調査レポート
今年の新人に見られる「確実性」と「挑戦」への二極化
新入社員意識調査2024 【前編】
- 公開日:2024/07/12
- 更新日:2024/09/04
近年、どのような企業でも新入社員育成の難度は高まっています。先輩・上司も正解が分からないビジネス環境のなかで、どのようにすれば新入社員の成長を後押しし、共によりよい未来をつくっていけるでしょうか。今回は、弊社が2024年度の新入社員を対象に実施した、以下2つの意識調査の結果から、新入社員の特徴とその背景をお伝えします。
■ 調査1
本記事で主に紹介する調査は、2024年3月~4月に、全国各地で開催した新入社員導入研修「8つの基本行動」の当該期間での受講者741名(300名未満企業比率:66.5%)に、上司や職場に期待すること、期待や不安、雇用・就職先での勤続意向に関する質問について、回答いただいたものです。
■ 調査2
補足となる調査は、2024年1月~4月に弊社の新入社員向けのeラーニングサービスで「ビジネスマナー」や「ビジネスパーソンの基本行動とスタンス」の受講者1775名(300名未満企業比率:17.6%)に対して、仕事をするうえで重視するキーワード、新入社員のうちに身につけるべきこと、仕事をするうえで不安に思っていることに関する質問について、回答いただいたものです。
- 目次
- 働くうえで大切にしたいことは「確実性」と「挑戦性」の二極化
「アクセスする情報」や「選択する経験」の多様化が背景か? - 働きたい職場の特徴は「心理的安全性」の高さ
「誰でも言いたいことが言える」オープンな環境がキー - 仕事をするうえで重視したいことは「成長」「貢献」「専門性」
「どこでも生き残れる力」への意識の高まり - 最後に
「個の尊重」と「オープンでポジティブな関わり」がより求められるように
働くうえで大切にしたいことは「確実性」と「挑戦性」の二極化
「アクセスする情報」や「選択する経験」の多様化が背景か?
まずは、働くうえでの意識をテーマとして扱います。
<図表1(調査1)>働くうえで大切にしたいこと(最大3つまで複数選択/n=738)
Q:あなたが社会人として働いていくうえで大切にしたいことは何ですか?働くうえでの意識に関する質問では、社会人として働いていくうえで大切にしたいことを聞いています。結果は、「社会人としてのルール・マナーを身につけること」がトップ(45.2%)。「任せられた仕事を確実に進めること」(39.4%)、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」(31.0%)が過去最高。「何があってもあきらめずにやりきること」(13.8%)が過去最低となりました。
2019年の調査以降「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」は連続1位でしたが、6年ぶりに「社会人としてのルール・マナーを身につけること」が1位となりました。背景としては、完全なるコロナ禍明けの時期になり、出社での仕事や対面コミュニケーションへの回帰が起こったことで、マナーを求められる場面を想起する機会が増えたことが影響していると考えられます。
注目すべきは、「任せられた仕事を確実に進めること」「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」という一見相反する2つの項目が調査以来最高値になった点です。この2つの項目を選択した対象者の回答傾向を見たところ、両方ではなくいずれかを選択している割合が高く、「確実性」を大事にする層と、「挑戦性」を大事にする層との二極化の傾向がうかがえました。
「任せられたことを確実に進めること」は例年高い選択率であり、昨今の新人・若手社員の特徴である失敗への不安や恐れから、調べても分からないことや経験していないことに対しては、確実な動き方を求める意識は強いと考えられます。他方、インターネットやSNS上で、企業でのインターンシップや起業・副業の情報に触れる機会も増え、早い段階から社会人経験や仕事経験を積む層も出てきており、挑戦がより身近になってきている状況も見受けられます。
また、さまざまな情報が手に入る環境に身を置いているため、うまくいかないやり方や自分自身にフィットしないやり方を続けてやりきるよりも、他の選択肢を調べて見つけることが当たり前という感覚は強まっており「何があってもあきらめずにやりきること」の選択率は低くなっていると考えられます。
このように、学生時代に「選択してきた経験」や、どんな情報に触れてきたかという「アクセスする情報」の違いを背景として、新入社員の大切にしたいことは多様化しているといえます。
働きたい職場の特徴は「心理的安全性」の高さ
「誰でも言いたいことが言える」オープンな環境がキー
