私たちは人財育成ポリシーを具現化するために、リクルートマネジメントソリューションズと共に「人財育成のエコシステム」を構築しました。なぜなら、「人財育成は本当に企業業績につながっているのか?」という根本的な疑問に答える必要があるからです。私たちは人財育成のエコシステムに「仮説サイクル」を盛り込み、人的資本の価値向上が業績向上につながる仮説を示しました。
成果・今後の取り組み
私たちは今後、人財育成のエコシステムの仮説を自分たちの手で証明していく必要があります。一方で、人財育成ポリシーに沿った「人財育成体系」の刷新も始めています。成長Storyは研修や施策を有機的につなげ、従業員の育成を総合的に行ううえで役立つことが分かってきました。人財育成ポリシーの影響は、人財育成のみならず人事施策全体に波及しつつあり、現場にも良い影響を与えています。
背景・課題
新パーパスを受けて、1年がかりで「人財育成ポリシー」を創出
菊岡:2022年、私たち大和ハウスグループは、パーパスにあたる“将来の夢”を描きました。「生きる歓びを、未来の景色に。」というものです。グループ役職員に加え、ステークホルダー(株主・取引先・大学生など)の声も取り入れながら、延べ22回、約4万人との対話を経て策定しました。
創業100周年の2055年に向けて、創業者・石橋信夫の精神を継承し、これからの当社グループの羅針盤となるコンセプトを生み出すことができました。
私たち人財・組織開発部は、この“将来の夢”を受けて、人財育成のあり方を一から見直すことに決めました。その第一歩として、人財育成の拠りどころとなる考え方を創出することにしたのです。私たちは1年ほど、全国の支店長や各部門の人財育成担当者など、社内のさまざまな人と対話して裏づけや根拠を積み重ね、2023年の年末に「人財育成ポリシー」を完成させました(図表1)。
人財育成ポリシーのキーコンセプトは「Keep Learning, Growing, and Dreaming」としています。これは社是である「事業を通じて人を育てる」の精神に則り、あらゆる社員が常に学び続け、成長し続け、夢を追求し続けて欲しい、という想いを込めています。また、人財育成の基本精神・哲学として、社是「事業を通じて人を育てる」を最上段に掲げたうえで、今の時代に合った、解像度を上げた解釈を加えています。現場での実践を通じて人財を育成する現場第一主義は、私たちが創業以来、最も大切にしてきた考え方です。この伝統を忘れないためにも、社是の一文を上段に据えています。
図表1:人財育成ポリシー
佐々木:中段には、段階的かつ着実に成長するためのロードマップ「成長Story」を明文化しました。最初に「実践を通じて、自分の基盤をつくる」、次に「独自性を活かし、個性を確立する」、最後に「新しい価値を生み出すパイオニアになる」という守破離の構成になっています。従業員一人ひとりに、このステップで成長してもらいたい、という想いを込めました。同時に、育成側の上司・先輩には、守の先に破があり、破の先に離があることを日常的に部下に示してもらいたい、という願いも入っています。さらに、私たち人財・組織開発部が、今後は成長Storyを常に意識して研修や人財育成施策を用意する、という意思表示でもあります。
松本:下段には、「成長Story」を支える土台として、機会づくり、仲間づくり、職場づくりという「3つの基盤づくり」を定義しました。この3つの基盤は、従業員それぞれがお客様や社会から信頼され、愛される真のプロフェッショナル人財として成長するために必要な土台です。管理職には、自組織の機会づくり、仲間づくり、職場づくりができているかどうかを常に見直し、従業員が「Keep Learning, Growing, and Dreaming」を実行できる環境を整えることに尽力してもらいます。私たちは、このように部下を育て、先輩方から受け取った“学び”のバトンを未来へつないでいこう、と社内に呼びかけているのです。
検討プロセス・実行施策
「人財育成のエコシステム」を構築し、人的資本の価値向上が業績向上につながる仮説を示す
佐々木:私たちは、こうして自分たちで人財育成ポリシーを構築し、人財育成の「軸」を創出しました。しかし、人財育成ポリシーを具現化する育成体系を構築するためには、外部の知見も必要であると考え、いくつかの会社に声をかけて、最終的にリクルートマネジメントソリューションズにコンサルティングをお願いしました。
