現地法人の自立に向けて 中国人マネジャーを育成する

プロジェクト概要

背景・課題

上海の現地法人を中国事業単独で収益を上げられる組織にするために、現地の中国人が自ら経営できるよう、「自分の役割を認識して実行するマネジャーづくり」が急務でした。

検討プロセス・実行施策

現地法人マネジャーに、中国語版の管理者適性検査で自らのマネジメント能力を自覚し、「評価者研修」で評価の方法を実践的に学んでもらっています。

成果・今後の取り組み

具体的な成果はこれからですが、すでに、明らかに顔つきの変わってきたマネジャーが数多くいます。会社の未来を自分事として受け止め、積極的に行動する社員が確実に増えています。

背景・課題

中国現地法人を、輸出生産拠点から自立した会社へ

私たち河村電器産業は、100年近く前からブレーカ、分電盤などの電路周辺機器をはじめ、配電・制御・通信などの分野で多様な製品の提供を行ってきました。2000年頃から海外にも進出し、今では上海・大連・北京・バンコクの現地法人に合わせて、1000名近くの従業員が在籍するまでになっています。

その海外現地法人の中心は、上海です。上海の現地法人はもともと部品を供給する輸出生産拠点で、最終組み立てなどはすべて日本で行ってきました。しかし、一時は「世界の工場」といわれた中国も、現在は人件費が高騰し、単なる生産拠点とするメリットは薄れつつあります。そのため、中国国内市場を開拓し、中国事業単独で収益を上げる組織に変えなければ、前途は明るくありません。そのような変革を起こすには、従来の日本人主体で、なおかつ現場に任せきりのマネジメントから、現地の中国人が自ら経営する会社へと体質改善を行う必要がありました。

しかし、私が現職に就任した2011年の夏、我が目で確認した現地法人のマネジメントは、決して高いレベルとは言えませんでした。何よりも、目指す組織には絶対に欠かせない「戦略の明確化と共有」と「優れた人材マネジメント」が不足していました。例えば、中国人は評価と給与の公平性・公正性・透明性を非常に重視するのですが、肝心の評価基準や給与システムが不明確で不透明だったのです。また、中国人マネジャーにマネジメントの役割を学ぶ機会を提供できていなかったため、重要な部下の育成が疎かになっていました。さらに、マネジャーへの昇進基準なども曖昧でした。このような状況ですから、当然社員の定着率は低空飛行を続けていました。定着率が低いために絶えず採用を行う必要があり、コスト・パワーの両面で余計な消耗を強いられます。それだけでなく、必然的に新人が常に多い状態になり、スキルもチームワークもなかなか高まらず、結果的に生産能力も合格点に達していませんでした。

現地を見てすぐに、一刻も早く人材マネジメントと人事制度の改革を行わなくてはいけないと考えました。同時に、ビジネスそのものの改革も必要です。「中国現地法人の独り立ち」と「自らの役割を認識し実行するマネジャーづくり」を両輪で進めていくことが急務でした。これらを相談できる相手としてリクルートに声をかけたのです。

コンサルタントの声

現地の人々と一緒に改革を進めることが肝要です
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 担当コンサルタント


中国や東南アジアに海外現地法人をお持ちの日本企業の多くが、河村電器産業様と同様のお悩みを抱えていると思います。そして、人材が育たないことや、離職率の高さは仕方がない、そういうものだと諦めかけている企業も多いのではないでしょうか。
しかし、その前にまず「現地現物」です。人事や経営幹部が自ら現場に出向き、現地の従業員と会話し、彼らが期待すること、大切にしていることを聞き、同時に、自分たちが大切にしている組織観や、彼らに期待していることを繰り返し語る。そうした中で、打つべき手が見えてきたのが、今回の取り組みの特徴です。
現地に寄り添うだけでは自社の強みが失われますし、こちらの考えを押し付けるだけでは反発を買うだけです。人事や経営幹部が「ありたい組織の姿」を持ち、従業員と対話を繰り返すことが、国を問わず、組織作りにおいては大切なのです。

検討プロセス・実行施策

要の中国人マネジャーに役割を認識してもらう

リクルートの協力を得て、まずは2011年夏から2012年の春にかけてワークショップを行い、課題をより明確にしていきました。その際は、私はもちろん、海外担当でもある副社長と毎月上海へ赴き、さらに3カ月に1度は社長も同席し、現地法人社員の思いを聞き、こちらの考えを直接伝えました。現地法人に対して、日本本社のコミットメントをアピールするとともに、私も含めた日本人経営層が日本との違いを肌身で感じる良い機会にもなりました。

こういった経緯を経て、リクルートのファシリテーションのもと、2012年4月、現地法人内に、中国で勝負できるビジネスづくりを行う「市場商品開発委員会」と、人事制度の見直しや組織開発施策、意識調査などを行う「人事制度委員会」を立ち上げました。「人事制度委員会」で施策を行うにあたっては、管理者適性アセスメントで現在の管理職の適性や志向を調査。現地法人のマネジャーたちに、自分のマネジメントスキルを客観的に認識してもらい、気づきを促したいと考えたのです。結果、マネジャー適性がある人材が予想以上に少なく、マネジャー資質を見た登用が行われていないことがわかりました。

