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調査レポート

ニューノーマル時代の新入社員の定着・早期立ち上がりに向けて

2021年 新入社員意識調査

  • 公開日:2021/06/28
  • 更新日:2024/05/11
2021年 新入社員意識調査

企業にとって、コロナ禍での新入社員の受け入れは、今年で2年目となります。職場環境や働き方が変わるなか、ニューノーマル時代の新入社員の定着や早期立ち上がりに関するご相談を伺うことも多くなってきています。今回は、弊社が2021年度の新入社員を対象に実施した、以下2つの意識調査の結果から、新入社員の特徴や職場での受け入れに向けた考察を行いました。少しでも今後の新入社員育成を考える一助になりましたら幸いです。

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■調査1
本記事で主に述べている調査は、2021年3月23日~4月15日に、全国各地で開催した新入社員導入研修「8つの基本行動」の当該期間での受講者472名(300名未満企業比率:71.8%)に、上司や職場に期待すること、期待や不安などに関する質問について、回答いただいたものです。

■調査2
補足する調査で、2021年2月1日~4月26日に弊社の新入社員向けeラーニングサービスで「ビジネスマナー」や「ビジネスパーソンの基本行動とスタンス」の受講者1980名(300名未満企業比率:21.0%)に、仕事をするうえで重視するキーワード、スタンスに対する意識について回答いただいたものです。

目次
変化する理想の職場や上司像~多様性の尊重・支援的なかかわり
垣間見える仕事観~精神的な充実感・一社にこだわらない選択肢
コロナも影響? 難度が高まるOJT
働き方、生き方を選択するということ
自己理解・相互理解のその先に……
最後に

変化する理想の職場や上司像~多様性の尊重・支援的なかかわり

まずは理想の職場、上司に関するテーマを扱っていきます。

<図表1>働きたい職場

<図表1>働きたい職場

職場に関する質問では、どのような特徴を持つ職場で働きたいかを聞いています。結果は10年前と比較し、「お互いに助けあう」「お互いに個性を尊重する」の選択率が高まり、それぞれ16.5ポイント、16.9ポイント増加しています(それぞれ過去最高68.4%、44.9%)。一方、「活気がある」「お互いに鍛えあう」「皆が一つの目標を共有している」は10年前と比較してそれぞれ14.1ポイント、12.4 ポイント、7.8ポイント減少しており、なかでも「お互いに鍛えあう」の選択率は、過去最低の13.6%となりました。

<図表2>上司に期待すること

<図表2>上司に期待すること

上司に関する質問では、上司に期待することは何かについて聞いています。2021年のトップ2は、「相手の意見や考え方に耳を傾けること」と「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」となり、選択率は他の項目より11ポイント以上高い結果になりました。特に「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」は、10年前と比較し13.7ポイント増加し、過去最高の47.7%になりました。一方で、10年前と比較し「仕事に情熱を持って取り組むこと」「周囲を引っ張るリーダーシップ」「言うべきことは言い、厳しく指導すること」は、それぞれ14.6ポイント、10.7ポイント、8.8ポイント減少しています。

新入社員の近年の1つの特徴として、鍛えあう職場・厳しい指導や引っ張っていくような上司よりも、助けあい尊重し合う職場、相手の意見を傾聴し丁寧に指導をする上司を望んでいる傾向が挙げられます。このような特徴は、デジタル化が急速に進み、VUCA時代といわれる、変動(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)が高い現代の社会を反映していると考えられます。

現代社会では、技術が発展し、ソーシャルメディアなどが普及したことで、空間や言語を超えてつながることが容易になりました。複数のコミュニティに所属することもできるようになり、仲間意識が醸成されやすい環境ともいえるかもしれません。また、多様な生き方や働き方を体現している人を身近に感じることもできるようになり、そうした多様な生き方や働き方が、社会的にも受け入れられやすくなってきていることを知る機会も増えています。このような社会的背景から、多くの新入社員にとっては、互いに鍛え合う職場よりも、困ったときには「助け合える職場」や、多様な価値観や考え方を互いに認め合う「個性を尊重する職場」の方がイメージしやすく、受け入れられやすくなってきているのではないでしょうか。

同時に、社会は変化が激しく、前例が通用しないことも増えています。正解がないなかで、先を見通すことも難しい状況です。私たちは、変化を敏感に察知し、方向を模索しながら、柔軟に対応していくことが求められています。そのような社会のなかで、新入社員は上司に、行き先を提示し、引っ張っていくようなかかわりよりも、自分で、あるいは自分たちで行き先を考えながら進んでいくための支援的なかかわりを望む傾向が高まっていることが推察されます。

垣間見える仕事観~精神的な充実感・一社にこだわらない選択肢

次に、仕事観に関連するテーマについてみていきます。

<図表3>仕事をする上で重視すること

<図表3>仕事をする上で重視すること

仕事をするうえで重視することに関する質問では、トップ3は、「貢献」「成長」「やりがい」という結果になりました。一方で、「競争」「ビジョン」「創造」「金銭」「承認」の選択率は10%以下となりました。

