導入事例
未来を創る「人の三井」が取り組む——新人向けセルフリーダーシップ研修
三井化学株式会社
- 公開日:2019/01/11
- 更新日:2024/11/07
事例概要
背景・課題
三井化学では、社員一人ひとりが自ら考え行動する「自主・自立・自走」の精神を人材育成のテーマとしています。知識やスキルだけでは変化の激しい世の中を勝ち抜くことは難しく、マインドの部分を重視した研修を併せて実施しています。新人から管理社員まで、マインド研修の内容に一貫性を持たせ、共通言語で共に語れるように、弊社の価値観に合う研修を探していました。
検討プロセス・実行施策
2017年度から新入社員研修に「ディスカバリー」を導入することを決定しました。現在は社内講師を養成し、社員が自ら語ることで新入社員がより理解を深められるよう工夫しています。学んだことが実務環境でも実践されるよう、新入社員のチューター役に対する研修でも内容を共有しています。
成果・今後の取り組み
「ディスカバリー」や「7つの習慣」に出てくるキーワードが、日々の会話のなかで飛び交うくらい、組織への浸透をはかるのが今の目標です。これが達成できた時には、どんな環境下でも社員一人一人が「自ら考え行動」し「成長し続ける、しなやかで強い」企業文化が実現できると信じています。
背景・課題
「自主・自立・自走」を体現する人材を育成したい
三井化学は「革新的な新製品や技術の開発を担う化学産業は、社会課題に対して、その果たすべき役割が極めて大きい」と考え、目まぐるしい環境変化に迅速に対応しながらも、さまざまな事業活動を通じた社会課題の解決による社会貢献を目指しています。2017年度からスタートした「2025長期経営計画」。事業ポートフォリオ変革を通じて顧客起点型ビジネスモデルへの転換を図るなど、さらなる変革に踏み出しています。
これまでの化学業界は、より「川上」でビジネスをしていました。世の中に広く価値を提供できる一方で、川上にいるがゆえ、自分たちの技術や製品が見えづらく、しかも目に触れる最終商品になるまで長い商流を経なければなりません。
そのため、漫然と仕事をしていると、本来の目的を見失うことにもなりかねないのです。だからこそ、この変革に踏み出す時代に生きる三井化学社員には、「化学の力で社会に貢献する」という使命を抱き、常に高く広い視野をもって、「誰のために」「何のために」を意識しながら、自らの役割を果たすことが期待されています。
社内でこれまで提供していたプログラムは、手前みそですが、一つひとつ非常に意味のあるプログラムだったと思います。しかし、研修から職場に戻ってきた人達が何事もなかったように仕事にとりかかる様子を見て、「学んできたことが職場で語られていない」ということに気づきました。
例えば、新入社員や若手社員が、研修で気づきを得て職場に戻り、新しいチャレンジをしたいと考えていても、その上司に研修内容への理解が足りず、実践と挑戦の機会をうまく与えることができなければ、そのやる気は日常の習慣のなかに容易に消えてなくなります。そこで、上司や先輩も、新入社員と同種のマインド研修を受けていれば、職場に戻った際もエネルギーが維持でき、学びの継続や実践への結びつけがしやすくなるのではないかと考え、2016年から研修体系を全面的に見直し、一貫性のあるものを再設計することになりました。
検討プロセス・実行施策
新入社員にこそ価値観を浸透させるマインド研修
研修体系の見直しにあたり、まず私自身が担当していた新入社員研修について検討した結果、社会人として真っさらなスポンジ状態にある新入社員の時にこそ弊社の価値観「自主・自立・自走」を浸透させるマインド研修が必要だ、との考えに至りました。
あらためて、どのような研修が効果的なのかチームで検討を重ねた結果、「7つの習慣」*1のコンセプトが弊社の価値観に合うとの結論を得て、その要素が詰め込まれた新入社員向けのセルフリーダーシップ研修「ディスカバリー」*2を導入することにしたのです。
*1「7つの習慣」
米国の大学教授であったスティーブン・R・コヴィー博士が、米国の建国以来200年間に書かれた成功に関する著作物を調査し、集大成としてまとめたのが書籍『7つの習慣―成功には原則があった!』(原題:The Seven Habits of Highly Effective People)。書籍の内容をもとにリーダーシップ・トレーニングも開発され、組織変革や自己変革を目的に世界60カ国以上で導入されている。
*2「ディスカバリー」
「7つの習慣」のエッセンスを盛り込んだセルフリーダーシップ開発のための新入社員研修。
入社式翌日から「組織人」としての意識変革
新入社員研修は入社式翌日から約1カ月間行います。『学生から社会人へ、そして三井化学の組織人へ』というキーワードを盛り込み、学生を卒業し組織人マインドを醸成する、「ディスカバリー」の言葉を借りると「根(人格)も葉(能力)もある組織人になる」ことをテーマに実施しています。
最初に「ディスカバリー」を導入した2017年の新入社員研修は、リクルートマネジメントソリューションズに相談して、講師派遣により実施しました。研修終了後の振り返りの結果、「ディスカバリー」の学びを弊社のカルチャーにさらに深く浸透させるためには、社内講師を養成し、弊社に合ったやり方で実施する方がより効果的ではないか、と考えました。
