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インタビュー

社会を変えるリーダー

Zebras and Company 共同創業者/代表取締役 陶山 祐司氏

  • 公開日:2023/05/22
  • 更新日:2024/05/16
Zebras and Company 共同創業者/代表取締役 陶山 祐司氏

どんなに素晴らしい人格者が社会的意義のある起業をしても、短期間で急成長する事業でなければ、今の社会では評価されにくい。白と黒の模様のように社会性と経済性を併せ持ち、長期的でインクルーシブな経営を実践するゼブラ企業。そんなゼブラ企業への支援・投資を行うZebras and Companyの代表に話を伺った。

目次
ゼブラ企業とはどんなものか
資源エネルギー庁在籍時に3.11が起こる
社会課題と向き合う起業家を支援する
地域の未来を創る人を増やす

ゼブラ企業とはどんなものか

伝説の一角獣・ユニコーン。そんな幻想上の動物に例えられるのが、未上場で創業10年以内、企業評価額10億ドルを超える急成長企業だ。VC(ベンチャーキャピタル)が血眼で探していた幻の企業も、現在では1200社ほど存在するという。急成長を志向する企業に投資が集まりやすくなったことを裏付ける数字だ。ユニコーン企業の目指すところは、短期的な成長と市場の独占、企業価値増大の追求である。こうした風潮に危機感を覚えた米国の4人の女性起業家が提唱した概念が「ゼブラ企業」だ。 

ユニコーンもゼブラも見た目は少し似ているが、中身は全く異なる。Zebras and Company代表取締役の陶山祐司氏はこう説明する。「ゼブラは群れで生きて子孫を残しながら、生態系のなかで長期的に繁栄する動物です。そんなあり方を理想とし、白と黒の縞模様のように社会性と経済性を備えた企業をゼブラ企業と呼んでいます。ユニコーンは短期間で成長し株価を高め、VCに利益をもたらします。一方で、ゼブラは社会に必要な企業ですが、ユニコーン企業のように短期間で急成長するわけではないので、VCは投資しにくい。それでも私たちは、社会課題の解決のためにゼブラ企業への金銭的サポートが必要だと考えています」。Zebras and Companyは、従来の物差しで測れなかったゼブラ企業を増やし、育てて「優しく健やかで楽しい社会を作る」というビジョンを目指す企業だ。

では、ゼブラ企業は具体的にどんな事業をしているのか。例えば、ゼブラ企業は一次産業領域にある。農業の収穫は年1回、多くて3、4回。IT企業などと比べてPDCAサイクルが長く、投資の回収にも時間がかかる。出資先に指数関数的な成長を期待するVCからすると効率が悪い。「ミガキイチゴという特別なイチゴを作る株式会社GRAは、農業領域において先進的な取り組みを進め、高単価な商品を生み出しています。こういう事業を応援したい企業や、地域を盛り上げたい自治体などと協業しながら、投資や経営手法について意見交換しています」

VCが手がけにくい領域として、農業の他「ディープテック」といわれる先端科学技術領域がある。市場がニッチだったり研究開発期間が長いディープテック企業でも、技術で社会課題の解決を目指すゼブラ企業であれば、同社の出資対象となる。

資源エネルギー庁在籍時に3.11が起こる

陶山氏は8歳から20歳まで野球に打ち込み、プロの世界を目指していたが、夢は叶わなかった。「野球をやめたときに頭をよぎったのは高校時代の恩師に何度も言われた『お前はまだ気づけんか』という言葉。自分は何に気づいていないのか。野球人生を振り返って、その答えらしきものがようやく見えたのです。野球を続けられたのは当たり前ではなく、親や学校、OBなどの支援があったから。練習場も誰もが自由に使えるわけではない。そういう仕組みのなかで野球をさせてもらっていたことに気づいていなかった。だから今度は自分が、誰かが何かに打ち込むための基盤を作りたいと思ったのです」

大学時代は倫理学を専攻。「社会はどうあるべきで、人はどう生きていくべきか、いつも問い続けていました」。そして、卒業後は経済産業省へ。「就職活動中は全く考えていなかったのに、たまたま出会った人がとても面白く、公務員は上意下達でルーティンワークが多いという印象を覆されました。でも入ってみるとやはり1年目は雑用中心なんですよね。電話対応、新聞切り抜き、コピーとりなどが仕事の大半で、『何のためにやっているんだろうな』と」

ところが、2年目に東日本大震災が起こり、所属していた資源エネルギー庁は大変な役割を担うことに。「自分が携わっているエネルギー政策が、すべての人の生活に根ざしていることを目の当たりにして、仕事にも身が入りました。その後、異動して半導体政策などを経験し、今度は自分がビジネスを全く知らないことを痛感したのです。日本は新しい事業やベンチャーを興すことを課題としており、自分もそれを支援したいと思っていました。でも、ビジネスの知見がないから思うように貢献できない。そんな思いが募り、2014年に経済産業省を辞めて、VCの立ち上げに参画したのです」

