新入社員の特徴やオンボーディング状況をデータで可視化し、人によるフォローで離職率減少

公開日:2023/12/25
更新日:2023/12/25
新入社員の特徴やオンボーディング状況をデータで可視化し、人によるフォローで離職率減少

プロジェクト概要

背景・課題

当社は、毎年100名を超える規模での新卒採用を行い、初期配属のほとんどが営業部署でした。社員を「人財」として大事にしているなか、コロナ禍の2021年卒の新入社員の離職率が上昇しました。新入社員が経験してきた就職活動や価値観が変化してきているのでは、という仮説のもと、新入社員フォロー施策を見直すこととしました。

検討プロセス・実行施策

4月の新入社員向けのオンボーディング研修でSPI3 for Employeesを導入しました。本人の自己理解の促進や、OJT担当やメンターが新入社員を理解する参考にするためです。また、新入社員のオンボーディング(適応)状況を測定するために年4回「オンボーディングサーベイ」も導入しました。新入社員本人の状態に加えて、所属組織の状態を把握でき、組織を巻き込んだフォローを行うことにも役立っています。

成果・今後の取り組み

一連のオンボーディング施策の実施により、2022年卒新入社員の離職率は前年の3分の1程度に下がりました。コロナ禍前も含めた過去の離職率と比較しても低い水準です。2年目である今年は、本配属を決定する材料としても活用しています。今後は組織開発的なアプローチへの展開も視野に入れながら、一人ひとりのWILLを大事にしつつ、いきいきと働き、活躍できるような会社を目指していきます。

背景・課題

離職増加により今の若者の価値観に沿ったオンボーディング施策への見直しを検討

加藤さんの写真

野村不動産ソリューションズは毎年100名を超える規模で新卒採用を行っており、入社した新入社員のほとんどは営業部署に初期配属されます。当社は人が介在する営業が事業の中心にあるため、「人財が命」という風土が強くあり、社内外に対して「人材」ではなく、「人財」と呼んでいます。人財育成施策や社員向けの研修も手厚く、業務スキル系の研修から、IT・データ活用に特化したオンライン教育まで幅広く力を入れて実施しています。そんな社員を大事にしている当社にとって、2021年卒の新入社員の離職率が上昇したことは、大きなショックとなりました。

2021年卒の採用活動当時は、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言の影響で、採用見合わせを行う企業も相次ぐ状況でした。この年の新入社員のなかには、自分が納得できる就職活動ができずに、「自分のキャリア選択の納得感」や「就職活動をやり切った感覚」がないまま当社への入社を決意した人もおり、それも、離職率上昇の一因かもしれないと考えています。

当社では早期離職は「本人にとっても会社にとっても大きな損失である」と考えています。2021年度が半分終了した時点で、例年にはなかった複数名の新入社員からの退職意向があったときには、衝撃を受けると共に、新入社員フォロー施策を見直さなければならないと真摯に受け止め、すぐに社内で議論を開始しました。

対応策の検討を進めるなかで、「今の若者の価値観に合った新入社員研修やオンボーディング施策を実施すべきなのではないか」と考えるようになりました。今の若手層はかつてよりも「WILL(自分の意志や志向)」が強い傾向があると感じています。新入社員であっても将来の「なりたい像」や5年後のキャリアパスをしっかり考えている人が多いように感じたのです。一方、当時実施していた新入社員研修は営業ロールプレイングなどスキル開発型が中心で、画一的な側面も強く残っていました。

本人の「WILL」を重視した方が定着を促すことができ、なおかつ本人の成長につながるのではないかとの仮説のもと、新入社員のフォロー施策全般を見直すことにしたのです。また、初期の新入社員研修で終わるのではなく、入社半年後の本配属後も含め1年間はフォローし続けられる仕組を取り入れたいと考えました。新入社員の定着・活躍までをトータルで継続的に支援できるように、各種の施策の見直し・企画をしました。

検討プロセス・実行施策

研修の実施と定期的なサーベイによってオンボーディングを可視化

まずは、4月の新入社員向けのオンボーディング研修で本人の特徴を可視化できるアセスメントツール、SPI3 for Employeesを活用することにしました。本人が結果やデータを基に自分の特徴を理解できるのはもちろんのこと、ツールがあることにより教育担当(OJT担当)やメンター(他部署所属で相談役となる先輩社員)が新入社員を理解するための材料にもなると考えたのです。

新入社員が受検した結果を、まずは本人に開示し、それを基に研修を行っています。実際の研修の場では、SPI3 for Employeesという客観指標があることで、自分のモチベーションリソースを踏まえたWILLの言語化や、CAN(できること)やMUST(やるべきこと)への接続がしやすかったと感じています。
また、同じフレームを利用することで、新入社員同士の相互理解を促進することができました。異なる結果が出た場合はもちろんのこと、同じワードを持つ者同士であっても背景が異なることを理解するなど、お互いの理解を深めるきっかけとして使うことができました。

また、新入社員のデータを基に、OJT担当やメンターなどの新入社員の育成に直接関わるスタッフに対しても結果の読み取り方の説明会を実施しています。新人の個別の志向や価値観を理解してもらい、アドバイスや育成のヒントを得てほしいと思いました。

SPI3 for Employeesは新入社員と受け入れ側をつなぐコミュニケーションツールとして機能していると感じます。OJT担当やメンターが助言をする際も、新入社員本人への理解があることで、相手が受け入れやすい伝え方ができるなどのメリットがあるでしょう。