そこで8月には私や上司など人事部人材開発グループのメンバーが丸3日間にわたる「社内講師養成講座」を受講。2018年の新入社員研修では、私たち自身が講師として「ディスカバリー」を実施しています。
社内講師養成により、1カ月にわたる新入社員研修期間中、「ディスカバリー」以外の研修プログラムにおいても随時学んだ内容のリマインドや適用をはかるなど、新入社員の理解を深める工夫が可能となりました。研修を終えた新入社員たちはそれぞれ会社からの期待と、組織人として目指す目標を持ち帰り、半年後、1年後のフォローアップ研修で振り返りを行うようにしています。
新入社員研修の内容を実践の場へ
研修中の新入社員たちの口からは、数日もすると「パラダイム(枠組み・見方)」や「根も葉もあるプロ(人格と能力を併せもつ人材)を目指す」などの「ディスカバリー」で学んだ言葉が出てくるようになります。さらに数週間すると互いのフィードバックにおいても「ディスカバリー」で学んだ言葉を使うようになります。
実際に業務に携わるようになってからは、「オーナーシップ(主体的に取り組む姿勢)を持って仕事をしたい」という言葉が出てくるなど、学んだことが「自分の日々の行動・仕事」とつながり、本当の意味での「実践を通じた気づきと内省」を得ているようです。「ディスカバリー」は、新入社員が仕事を通じて成長していくための「ガイドライン」のようになっていると感じます。
前述の通り、研修で得た学びを職場で効果的に実践するためには、職場の上司や先輩の理解が欠かせません。そのため新入社員が研修でどのようなことを学んだのか、職場のチューター役とも共有するようにしています。
さらに、これらの新入社員研修の取り組みと並行し、「7つの習慣」研修を管理社員や中堅社員にも実施しています。この取組により、数年後には職場のチューター役は全員「ディスカバリー」を受け、その上司も「7つの習慣」研修を受けている状態が実現します。そのとき「ディスカバリー」とは何かを説明する必要もなくなります。「7つの習慣」が1つの軸になっていくことで、いずれはそのエッセンスが弊社の企業文化にも良い影響を与えることになるはずです。
成果・今後の取り組み
「育成」から職場へ、そして「採用」から職場へ
組織文化の醸成と「採用」は切っても切れないものです。2025長期経営計画を実現し、その後も更なる成長を遂げるためには、これからどのような人を採用すべきか。これは人事として極めて大きなテーマです。
採用の段階から、一貫性を持って人材を育成するためには、人材開発グループと採用チームが連携し、「求める人材像」や「効果的な教育」などを模索することが必要だと考えています。つまり、学生の皆さんにとって最初の接点となる採用チームとの連携が、これまで以上に欠かせないものとなります。
その第一歩として、この夏、採用チームのメンバーにも「ディスカバリー」の社内講師養成コースを受講してもらいました。会社としてどのような人を求めているのか、どのように成長してほしいのかを、採用チームのメンバーが正確に伝えることで、入社前後でギャップを感じることなく、新入社員研修、そして職場に入ってもらうことがねらいです。現在両チームで準備を進めており、2019年新入社員研修から実施することを予定しています。
どんな環境変化の下でも成長を続ける、しなやかで強い企業文化をつくりたい
変化の激しい今の時代、5年後、10年後の世の中を予見することは難しいでしょう。時代に合わせてインプットすべきことは変わっていくと思います。しかしながら、「ディスカバリー」や「7つの習慣」で学べることは、いつの時代も変わらない原理・原則に基づいた普遍的な内容です。
また、グローバル化が進むなかで、この「原理・原則」を持っていることはグローバルな環境下で働く際にも重要な武器となります。時代・環境の変化に負けない「根」をもつ社員は、どのようなビジネス戦略にも対応していくことが出来ます。「事業活動を通じた社会課題の解決、社会貢献の実現」が弊社、三井化学の目指す方向です。そして企業・ビジネス戦略をサポートする組織づくりが我々人事の仕事です。「ディスカバリー」はその方向性をサポートしてくれる貴重な研修だと私は信じています。
「人の三井」。どんな変化に遭遇しても、しっかり根をはった個々人が支える、そんな組織を作っていきたい。それが私の願いです。そのために、役職や年齢、性別や国籍などの境なく、同じ思いを持って1つの方向に向かって走り続けていきたい。同じ目線を持って進んでいける「仲間」を増やしていくことが、より強い組織作りにつながると考えています。
取材日:2019/01/11
企業紹介
三井化学株式会社
社会の持続的な発展に寄与することを目指し、自動車材料を中心とした「モビリティ」、メガネレンズ材料、歯科材料、不織布などの「ヘルスケア」、農薬、包装材料などの「フード&パッケージング」を成長3領域に設定して事業を展開。さらに、エネルギーや農業、医療、IoTに関わる新しいソリューション事業を創出する「次世代事業」でイノベーションを創出すると共に、石化・基礎化学品を中心とした「基盤素材」領域では、社会・産業の基盤となる素材の提供に取り組んでいる。
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