<図表4>現在の職場の勤続意向 (N=472)

<図表4>現在の職場の勤続意向

また、現在の職場での勤続意向に関する質問では、「B現在の会社で勤め続けることにこだわらない・どちらかと言えばB」の選択率が53.8%となり、「A定年まで現在の会社で勤めたい・どちらかと言えばA」の選択率36.0%を上回りました。

このように精神的な充実感を求める傾向や、一社こだわらないキャリア選択が視野に入っている人が一定数いるということの背景には、複雑に絡まる社会的な要素があると想定されます。

世界的にも、SDGs(持続可能な開発目標)が掲げられ、持続可能な社会に向けて、経済、社会、環境の側面でバランスをとりながら統合的に取り組んでいくことの必要性がうたわれています。社会的にも、企業の経済活動や個人の消費行動のあり方が問い直され、ダイバーシティ&インクルージョンや働きがいの向上に向けた取り組みの重要性も広まっています。新入社員の世代は、このような世の中の大きな流れのなかで、学校教育やソーシャルメディアなどからも、社会的なパラダイムがシフトしていることを敏感に察知していることが想定されます。そうした影響を受け、働く目的やゴールに対して、金銭や社会的な地位などを得ることより、自身がどうありたいか、何を成し遂げたいかということがより重視されてきていると推察されます。今回の結果で「貢献」「成長」「やりがい」などの精神的な充実感を重視する傾向が高かったことは、こうした社会的な変化を反映しているともいえるのではないでしょうか。

また、「人生100年時代」というフレーズを耳にする機会も増えてきています。企業が従業員の終身雇用を保証することも難しくなってきているなか、私たちは自律的なキャリア形成を求められ始めています。新入社員も、キャリア教育や就職活動などを通じて、入社前から自身のキャリアについて考えることが多かったのではないでしょうか。こうした変化が、現在の会社で勤め続けることだけが唯一の選択肢ではない、と思う人が半数以上いることにつながっていると考えられます。同時に、仕事で重視したいこととして上がっている「成長」というキーワードの裏には、この先に広がっている可能性への期待や、一社だけでは将来的に社会で通用しなくなってしまうかもしれないという不安の要素が含まれているとも想定されます。このような結果は、新入社員の仕事観を知る一助にもなるのではないかと考えています。

コロナも影響? 難度が高まるOJT

ここまで、調査結果から見えた理想の職場や上司、キャリア観について触れてきました。ここからは、職場に視点を変えて、新入社員を取り巻く環境を考えていきます。研修などを通じて、新入社員の方々の希望の満ちあふれた姿も、人事の方々の新入社員への期待も、受け入れ先の職場の方々の想いも垣間見てきました。一方で、人事の方々からは、新入社員が職場や仕事へうまく適応できず、メンタルヘルスの不調を訴えたり、離職に至ってしまったりするなど、各企業が抱える課題が顕在化していることも伺ってきました。これは、ここまで述べてきた新入社員の変化だけでなく、社会変化にともなう職場環境や仕事の変化などにも影響を受けているのではないでしょうか。

調査結果から、新入社員は、「貢献」「成長」「やりがい」などを重視したいと思っている人が多い傾向が見受けられました。一方で、コロナ禍の影響も受け、前例が通用しにくく、仕事の意味・価値が変化しつつある社会のなかで、本人が貢献できている、成長できているという実感を得て、やりがいを感じられるまでには、一定の期間が必要とされます。受け入れ側の職場については、多くの新入社員は「アットホームな」「助け合う」職場を望む一方で、コロナ禍で在宅勤務が増え、対面でのコミュニケーションや仕事以外のコミュニケーション、自部署に限らない同期同士や他部署などのななめの先輩との接点も減り、孤独感を感じたり、悩みを相談できずにいたりする可能性もあります。

新入社員の早期立ち上がりに向けて、人事や上司だけに頼るのではなく、OJTリーダーやメンター制度などの施策を取り入れている企業もありますが、前述してきたような行動の背景にある経験、想い、価値観の違いから、コミュニケーション齟齬が起きてしまうこともあり得ます。例えば、「成長」というキーワード1つを取っても、成長したい方向性や効果的な登り方は、個々人によって異なることが想定されます。このように新入社員の特徴やコロナ禍での仕事・職場での働き方の変化によって、価値観の違いや新入社員が力を発揮しやすい環境と職場とのギャップが広まり、より一層職場でのOJTが難しくなってきていることも想定されます。

働き方、生き方を選択するということ

これからの新入社員の立ち上がり支援を考えるうえで、キャリアとライフの密接なかかわりは、軽視できない要素だと考えています。多くの人にとって、キャリアを選択していくことは、生き方を選択していくという側面もあるのではないでしょうか。現代社会では、生き方や働き方の選択肢が増えています。例えば一社で働き続けることも、転職をすることも、本業と副業を両立することも、プライベートに重きを置くことも一人ひとりが選べるようになってきており、こうした多様性が社会的にも受け入れられやすくなってきています。一方で、社会のなかで自分をどう位置付けるか、ライフのなかでキャリアをどう位置づけていくか……。多くの人は、選択肢が増えたことで、自らがどのような道を進むべきかを悩むことも増えていると考えられます。

