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調査レポート

With/Afterコロナの人事施策実態調査

人事306名に聞く、With/Afterコロナ禍の人事施策はどのように変わるのか

  • 公開日:2021/01/25
  • 更新日:2024/03/19
人事306名に聞く、With/Afterコロナ禍の人事施策はどのように変わるのか

新型コロナウイルスを契機として多くの企業でテレワークが急増するなど、世のなかの働き方が大きく変化を遂げています。このような変化に対応すべく、企業における人事施策も転換を迫られています。

リクルートマネジメントソリューションズでは、With/Afterコロナにおける人事施策の実態と今後の検討課題について、2020年4月に発出された緊急事態宣言直後から3回にわたり調査を行ってきました。本調査レポートでは、11月に行った調査結果を中心に、その実態と考察についてお伝えします。

目次
調査概要
テレワークの利用率は? 職場や人事施策はどのような影響を受けているのか
人事施策の優先順位はどのように変化しているのか?
人事制度はどのような影響を受けているのか。注目が高まるジョブ型導入など
これからのミドルマネジメント層の育成施策
リモート環境での新入社員の受け入れ
当たり前になってきたオンライン研修。今後の課題は効果的な使い分け
最後に

調査概要

<図表1>「With/Afterコロナの人事施策実態調査」調査概要

「With/Afterコロナの人事施策実態調査」調査概要

テレワークの利用率は? 職場や人事施策はどのような影響を受けているのか

2020年4月に発出された緊急事態宣言と前後して、テレワークを導入する企業が一気に増えました。その後、緊急事態宣言は解除されましたが、コロナウイルス拡大の第2波や第3波といわれる感染者数の再増加を受け、引き続きテレワークや社内外とのリモートでのやり取りをしている企業も多いかと思われます。私たちがご相談をいただくのも、リモートでの働き方に関する内容がかなりの割合を占めています。
実際にどれぐらいの企業がテレワークを利用しているのか、調査結果を見てみましょう。

<図表2>企業におけるテレワーク比率

企業におけるテレワーク比率

図表2は、8月と11月の調査における「テレワーク利用比率」の結果です。8月よりも11月の方が企業におけるテレワーク比率は全体的に下がっています。しかし、11月時点でも「テレワークは導入していない」と回答する企業はわずか9.2%であり、「テレワーク比率25%以上」の企業が46.9%と、依然としてテレワークを利用する企業は多いと考えられます。

人事施策の優先順位はどのように変化しているのか?

次にこのようなリモートが進む環境変化のなかで、企業の人事施策の優先順位はどのようになったのかを見ていきます。図表3が、11月時点で聞いた人事施策の優先順位の変化についての回答です。

<図表3>2021年度に向けた人事施策の優先順位の変化

2021年度に向けた人事施策の優先順位の変化

「優先順位を上げた」人事施策として選択された上位3つは下記でした。
(1)職場内のコミュニケーション強化
(2)業務状況把握・労働時間管理
(3)人事制度の改定

この結果からは、リモートでの仕事が半年以上続き、職場内コミュニケーションや業務状況の把握について課題感を感じていることが窺えます。さらにこのようなリモートでの働き方や職場環境に対応した人事制度自体の改定の検討も始まっています。
また、図表3では示していませんが、結果の詳細を見ていくと、従業員規模の大きな会社ほど上記の(1)~(3)を検討している割合が高くなることが分かりました。これは、大企業ほど職場の様子や仕事の状況が見えにくくなくなるということが関係しているように思われます。

人事制度はどのような影響を受けているのか。注目が高まるジョブ型導入など

人事制度改定については具体的にどのような課題が挙がっているのか見てみましょう。図表4がコロナによる業務や働き方の変化が人事制度へ及ぼしている変化について聞いている回答結果です。

<図表4>業務や働き方の変化が人事制度に及ぼす影響

業務や働き方の変化が人事制度に及ぼす影響

図表4の設問では、選択肢の1つ目から3つ目までは目標設定や評価に関する内容、4つ目がマネジメントに関する内容となりますが、それぞれ「あてはまる」「ややあてはまる」の選択率が6割から7割となっており、影響が大きいことが窺えます。
また、「ジョブ型の導入など人材マネジメントの考え方を抜本的に見直す必要がある」に対する回答が「あてはまる」「ややあてはまる」の合計で53.1%の人事担当者に選択されています。過半数の方が、個々の施策の見直しではなく、人材マネジメントの考え方自体を見直していく必要性を感じているようです。

これからのミドルマネジメント層の育成施策

次に人材育成施策について見ていきます。図表5は2020年11月時点のミドルマネジメント層に関する現状についての回答です。ミドルマネジメントにおいてもリモートでのマネジメント機会が増えたと、72.2%(「あてはまる」「ややあてはまる」を選択した合計)の企業が回答しています。

<図表5>With/Afterコロナにおけるミドルマネジメント層の現状

With/Afterコロナにおけるミドルマネジメント層の現状

「あてはまる」「ややあてはまる」の選択率の合計を見た際、ミドルマネジメント層における課題感としては、「部下の業務の進捗把握に課題を感じている」「組織のコンディションの課題を感じている」においてその比率が高く、「マネジメント研修の内容について強化・変更を検討している」という企業は76.0%でした。
「今後は求めるマネジャー像の変更が必要だと考える」の選択率が69.5%(「あてはまる」「ややあてはまる」の合計)と高く、リモートでのマネジメントに対応した新しいマネジャー像やマネジメントスタイルへの変更の必要性が高まっていると考えられ、今後の人材育成施策に組み込まれていく可能性がありそうです。

