日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター
株式会社TEAMBOX 代表取締役
中竹竜二氏
リーダーの成長なくしてメンバーは育たない

組織を取り巻く環境は変化を続け、新人若年世代を中心に、働く人の価値観や志向もこれまでとは大きく変化してきている。そうしたなかで組織としての成果をあげていくには、どのようなマネジメントに変えていく必要があるのだろうか。

今の時代の新人若手の力を引き出し相互に学び成長し合う組織づくりについての経験や持論(フォロワーシップ)について、早稲田大学ラグビー蹴球部監督、ラグビーU20日本代表ヘッドコーチを歴任し、日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターを務める中竹竜二氏にお話を伺った。


1 人のリーダーが引っ張るよりも
一人ひとりがリーダーになる方がいい

小学校でラグビー部のリーダーになって以来、早稲田大学ラグビー蹴球部のキャプテンを務めたときも、その後に同部の監督となったときも、ラグビー日本代表U20監督としても、2016年アジアラグビーチャンピオンシップで日本代表ヘッドコーチ代行として指揮をとり優勝を果たしたときも、私は一貫して「フォロワーシップ」を重視してきました。

フォロワーシップとは、1人のリーダー(監督)がチームを引っ張るのではなく、メンバー一人ひとりがリーダーとなり、全員が主体的にチームを形作っていくことです。例えば、自分たちのスタイルや次の試合の作戦などを、監督が決めるのではなく、選手たちで話し合って決めてもらいます。試合中には、必要に応じて自分たちで軌道修正してもらいます。以前はこうしたタイプの監督やコーチは本当に少なかったですが、最近はラグビーの世界でも広まっています。

フォロワーシップを重視する私が、普段何をしているのかといえば、彼らを褒めるでも叱るでもなく、見ています。そして、彼らの話を聞いています。必要があれば、彼らと話し合います。つまり、「観察」と「対話」に徹するのです。もちろん、対話の主導権はいつも握っていますし、その裏では誰よりも考え抜いていますが、主体的な決断は選手たちに任せています。

さらにもう1つ、私がいつも注目しているのはチームやメンバーにとってやりがいのある仕事が、毎日少しでも進捗する、つまり「小さな進捗」です。毎日、私は必ず練習の終わりに、全員に1日を振り返ったり、日記をつけてもらったりするようにしています。また、その日にチームや個人が前進したと思ったら、そのことをフィードバックします。そして、小さな進捗を自覚してもらうのです。

なぜかといえば、チームにとって最も大事なのはメンバー一人ひとりの「成長」で、そのために何よりも必要なのは、小さな進捗と失敗経験だからです。失敗しない限り、気づきは得られません。日々コツコツと進捗を確認しながら、失敗とチャレンジのサイクルを速く回すほど、成長スピードは速まるのです。そのためには、毎日5分でもいいから1日を振り返って、その成果や心情や失敗をよく見つめ、小さな進捗を自覚する他に成長への道はありません。

成長と成果の時差を恐れずに
部下の成長を追求する

もちろん、現実的には「成果」も重要です。しかし、たとえ目標を達成できたとしても、メンバーが成長していなければ次はありません。スポーツでもビジネスでも、監督やマネジャーは、最終的に成功するためにはメンバーが成長しているかどうかを大事にし、その結果として組織がよくなっていく姿を目指すべきなのです。

そこで気をつけなくてはならないのは、振り返りによって成長し、成果につながるまでには時差があるということです。リーダーの皆さんのなかには、その時差が怖い方もいるかもしれません。しかし、どの分野でも、こうした積み重ねなしに技術が上達することはあり得ません。リーダーには、時差を恐れずに部下の成長を追求する姿勢が求められるのです。

そこで活用してほしいのが「小さな進捗」です。いきなり結果に結びつかなくても、「今日はこれができるようになった」などの小さな進捗は、実はとてもパワフルな効果をもたらすことが最近の研究でも明らかになっているのです。

最新の研究から自らのマネジメントを見直してみる

小さな進捗については、私が監訳した『マネジャーの最も大切な仕事―95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力』(英治出版)の著者、テレサ・アマビール氏とスティーブン・クレイマー氏が35年かけて行った研究に裏付けられています。彼らは26チーム・238人に数カ月リアルタイムの日誌調査を行いました。彼らは、マネジャーの一番大事な役割とは、チームやメンバーのやりがいのある仕事が前に進むよう支援することだと主張しています。フォロワーシップを重視する私には心強いメッセージです。

従来のリーダーシップ論や組織論は、いわば「哲学」や「名言集」で、優れたリーダーが自らの方法や思想を語り、皆がそれを学ぶというものでした。もちろん、そこから得るものは多いのですが、その正しさを誰も検証していませんから、なかには間違いもあるでしょう。

それに対して、最近はこの研究をはじめ社会科学的な検証に基づいたリーダーシップ論・組織論が次々に出てきています。例えば最近の研究では、オリンピックで金メダルを獲得した選手のコーチの特徴の1つとして、勝利にこだわりすぎず、選手の日々の成長、小さな成功を重視していることが分かっています。今、こうしたリーダーシップや組織の研究が、世界各地で進められているのです。今後も優れた成果がいくつも生まれるでしょう。コーチやリーダーにとっては学ぶ材料や機会が多くなるわけで、そうした点に学び生かしていけば、マネジメントはますます面白い世界になっていくはずです。

良いリーダーになりたいのなら
メンバー以上に自ら成長し続けなくては

私は2014年に株式会社TEAMBOXを設立し、組織のリーダーに対してマネジメントのトレーニングプログラムなどを提供しています。そこで皆さんに伝えていることは、「誰かのせいにしていませんか?」と「あなた自身は成長していますか?」の2点にほぼ集約されます。この2つを満たしていれば、必ず良いリーダーになり、良いチームを作れます。ただ、「言うは易し、行うは難し」ですが。

リーダーにとって第一に重要なのは、誰かのせいにしないこと、「自責」で考えることです。どんな部下であっても、リーダーとして彼らに寄り添い、対話して、成長を促すことはできます。メンバーが成長しないのは自分の責任と考え、彼らの成長のために行動することが大切です。

第二に重要なのは、リーダー自身が成長することです。メンバー以上に成長し続けなくては、良い指導を行う良いリーダーにはなれません。そのためには、いったん今まで学んだものや自分の価値感、成功体験を捨ててみる。別の方法にトライしてみて、失敗しながら学んでいく姿勢が欠かせないと思います。

成長するためには、リーダーも毎日振り返らなくてはなりません。さらに、日常的にフィードバックを受けることも大切です。自分のことは自分では分かりませんから、メンバーや周囲に聞くしかないのです。例えば、私はメンバーに何かを説明したとき、「今の説明、分かった?」ではなく「今の説明、どうだった?」と聞くようにしています。すると、「今日は長かったですね」といったフィードバックを受けられます。こうして自分をさらけ出すこともリーダーにとって重要なことだと思います。

人は誰でも必ず成長する。そう信じて日々チャレンジし、失敗して、振り返り続けましょう。その先に、きっとチームの明るい未来があるはずです。

【text :米川青馬】

※本稿は、弊社機関誌 RMS Message vol.46 特集2「今の時代の新人若手の生かし方・育て方」より抜粋・一部修正したものです。
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※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。



PROFILE
中竹竜二(なかたけりゅうじ)氏
日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター
株式会社TEAMBOX 代表取締役

早稲田大学人間科学部卒業後、レスター大学大学院社会学部修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。3期にわたりラグビーU20日本代表ヘッドコーチを務める。主な著書に主な著書に『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP)

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