松本:リクルートマネジメントソリューションズを選んだ最大の決め手は、コンサルタントの真摯な姿勢と引き出しの多さでした。私たちは議論の最中、自分たちのさまざまな悩みやモヤモヤをいくつも投げかけましたが、コンサルタントはどのような言葉も必ずいったん受け止めて、冷静に整理してくれました。そのうえで、多様な他社事例を紹介しながら、私たちの社風や特殊事情を踏まえて、今の私たちに必要なものを一緒になって考えてくれたのです。私たちは、その姿勢と知識量を信頼しました。
菊岡:こうしてリクルートマネジメントソリューションズと共に構築したのが、「人財育成のエコシステム」です(図表2)。上部は人財育成ポリシーと基本的に同じです。このエコシステムのポイントは下部にあります。
図表2:人財育成のエコシステム
私たちは人財育成体系を再構築するうえで、「人財育成は本当に企業業績につながっているのか?」という根本的な疑問に答える必要がありました。なぜなら、経営や投資家からすれば、従業員をいくら育てたところで、業績向上につながらなければ、人財育成に投資する意味がないからです。私たちが人的資本経営のアクセルを踏むためには、人的資本の価値を高める(=人財を育成する)ことが業績向上につながると証明する必要があるのです。
下部は、その「仮説サイクル」になっています。このサイクルは、人的資本と知的資本が相互に関係し合い、両者の価値向上が財務資本の強化につながることを示しています。つまり、人的資本の価値を高めることは、社内の知的資本を増やすことにつながり、ひいては事業の革新や拡大に寄与するのです。それが財務資本を増やし、人的資本へのさらなる投資が可能になるという仮説です。
成果・今後の取り組み
人財育成ポリシーに沿って人財育成体系を刷新し、仮説を証明していく
菊岡:私たちは、人財育成のエコシステムによって、ステークホルダーに「人財育成に投資する意義」を仮説として示すことができました。今後は、この仮説を自分たちの手で証明していく必要があります。この仮説を証明するためのKPIを定めたり、測定方法を検討したりと、すべきことはいくつもありますが、証明に向かって着実に進んでいきます。
松本:さらに、人財育成ポリシーと人財育成のエコシステムを受けて、「人財育成体系」の刷新も始めています。最初に、既存の研修や施策を成長Storyにプロットしてみたところ、現状は守(実践を通じて、自分の基盤をつくる)に偏っていることが分かりました。今後は、破(独自性を活かし、個性を確立する)や離(新しい価値を生み出すパイオニアになる)の研修や施策を新たに増やし、成長Storyを歩みやすい環境をつくっていきます。
佐々木:一例を挙げると、私たちは2022年から「越境キャリア支援制度」を実施しています。副業・社内副業・出向などの実務メニューをいくつも用意したうえで、従業員に自ら手を挙げて活用してもらう仕組みです。今回、この制度は成長Storyでいえば離の施策であると再定義できました。こうしてポジションが定まったことで、越境キャリア支援制度の意義や意味がより明確になったのです。成長Storyは、研修や施策を有機的につなげ、従業員の育成をトータルで行ううえで役立つことが分かってきました。
菊岡:また私たちは、人財育成ポリシーを通して、3つの基盤づくりの中心的存在となる「ミドルマネジャー」の重要性をあらためて認識しました。そこで今後、4年がかりで全てのミドルマネジャーにマネジメントスキルをアップデートするためのプログラムを実施し、全員に自分なりのマネジメントスタイルを打ち立ててもらう取り組みを開始しています。さらに、一階層下の主任職を対象とした研修も、完全リニューアルを予定しています。
松本:さらにいえば、人財育成ポリシーの影響は、人財育成を超えて、人事全体に波及しつつあります。例えば、私たちはこれから人財育成ポリシーを人事制度改革と連動させていく予定です。すでに人事評価制度の再構築も検討しており、採用ブランディングなどにも活用できるでしょう。
