管理職志向の有無のよる特徴の違い 管理職の仕事とやりがいの実態

執筆者情報
HR Analytics & Technology Lab
所長
入江 崇介

昨今、管理職になりたいという人が減ったといわれています。それでは、現在管理職、特にマネジャー(課長)として仕事をしている人は、どのような現実の中で働いているのでしょうか。今回はマネジャーを対象に行った調査結果についてご報告いたします。


調査概要

以前は管理職になることは出世街道の登竜門であり、ビジネスパーソンのキャリアにおいて目指すべきものとなっていました。しかし、昨今ではビジネスパーソンの価値観が多様化したこと、専門職制度などキャリアパスのバリエーションが拡がったこと、そして「管理職の死亡率が急激に上昇している」といったショッキングな研究報告にも見られるように、管理職自身が抱える高いストレスとメンタルヘルスの問題も取り上げられ、必ずしも管理職になることが魅力的だとは考えられていないようです。

一方で、現在でも管理職は組織において必要不可欠なポジションの一つであり、そこで高い成果を上げる人物が一定数必要であることは、まぎれもない事実です。それでは、現在管理職として仕事に取り組んでいる人々は、そもそも管理職として仕事をしたいと思っていたのでしょうか。また、実際に仕事をしてみた結果、管理職という仕事にやりがいを感じているのでしょうか。

今回は、現在管理職として働いている人々が、どのような思いを抱いて働いているのか、またどのような現実におかれているのかについて、部下を持つ課長クラスの管理職(以下マネジャー)を対象に、図表01のような調査を行いました。

図表01 調査概要

本レポートでは、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人と思っていなかった人、それぞれがどのような思いを抱いているのかに焦点を当ててご報告します。

マネジャーの仕事に対して抱いていたイメージ

まず、現在マネジャーの仕事に携わっている人が、マネジャーになる前に抱いていたイメージについて確認したいと思います。

本調査の結果では、「いずれ、自分はマネジャーになるだろう」と思っていた人の割合は8割を超えていました。一方、「マネジャーの仕事をしたい」と思っていた人の割合は6割程度でした。すなわち、現在マネジャーの仕事についている人は、本人の志向に関わらず、キャリアパスなどの外的要因を含め、「マネジャーになること」を予期していたと考えられます。実際、「マネジャーの仕事をしたい」と思っていた人で実に98%、「マネジャーの仕事をしたい」と思っていなかった人でも65%が、「いずれ、自分はマネジャーになるだろう」と思っていたことが確認されました。

それでは、マネジャーになる前に、「マネジャーの仕事をしたい」と思っていた人と思っていなかった人、それぞれがマネジャーという仕事にどのようなイメージを抱いていたかを確認してみましょう。

図表02 マネジャーになることに対して抱いていたイメージ(肯定的側面:4肢選択)

※上段:マネジャーの仕事をしたいと思っていた人 N=122名、下段:マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人 N=85名

肯定的側面に着目すると、図表02のとおり、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人ほどマネジャーの仕事に対してポジティブなイメージを持っていたことが確認されました。差が最も大きかったのは「自分の能力を生かすチャンス」であり、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人の約9割がそう捉えていたのに対して、思っていなかった人は半数以下でした。マネジャーの仕事をしたいと思っていた人ほど、自分なりにマネジャーとして成功する自信を持っていたことが推し量られます。

続いて、「マネジャーの仕事をしたい」と思っていた人と思っていなかった人、それぞれがマネジャーという仕事にどのようなイメージを抱いていたかについて、否定的側面も確認してみましょう。

図表03 マネジャーになることに対して抱いていたイメージ(否定的側面:4肢選択)

※上段:マネジャーの仕事をしたいと思っていた人 N=122名、下段:マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人 N=85名

図表03のとおり、総じてマネジャーの仕事をしたくないと思っていた人ほど、ネガティブなイメージを持っていた傾向が確認されました。特に差が大きかったのは「自分で自由にできる時間が減る不安」「部下を管理する責任に対する不安」の2点です。マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人の7割強はそのような不安を感じていたのに対して、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人は半数以下でした。他の項目への回答傾向の差を見ても、マネジャーの仕事をしたいと思っていない人において、特に強い不安は「部下を持つこと」に関するもののようです。

マネジャーの仕事の実感

それでは、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人と思っていなかった人は、実際にマネジャー職に就いて、現在、どのような実感を持っているのでしょうか。

図表04 マネジャーの仕事に対する実感(4肢選択)

※上段:マネジャーの仕事をしたいと思っていた人 N=122名、下段:マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人 N=85名

図表04のとおり、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人のほうが、「成長を実感する機会が増えた」「キャリアの見通しが明確になった」「会社へのロイヤリティが高まった」と感じているようです。一方で、今回の調査で4割に及ぶ「マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人」は、約7割が「人間関係に悩むことが多くなった」「専門能力を発揮する場面が少なくなった」と感じているようです。なお、特にマネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人が抱えていた不安である「自分の自由になる時間が少なくなった」については、選択傾向に大きな差はありませんでした。

続いて、マネジャーがやりがいを感じる場面について確認してみましょう。

図表05 「仕事をしていてよかった」と感じる場面(3つまで選択)

図表05のとおり、マネジャーの仕事をしたいと思っていたか否かに関わらず、最も選択率が高いのは「自分が管轄する組織が目標より高い成果を上げたとき」となっていますが、選択率には大きな差がありました。一方、マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人のほうが、若干ではありますが、自分の成長に目が向いているという結果になっていました。また、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人のほうが「部下が成長した時」の選択率が高く、マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人のほうが「部下が賞賛されたとき」の選択率が高いことも確認されました。

