管理職の昇進・昇格調査レポート報告 「なぜあの人がマネジャーに?」という問いに答えられる
将来の活躍が期待できるマネジャーを選ぶためのヒント

執筆者情報
ソリューション統括部
事業開発部
マネジャー
百瀬 大志

“変化の時代”と呼ばれる昨今、マネジャーに選ばれたものの、仕事が複雑化していることもあり、役割を果たしきれない人もいる。
一方で、働き方やキャリアデザインの多様化により、マネジャーへの昇進を希望しない若手も増え、多くの人事担当者は次代を担うマネジャー(課長層)候補者不足に危機感を抱いている。

このような状況下で、将来活躍しそうなマネジャーの選考に頭を抱えている人事担当者も少なくないだろう。
そこで本記事では、人事担当者から見たマネジャーや昇進・昇格制度に対する課題について、弊社独自の調査結果などをもとに振り返りつつ、妥当性や客観性が高い昇進・昇格制度の構築の一助となる情報をお届けしたい。


マネジャーの仕事が高度化、次の世代への負のスパイラルへ

プレイヤーからマネジャー(課長層)へのトランジションの際のギャップが、年々大きくなっている。目標達成に向けて自ら動くプレイヤーと異なり、マネジャーはメンバーの力を引き出して持続的に成果を上げる必要があり、求められる意識・行動・スキルは当然違うものである。さらに、VUCAワールド(めまぐるしく変化し、先行き不透明なビジネス環境)が広がっており、誰も答えを持たない世界で成果を上げていくのは簡単なことではない。そのようななかで、マネジャーは広い視野を持ち、事業を成長させるためのアイディアを携えて、上位層に働きかける役割も期待されているのである。

弊社の調査によると、人事担当者が感じている現任のマネジャー層の課題として1位に挙がったのは、「管理能力・専門性(知識、技術)が期待する水準に達しない者が一定数いる」。続いて2位は、「管理職としての組織の立ち上げ(職務割り当て・組織づくり)がうまくいかない者が一定数いる」である。これらの調査結果からも、マネジャーが担う職務の高度化とそれを担う人材との間にミスマッチが起きていることが分かり、マネジャー登用の難しさがうかがえる。

そんなマネジャーの苦労を見ているからか、マネジャーになりたがるメンバーが少なくなっている。「ワーク・ライフ・バランス」や「働き方改革」が少しずつ浸透し始め、働くことに対する価値観の多様化が広がっていることもあり、「マネジャーになってストレスが増えるなら、給料が変わらなくても現状のままでいい」と考える人や、プレイング業務そのものにやりがいを感じている人が増えてきているためである。マネジャーに対する期待が大きくなっている一方で、志望者は減っているのだ。

期待して選んだマネジャー、でも活躍が難しい

マネジャー登用には、組織の年齢構成の問題もある。今回の調査では自社の年齢構成について、「若年齢層と高年齢層の構成比率が大きく、中間層の構成比が小さい(ワイングラス型)」と回答している企業が47.2%と約半数を占めている。そのため「後輩が少なく、育成経験が足りない」もしくは、「課長代理などのプレマネジャー経験がない」状態で一般社員時代を過ごし、マネジャーになったという人も多いのではないだろうか。

とはいえ、ほとんどの企業はマネジャー登用後、その育成・フォローに取り組んでいる。内容としては、1位「当該階層に期待される役割・能力開発研修」、2位「経営層、上長や人事部門による面談・面接」、3位「上長や関係者による職場内でのOJT」の3つが一般的である。

しかしながら、2015年に当社が行った調査によれば管理職の5人に1人が適応できていない。(参考記事:新任マネジャーのほとんどがトランジションに苦労している)つまり、マネジャーになってさまざまなフォローを受けても、本人がしっくりこないまま働いており、力を発揮できていないケースもあるということである。

マネジャーの昇進・昇格前後の機会に育成施策を手厚く行うことはもちろん、その前提として“マネジャーとして活躍する可能性が高い人材を、見極めること”が大事ではないだろうか。

人事担当者の悩み「マネジャー候補の人材が枯渇している」

マネジャー選びで苦労している人事担当者は、マネジャー登用のプロセスや仕組みについて、具体的にどのような課題を抱えているのだろうか。今回の調査結果で最も多かった答えは「現管理職の後に続く人材が枯渇してきている」、次いで「昇進・昇格要件(基準)があいまいで納得性がない」、以下「管理職全体の質(レベル)が低下してきている」「発言力の強い部門や部門長の影響を強く受ける」と続いた。

