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これからの人材開発システム

社員の自律的学習を促すために人事は何をすべきか

  • 公開日:2020/10/26
  • 更新日:2024/04/06
社員の自律的学習を促すために人事は何をすべきか

これからの人材開発システムには、社員一人ひとりの「自律的学習」を促進することが強く求められるでしょう。人材開発システムが、多様な個に合わせた学び(アダプティブラーニング)や、誰もが自主的に学ぶ機会を提供する役割を担うのです。そうした環境変化に合わせ、私たちも、良質で多様なオンラインコンテンツを開発し、これまで以上に自律・協働型人材の育成をサポートしていく必要があると考えています。この記事では、そうした変化の背景に何があるのか、「これからの人材開発システム」がどのようになっていくのかをご紹介します。

多様な個や組織が有機的に関わり合い、価値を高め合う
自律的学習の強化が必須となる
成長サイクルに基づいて自律的学習モデルを構築する
ラーニングエコシステムも検討する

多様な個や組織が有機的に関わり合い、価値を高め合う

ご存知のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、日本企業・日本社会の働き方は大きく変わりました。テレワークが普及し、ビジネスプロセスの多くが非対面・非接触で行われるようになりました。VUCAのビジネス環境下、デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、デジタルを絡めた新価値創造、イノベーションがより重視されるようになっています。
一方、人生100年時代、少子高齢化の社会において、多様な人材が活躍できるよう働き方改革が数年前から進められてきました。今後、コロナ禍が収まっても、テレワークは一定程度残り続け、中長期的にはさらに広まると思われます。また、DXはより一層進むことが確実です。

こうした変化に合わせて、人材開発システムも間違いなく進化します。では、これからの人材開発システムはどのようになるのでしょうか。

図表1 これからのマネジメントポリシー

まず、私たちが考える「これからの人材マネジメントポリシー」がこちらです(図表1)。「多様な個や組織が有機的に関わり合うなかで、自ら積極的にリ・デザインを繰り返し、価値を高め合う」こと。言い換えれば、「自律・協働型人材」と「自律・協働型組織」が、刺激を与え合いながら、共に成長し、共に価値を発揮していく必要がある、ということです。

自律的学習の強化が必須となる

なぜ、人材マネジメントポリシーはこのように変化するのでしょうか。それは、今後の人材マネジメントにおいては、「4つのあり方の変化」が起こるからです(図表2)。

(1)共創型ビジネス・プロジェクトの増加
1つ目に、今後の日本社会では、多くの会社・組織・部署が関わる「共創型」のビジネスやプロジェクトが増えます。これは、確立されたビジネスを遂行する統制型ビジネスとは、かなり異なります。統制型ビジネスの場合、経営層や上長に従って問題を解決し、職務を行いながら、より効率良くビジネスを進めることが最も重要です。対して共創型ビジネスの場合は、多様なメンバーが対等な立場に立って本音で意見し合い、考えたり行動したりして、創意工夫を生み出す必要があるのです。

(2)多元化モデルの普及
2つ目に、共創型のビジネス・プロジェクトでは、多様なプロフェッショナルが集い、活躍することが求められるようになるため、多様な人材タイプを組み合わせ、1つの会社のなかで多元な人材評価軸を持つ「多元化モデル」が主流になっていくでしょう。また、そのなかで、一人ひとりが個性・持ち味を発揮し、果敢にチャレンジすることを加点評価します。これまでは、自社内で一律に求められる役割・能力を発揮しながら、職級の階段を上っていく一元化モデルが多くの企業の人事モデルでしたが、今後は、この一元化モデルの考え方は減っていくでしょう。

(3)プロフェッショナル採用の増加
3つ目に、採用が変わります。統制型ビジネス・一元化モデルは、自社の組織風土に適した人材を採用し、一から育てていくポテンシャル採用が適しています。一方、共創型ビジネス・多元化モデルでは、自社の組織風土に合った人材を育てる必要は依然として残るものの、自社に必要なスペシャリストをその場ですぐに採用する「プロフェッショナル採用」がこれまで以上に盛んになるでしょう。

(4)自律的学習の強化
4つ目に、社員の「自律的学習」の強化が必須となります。プロフェッショナルとしての活躍が求められるわけですから、当然ながら、社員一人ひとりが、自らの「ありたい姿」になるために必要なスキルや知識を、自主的に獲得していく必要があります。人事部の仕事は、そうした自律的学習を後押しし、支援することです。つまり、できるだけ多様な学習コースや学びの場を用意して、社員がそのなかから自由に選べるような学習環境を用意するのです。また、メンバーの自律的学習を支援するマネジャーの関わりも大切になります。