佐々木:人財育成ポリシーは現場にも良い影響を与えています。例えば、人財・組織開発部のメンバーたちは、成長Storyに照らし合わせながら、破や離の研修を主体的に企画し始めました。また会議のとき、「成長Story」や「機会づくり、仲間づくり、職場づくり」などの用語が自然と出てくるようになってきました。人財育成ポリシーは部の全員が関わって策定したものですから、早くも自分ごとになっているのです。それから、研修を受講する従業員たちにも、人財育成ポリシーを通じて意識を共有しやすくなりました。これも大きな効果の1つです。
菊岡:時間をかけて生み出したパーパス“将来の夢”を、絵空事で終わらせてはなりません。私たち人財・組織開発部は、人財育成と組織開発を通して、“将来の夢”の実現に貢献していきます。人財育成ポリシーと人財育成のエコシステムは、そのために欠かせない重要なピースです。この2つを創ったことで、私たちは人的資本経営の基盤となる考え方を整えることができたと考えています。
コンサルタントの声
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
シニアコンサルタント
福田 秀明
大和ハウス様の人財育成のポリシーとエコシステムには、他社様ではあまり見受けられない特徴があります。
ポリシーは一般的には育成方針を示すものですが、大和ハウス様ではもう一歩踏み込み、人が育つメカニズムまで表現されていることが特徴です。「創業以来、我々はどのように育ってきたのか」「これからはどう育っていくのか」という問いに真摯に向き合われ、生まれたポリシーです。
またエコシステムは、個の成長と組織の成長の関係にとどまらず、人的資本、知的資本、財務資本の循環モデルにまで踏み込んでいることが特徴です。これは「人財育成は本当に企業業績につながっているのか?」というシビアな問いに対しても、曖昧にせず積極的に考えを出すという大和ハウス様の姿勢から生まれました。
そしてこれらの背景には、大和ハウス様が長く継承されてきた価値観があります。例えば「今一歩踏み込め」「知らないことに対しても逃げずに決断する」「積極精神は最良の資本」などです。このような価値観のうえで、ポリシーとエコシステムを構築されました。
今後はポリシーとエコシステムに基づき、「大和ハウスらしさ」を根底に持ちながら、具体的な施策の設計、運用へと進んでいきます。それが大和ハウス様の人財育成の勝ち筋だと確信しながら、リクルートマネジメントソリューションズとしては最善の伴走を続けたいと思います。
取材日:2024/08/22
企業紹介
大和ハウス工業株式会社
大和ハウスグループは「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、事業の川上から川下まで一気通貫の提案を可能とするグループ力で、絶えず変容する社会の要請に応えるため、地域に密着した事業推進により新たな価値創造に挑戦している。また、国内のみならず、米国を中心に、アジア・ASEAN、大洋州、欧州など世界各地で事業を拡大し、質の高い住宅商品や地域発展に貢献する建築技術の提供に尽力している。
関連する
無料オンラインセミナー
Online seminar
サービスを
ご検討中のお客様へ
- お役立ち情報
- メールマガジンのご登録をいただくことで、人事ご担当者さまにとって役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。
- お問い合わせ・資料請求
- 貴社の課題を気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案いたします。
- 無料オンラインセミナー
- 人事領域のプロが最新テーマ・情報をお伝えします。質疑応答では、皆さまの課題推進に向けた疑問にもお答えします。
- 無料動画セミナー
- さまざまなテーマの無料動画セミナーがお好きなタイミングで全てご視聴いただけます。
- 電話でのお問い合わせ
-
0120-878-300
受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください
- SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ -
0120-314-855
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)