「マネジャー候補の枯渇」というのは、そもそも人数が少ないだけではなく、課長代理などのプレマネジャー経験がない、もしくは、現任マネジャーの全体的なレベルが低下しているというような、量・質両面の問題があると考えられる。

また「昇進・昇格要件(基準)があいまいで納得性がない」「発言力の強い部門や部門長の影響を強く受ける」については、現場の影響力も大きく、候補者に対する情報を十分に持てないまま、人材を見極めていかなければならない人事担当者の難しさがにじみ出ているといえる。

現場の評価とマネジャーの資質は別問題

昇進・昇格の意思決定には、経営陣など上層部を納得させる根拠も重要になる。その際、現場からの推薦や、これまでの実績が根拠になりやすい。人事担当者は対象者の働きぶりを直接見る機会が少ないため、現場からの推薦を判断基準の1つにするのは当然だが、「名プレイヤー名監督にあらず」という言葉があるように、現場での評価がマネジャーの能力に直結するとは限らない。

「入学方式(マネジャーの要件を満たした状態で昇進すること)」での昇進を導入している企業が多いものの、調査結果から考えると客観的に見極められているとはいえないのが実際のところではないだろうか。

繰り返しになるが、働き方や価値観の多様化が広がり、マネジメントを積極的に志望しない従業員も増えている。マネジャーになるか一般社員にとどまるか、という単線型のキャリアパスでは、個々人のキャリア指向に対応しきれない。そうした背景から、管理職だけではなく、高い専門性を生かす道もある「複線型人事制度」を導入する企業も増えた。ところが、弊社の調査によると「複線型人事制度」を多くの企業が導入しているものの、実際にきちんと運用できているところは少ない。特に専門職について、従業員から「マネジャーに昇進できなかった人が進む道」と誤解されていたり、本人の資質や志向に関係なく「マネジャー以外の居場所」として運用している企業もあるのだ。

マネジャーとしての活躍可能性を客観的に把握する手がかり

人事担当者は限られた候補者と情報をもとに、マネジャーを選ばざるを得ない状況に置かれている。そのなかで、マネジャーとしての素質だけではなく、候補者の価値観や、キャリア観まで踏まえて判断しなくてはならないという、極めて難度が高いミッションを抱えている。

解決の1つの方法として、マネジャーとして活躍しそうかどうかを客観的に判断できる適性検査を導入することが考えられる。適性検査は、その職務や職業への向き・不向きを見極める手法として用いられることが多い。マネジャー選考で活用するときは、「管理職として将来活躍する可能性が高いかどうか」を客観的に測定し、昇進判定の基準、もしくは他の指標と組み合わせた総合的な判断材料の1つとして使われる。

例えば、弊社が提供しているマネジャー候補向けのアセスメント『NMAT』は、検査結果が、マネジャーになった後の活躍と関連性があることが認められている。企業の協力を経て実証実験を重ねながら設問を精査するなど、人事担当者や現場の主観ではない、科学的な根拠をもとに作られているため妥当性が高い。

適性検査では、周囲からは見えにくく、変わりにくい資質面の性格的特性や基礎能力を測っている。内向的な性格の人が、誰にでも気軽に話しかけるような社交的な人になるのは難しい。また、物事の判断において自分の直観を重視するような性格の人が、訓練をしたからといって、すぐに論理的に判断するようになるとは限らない。

つまり、人の行動のベースとなる変化しにくい資質の層を測定しているため、現在の仕事とは関連のない業務への適性の予測が可能となっている。

NMATでいえば、マネジャーとしての活躍可能性を、適性検査の結果からある程度予測することができるのだ。実際に、適性検査を既に実施している企業の多くは「日頃の仕事ぶりからは判断しにくい能力・適性を把握する」ことを適性検査導入の理由に挙げている。

NMATでは過去の研究データから、4つの職務タイプ(組織管理タイプ・企画開発タイプ・実務推進タイプ・創造革新タイプ)を設定し、それぞれのタイプにおける向き不向きを判定している。マネジャーとして活躍できるかどうかだけでなく、どのような職務に向いているかどうかを知ることができるため、キャリアプランニングに役立てている企業もある。