図表2 人材マネジメントにおける4つのあり方の変化

ただし、自律的学習の強化が必須であるということは、トランジション(役割転換)・階層教育を主体とした従来の教育体系は必要なくなる、ということではありません。そうではなくて、従来の教育体系に加えて、個人が自律的に学び続ける新たな教育体系をつくる必要があるのです(図表3)。

図表3 これからの教育体系

成長サイクルに基づいて自律的学習モデルを構築する

では、これからの人材開発システムは具体的にどうすべきなのでしょうか。その「自律的学習モデル」の全体像がこちらです(図表4)。

図表4 「自律型学習モデル」の全体像

大きく分けると、左側は従来の教育体系、右側が新たに構築する教育体系です。この新しい教育体系を構築する際に大事になるのが、社員の「成長サイクル」です(図表5)。社員は成長に踏み出す第一歩として、まず自分の志向・持ち味を知り、役割認識・自分への期待を認知する必要があります。その上で、ありたい姿を設定し、学びの課題を設定して、受けたい研修を選びます。そして、研修で自ら学びたいスキルや知識を学んだら、さっそく仕事で実践し、うまく使えたか、どうしたらもっと上達するのかを内省・レビューするのです。そして、最初に戻ってあらためて自分を認知する、というサイクルです。人は誰しも、この成長サイクルを回しながら、スキル・知見・スペシャリティを磨いていくのです。多くの社員がこの成長サイクルをスムーズに回しやすい教育体系を構築すれば、優れた人材開発システムになることでしょう。

図表5 成長サイクル

ラーニングエコシステムも検討する

また、新たな教育体系を構築する際には、将来的に「ラーニングエコシステム」の構築も視野に入れることをお勧めします(図表6)。「ラーニングエコシステム」とは、自社内の教育機会に留まらず、社外での越境活動やソーシャルメディアを活用した、学びのエコシステムです。ありたい姿を設定し(キャリアデザイン)、現状の棚卸しをして(アセスメント・サーベイ)、学びの課題設定をします。ラーニングプラットフォームは、社員の学習を管理・支援するソフトウエアであるラーニングマネジメントシステム(LMS)を活用します。LMSでは、学習管理・学習分析・学習プログラムのレコメンド・相互交流・学習運営・コンテンツ配信・コンテンツ制作などが行えます。こうしたテクノロジーも最大限に活用し、社員のラーニングエクスペリエンスをデザインするようになっていくことでしょう。

図表6 ラーニングエコシステム

多様な個に合わせた学び(アダプティブラーニング)の機会として、社員個人が必要なタイミングに選択して受講できる研修プログラムである「選択型研修」も大切になります。1名からでも受講可能なため、選択型研修は、一人ひとりがありたい姿を実現していくために、必要な学びをいつでもどこでも受講できるメリットがあり、特にオンラインの場合は場所の制約も超えられるため、自律的な学習として極めて有用です。
そのため、これからは「階層別研修・WEB学習・選択型研修」を並行的に提供すると、より効果的な学びを提供できるようになるでしょう。

関連するサービス:

弊社の公開型研修サービス「リクルートマネジメントスクール」では現在、対面型・異業種交流型の選択型研修(3時間コース・1日以上コース)を、100コース以上用意しており、2020年7月からはオンラインコースも実施しております。

執筆者

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営業統括部
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シニアソリューションプランナー

加藤 竹志

1991年リクルート入社。その後、人事コンサルティング会社勤務を経て、2005年にリクルートマネジメントソリューションズ入社。HRD/OD/HRM領域など、人・組織課題のトータルソリューションを行うソリューションプランナーとして現職に至る。2019年~2021年にこれからのHRDシステムを構想する「未来プロジェクト」のプロジェクトリーダー、2022年より「キャリア自律テーマプロジェクト」のプロジェクトリーダーを担う。

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シニアスタッフ

奥野 康太郎

2008年にリクルートマネジメントソリューションズに中途入社。中堅・中小企業の営業・営業マネジャーとして、約200社のマネジメント強化、人事制度構築などの支援から、成長企業向けHR techサービスの拡販を経て、現在は公開型研修サービスの販促企画・カスタマーサクセス、大手企業のラーニングデザインに従事。

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