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インタビュー

社会を変えるリーダー

GCストーリー株式会社 代表取締役社長 西坂勇人氏

  • 公開日:2023/11/06
  • 更新日:2024/05/16
GCストーリー株式会社 代表取締役社長 西坂勇人氏

近代日本経済の父、渋沢栄一は『論語と算盤』で道徳と経済の両軸で考えることの重要性を説いた。京セラ創業者の稲盛和夫は「利他の心」こそが繁栄への道であると語っている。賢人たちに学び、幸福な個人の集合である「自律共創型組織」を追求し続けてきたGCストーリーの代表、西坂勇人氏の組織論を聞いた。

目次
「資本主義への疑問」が出発点
「成長と貢献」こそが本質
幸せな組織づくりをパッケージング
事業を社員に任せきりでも業績好調

「資本主義への疑問」が出発点

「高校生の頃から『資本主義を信用していいのだろうか?』と疑問を感じていました。『人間はバッタの大群のように地球を食い尽くし、最終的には絶滅するのかもしれない』と真剣に考えていたんです」

GCストーリーの代表取締役社長、西坂勇人氏は若き日に抱いた想いを振り返る。西坂氏は「成長と貢献」を座右の銘とし、幸せな組織を追求してきた。企業や個人にとって幸せの定義はそれぞれ異なり、絶対的な正解は存在しない。しかしながら同社は、国が義務化しているストレスチェック集団分析結果において「職場環境最優良法人」として、100人以下の部門で1位を獲得。その他、5年連続で働きがいのある会社ランキングの上位に入り、女性部門の1位も経験。ホワイト企業大賞の表彰も受けた。これは社員のエンゲージメントの高さや、ストレスの低さを証明しているといっていいだろう。

同社は、これまで挑戦してきた「幸せな組織づくり」と「自律共創型組織への変革メソッド」を世の中に広めるため、自律共創型組織への移行を実現するサポートプログラム「ココシフ」を開発。独自のアセスメントを用いた組織の把握、診断結果の分析と改善策の提案、研修や仕組みの導入など、組織変革支援を「組織デザイン事業」として展開している。

そんな同社は、看板事業からスタートしている。西坂氏は会社を創設する前、新卒で入社した仙台の看板商社で働いていた。

「看板に興味があったわけではないですが、自分の性格的に型にはまった大企業よりも、小さな会社の方が向いているのかな、と思っていたのです。ただ、実際に働いてみると、看板業界は古い慣習が残っていると感じました」

2000年頃からIT革命による「商社不要論」も囁かれた。西坂氏も、看板メーカーと施工会社の間にいる看板商社の存在意義を考えたという。

「そこで、社内ベンチャー的に『看板ナビ』という、看板を作りたい人と作る人をつなぐBtoBのプラットフォームを作ろうとしましたが、なかなか理解を得られなくて。会社に投資してもらうのも難しそうだったので独立しました。当時は、看板屋さんの収益が苦しくて『仕事が欲しい』という声が多かったので、私がある大手外食チェーンに営業に行き『全国2000カ所の看板屋さんのネットワークがあるから仕事をください』とお願いしました。それが最初です」

看板事業者の主な仕事は、職人と連携して行う看板設置工事の施工管理である。4300を超える事業者・職人のネットワークとそのマネジメントが同社の強みだ。看板施工のネットワークとノウハウを応用し、駐車場に設置するソーラーカーポートの販売施工事業も行う。全国の事業者と職人の協力を得ながら、看板やソーラーカーポートの施工プロジェクトをマネジメントしている。

「成長と貢献」こそが本質

着々と事業が拡大していくなかでも「バッタの大群」のイメージが西坂氏の頭のなかから消えることはなかった。悶々と考え続けていたとき、アメリカの心理学者ジョン・グレイ博士の書籍の翻訳に関わった方と出会う。「その人から『博士が言うには、人生は成長と貢献と変化なんだよ』と教えられて確信しました。人は本能的に誰かの役に立ちたいし、そのために成長したいと望んでいる。これが本質なんです」

やがて「バッタの大群」のイメージは頭から消え、「成長と貢献」を軸とする組織を志向し始めた。「経営を学ぶために、多くの経営者と対話しました。ところが、多くの経営者が口にするのは『どうすれば利益を得られるか』という話ばかり。そんななかで、京セラの創業者、稲盛和夫さんの『利他』の哲学に出会い、共感しました。利他を基盤にした経営が存在するならば、貢献を基盤にした経営も可能であると考えたのです。そして、稲盛さんの盛和塾で学び始めたのが2010年頃でした」

その翌年、2011年の東日本大震災のときに見た光景も、西坂氏に大きな影響を与えた。宮城県の女川町は人口約1万人の町だが、震災の犠牲者と死亡認定者が827名と記録されている。住宅総数4411棟のうち被害住宅総数は3934棟と約9割が被害を受けた。