委員会の成果は順調に形になっており、2013年4月からは順次人事制度を見直しています。その改定タイミングに合わせ、マネジメント強化の入り口として「評価者研修」も実施しています。どれだけいい制度を用意しても、きちんと運用されなければ意味がありません。その運用の要は中国人マネジャーです。彼・彼女らにマネジメントの基本である「評価」を理解してもらうことが不可欠です。評価のPDCAを常に把握して、明確な目標設定のもと、日々のコミュニケーションを増やしながら部下を育成し、部下に要望していく。そして、メンバーの成果と成長を通じて、高い利益と強い組織を創造していく。それがマネジャーの役割であることを理解してもらっています。

この評価者研修では、最初は眠そうにしているマネジャーですら顔つきが変わります。本人たちと近い状況のケーススタディを準備したことで、自分事としてとらえ、積極的にグループワークに参加してくれるようになったのが印象的でした。

トレーナーの声

基本メッセージは「評価はマネジメント、仕組みを活かし人を育成する」
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ 担当トレーナー


当初は中国人の方々に「評価コンセプト軸にしたマネジメント研修」が成立するか不安でした。そのため既存の研修を前提にせず、出来得る限り情報収集を行い目的達成に向けての再構造化を試みました。
重視したのは基本が十分理解が出来ていないことを前提に「評価を育成につなげる」ストーリーを一貫させること。そして(1)評価の目的・意味理解、(2)実際の運用場面を入り口から出口まで(マネジメントサイクル)を制度アウトラインの理解と共にイメージし当事者意識を醸成する、(3)基本的評価スキル訓練、(4)評価を育成につなげ事業課題である生産性向上・安定までの繋がりを理解する、の4点を考えるプロセスで構成。また基本コンテンツはリクルートのこれまでの資産を最大限に生かしました。
研修時、受講者の皆さんが自然と顔が上がり自分の活躍の仕方、部下や職場の状態の変化までもイメージし、気持ちも同時に高揚する感じがとても清々しく感じられました。「学び成長する意欲」に国の違いは無い、改めて確認できた研修でした。

成果・今後の取り組み

会社の未来を自分事として受け止める社員が増加

新人事制度も評価者研修も始まったばかりで、改革の成果をご報告できるのはまだ先のことです。しかし、2011年から人材マネジメント・人事制度改革に一貫して取り組んできたことで、自分たちの言葉で部下育成を熱く語るマネジャーが出てきているのは大きな変化です。現地法人の経営や組織の状況を自分事として受け止め、育成の観点から行動を起こそうとする社員が確実に増えています。「skillよりwill」とよく言いますが、willのある社員が出てきているのです。

これから、評価者研修の成果が表れてくれば、変化はより一層加速するでしょう。しかし、そうは言っても、会社を変えるには時間がかかります。さらに徹底的にマネジャーを育成しなければ、組織や風土は変わりません。一定数の優れたマネジャーが会社を牽引し、彼らが憧れの存在、いわゆるロールモデルとなって次世代を育てる。そのような好循環が生まれるベースをつくりたいと考えています。

また中国現地法人で実施した管理者適性検査の有用性を実感し、本社でも導入することになりました。本社から海外現地法人に展開するだけでなく、現地からもいいところを還流する。そんな流れも生まれつつあります。

しかしながら、ここまで決してスムーズに物事が進んだわけではありません。中国人マネジャーたちとの話し合いは何度も何度も振り出しに戻りました。きっと、今後も一時的に変革が後退することもあるでしょう。ですが、強い意志を持って粘り強く対応すれば、国を越えて、こちらのメッセージは伝わります。それを行うのが私の役割です。リクルートにはこれからも第三者のプロとして、ともに粘り腰でこの組織改革プロジェクトに携わってもらえたらと思います。

現地法人・総務部長の声

工場長など数人が、自発的に社会人大学に通い始めました
河村電器(中国)有限公司 総務部 部長 劉瑩


今回の組織改革が始まった当初は、私自身、不安でした。このような組織改革の旗振り役ができるだけの能力や知識の不足を自覚していたからです。その点、何度も会議を行い、評価者研修も受けた今は、当時と比べると格段に評価知識が身に付きましたし、それ以上に考え方が変わりました。特に、部下の思いを把握する重要性を知ったことが私にとっては大きかったです。

レベルアップしたのは、私だけではありません。周囲のマネジャーが全体的に評価知識を得て、評価に対する意思統一がはかれてきました。以前は感覚的に部下を評価するマネジャーが少なくありませんでしたが、今では、客観的な根拠を挙げて評価しなければ、管理者として周囲を説得できません。また、新人事制度の一環として新たな等級制度が導入され、公平性・公正性・透明性は明らかに増しました。より各人の実力に見合う等級となったと同時に、今後、変えなくてはいけない問題点も浮き彫りになってきました。

何よりも変わったのは、数々の会議を経て、さらに管理者適性アセスメントで自らの実力を知ったことで、多くのマネジャーに向上心が芽生えたことです。例えば今、工場長をはじめとした数人が自発的に社会人大学に通い始めています。他のメンバーもそれぞれ目標を設定して頑張っています。まだまだ不足はありますが、今後も努力を怠らず、日本本社の方々も交えて皆でよく話し合い、力を合わせていけば、より良い組織になると確信できるようになりました。このようなチャンスをくれた社長をはじめとする日本本社の皆さんにはとても感謝しています。

関連するサービス

ピックアップ

「事例」の
WEBからのお問い合わせ
お問い合わせフォーム
電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付時間
/ 8:30~18:00 月~金(祝祭日除く)

※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください。

Page Top