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すでに起こっている未来と向き合う

「働き方」と「人材マネジメント」の変化

  • 公開日:2014/01/07
  • 更新日:2024/04/11
「働き方」と「人材マネジメント」の変化

弊社では2014年2月7日(金)に「RMS message LIVE 2014」を開催いたします。4回目となる今回は、弊社での研究活動や調査結果から近未来の「働く」を考えるための情報を提供し、人事が直面しうる問題について、議論を深めたいと考えています。
それに先立ち、今回の特集では、社会調査の推計などから高確率で訪れると考えられる未来=「すでに起こっている未来」の観点から、今後の「働き方」と「人材マネジメント」についての考察を、弊社組織行動研究所所長 古野庸一よりご紹介いたします。

目次
これからの「働き方」を考えよう
「働き方」に注目が集まるのはなぜか?
我々が向き合うべき「未来」とは?
未来を見据えた人材マネジメントとは?
企業が負うべき責任とは?

これからの「働き方」を考えよう

近年、「高年齢者雇用安定法の改正」「女性活躍促進」「限定社員」「雇用の流動化」「派遣規制の緩和」など、「働き方」に関する議論はますます活発化しています。
実際、「キャリア」「企業」というキーワードで、新聞・雑誌記事の検索を行うと、その掲載数は1993年に966件だったのに対し、2013年(10月時点)で5393件と、5倍以上に増えています。このことからも、明らかな世間の関心の増加傾向が窺えます(図表.1)。

図表.1 「キャリア」「企業」の記事掲載件数の推移(件数)

図表.1 「キャリア」「企業」の記事掲載件数の推移(件数)

また、リンダ・グラットン氏による『ワーク・シフト』に代表されるように、新しい「働き方」に関する書籍がベストセラー化しており、「働き方」に対する社会的関心が高まっているように思われます。

そもそも、このような「働き方」に対する関心の高まりは、なぜ起こっているのか?
まずはこの疑問から考えていきましょう。

「働き方」に注目が集まるのはなぜか?

まず、「働き方」に対する関心の高まりの背景の一つに、「一つの会社に入って、定年まで勤め上げるという働き方」が成立しにくくなっている状況が挙げられます。

雇用する企業の立場から考えると、激しい環境変化に応じて、人件費を柔軟に変動させていかなければ利益が出せないため、いわゆる非正規雇用を活用せざるをえない状況です。もちろん、給料を毎年上げていくことを保証するほどの余裕はありません。同様に、雇った人を長期間雇用し続けることを約束することも難しくなってきています。
一方、雇用される個人は、生活防衛のためにも、「共働き」を行っていくことが当たり前になっています。内閣府の男女共同参画白書(平成24年版)によれば、平成9(1997)年以降、「共働き世帯数」が、「片働き世帯数」を超え、徐々にその差が拡大しています。

このような背景もあり、雇用形態、国籍、性別、価値観、働く時間、働く場所という観点で、働き方はますます多様になっていくと考えられます。

一方個人側には、「働き方」を選択していく機会が増えます。一つの会社に縛られる窮屈さはなくなり自由になりますが、キャリアを自らが責任を持って考え、自ら選択していくことは、意外と大変です。誰かから、「こうしろ、ああしろ」と言われたほうが実は楽だといえます。
「働き方を変える」ということを自ら決断したとしても、親しい人から反対されることもあるでしょう。このような世相を反映して、「働き方」を扱う本がベストセラー化していると言えるのではないでしょうか。

これらの「働き方」の多様化の本質的な要因は、日本の人口動態の変化にあります。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によれば、日本の総人口は、平成38(2026)年に1億2000万人を下回り、平成60(2048)年には1億人を割ると予想されています。
これまで右肩上がりに伸びていた人口が停滞し、これから長期的に減少していくため、私たちの「働き方」にさまざまな影響を及ぼすと考えられるのです。

