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さあ、扉をひらこう。Jammin’2024 alumni & owner interview

スペースワンとJammin’を経て、起業が社会のためにも自分のためにもなると思うようになった〈卒業生&オーナーインタビュー・清水建設様〉

  • 公開日:2025/04/21
  • 更新日:2025/04/21
スペースワンとJammin’を経て、起業が社会のためにも自分のためにもなると思うようになった〈卒業生&オーナーインタビュー・清水建設様〉

共創型リーダーシップ開発プログラム「Jammin’」、6年目のJammin’2024が終了した。44社247名の次世代リーダーたちが全15コースに分かれ、「不」を基点に新価値を生み出すプロセスに取り組んだ。ところで、これまでのJammin’卒業生たちは、その後どのように活躍しているのだろうか。今回はJammin’2020の卒業生で、清水建設様のコーポレートベンチャリング制度を活用し独立起業した福島渚氏と、清水建設様オーナーの西村源壱郎氏にインタビューした。福島氏はJammin’2020でグランプリを獲得し、その事業案を実際に事業化して、現在はRoca Japan株式会社を経営している。福島氏はどのように起業に踏み出したのか、西村氏はJammin’に何を期待しているのか、詳しく伺った。

●インタビューしたのは
福島渚 氏:Roca Japan株式会社 代表取締役(写真1)
西村源壱郎 氏:清水建設株式会社 人財イノベーション推進部(写真2)

福島氏の画像
西村氏の画像
グランプリを獲る前から、チームで「事業化しよう」と話していた
コーポレートベンチャリング制度は個人の挑戦を支援し、 一人ひとりが持つアイディアを花開かせる
Roca Japanで「本物の伝統工芸品×スケール化」を実現したい
Jammin’には「当社では経験できない修羅場経験」を期待している
Jammin’の皆さんとオーナーで、唯一無二の場を一緒につくりたい

グランプリを獲る前から、チームで「事業化しよう」と話していた

――前半は、Jammin’卒業生の福島さんにお話を伺えればと思います。最初に自己紹介をお願いします。

福島:Jammin’2020に参加した福島です。私は2016年に、新卒採用のSV採用1期生として清水建設に入社しました。SV採用とは、建設事業の枠組を越え、今後成長が見込まれる事業の創出・推進を行い社会に新たな価値を提供する人財を採用する募集です。

入社後は、技術研究所や土木営業本部などで経験を積んだ後、2018年から宇宙開発事業に携わりました。2018年、清水建設は3社との共同出資で「スペースワン株式会社」を設立しました。スペースワンは、小型人工衛星を輸送する小型ロケット「カイロス」の開発から製造、打ち上げまでを一気通貫で手がける会社です。私は、会社を立ち上げた2018年から2023年までロケット打ち上げ射場「スペースポート紀伊」の土地収用や施設の企画などを担当しました。その間の2020年に、Jammin’に参加したわけです。

――今振り返って、Jammin’2020はいかがでしたか?

私たちのチームは、伝統工芸品アプリ「SAKURA」の事業案を創出しました。最終的にはグランプリを獲得できましたが(Jammin’2020アワードの記事はこちら)、実際はかなり苦戦しました。本当にギリギリまで事業案がまとまらなかったのです。当時は、私がチーム4人のなかで一番迷っていました。締め切り直前まで対話を重ね、コンセプトを深掘りました。そして事業案に欠かせないアプリのイメージ画像などが完成したあたりで、ようやく手応えを感じられたのです。これなら本当に事業として立ち上げられるのではないかと思えました。コース内で事業案をプレゼンしたところ、高い評価を受けてコース代表に選ばれました。それで自信を得たこともあり、グランプリを獲る前からチームでは「事業化しよう」と話していたのを記憶しています。

コーポレートベンチャリング制度は個人の挑戦を支援し、 一人ひとりが持つアイディアを花開かせる

――Jammin’終了後はどのように活動していたのでしょうか?

福島:終了後しばらくは、チームメンバーのうちの3人で事業化に向けて活動していました。ベンチャーキャピタルに相談したり、自己資本で起業する道を模索したりと真剣に試行錯誤したのです。ただ、メンバーそれぞれの事情があり、現在は私1人で活動しています。

――なぜそこまで事業化にこだわって活動してきたのですか?

福島:先ほどお話ししたとおり、私は新規事業に携わるSV採用で入社していて、新規事業開発にはもともと興味がありました。しかし、清水建設に入社した時点では、起業意識がそこまで高かったわけではありません。

起業を志すようになったのは、スペースワンに携わったことと、Jammin’で新規事業案づくりに取り組んだ影響が大きいです。スペースワンとJammin’を経て、起業にチャレンジすることが、社会のためにも自分のためにもなると思うようになったのです。

――なぜ清水建設のコーポレートベンチャリング制度を活用したのでしょうか?