また、図表6は教育体系を構築する際に「目指す人物像・組織像の見直し」を行っているかという質問に対する回答です。これについて「検討中」と回答した企業が42.3%、「これから検討予定」の企業が17%と合わせて、半数以上の企業が見直しを検討しているという結果になりました。マネジメント層だけではなく人材育成全般においても、リモートをはじめとしたさまざまな環境変化のなかでも価値を存分に発揮できる人材や組織の新しい姿が模索されているようです。

<図表6>With/Afterコロナの教育体系における目指す人物像・組織像の見直し

With/Afterコロナの教育体系における目指す人物像・組織像の見直し

With・Afterコロナ時代のマネジメント変革については、こちらのページでご紹介しています。
◆【特集】マネジメント変革

リモート環境での新入社員の受け入れ

次に新入社員について見ていきます。2020年4月に入社した新入社員については、新型コロナウイルス感染拡大の始まりと重なってしまった影響で、多くの企業が迷いと混乱のなかで受け入れを進めてきました。弊社にも新入社員研修のオンライン化や、リモート環境のなかでの育成について数多くのご相談をいただきました。
そのような状況のなかで採用活動を行ってきた2021年度の新入社員を取り巻く環境はどのようになっているのでしょうか。
図表7は2021年度の入社予定の新入社員の採用や入社後の受け入れについての調査結果です。

<図表7> 2021年度の入社新入社員を取り巻く環境

2021年度の入社新入社員を取り巻く環境

「オンラインでの選考だったため、入社後に期待値とのギャップが例年以上に想定される」の選択率が50.1%(「あてはまる」「ややあてはまる」の合計)、と選考時に対面で十分にコミュニケーションを取れていないことの懸念が窺えます。また、「新入社員研修の内容について強化・改善を検討している」企業は78.7%(同合計)にも及んでいます。2020年度の新入社員研修を手探りで行ってきたうえに、さらに選考形態の変化も受け、2021年度の新入社員研修の見直しがされていると考えられます。

急な対応を求められた2020年度とは違い、2021年度は単なる研修のオンライン化だけではなく、内定者同士の交流も見られにくく、入社しても対面でのコミュニケーション量が少なくなりそうな職場環境のなかで、人事や上司、先輩はどう新人と関わっていくのかをより考えていく必要がありそうです。

今の時代の新人育成については、こちらのダウンロードレポートでご紹介しています。
◆「新人・若手の早期戦力化」ダウンロードレポート

当たり前になってきたオンライン研修。今後の課題は効果的な使い分け

最後に、リモート環境のなかで一気に増加したオンライン研修の活用状況と今後について考察していきます。
弊社でもオンライン研修は4月の新入社員研修を皮切りに一気にお問い合わせが増え、多くの企業研修をオンラインでご提供してきました。当初はいずれ対面型の研修に戻る想定で、実施のタイミングを逃せない新入社員研修や新任管理職研修のみオンラインで実施し、その他の研修は対面での集合研修が行えるようになるタイミングを待って延期する、という企業も多い状況でした。現在、企業におけるオンライン研修への対応はどのようになっているのでしょうか。

図表8は2020年11月時点で対面・集合研修とオンライン研修の使い分けについて今後の意向を聞いた調査結果です。

<図表8>オンライン研修と対面研修の使い分け

オンライン研修と対面研修の使い分け

結果を見ると「対面・集合研修よりも高い効果が得られるのであれば、オンラインで実施したい」という企業が87.5%(「あてはまる」「ややあてはまる」合計)、「対面・集合研修と同等の効果が得られるのであれば、オンラインで実施したい」という企業が85.2%(同合計)に上ります。日々、企業の人事の方とお話ししていると、「オンライン研修を実施してみたところ、宿泊交通費や会場費がかからないうえに、忙しい人でも移動時間なく参加できるメリットに気が付いた。今後、対面で研修が行えるようになってもオンラインと使い分けていきたい」、という声をよく伺います。今回の調査はそのような人事の方の声を裏付けるような結果となりました。
実際に、使い分けについても「階層・対象層を踏まえて使い分けたい」という回答が73.8%、「研修内容(スキルや役割認識、キャリアなど)を踏まえて使い分けたい」という回答が89.9%、「手法を踏まえて使い分けたい」という回答が91.5%となりました。対面とどのように使い分けていくのが効果的なのかに関しては、まだまだ試行錯誤の部分がありそうです。

こちらのページでオンライン研修についてもご案内しています。
◆オンライン研修とは~背景とそのメリット~

最後に

本調査レポートにおいて、環境変化のなかでいかに人事施策のありさまが変化しているのかを考察してきました。新型コロナウイルスの感染拡大によって環境変化が急激に加速しており、そのような変化に対応すべく、企業は人・組織の転換が求められています。結果、多くの人事施策も現状のままではいられず、その主たる担い手である人事は、変化を先読みしながら、不確実性が高いなかで人事施策を立案・遂行することが求められている状況です。
つまりは、人事に求められる能力・視座なども間違いなく変化しているともいえます。人事の変化・成長の大きさの分だけ、人・組織の変化・成長を促すことができる。このような時代に突入したと言えるでしょう。

執筆者

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HRD・OD事業推進部
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吉田 尚平

2009年に現在の株式会社リクルートに入社し、HR領域に所属。その後、トヨタ自動車株式会社と株式会社リクルートの合弁会社である株式会社OJTソリューションズに出向し、顧客企業の生産性向上・人材育成等を支援。2017年に当社へ。人・組織課題のトータルソリューションを行うシニアソリューションプランナーを経て、現在はHRD・OD事業推進部でマネジメント職。当社の事業推進に幅広く携わっている。

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