国内の人口が減ることで、企業の国内売上が減ることが容易に予想できます。現在調子が良い企業も、将来を見越して人材採用には慎重になっていくでしょう。さらに国内の売上減少を補うために、さらなるグローバル化が進みます。そのため日本人ではなく外国人の採用を増やしていきます。
加えて、ITの発達とともに、仕事そのものが海外へ移っていきます。コールセンター、プログラミング、データ処理などの仕事は海外へ流出していき、国内に残ったとしても、世界における最低賃金との競争になっていくとされています。生産部門も労働力が安い海外へ移動していくでしょう(図表.2)。

図表.2 2025年ごろの従業員数の予測

図表.2 2025年ごろの従業員数の予測

これらに伴い、雇用の観点では、需給のミスマッチが広がると考えられます。生産機能では人が余り、販売機能では人が足りなくなる。単純作業の仕事は少なくなる一方、高度人材の仕事は多くなる。このような需給ギャップは広がっていくものと考えられます。

それでは、我々が向き合うべき「未来」については、どのような論点が考えられるのでしょうか?

我々が向き合うべき「未来」とは?

人口減少とあわせて、高齢化もますます進展すると予測されています。そうなれば、年金・医療費・介護費などの社会保障費はますます増え、国の財政を圧迫するでしょう。日本の社会保障費は、厚生労働省の推計によれば2025年には2010年の約1.5倍になります。国の財政悪化とともに、年金の支給開始年齢の高齢化もしくは支給額の減額も予測されています。

これらの状況を踏まえると、働く期間が長期間化するのではないかと考えられます。つまり、60歳まで働いて老後ゆっくり過ごすというライフスタイルではなく、70歳あるいは75歳まで働き続けることが普通になるかもしれません。

現実的に考えて、50年間近くを全力で働き続けるのは難しいかもしれません。育児や介護などのライフイベントによるキャリアの中断だけでなく、病気によって休む、少し長い期間休んで充電する、ボランティアに精を出す、というような断続的なキャリア形成が一般的になるのかもしれません。

加えて、技術・知識の陳腐化のスピードが速まっていることを考慮すると、継続的な学びだけでなく、社会人が学校に戻って学び直すということが一般的になってくることも考えられます。

これらの「断続的なキャリア形成」「学び直し」を考えると、組織内外の垣根を低くしておくことが企業に求められます。言い換えれば、キャリアを中断したメンバーが復帰したとき、スムーズに受け入れることができるかどうか、ということがますます問われてくるといえるでしょう。
一般的に日本の企業組織は、同質性を好み、内外の垣根が高く、年次で管理しがちです。そのため、多様な働き方、多様なキャリアを歩んだ人々を受け入れていくことは、これからの課題になるでしょう。

また、個人としては、長期間働かざるをえない状況になったとき、果たして働く場所があるのかという問題があります。65歳への雇用延長に対して、企業としては諸手をあげて賛成ではなく、どちらかといえば渋々対応しがちな点を考慮すると、高齢者が働く場所をつくっていくことが社会として課題になっていくでしょう。

高齢化は、企業の内部でも起こっています。特に大企業においては、バブル大量採用組が中高年に差しかかっている状況に対して、ポストや金銭的報酬で報えなくなってきています。むしろ、給料に比して、活躍していない中高年層が目立つ企業も多くなってきています。そのような中高年層を活性化していくこととともに、組織外へ流動させていくことも求められるでしょう。

いわゆる「中高年の雇用の流動化」の問題ですが、うまく流動化することができれば、送り出し企業、受け入れ側の企業、中高年本人にとってそれぞれにとってメリットがあります。この三者が満足できるようなシステムをつくることも社会としての課題といえるでしょう。

ここまでをまとめると、国内の人口減少と高齢化の進展によって、「国内売上の減少」「グローバル化の加速」「労働の長期間化」が未来の論点といえるでしょう。詳細を下表(図表.3)にまとめます。

図表.3 我々が向き合うべき「未来」の論点

図表.3 我々が向き合うべき「未来」の論点

これらのような「働き方」に関する大きな動きに対して、企業はどのような人材マネジメントを考えていけばいいのでしょうか?

未来を見据えた人材マネジメントとは?

