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インタビュー

トレーナーインタビュー 玉井 潤(人材開発トレーナー)

38歳で飛び込んだ、人と組織の可能性を信じる仕事。 顧客と共に経営課題の解決に挑む

  • 公開日:2022/03/28
  • 更新日:2024/05/16
38歳で飛び込んだ、人と組織の可能性を信じる仕事。顧客と共に経営課題の解決に挑む

変化の激しい事業環境のなか、企業にとっては、人やチームの能力や思いをどれだけ引き出していけるかが競争優位性を分かつ時代を迎えています。

1970年に弊社が人材開発事業を立ち上げて以来、企業リーダーたちの成長を支えるのが「トレーナー」です。弊社の「個と組織を生かす」という理念のもと独自に養成されたトレーナーは、弊社らしいトレーニングを特徴づける存在でもあります。今回は、そのようなトレーナーの思いとキャリアに迫り、どのような経緯や思いをもってトレーナーとなり、何を思い、多くの企業の人材の成長をどのように支援しているのかについてご紹介します。

2022年10月契約 人材開発トレーナーを募集します

 詳細は、「トレーナー募集サイト」をご確認ください。

経営した組織で退職が相次ぎ「自分は一体何をしたかったのか」 38歳でトレーナーの世界に飛び込んだ
「いま一度、お互いの絆を深めたい」という人事部長の思い
「心のありよう」を見つめ、「人と人との信頼関係を築く」 経営課題の解決のために挑んだ組織開発
人の心を動かす「風」を吹かせたい 人はいつまでも、学び成長し続けられる

経営した組織で退職が相次ぎ「自分は一体何をしたかったのか」 38歳でトレーナーの世界に飛び込んだ

──⽟井さんはもともと会社を経営されていたかと思いますが、そんな⽟井さんが⼈材開発トレーナーになるまでの経緯について教えていただけますか。

⼤学を卒業後、なかなか企業に就職するという発想を持てず、⾃分探しの放浪をしていた時期がありました。その後、縁あって⼩さな空間デザイン会社で、約15年間共同経営者として経営に携わりました。

経営した組織で退職が相次ぎ「自分は一体何をしたかったのか」 38歳でトレーナーの世界に飛び込んだ

経営を⾏うなかでさまざまな経験をしましたが、ある時期、従業員の退職が相次いだことがありました。何⼈かは正直に「もっと⼤きなフィールドで活躍したい、プロとして腕を磨きたい」と⾔って、会社を去っていきました。成⻑機会を与えられなかったこと、従業員に選んでもらえない会社であることなどの現実を突きつけられ、後悔の念と不甲斐なさが募りました。しばらくするとそれらは、「私⾃⾝は⼀体何をしたいのだろう。何を⼤事にして⽣きてきたのだろう」という⾃分への問いかけに転化していきました。

⼩さな会社ながらも、経営に携わっている⾃分が揺れ始めている。このことには⼼底、葛藤しました。

そして38歳のとき、たまたま新聞に掲載されていた⼈材開発トレーナーの募集広告が⽬にとまったのです。そこにうたわれていた、「最後は⼈だ」という⾔葉に思わず釘づけになりました。これはまさに当時の私が考えていたことであり、⾃分のコアが映し出された⾔葉に衝撃を受け、応募を決意しました。

当時、まだトレーナーがどういう職業かも分かってはいなかったのですが、参加した説明会や選考過程で、「私たちは教えない」「対等に、⼈として受講者と向き合い、気づきを促す」「あるがまま」といった⾔葉が⼼に響き、私の⼼のなかの何かが強く揺さぶられる感覚を得て、どんどんトレーナーの仕事に魅⼒を感じるようになっていきました。その後、契約をしてからはあっという間に約20年がたち、現在に⾄ります。