妥当性のある適性検査を使えば、「なぜあの人が選ばれたのか?」に答えられる

本人がマネジャーとして貢献したいと考えているかどうかの「指向」も重要な判断要素だ。NMATを既にご利用いただいている企業においても「指向」の活用度合いは高い。適性があっても指向がない、もしくはその逆など、個別の状況を捉えて判断することで、選考の精度を高めることができる。

社内で比べたときのスコア評価ではなく、世間一般の対象者と照らしたときどうかを把握することも、適性検査の客観性を担保する上で重要である。また、適性検査を使う理由として「候補者の能力・適性を客観的に評価し、世間水準との比較をする」を挙げている企業も多い。NMATは標準得点、いわゆる偏差値に近い概念の得点で示すことで、その人が世の中の管理職(候補)群のなかでどのくらいのレベルにいるのかが分かる。またNMATは年間約1200社40000名の受検者データをもとに標準得点を算出しているので、世の中の水準に近い結果が出ている。

もちろん、適性検査の結果のみで判断するということではない。昇進を精査するプロセスで、人事担当者考課や面接、多面評価など他の指標・手法と組み合わせることで、妥当性を高めている企業が多い。適性検査を活用し、納得感の高い選考プロセスを構築できるからこそ、現場や経営からの「なぜあの人が選ばれたのか?」という疑問に答えることができる。

適性検査を活用して判断基準のブレをなくし、複雑な選考プロセスを最適化(大手メーカーA社の事例)

大手メーカーA社は、グローバル化やダイバーシティへの対応を念頭に置き、管理職の登用試験制度に力を入れていたが、選考プロセスにいくつかの問題があった。まずは、そもそも求めるマネジャー像を明確に設定していなかったこと。そのため、選考プロセスにおいて論理的な整合性が取れていない部分があった。また登用判断のため、教養試験や論文試験を自社で作成しており、人事担当者の運用負荷も非常に大きかった。これらの理由から選考プロセスを見直すことになった。

見直しの結果、人事考課と昇進・昇格考課、面接など「人による評価」が判断に大きく影響していることが見えてきた。ここで浮かび上がったのは、同じ候補者が相手であっても、面接官によって評価にばらつきが生まれるという問題である。面接官の判断基準を揃えるためにも、あらためて求めるマネジャー像を明確にする重要性が確認された。

そのため、過去の登用試験対象者に対してNMATを実施し、マネジャー昇進者(合格者)と不合格者を確認すると、明らかに特徴の違いが見られた。合格者は不合格者に比べて外交的で統率力が高く、理性的で強靭なタイプであること。また、組織管理タイプ、企画開発タイプ、創造革新タイプの職務の指向が高い人ほどマネジャーに昇進していることが分かった。

以降、登用試験にNMATを組み込み、重視する要素を定めて選考を行うと共に、マネジャーの活躍可能性と相関の低かった、教養試験などのツールをやめることで、人事担当者の運用負担も軽減された。

A社では引き続き、適性に応じて人材が登用される制度を模索し、すべての社員が心身共にイキイキと成長できる企業づくりに取り組んでいる。

これからのマネジャー選考は候補者の早期発見・育成がカギ

今後、日本では若年者(25〜34歳)の労働人口が減る傾向にある。“多くの管理職志望者から、管理職を選ぶ”ことはさらに少なくなっていくだろう。だとすると、昇進・昇格の際に初めて管理職適性を見極めようとするのでは遅いのかもしれない。適性のある人、つまりポテンシャルのある人材を早めに見極めて意図的にローテーションさせたり、リーダー経験を積ませるよう働きかけたりすることも必要だろう。実際に弊社でも、人事担当者から「一般社員のなかから、将来のマネジャー候補を選出できないか」と相談を受けることが増えている。

貴重な人材の力を最大限発揮させるためには、これからは画一的な人事施策に加えて個別人事も大事になってくる。ポテンシャルのある人材をできるだけ早く見極めて、成長を促すための戦略的な配置・配属を行うことによって、マネジャー候補を“動機付け、育てる“時代が来ているのだ。



関連するサービス

関連するテーマ・課題

関連する無料セミナー

関連する記事

お問い合わせはこちらから
WEBからのお問い合わせ
資料請求・お問い合わせ
[報道関係・マスコミの皆様へ]
取材・お問い合わせ
電話でのお問い合わせ
0120-878-300

受付時間
/ 8:30~18:00 月~金(祝祭日除く)

※フリーダイヤルをご利用できない場合は
03-6331-6000へおかけください。

記事のキーワード検索
Page Top