「身近な人が大勢亡くなり、家を壊されても、そこに住み続けるのは『女川の未来、俺たちが作るぞ』と言って残った人たちなのです。震災の2日後に訪問したとき、彼らは瓦礫を見ながら焚き火をして『俺たち残ってどうするの?』という話をしていました。そして『100年後の子どもたちに、この女川町を残そうぜ』と決起しました。彼らのプライオリティーが『女川町の100年後の子どもたちが笑っている姿』というイメージに統一されているのを感じましたし、これは必ず実現すると思いました。『人の意識はこうやって変わるんだ』と感じたのです」

人々の意識変容が起こると、組織が生まれ変わる。女川町でそれを目の当たりにした西坂氏は、自社で意識変容を起こす仕組みを考えた。

「まず、一人ひとりが幸せを考える機会を作りました。例えば、私にとってのウェルビーイングは『成長と貢献』だと表明しています。結局、私たちは人の役に立つことでしか幸せを感じられない。貢献するために成長することが人生だと思うので、それを社員に繰り返し伝えました。また、意識変容するきっかけとして、社員を女川町に連れていきました。町の未来のために奮闘する人々の姿を見て、本当に幸せな生き方について考えてもらったこともあります。社員に『お互いのことを思い合う組織、未来のことを大切にしている組織の一員として働くことは幸せだし、皆さんの人生がそれによって開かれるんじゃない?』と問いかけました」

社員の意識変容のきっかけを作るために、評価制度も変革した。

「自分自身をはじめ、上司、同僚、部下からのアンケートをとることによって評価する360度多面評価を実施しています。今はマインドとスキルの両軸で見ますが、昔は『人間性を高めることを評価します。以上』という時期もありました」

幸せな組織づくりをパッケージング

西坂氏が経営を考える上で意識しているのは、「論語と算盤」のバランスである。

「稲盛和夫さんの言葉を朝から晩まで聞き続けて、その思考をインプットした時期があります。やはり道徳的な理想論と、管理会計的な算盤のバランスが大事だと思いました。とはいえ、社員全員が幸せを感じられることが最上位の優先事項なので、私たちはそこを強く意識しています」

西坂氏は盛和塾での学びをベースに、独自の経営ノウハウを構築してきた。それを経営状況が苦しい経営者仲間の支援に役立てたところ、見事にV字回復。「ホワイト企業大賞」などの優れた経営を表彰する場で特別賞を受賞するほどになった。

「私たちが支援した経営者が『幸せな会社になった。ありがとう』と言ってくれるのです。それを聞いて、自分たちがやってきたことを他社にも適用し、貢献できると実感しました。そこで、自分たちの取り組みをパッケージ化して提供することにしたのです。それが『幸せな組織づくり』『自律共創型組織への変革』を支援する組織デザイン事業の始まりでした」

成人期特有の課題や成長のパターンを理論に落とし込んだ「成人発達理論」や、メンバー一人ひとりが自分たちの価値観で意思決定していく「ティール組織」などの理論が裏付けとなり、同社が取り組む組織デザインを言語化しやすくなり、関心をもつ企業も増えた。また、同社の組織論は、Z世代など、若い人たちから共感を得やすいのだという。

「昔の私のように、若い人たちは資本主義の仕組みに巻き込まれることがチープだと思っているフシがあるのかもしれないですね」

事業を社員に任せきりでも業績好調

現在もGCストーリーの自律共創型組織は、文字通りの自律的な進化を続けている。

「自律共創型組織といっても『成長と貢献』という価値基準で統一されているので、みんなが好き勝手に動いているわけではないです。例えば、ここ数年では社員から『こんな人事評価制度が欲しい』という提案が増えました。自分のためではなく、会社のために提案してくれるのです」

社員の視点が経営者と同じ高さにあり、組織を本気で良くしたいからこそ提案が行われる。この状態がまさに「自律共創型組織」である。

「私たちは成長と貢献を志向する自律共創型組織を、内発的に作り続けることに挑戦しています。組織に関しては社員と頻繁に話しますが、事業に関しては任せきりです。こう言うと叱られるかもしれませんが、事業内容を細かく把握していません(笑)。もちろん責任は自分がとりますが」

株主から「本当にGCストーリーのやり方で儲かるのか」と横槍が入ったこともある。そのため、同社は自分たちのやり方を突き通すために、反対意見の株主からすべての株を買い取った。

「揺るぎない信念だけでなく、大株主から株を買い戻せるほど優良なバランスシート(貸借対照表)もあるということです」

幸せを追求する組織は、経済的にも着実に成長しているのだ。

【text:外山 武史 photo:山崎 祥和】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.71 連載「Message from TOP 社会を変えるリーダー」より転載・一部修正したものである。
RMS Messageのバックナンバーはこちら

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE
西坂 勇人(にしさか はやと)氏
GCストーリー株式会社 代表取締役社長

大学卒業後、看板材料商社に勤務。看板業界向け「看板ナビ」を立ち上げ、全国の事業者をネットワーク化。経営哲学に「成長と貢献」を掲げ、「高エンゲージメント・低ストレス」な組織を実現。組織開発支援にも取り組む。

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