今回の調査結果だけで新入社員のキャリア観やその背景について深く考察するには情報が限られていますが、最近のキャリア観の特徴が垣間見えたのではないでしょうか。コロナ禍では、日本だけでなく世界中で今までの当たり前が問い直されてきています。With/ Afterコロナのニューノーマルな時代の社会変化は、今後も人々の人生観やキャリア観に影響してくることが想定されます。そんななか、新入社員の早期立ち上がりに向けて、新入社員、受け入れ先の職場、人事それぞれにとってどのようなことが重要なのでしょうか。今回は、多くの新入社員が直面する壁をふまえて、考えていきたいと思います。

自己理解・相互理解のその先に……

新入社員の立ち上がり支援で重要なことの1つに、本人の原動力のベースとなる支えになるものを見つけていくことがあると考えています。新入社員のなかには、就職活動を通して、自分のゴールに向かって突き進んでいる人たちを横目で見ながらも、その先に続く道や行く先が見えないたくさんの扉の前に立ち、正解が分からないなか、そのうちの1つを選んで入社してきている人も多いのではないでしょうか。

特に1年目は、扉の先に続いているその道が、どこに向かっているかが見えない状況のなかで、その道中にたくさんの障害物が立ちはだかっていることでしょう。同時に、無数に存在する新たな魅力的な扉にも出会うことが想定されます。そのような状況だからこそ、時に行き先が分からなくなったり、今進んでいる道が信じきれなくなったりして、立ち止まることも、別の扉を開けてみたくなることもあるでしょう。

自己理解・相互理解1

実際には、その障害物を乗り越えた先で、結果的に「何か」が見えてくることもありますが、その「何か」に近づくためには、目の前にある障害物を乗り越えていくことが必要です。そして、障害物を乗り越えていくためには、自身の支えになるものを見つけることが重要です。その支えになるものは、一人ひとり異なるでしょう。例えば、あらためて進んでいきたい方向を明確にしていくことや、自分の強みを自覚すること、自分の弱さと向き合うことかもしれません。その支えになるものを知るヒントは、自身の経験を振り返り、行動の背景にある想いや価値観、特徴に意識を向け、自己理解を深めることだと考えています。例えば、学生時代や社会人になってから、うまくいったとき・いかなかったとき、モチベーションが高かったとき・低かったときなどを思い出しながら、自己と対話し、その差が自分のどのような特徴によってもたらされているのかに着目します。そうすることで支えになるものが見つかり、障害物を乗り越え、自分を生かした状態で成果につなげていくことや方法を探し、進んでいきたい方向へ近づいていくための、ヒントになるかもしれません。

自己理解・相互理解2

しかし、自分の力だけで数ある障害物を乗り越えていくことには、限界もあるでしょう。受け入れ先の上司や先輩は、日々のかかわりや対話を通して、個々人の行動の背景にある経験や想い、価値観などを知ることが第一歩なのではないでしょうか。そのうえで、本人にとって何が障害となっているかを把握し、本人の持ち味を生かしながら、障害物の乗り越え方を一緒に考えていくことが、新入社員の成長を加速させ、立ち上がりを早めていくためのキーになると考えています。とはいっても、新入社員を目の前にすると、行動や考え方・価値観などの違いに戸惑い、葛藤し、どのように接したらよいか分からないという声も伺います。そんなときは一度立ち止まり、なぜそのような戸惑いや葛藤が起きているのか、その根底には自分自身のどのような経験や想い、価値観があるのか、自問し自己理解を深めてみることがよいのではないでしょうか。お互いの違いを楽しむことが、新入社員との接し方やかかわりのヒントになるかもしれません。

最後に

社会が変化する中、企業が今後も価値を創出し、持続的に成長しつづけていくために、企業経営においても新入社員への期待も高まっているのではないでしょうか。新入社員の早期立ち上がり支援にとって、職場は成長にかかわる大きな要素の1つだと考えられます。だからこそ、仕組みや体制などのハード面の整備や、関係性づくりなどのソフト面の両面でのアプローチが重要だと考えています。

人事の方々は、このニューノーマルの時代のなかで、自組織にとっての新入社員育成の重要性を明確にし、職場に発信していくことで協力を得ながら、新入社員と受け入れ先の橋渡しの役割を担っていくことが求められるでしょう。新入社員育成にも、絶対的な1つの正解はありません。今回の調査が、社会全体で試行錯誤を繰り返し、人事、職場の方々がより自社に適した新入社員育成を考える一助になりましたら幸いです。企業にとっても、新入社員のみなさんにとっても、より多くの人がよい形で社会人のスタートがきれることを願っています。

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