次に、理想の職場をテーマとして扱います。
<図表2(調査1)>働きたい職場の特徴(最大3つまで複数選択/n=740)
Q:あなたはどのような特徴を持つ職場で働きたいですか?この質問では、どのような特徴を持つ職場で働きたいかを聞いています。結果は、「お互いに助けあう」がトップ(64.1%)。「遠慮をせずに意見を言いあえる」(45.1%)が過去最高。「アットホーム」(36.4%)は過去最低となりました。
「お互いに助けあう」は調査開始以来不動の1位ですが、「遠慮をせずに意見を言いあえる」は調査開始以来最高値での2位となりました。この2つの項目を選択した対象者の回答傾向を見たところ、いずれかではなくどちらも選択している割合が高く、 「助けあう」と「遠慮をせずに言う」の両立を求めている傾向がうかがえました。
「お互いに助けあう」は例年高い選択率です。背景には、教育の変化としてアクティブラーニングが取り入れられるようになり、グループワークやディスカッションなど、周囲のメンバーと共に課題に取り組む経験を通じて、助けあいながら成果を出す重要性を感じていると考えられます。
他方、個性尊重の時流を背景として、学生時代から、一人ひとりの個性を認め「誰でも自分自身の意見を発信できること」が当たり前の環境を経験しており、「言いたいことが言える」ことの重要性も感じていると考えられます。
この2つの特徴を併せると、新人・若手社員はまさに「心理的安全性」※が担保された環境を求めているといえます。
※「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態(エドモンドソン 1999)」のこと。居心地のよい場ということではなく、言いにくいことも含めて遠慮せず言い合えることがポイントとされる
仕事をするうえで重視したいことは「成長」「貢献」「専門性」
「どこでも生き残れる力」への意識の高まり
次は、仕事観の特徴をテーマとして扱います。
<図表3(調査2)>仕事をするうえで重視したいこと(N=1,775/最大2つまで複数選択)
Q:あなたが仕事をするうえで重視することは何ですか?この質問では、新入社員が、仕事をするうえで重視することについて聞いています。結果は、「成長」(32.2%)と「貢献」(23.1%)がトップ2。「競争」(2.6%)は最下位となりました。
例年通り1位・2位の「成長」「貢献」に加えて、注目すべきは「専門性」が上位にきたことです。
背景として、昨今の生成AIの台頭やジョブ型雇用の潮流、また、転職が“当たり前”の労働環境のなかで、「自分自身の市場価値を上げたい」「将来性のある職業で専門性をつけたい」という、危機感を伴う意識の高まりがあると考えられます。
また、学校教育において早い段階から自分自身のキャリアを考える機会が設けられていたり、インターネットやSNS上でもキャリアアップに役立つ情報が入手できたりする環境で、自分自身の興味・関心領域を広げ、そのなかから専門的に学びたい事柄を選択する機会に触れてきていることも背景にあると考えられます。
最後に
「個の尊重」と「オープンでポジティブな関わり」がより求められるように
<図表4(調査1)>Z世代の特徴
最後に示した図では、「理想の職場」「理想の上司」について尋ねた項目のうち、過去10年間(2024年と2014年)の選択(%)の増減が顕著な項目を抜粋しています。10年間の変化を総合して見ると、より「個の尊重」と「オープンでポジティブな関わり」が求められるようになってきているといえます。
このような特徴を持つ新入社員と共に働くうえでは、「多様な背景を持つ誰もが、言いたいことを言える」オープンな環境がキーとなると考えられます。後編では、新入社員と先輩・上司が、共に環境をつくりながら、よりよい未来を目指していくためのヒントをお伝えしていきます。
なお、2024年 新入社員意識調査【後編】についてはこちらをご覧ください。
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◆本年度の新入社員意識調査レポートDLはこちらから
新入社員意識調査2024【前編】~調査報告~
新入社員意識調査2024【後編】~Z世代と共によりよい未来をつくるヒント~
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執筆者
サービス統括部
HRDサービス推進部
トレーニングプログラム開発グループ
研究員
関根 彩夏
2017年リクルートマネジメントソューションズ入社。営業職を経て、アセスメント研修・多面(360度)評価などの商品開発に携わる。現在は、主に新人・若手社員、中堅社員向けのトレーニングサービスの企画・開発に従事。
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