ここまで述べてきた未来を踏まえると、企業における人材マネジメントには、自社の戦略あるいは自社の競争優位性を考慮したものがますます求められます。

国内は人口減の中、小さくなっていくパイの奪い合いが多くの業界で起きています。一方で海外においては、海外企業との競争も激しく、簡単に事業成長していくことは難しくなっています。そのため、自社の競争優位性に合致した人材マネジメントが必要になっていくでしょう。

一方で、人や組織を通した競争優位性を築くためには、従業員の動機づけが重要になってきますが、前述のとおり動機づけはますます難しくなっていくと思われます。
例えば、動機づけのためのポストや金銭的報酬は、国内市場の停滞感とともに限定的になるでしょうし、そもそもポストや金銭的報酬が従業員にとって、以前ほど動機づけ要因として重要でなくなってきています。

それに加えて、「働き方」は多様になり、働くモチベーションも多様化してきています。多様な動機に対応するためには、一律の制度では対処が難しくなってくるでしょう。ゆえに、制度はむしろシンプルにし、一人ひとりの事情に応じた対応が求められていきます(図表.4)。

図表.4 動機づけのために重要なこと

図表.4 動機づけのために重要なこと

しかしながら、一人ひとりの状況に合わせていった場合、個人間で公平感を欠くことも考えられますので、公平性に配慮した人材マネジメントポリシーが必要になってくるでしょう。

これからの動機づけとして、ダニエル・ピンク氏が『モチベーション3.0』で提唱した概念は大いに参考になるでしょう。
目標に応じて、働く場所、時間、一緒に働く人を自分で選べることが、創造的な仕事を行う場合にはやる気を起こす要因になります。また、自らの仕事にやりがいを感じ、そのレベルを高めることに喜びを感じられれば、やる気を上げながら、成果を上げることにつながるでしょう。
ポストや金銭で動機づけされない人々は、場合によっては、大きな目的、理念、ビジョンによって力を発揮することでしょう。ピンク氏は、それらを、これからの動機づけ要因として、「自律性」「熟達」「目的」というキーワードでまとめています。

最後に、企業が従業員に対して負う「責任」について触れたいと思います。
ここまで述べてきた通り、今後数十年にわたって企業が雇用責任を負うことが難しい場合、企業が負うべき責任とはどのようなものなのでしょうか?

企業が負うべき責任とは?

企業を取り巻く環境を考えると、企業は雇用責任よりも人材開発に責任を負ったほうが現実的であると考えられます。
例えば新卒で入社した人材を40年以上も雇用し続けることを約束していくことは理想かもしれませんが、前述の理由から現実的だとはいえません。それよりは、当該企業で雇用できなくなっても、その企業以外で雇用される力を開発することのほうが、企業側にとっても従業員にとってもハッピーなのではないでしょうか。

個人が働く期間が40年あるいは50年というように長くなればなるほど、一つの会社が雇用し続けることは難しいことですし、従業員にとっても一つの会社でしか通用しないスキル・知識を身につけることはリスクとなるためです。

今後、企業は、雇用責任から人材開発責任へ移行せざるをえないともいえるでしょう。そのことは社会からも求められることになると考えられます。

……厳しくなる環境に対して、難しくなる動機づけ。雇用責任から人材開発責任へ。

まさしく人事のあり方が問われている時代だと言えます。そういう時代であるからこそ、人材マネジメントポリシーや実際の施策は、シンプルに考えることが求められます。
そして、つきつめると「競争優位につながっているか」「モチベーションが十分に上がっているか」「社会的に正しいか」という、3つの問いがその根幹になるといえるでしょう。

【参考・出典】
・『ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉』リンダ・グラットン著 池村千秋訳(プレジデント社・2012年)
・『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』ダニエル・ピンク著 大前研一訳(講談社・2010年)
・記事検索 日経テレコン
・内閣府「男女共同参画白書(平成24年版)」
・国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生・死亡ともに中位)
・厚生労働省「社会保障に係る費用の将来推計の改定について」(平成24年3月)
弊社 RMS Research 2013『今後の人材マネジメントに関する調査』

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