連載・コラム
「X・Y・Z世代の壁を越えたコラボレーション」が叶う職場づくりのヒント
新入社員意識調査2024 【後編】
- 公開日:2024/08/19
- 更新日:2024/08/19
「Z世代新入社員の育成は難しい。彼らの仕事観や、理想の接し方が分からない」
【前編】では、上司世代のこのような疑問を解決する糸口として、「①働くうえでの意識」「②理想の職場・上司」「③仕事観の特徴」という3つの軸から、Z世代の仕事意識をひもときました。後編では、そんな新入社員と共によりよい未来をつくるヒントとして、新人の成長を後押しするアプローチ法や、相互理解を深める関わり方についてお伝えします。
◆「新入社員意識調査2024 【後編】」のダウンロードはこちらから。
そもそも、なぜ昨今の新人育成は難しいのか?
新入社員とよりよい未来をつくるヒントについて触れる前に、上司世代の多くが「新人育成の難しさ」を感じやすい背景をご紹介します。結論から述べると、近年の新人育成が難しい主な要因は、「上司と部下の“アタリマエ”が違いすぎて相互理解が進みにくいから」です。
バブル期、就職氷河期、インターネットの普及、リーマン・ショック、そしてコロナ禍。現代日本はこのように、50年にも満たない歴史のなかでさまざまな変化が起こっている激動の時代といえます。時代の変化が速すぎるあまり、価値観やライフスタイルもどんどん変化し、世代間のギャップも顕著になりました。ジェネレーションの違いを表す言葉として、X世代、Y世代、Z世代、α世代などの「括り」も生まれています。
職場では、そういった“世代”も“アタリマエ”も違う者同士が密に関わります。特に上司と新人の間にはジェネレーションギャップが生まれやすく、「きっとあなたもこうですよね?」という暗黙の価値観が噛み合わないことも珍しくありません。年齢差で生じるもともとのジェネレーションギャップに、時代の激変が生む違いが加わり、相互理解の難しさにつながっているのです。
こんなに違う、上司世代と新人世代の“アタリマエ”
例えば、上司世代と新人世代の時代背景を比べてみると、次のような違いがあります。
<図表1>時代の変化
組織や個人によっても異なりますが、上司世代が生きてきた時代の“アタリマエ”は、「個より組織を重んじる」という考え方も少なくありません。ビジネスにおいても、組織が決めた方針やポジションに自分を適合させ、自力で成長していくことを是とする傾向が見られることも。
一方、デジタルネイティブである新人世代の時代の“アタリマエ”は、「個を尊重し、共創していくこと」。ビジネスにおいては、言いたいことをきちんと言い合えるフラットな環境で、お互いの多様性を尊重しつつコラボレーションしていくことを是とする傾向にあります。
また、仕事の進め方や取り組み方についても、上司世代と新人世代では大きく異なるのが特徴です。
<図表2>上司世代の傾向/Z世代の傾向
上司世代の仕事の進め方の傾向は、「やりながら納得していく」。組織から与えられたポジションで、まずは仕事に取り組みながら適応していくところが特徴です。
一方、新人世代は「納得してからやる」のが特徴で、その仕事に取り組む意義や価値についてまず考える傾向にあります。「なるほど。こういう目的があるから今、自分がやるのか」と腹落ちすれば高いパフォーマンスを発揮する点も、新人世代の特徴といえるでしょう。
このように、仕事の進め方の“アタリマエ”さえ違う世代同士が共存し、個を尊重しながらも成果を出していかなければならない難しさが、新人育成に対する課題感の高まりにもつながっています。
では、そんな上司世代と新人世代が共によりよい未来をつくっていくためには、どのようなアプローチをすればよいのでしょうか。
よりよい未来をつくるヒントはDEI
同じ時代を生きているはずなのに、自分とは“アタリマエ”が違う。そんな世代の育成に際して役立つのがDEI、「ダイバーシティ」「エクイティ」「インクルージョン」という3つの考え方です。
1.深層ダイバーシティの理解を目指す
<図表3>ダイバーシティ(表層/深層)
まず、新人世代の深層ダイバーシティ(多様性)に目を向け、理解を目指すことが大切といえます。