社会課題と向き合う起業家を支援する

とにかく新しい事業、産業を育てたいという思いで入社したVC。出資するだけでなく、創業者が1人で切り盛りしている会社に張り付いて一緒に事業を作る経験もした。仕事を通じて金融の肌感覚も養われた。ただ、VCはハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルのため、どうしても短期で急成長する企業に投資が偏る。「素晴らしい人格の経営者が、社会的にインパクトのある事業を展開しているのに、急成長する見込みがないから出資できないケースも。しかしそれはVCのビジネスモデル上、仕方がないことでもあります。次第に『既存の枠組では投資されないところにお金を出す金融のあり方があるはずだ』と思い始めました」

ちょうどそんなときに気仙沼ニッティングという企業を知る。気仙沼の復興と編み手の雇用を守りながら100年続く会社をどう作るか。それが経営の判断軸と知り、心を揺さぶられた。「こういう人たちを支える仕組みがあるべきだと考えていたときに、ゼブラ企業の概念に出会いました。さらに社会課題解決を目指す起業家を支援する『インパクト投資』をしている田淵さん(田淵良敬氏)やベンチャー企業のなかで同様の問題意識をもった阿座上さん(阿座上陽平氏)と意気投合して、Zebras and Companyを共同創業したのです」

同社の事業は大きく分けて4つある。1つはゼブラ企業への出資。一緒に事業を作り社会課題を解決するが、IPOやM&Aは求めない。2つ目はゼブラ企業への経営支援。実際に責任者として経営に入ることもある。3つ目は、ゼブラ企業を支援するサポーターを増やすため企業や自治体などと協業していくこと。そして、4つ目はゼブラ企業というコンセプトをより具体化し、解像度を上げていくことである。

出資に加え、陶山氏が直接経営を支援している会社の1つがWELLNEST HOMEである。環境性能が非常に高い木造住宅を作るハウスメーカーだ。北海道・ニセコのまちづくりにも参画し、住宅地の開発をしている。地元の工務店などと協働し、カーボンニュートラルを目指して、インフラから作っている。「まちづくりで会社が大きく儲かるわけではないですが、世の中に必要とされているのはこういう取り組みです。もし上場していたら、利益責任を問われるので手がけにくい事業だと思います」

地域の未来を創る人を増やす

国内だけではなく、新興国ミャンマーのゼブラ企業(政情を考慮し社名非公開)にも出資している。ミャンマーの農村には食料品店があるが、物流インフラが整備されていない。片道1時間バイクで出かけて青空市のようなところで仕入れを行っていることが多い。そのため、一度に仕入れられる量も限られ、情報伝達速度も遅い。手間をかけているわりには儲からない。そうした商店向けの物流と金融の機能を果たす卸事業を行う企業を支援している。「現状は食料品と日用品の卸が中心ですが、医薬品や教育、農業機材・資材などを届けることによって、農村の生産性が上がり、所得が上がって経済発展につなげられる可能性があります。1年間で企業の売上が3倍、4倍になるかというとそれは難しい。人を雇うし、輸送車や倉庫も必要で利益を上げることは大変ですが、社会的意義がある事業だと信じています」

「ゼブラ」の考えや理論を普及、啓蒙し、ゼブラ企業を支援するサポーター(企業や自治体)を増やしていくための取り組みとしては、一般財団法人塩尻市振興公社と行う「地域型社会的インパクト投資」の共同検証がある。地域が持続的に課題を解決し、繁栄していくための「地域経営」。その実現には、社会課題解決型の事業に特化してリスクマネーの提供を行う「地域型社会的インパクト投資」が必要である。少子高齢化にともない生産年齢人口が減少することが見込まれる塩尻市のような地域では、起業家の資金調達を支援する仕組みを育てることが、「地域の未来を創る人」を増やすことにもつながる。

さらに、ゼブラ企業とそのサポーターを増やしていくためには、ゼブラ企業というコンセプトの解像度を上げていくことが必要だと陶山氏は考えている。「今はまだ認知度の低いゼブラ企業を体系化して分かりやすくし、メディアやSNSで情報発信をすることで、各社の取り組みや社会課題が可視化されるようになります。ゼブラ企業が社会課題を解決する様子が、世の中に広く知られるようになれば、新たなゼブラ企業が生まれるし、そのサポーターも、そこに集まるお金も増えていくでしょう。それがいつかZebras and Companyが掲げるビジョン『優しく健やかで楽しい社会』につながる。ただし、僕たちがやっていることは、うまくいくことばかりではありません。もし仮に、思い通りになったとしても、それが本当に社会に役立つかどうかは分からない。後から振り返らないと判断できないことばかりです。だからこそ、今の自分にできるのは『人事を尽くして天命を待つ』ことなのかなと」

これまでとは違う物差しがあれば、これまでとは違う成長と未来がある。陶山氏はそれを証明するために、今日も人事を尽くす。

【text:外山 武史 photo:山崎 祥和】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.69 連載「Message from TOP 社会を変えるリーダー」より転載・一部修正したものである。
RMS Messageのバックナンバーはこちら

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE
陶山 祐司(すやま ゆうじ)氏
Zebras and Company 共同創業者/代表取締役

ベンチャーキャピタリストとして企業の投資審査や、事業戦略策定、資金調達、サービス開発、営業などの支援を実施。大企業の新規事業の開発および創出を促す組織開発・人材開発・経営支援を実行。政策提言なども行う。

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