- 公開日:2020/02/21
- 更新日:2024/03/22

デジタル化によってあらゆる業界が変貌を余儀なくされるなか、企業と顧客との付き合い方にも大きな変化が訪れている。キーワードはカスタマーサクセスだ。日本における第一人者である弘子ラザヴィ氏にお話を伺った。
カスタマーサクセスとは
米国発祥のカスタマーサクセス(顧客の成功)という概念をご存じでしょうか。商品やサービスを売って終わりにするのではなく、顧客にとっての成功をきちんと定義した上で、その実現に向かって仕組みを構築し、組織を作り直すことを指します。
そうやってカスタマーを虜にし、永続的関係の構築を目指すモデルをリテンションモデルと呼びます。
それは、以下の4 要素をすべて満たす製品やサービス(以下、プロダクト) から成り立っています。
1.利用者がそのプロダクトを継続して利用し、モノの所有に対してではなく成果に対して対価を支払う。
2.初期費用は低く、利用者はいつでも利用を止められる。
3.利用者にとってそれなしでは生活や仕事ができないほどの利便性があり、なおかつ適宜更新、最適化される。
4.自分にとって望ましい成果が約束されるならば、自らの個人データの取得を事業者に許す。
その代表格は、年会費を払えばあらゆる商品を自宅に素早く届けてくれるアマゾンプライムであり、(日本では身近になっていませんが)自動車のライドシェアサービスのウーバーです。リクルートマーケティングパートナーズが展開する教育サービス、スタディサプリも代表例の1つです。
カスタマーサクセスとは、このリテンションモデルを構築し、成功させるために必要不可欠な考え方やノウハウをも指します。データ収集が容易という意味で、ネット企業に有益なのは確かですが、製造業や流通サービス業にも無縁の話ではありません。
日本では昨年あたりから普及し始め、関連する勉強会やイベントが各地で開かれるようになってきました。
顧客満足では足りないエフォートレス体験を
私がこの概念を知ったのは、スタンフォード経営大学院の起業家養成プログラムに参加するため、シリコンバレーに在住していた2017年のことです。「日本に広めなければ」と思い、帰国して出版社を回りました。初めは米国で出版された本の翻訳をもちかけていたのですが、ある編集者から「日本語版を書きませんか」と逆提案されて執筆にとりかかり、この7月に上梓したのが『カスタマーサクセスとは何か』(英治出版)です。
カスタマーサクセスは従来の顧客満足とどう違うのでしょうか。日本はおもてなしの国であり、お客様満足が重視されるのは当然です。でもそこにとどまっていると、革新的なプロダクトが出てきた場合、乗り換えられてしまう可能性があります。
両者の違いを認識するためのキーワードがエフォートレス(effortless)です。プロダクトを利用する際、最小限の時間やエネルギーしか必要としない状態を意味します。マニュアル不要で、スイッチに触った途端動き始めるアップルのPCがその典型です。顧客満足だけではなく、エフォートレス体験を提供できているか、という視点で、自らのプロダクトを見直してみるといいでしょう。
カスタマーサクセスが普及すると、営業の機能が大きく変わらざるを得ません。カスタマーに何をすれば、彼らが素晴らしい成功を手に入れることができるかを、売り込むプロセス以上に考えないといけなくなるからです。
カスタマーエフォートをすぐにゼロにするのは難しいですから、そのプロセスに人を介在させることで、ゼロに近づける工夫も必要になるでしょう。先ほど挙げたスタディサプリはそこに強みを発揮しています。究極的には、AIが、利用者の状況に応じ、有益な提案を投げかけてくれるような機能をプロダクトに組み込む形が増えるでしょう。そうなった場合、営業の存在意義が改めて問われることになります。
【text:荻野進介】
※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.56 特集2「環境変化に適応できる営業組織を作る」より抜粋・一部修正したものです。
本特集の関連記事や、RMS Messageのバックナンバーはこちら。
※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。
PROFILE
弘子ラザヴィ(ひろこ ラザヴィ)氏
経営コンサルタント
サクセスラボ株式会社 代表取締役
一橋大学経営大学院修士課程修了。公認会計士として活動した後、経営コンサルタントに転じ、ボストンコンサルティンググループ、シグマクシスで働く。2017年、カスタマーサクセスの推進を支援するサクセスラボを設立。2019年12月3~4日、日本初のカスタマーサクセスカンファレンス「Success4」を主催。
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