深層ダイバーシティとは、相手の価値観やスキル、仕事観といった、内なる多様性のことです。上司世代と新人世代では、この深層ダイバーシティそのものが異なっていることが多々あります。見た目からでは分からないお互いの多様性を確認していくことが、異なる世代との対話をスムーズにする第一歩といえるでしょう。前編で紹介した新入社員意識調査なども、ラベリング的な捉え方には注意しつつ、相手の生きてきた時代背景や、“アタリマエ ”の違いを理解する一助として役立ちます。
2.公平(Equity)に接することで効果が高まる
<図表4>エクイティ(公平)
次に大切なポイントは、公平(Equity)な対応を目指すことです。
上司世代が受けた新人教育の多くは「私たちがそうしてきたので、あなたたちもそうしてください」という、平等性(Equality)を重視するスタイルでした。全員に共通したものを求め、一定の水準を担保していくことが、当時の教育方針のスタンダードだったのです。
一方で、個性や多様性を重んじる新人世代に効果的といえるのが、個々の違いをふまえて公平(Equity)に関わる方法です。具体的には、「○○さんはこういう環境で育って、このような考え方を持っているから、こういう関わり方の方が納得感や行動につながるかもな」というように、当人の特徴や背景をふまえて関わります。新人にとっては、自分の個性を尊重してくれる姿勢はうれしいですし、自分に合っているやり方は納得感につながり、よりよい効果が期待できる育成方針といえるでしょう。
3.インクルージョン(Inclusion)によって新しい価値を創造する
<図表5>インクルージョン
最後に重視したいのが、お互いの多様性を理解し、認め合った後に、インクルージョン(Inclusion)を実現することです。個性の尊重だけでは、新たな価値やよりよい未来の創造にはつながりません。個性の違いは、最初はその異質性がネガティブに感じられることもあります。しかし見方を変えれば、自分たちにはないものを持った頼もしい存在ともいえます。違いを強みとして力を合わせることで、今までにないことができたり、新しい価値を創造したりすることにもつながっていきます。
「相手をよく知る」ことからスタートし、お互いの違いを味わい、相互交流を経て、共創につなげていく。このようなステップを意識することで、世代の壁を越えてコラボレーションし合う、よりよい職場づくりへとつながっていくでしょう。
VUCA時代で新人世代を育てるには?
今まで以上に新人育成に力を入れても、なかなかうまくいかないケースもあります。なぜなら、複雑性を増す現代のVUCA時代では、新人も上司も「どうやったら成長できるのか」「どうすれば仕事がうまくいくのか」に正解が出せないことが多いからです。
<図表6>VUCA環境
加えて新人世代の特徴である「はじめの一歩に慎重になりやすい」という傾向も、新人教育の難しさにつながっています。VUCA時代では自分で考え、試行錯誤していく力が必要ですが、新人世代は失敗への恐れや不安から「はじめの一歩」をなかなか踏み出せないことも多いためです。
では、どのようにすれば新人の初動をサポートできるのでしょうか。
「ゆるく」×「ひろく」で新入社員のはじめの一歩を後押しする
2022年※に「はじめの一歩」の大切さをお伝えして以来、弊社は多くの新人・上司による「はじめの一歩」の成功事例を見てきました。その結果、「はじめの一歩」が成功しやすいパターンには、「ゆるく」×「ひろく」を多く取り入れることで、新人にとっての味方をいち早く見つけやすくしているという共通点がありました。
※「ニューノーマル時代の新入社員の定着・早期立ち上がりに向けて 新入社員意識調査2022」
<図表7>「ゆるく」のヒントカード
まずは声かけなどによって、「失敗するかもしれない」「うまくできそうにない」と悩む新人の心理的なハードルを下げます。これが「ゆるく」です。相手を甘やかすという意図ではなく、「効率的に」「確実に」と凝り固まっている新人に安心感をプレゼントし、一歩を促していくのです。
<図表8>「ひろく」のヒントカード
次に、「1人で頑張らないと」「責任を持ってやらなければ」と孤立しがちな新人の視野を広げる提案を行います。これが「ひろく」です。いろいろな人に相談しやすくしたり、異なる価値観を提案したりなど、狭まった新人の視野を広げるサポートを行います。
「ゆるく」×「ひろく」の成功事例
弊社が提供する若手研修「X-SHIP(クロスシップ)」受講者の事例をもとに、「ゆるく」×「ひろく」の成功パターンをご紹介します。
<図表9>「ゆるく」×「ひろく」の成功パターン