なお、本調査では、現在の仕事のやりがいの実感(図表06:「あなたは、現在の仕事にやりがいを感じていますか」)、現在のパフォーマンスの自己評価(図表07:「周囲のマネジャーに比べて、あなたは高い成果をあげていると思いますか」)の確認も行っていますが、いずれについてもマネジャーの仕事をしたいと思っていた人のほうが高い自己評価をしていることが確認されました。

図表06 現在の仕事のやりがい(4肢選択)

図表07 現在のパフォーマンスの自己評価(4肢選択)

一方で、もともとは「マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人」においても、半数以上が現在の仕事にやりがいを感じており、周囲に比べてある程度のパフォーマンスをあげていると感じていることは、マネジャーという仕事は「やってみたら、やりがいがある仕事」であることを意味する結果ともいえるかもしれません。

マネジャーのキャリア観

では、マネジャーの抱いている自身のキャリア観について確認してみましょう。

図表08 マネジャーのキャリア観(択一形式)

図表08のとおり、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人ほど、より高い職位の管理職として働きたいという希望を持っていることが確認されました。一方で、マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人については、2割強が選択している「部下を持たず、専門職として仕事をしていく」ことはもちろん、それ以上に、3人に1人は「このままマネジャーの仕事を続けていく」と思っているという結果でした。では、「このままマネジャーの仕事を続けていく」と思っている人は、なぜそのように思っているのか、理由を確認してみましょう。

図表09 マネジャーの仕事を続けたい理由(複数選択)

図表09のとおり、マネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人の半数弱は「より高い職位の管理職の仕事で求められる能力に自信がないから」を選択しており、選択率が高くなっていました。なお、もともとマネジャーの仕事をしたいと思っていたか否かに関わらず、「マネジメントの仕事とプレイヤーの仕事が両方できる」ことが、現場との接点があるマネジャーの仕事の魅力となっているようです。また、マネジャーの仕事をしたいと思っていた人は「現場で人を育てることができる」の選択率が高くなっていました。

マネジャーの仕事をしたいと思っていなかったもののマネジャーになり、高い職務の管理職の仕事を担う自信がない一方、専門職として働くのではなく「マネジャーを続けよう」という、ある種、消極的な状態に陥ってしまっている人が一定数はいるのも事実のようです。

マネジャーのプロ

さて、マネジャーというと、「プロフェッショナルではなく、ゼネラリスト」というイメージが持たれることが多いかもしれません。実際、理論家や実務家の間においても、マネジャーがプロフェッショナルかどうかは、意見が分かれるところです。そこで、現場の管理職がマネジャーの「プロ」像というものをどう捉えているのか、質問を行いました(「あなたの周りには、「マネジャーのプロ」と言えるような人がいますか。」)。

図表10 マネジャーのプロの存在(択一形式)

図表10のとおり、「そもそも、『マネジャーのプロ』というものはいないと思っている」の回答率は2割以下で、その傾向はマネジャーの仕事をしたいと思っていたか否かで大きな差はありませんでした。すなわち、自分自身の志向に関わらず、「マネジャーはプロの仕事である」という意識がある程度持たれているということがこの結果から分かります。

それでは、マネジャーのプロが周囲にいるかいないか、すなわちロールモデルの有無によって、自分自身がマネジャーのプロになりたいという意向は変わってくるのでしょうか。

図表11 マネジャーのプロになる意向(4肢選択)

図表11のとおり、もともとマネジャーの仕事をしたいと思っていた人ほどマネジャーのプロを目指そうと思っていることが確認されました。それと同時に、周囲にマネジャーのプロがいることによって、たとえもともとはマネジャーの仕事をしたいと思っていなかった人であっても、マネジャーのプロを目指そうと思う人の割合が高まることが確認されました。

あわせて、マネジャーの学びの現状について、マネジャーのプロを目指している人といない人の差を確認してみましょう(図表12:「現在、あなたが自主的に行っている「学び」のテーマはどれですか。最も力を入れているものを1つ選んでください。」)。

図表12 自主的に行っている学びのテーマ(択一形式)

図表12のとおり、マネジャーの仕事をしたいと思っていて、かつ自分の周りにマネジャーのプロがいると思っている人は、リーダーシップはもちろん、語学などの学びに取り組んでいることが確認されました。一方、それ以外の人においては半数程度の人が「特に取り組んでいることはない」と考えていることが分かりました。

最後に

職務と能力のマッチングを優先した結果、マネジャーの仕事をしたいと思っていない人にマネジャーとしての仕事を任せているケースは少なからずあり、避けることができないと思われます。本調査の結果、このように任命されたマネジャーでも半数程度は現在の仕事にやりがいを感じていることが確認されました。

しかしながら、より高い職位の管理職になる自信がないものの専門職に移ることなく、マネジャーを続けようという人物が少なからずいることも確認されました。また、半数程度の人は自主的な学びに取り組んでいないことが確認されました。

一方、もともとマネジャーの仕事をしたいと思っていた人の中にも、周囲に目指すべきマネジャーのプロの存在を見いだせないことも一つの原因となっているのか、自主的な学びが停滞してしまっている人がいることも確認されました。

マネジャー、また管理職が成長しながら生き生きと働くことと同時に、専門職を目指す人材も成長しながら生き生きと働くことを実現するためには、あらためて管理職という仕事に目を向け、管理職個人を育てるだけでなく、多様な人が育ち続ける環境を作ることが重要なのかもしれません。

*本調査は、実際に現在マネジャーとして仕事をされている方のみを調査対象としています。そのようなサンプルのバイアスがかかっている可能性があるので、その点はご了承ください。

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