「いま一度、お互いの絆を深めたい」という人事部長の思い

──単なる研修という位置づけではなく、会社の⼤きな変⾰期に「⼒を貸してほしい」という形で相談されることもありますよね。

企業の変⾰期や節⽬のタイミングで「こんな課題を解決したい。そのためにどんな研修やトレーニングができますか」と相談されることが多いです。

例えば、あるプラントメーカーの例です。当時、経営悪化から⼤規模な人員削減を実施。その後ようやく危機を脱し、⼀度リストラした社員の再雇⽤を始めたタイミングで、ご相談をいただきました。そのため、単に研修を⾏うのではなく、社⻑や役員と、⼀度はリストラの対象になり、再雇⽤された社員とをつなぐコミュニケーションの場として研修の機会を活⽤し、「もう⼀度⼀緒にこの会社を盛り上げていこう」と、お互いの絆を深めることがお客様の真の⽬的でした。

「いま一度、お互いの絆を深めたい」という人事部長の思い

研修の冒頭に、⼈事部⻑が「本当に申し訳なかった。しかし今、当社は苦難を乗り越えて息を吹き返した。これからは経営再建に向けて、⼀⼈ひとりが学べる環境を作っていきたい」とあいさつされた場⾯を鮮明に覚えています。私⾃⾝、受講者の前に⽴つときには⼼が震えました。そして、その企業と12年にわたる関係が始まりました。研修は⼿段であり、研修の先にあるもの、すなわち真の⽬的は何かをお客様としっかり議論し、共通の基盤に⽴ったうえで研修の場に臨むことの⼤切さを学びました。

⻑や役員の直々の依頼に正⾯から向き合い⼀緒に伴⾛できた喜びと、⼈材開発トレーナーはどこまで会社や⼈に貢献できるのかといった⾃分の存在意義について深く考えさせられた点で、⾮常に印象に残った経験です。

「心のありよう」を見つめ、「人と人との信頼関係を築く」 経営課題の解決のために挑んだ組織開発

──まさに、経営課題の解決や、組織全体の変革に踏み込んだエピソードですね。そうしたテーマで、他に印象に残っている事例はありますか?

もう1つ例をご紹介すると、あるメーカーの⼯場改⾰の課題をお⼿伝いした経験があります。もともと先⽅は社内で⻑年にわたり⽣産部⾨の⾵⼟改⾰に取り組まれていたものの、最終段階になってぶつかった壁が「⼈の⼼のありよう」でした。

題となっていたのは、⼯場内の正社員と⾮正規社員の間に⽣じた信頼関係の溝。「上から⽬線のコミュニケーション」「ピープルマネジメントの不全」などが、⼯場内の不穏な雰囲気やモラル低下を招き、ゆくゆくはものづくりにまで悪い影響を及ぼすのではないか、という強い危機感をお客様は抱いていました。

社員が雇⽤形態や肩書を超えて、「⼀⼈ひとりと本気で向き合うこと」「⼈として信頼関係を築いていくこと」こそが、先⽅が実現したい真の課題だったのです。制度や仕組みを変えても、「⼈の⼼」が動かないと組織は変わらない。そう思い至り、私たちにご依頼をいただきました。

この案件は正直、⼤変だなと思いました。⼯場改⾰に必死で取り組むお客様の船に乗って⼀緒にオールをこげるのか。もちろん「⼈と向き合う」ということが、私たちトレーナーが提供する価値ではあるものの、お客様の発する⾔葉の重さを感じれば感じるほど、かつてない緊張感とプレッシャーを覚えました。しかし、本気で考え抜き全⾝全霊で取り組んでいるお客様だからこそ、ぜひ⼀緒にやってみたいと覚悟を決めました。

──緊張感のなか、同じ船に乗り込む決断をされたのですね。実際に、どのようなことが起きましたか。

実は、実施したプログラムは弊社の標準的な管理職リーダーシップ研修でした。

研修が始まってしばらくの間は、トップである⼯場⻑ばかりが発⾔し、周りの幹部職は同調してうなずくだけの状態。⽇常のトップダウンの関係性が、研修の場でもにじみ出ていました。

「⼈と⼈が向き合うとはこういう関係性ではないのでは」と、私が皆さんに率直に疑問を投げかけたとき、⼯場⻑が「あっ……」と⾔って息をのみました。沈黙の時間が続き、やがて⼯場⻑はつぶやきました。