「X-SHIP(クロスシップ)」とは、セルフリーダーシップを発揮し、よりよい状況を自らつくっていく方法を学ぶZ世代向けの研修です。この研修では事前課題として、受講者に「他者から見た自分らしさ」を周りにヒアリングしてもらい、自分を客観視する下地をつくります。
とある受講者はこの事前課題の際に、チャットというツールを使って「ゆるく」、30人もの仕事関係者に「ひろく」、自分らしさについてのフィードバックを依頼しました。その結果、意外なことに受講者が「厳しい方だ」と感じていたお客様から、非常に丁寧なフィードバックが届いたとのこと。自分らしさについて話す機会を経て信頼関係が深まり、仕事のご依頼にもつながったことで、「はじめの一歩」を踏み出す自信がついたと話していました。
新入社員との日常的な関わり方のヒント
最後に、新入社員との日常的な関わり方のヒントをご紹介します。
弊社が実施した「新人・若手に関するアンケート調査」(2023)によると、上司や周囲の望ましい関わり方としてトップ3に挙がったのは、「日頃からこまめに声をかける」「やることの目的や意味を伝える」「意見や考えを否定せず、受け止め尊重する」でした。
<図表10>「新人・若手に関するアンケート調査」(2023)
Q:上司や周囲の関わり方で前向きになったり、やる気があがったりするのはどんなことですか(対新人・若手)また、今後ほしい支援としては、「自分自身のいいところ・もう一歩なところも知りたい」「具体的なフィードバックやアドバイスがほしい」という声が挙がっています。お互いに尊重し合い、対等に意見を言い合える環境のなかで、目標に向けて進んでいけるよう支えてほしいという新人世代の傾向がうかがえる結果となりました。
新人社員のニーズをふまえると、日常の関わり方では次の4つのアプローチが効果的です。
<図表11>効果的な4つのアプローチ
まずは日常のなかで、こまめに声をかけ合い、お互いの意見や考えを否定せず受け止めるコミュニケーションを交わし、安心・安全だと思える関係性を築くことが重要となります。
そして、新入社員が徐々にオープンに発信・行動できるようになった段階以降は、言うべきことを伝え、本人の成長課題についてのフィードバックも伝えていくと効果的です。
最後に
「新入社員意識調査2024」をもとに、異なる世代同士が共によりよい未来を目指していくためのヒントをお伝えしました。お互いの“アタリマエ”を知り、相互交流を図りながら、世代を超えたコラボレーションができる職場づくりを目指してみてはいかがでしょうか。
================================================================
◆人事 無料動画セミナー
Z世代を知る・育てたい力・育て方「すぐに使える新人育成の3つのキー」
◆本年度の新入社員意識調査レポートDLはこちらから
2024年新入社員意識調査【前編】~調査報告~
2024年新入社員意識調査【後編】~Z世代と共によりよい未来をつくるヒント~================================================================
おすすめコラム
Column
関連する
無料オンラインセミナー
Online seminar
サービスを
ご検討中のお客様へ
- お役立ち情報
- メールマガジンのご登録をいただくことで、人事ご担当者さまにとって役立つ資料を無料でダウンロードいただけます。
- お問い合わせ・資料請求
- 貴社の課題を気軽にご相談ください。最適なソリューションをご提案いたします。
- 無料オンラインセミナー
- 人事領域のプロが最新テーマ・情報をお伝えします。質疑応答では、皆さまの課題推進に向けた疑問にもお答えします。
- 無料動画セミナー
- さまざまなテーマの無料動画セミナーがお好きなタイミングで全てご視聴いただけます。
- 電話でのお問い合わせ
-
0120-878-300
受付/8:30~18:00/月~金(祝祭日を除く)
※お急ぎでなければWEBからお問い合わせください
※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください
- SPI・NMAT・JMATの
お問い合わせ -
0120-314-855
受付/10:00~17:00/月~金(祝祭日を除く)