また、新入社員のオンボーディング(適応)状況を測定するサーベイを年に4回実施しています。今回利用したサーベイ(「オンボーディングサーベイ」)は新人の配属から立ち上がり、適応までの状態をモデル化したものをベースに作成されています。その過程で壁として現れる5つの要素と本人の成長実感を測定しています。適応できたとしても、本人が成長実感を持てていないとワークエンゲージメントは高まりづらいといわれており、前述の最近の若手はWILLを大事にしているという話と通ずるものがあります。単純に新入社員のコンディションだけでなく、「現状本人がどれくらいオンボーディングできているのか?」「それは何が理由なのか?」「どういう支援があると乗り越えられそうなのか?」を測定することができます。それを基に個別フォローに活用できることが魅力に感じて、2022年よりサーベイを実施することにしました。


<図表>新人・若手の「ジャーニーマップ」〜プロセスモデルにおける壁の躓きの例


新人・若手の「ジャーニーマップ」〜プロセスモデルにおける壁の躓きの例


サーベイを定期的に実施することで個人のなかでの変化を見ることができますし、他社も含めたリファレンスデータが充実しており、一般的な傾向と比較することができるのも有用だと感じました。オンボーディングの過程においては、新入社員の成長実感は常に一直線に上昇するわけではありません。壁にぶつかる時期も当然ありますし、それが普通のことでもあります。サーベイのスコアが下がったから単純に悪いとも言い切れず、リファレンスデータや一般的なモデルとの比較や、その社員の過去のスコア遷移も踏まえて、フォローすべき状態なのか?を判断することが可能となりました。

サーベイの結果は個人の状態が的確に表れているだけでなく、新入社員を取り巻く店舗や組織のコンディション、先輩・上司のフォロー体制や関わりも把握することができると感じています。サーベイの結果を見て、気になる社員に対して人事から個別に声がけをしたり、組織に働きかけたりするなどのきめ細かいフォローが可能になりました。人事だけで新入社員をフォローすることには限界があり、配属先の上司や先輩含めて会社全体で支援していく必要があります。それを実現するためにも、根拠となるデータをもって組織に対してフィードバックや働きかけができるというのは非常に心強いです。

このような施策を通じ、組織一丸となりながら、新入社員をフォローする体制を構築してきました。

成果・今後の取り組み

離職率が3分の1に減少。データを活用して、組織的な分析へと発展

加藤さんの写真

一連のオンボーディング施策の実施により、2022年卒新入社員の離職率は前年の3分の1程度に下がりました。これは当社のコロナ禍前も含めた過去の離職率と比較しても低い水準なので、施策全体として一定の成果はあったと考えています。

2年目も改善しながら継続しています。1年分のデータが蓄積されたことで、当社の新入社員のオンボーディングの傾向も見えてきました。その傾向も踏まえ、次年度以降のフォロー施策にも反映しています。今年はサーベイの実施時期を早めて、10月の本配属検討時の参考材料にできるように実施しました。現状を踏まえて本人にとっても組織にとってもより良い本配属を決めることができたのは2年目の大きな進化です。

今回の施策を通じて、SPI3 for Employeesのデータも蓄積されつつあるので、今後は新入社員フォロー以外にも生かしたいと考えています。今後、社員データの蓄積が進んで、組織的なタイプの特徴などが分析できれば、組織開発的なアプローチに展開できる可能性もあるので、継続して取り組んでいくつもりです。

人事領域において「データの活用」と「人による丁寧なフォロー」を組み合わせることで、可能性はさらに広がっていくでしょう。一人ひとりのWILLを大事にしながら、いきいきと働き、活躍できるような会社を目指していきます。

アナリストの声
小路の顔写真

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HR Analytics & Technology Lab アナリスト 小路 純寛


新しく会社・組織に加わったメンバーがいち早く職場に慣れて、一人前の社会人として定着するためにはどうしたらよいのか。野村不動産ソリューションズ様のように、若手のオンボーディングにおける現状を「詳細」に把握し、エンゲージメントを高めるための施策や離職を防止するための施策の効能を「詳細」に調べ、離職・育成問題に「本気」で手を打ちたい、そのように考えられている企業の皆様も多いのではないでしょうか。

今回の施策では、「オンボーディングサーベイ」とそれに紐づくデータ分析Solを通じて、アナリストとして課題解決に当たらせていただきました。
具体的には、
1. 一般傾向(リファレンスデータ)と比較したときの、定着のための(サーベイ内)KPI指標の状態確認
2. 壁を乗り越えるための必要な促進要素(本人の姿勢、上司や職場といった周囲との関わり、経験の有無と学びの度合い)の把握
3. 複数回のサーベイ実施を通じた、野村不動産ソリューションズ様ならではのオンボーディングジャーニーマップの構築
などを支援することで、人事の皆様のお役に立てることができたと実感しています。また、実施される施策の有効性を科学的な根拠をもって担保・提言できたと感じております。

今後も、オンボーディング領域における課題に悩んで本気で解決したいと考えられている皆様に寄り添いつつ、オンボーディングサーベイの提供と蓄積されている最新の知見・ナレッジをもって課題解決に当たらせていただきたいと考えております。

企業紹介

野村不動産ソリューションズ株式会社
2000年に野村不動産から分社独立し、会社としての「若さ」と野村不動産時代から培ってきた「実績・信頼」をベースに、チャレンジャー企業として成長を 続けている。個人・法人のお客様を対象とした不動産仲介など、不動産流通ビジネスを中心にビジネスを展開。インターネットによる情報提供に業界各社に先駆けて取り組み、運営する不動産情報サイト「ノムコム」 は業界トップクラスのアクセス数を誇っている。また、営業版図の拡大だけでなく、営業の質の向上も目指している。単に人員を増やすのではなく、人財育成体制も整備し、質と量の両側面から顧客価値の最大化の実現に向けて歩みを進めている。


※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。


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