「たしかにそうだ。任せる、任せると⾔いながら、いつも私が……。それが根本的な要因かもしれない」

ご⾃⾝が認めたくない部分も含めて、あるがままの⾃分を受け⽌めようと、明らかに何かが変わり始めたのが分かりました。そして、それをきっかけに、受講者同士の関係性、議論や意⾒交換の質も変わっていったのです。研修のなかで、⼀⼈ひとりの⼼の窓が開いていく瞬間を何度も感じました。

「心のありよう」を見つめ、「人と人との信頼関係を築く」 経営課題の解決のために挑んだ組織開発

その後、同じ⼯場内の⼀階層下の役職の⽅々にも同じ研修を実施。前回の研修に参加した⼯場⻑が駆けつけ、受講者に向けてこうお話しされました。「⼯場内には⾮正規雇⽤など多様な⼈材が増えてきている。そのなかで、リーダーとして本当に⼀⼈ひとりの⼈と向き合えていますか。実は私も向き合えていない⾯があることに気づきました」と。

⼯場⻑がメンバーと本気で向き合おうと決⼼し、多忙な業務を調整して駆けつけ、⾃⾝が内省したこと、学んだことを1⼈の⼈間として素直に語る。そんな姿に、私たちが提供している研修の意義、そしてトレーニングの可能性を強く感じた体験です。

人の心を動かす「風」を吹かせたい 人はいつまでも、学び成長し続けられる

──⽟井さんにとって、⼈材開発トレーナーとはどのような存在なのでしょうか。

私は、トレーナーは、⼈と⼈の真の相互作⽤を起こす「⾵」のような存在だと考えています。

例えば朝起きて外に出ると、「いい⾵だな」と感じることがありますよね。でも、⾵は⽬には⾒えないし、サッと過ぎてしまうものです。また、⼀⾔で「⾵」といっても、北⾵や南⾵、突⾵や薫⾵など、さまざまな表情や個性がある。そうしたさまざまな⾵を肌で感じるとき、ふとわれに返り、⾃らの視野が広がり、⾃分の在り⽅を⾒つめるきっかけになることがあります。

⽬の前の受講者に、さまざまな「⾵」を起こしていくのが、トレーナーだと思っています。

人の心を動かす「風」を吹かせたい 人はいつまでも、学び成長し続けられる

新しい気づきを促す⾵。うつむいている顔がふと持ち上がる⾵。⼼地よい⾵だけでなく、あえて⾝を切るような冷たい⾵を起こすこともあります。研修という空間で、⾵に当たり、新たな相互作⽤が⽣まれ、受講者のなかで何かが呼び覚まされていきます。

⼈は本来有能であり、学んで成⻑し続けられる。その⼈間同⼠が、今ここで出会い、相互作⽤のなかから⾃ら気づき学んでいくのが、目指す研修の姿です。受講者がここで気づき、学んだことを現実に生かしながら、今度は自分が起点となって職場のなかに相互作用と学びの文化を醸成していっていただけたら、私は本望です。

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

PROFILE

玉井 潤 (たまい じゅん)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
人材開発トレーナー

大学卒業後、渋谷に空間デザイン会社を共同設立。「心が安らぎ笑顔がこぼれる空間を創る」を理念に商業施設やまちづくりを手がける。一貫して利用者・生活者の視点からの空間創出にこだわり、業界の商空間デザイン賞、地域デザイン賞を受賞。共同代表として15年間、経営と現場の双方に身をおく。
2001年より、リクルート(現 リクルートマネジメントソリューションズ)の人材開発トレーナーとして始動し現在に至る。近年は、総合商社、自動車、食品、情報産業、建設、福祉医療と多岐にわたる業界を担当し、主に幹部マネジメント層、ミドル層を対象に、リーダーシップ開発、組織開発を支援している。

現在、2022年10月契約 人材開発トレーナーの募集を開始しています

 詳細は、「トレーナー募集サイト」をご確認ください。
 応募機会は年に1度となっています。

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