福島:清水建設のコーポレートベンチャリング制度は、2022年に始まりました。この制度の一番のメリットは、私自身の給与が保証されたたうえで起業できる点です。コーポレートベンチャリング制度を活用すれば、自身が成し遂げたい事業に全リソースを割くことができます。これは私にとって、本当にありがたいことでした。このようにローリスク・ハイリターンで起業できるチャンスを活用しない手はないと思い、申し込んだのです。

コーポレートベンチャリング制度では、まさにJammin’のような企画プレゼンテーションをもう一度行ったうえで採択されました。Jammin’の経験が大いに役立ちました。その後、1年ほどの設立準備を経て、2024年3月に「Roca Japan株式会社」を設立しました。

▼「Roca Japan」で開発したプロダクト

Roca Japan」で開発したプロダクト

Roca Japanで「本物の伝統工芸品×スケール化」を実現したい

――Roca Japanはどのような会社ですか?

福島:Roca Japan」では、日本の伝統工芸を現代に融合させた唯一無二の製品を提供しています。私たちは、Jammin’2020で伝統工芸品アプリ「SAKURA」の事業案を創るにあたり、一流の伝統工芸の職人さんたちに何度もインタビューしました。そのなかで、職人さんたちがすばらしい技術と熱意を持っているにもかかわらず、マーケティングや情報発信を苦手としているために、ビジネスで苦労している現状を知ったのです。「SAKURA」は、そんな伝統工芸の職人さんたちのマーケティングと情報発信を支援し、ものづくりに集中できる環境を提供する事業案でした。

Roca Japanは、この事業アイディアを継承し、「世界中へ、日本の“一点もの”をあつらえる」というミッションを掲げて、伝統工芸品のオーダーメイドサービスを行っています。初号プロダクトとして、オーダーメイド可能な京提灯のペンダントライトとデスクライトの製造販売を進めています。プロダクトは好感触で、2025年から本格的なオーダーメイド販売を行う予定です。

――実際に起業してみて、どのような楽しさや苦労を感じていますか?

福島:現在は1人企業なので、税務や経理などをすべて自分でしなければなりません。会社を運営する大変さを実感しています。独立起業してから、清水建設のような大企業が、従業員が本業に集中できるように緻密に整備された優れたシステムであることがよく分かりました。

「1人だと分業ができない」という点にも難しさを感じています。私自身が一つひとつの業務プロセスにそのつど集中しないと、何も進まないのです。2024年はプロダクト開発に注力しました。初号プロダクトの開発がひと段落したので、2025年は顧客開拓と販売に力を入れようと考えています。

このように語ると大変なことばかりに見えるかもしれませんが、実際は毎日が楽しいです。私にとっては、「楽しいかどうか」と「自分で決められるかどうか」がビジネスにおいて最も重要なことです。私は今まさに、Roca Japanで自分がやりたいことに楽しく挑戦し、すべてを決めることができているのです。

――今後の目標を教えてください。

福島:私はどこまでも「本物の伝統工芸品」にこだわります。ですから例えば、本物の伝統工芸品に似たものを工場で大量生産するようなビジネスをするつもりはありません。当然ながら、本物の伝統工芸品ビジネスをスケールさせるのは簡単ではありません。しかし、私は何とかして「本物の伝統工芸品×スケール化」を実現したいと考えています。今後も、そのための試行錯誤を続けていきます。

Jammin’には「当社では経験できない修羅場経験」を期待している

――後半は、清水建設様のオーナーである西村さんにお話を伺えればと思います。清水建設様は、Jammin’をどのように活用しているのですか?

西村:私が所属する「人財イノベーション推進部」は2020年に新設され、次世代経営リーダーの発掘、および育成・成長支援をしている部署です。Jammin’もその施策の1つとして、2020年から継続的に活用しています。

私たちの場合、Jammin’は非役職者を対象とした公募選抜プログラムと位置づけています。そして「当社では経験できない修羅場経験」を期待し、一定のアセスメントを経て特定したリーダーとしてポテンシャルがより高い人財を派遣しています。他企業の参加者の皆さんとチームを組み、一丸となって成果を出すなかで、リーダーとしてのマインド・覚悟が醸成されることを目的としています。

――なぜ選抜型リーダーシップ開発プログラムに力を入れているのでしょうか?

西村:その背景には、中期経営計画があります。当社の中期経営計画〈2024-2026〉で経営基盤の強化を掲げており、その中でも重視しているのが「人財と組織力の成長」です。この方針のもと私たちは『挑戦し共創する多様な人財』の育成に注力しています。

当社は建設業だけでなく、福島さんが関わっていた宇宙開発事業やグリーンエネルギー開発事業といった新たな領域のビジネスや、不動産開発事業などの多様な事業に取り組んでいます。当社の注力する事業領域が拡大・変化する中で、建設事業や様々な事業を牽引していく多様でオリジナルなリーダーの存在は不可欠であり、当部ではその候補者となりうる人財を職種や組織にとらわれず早期に発掘し、成長を支援していくことに力を入れています。

私はJammin’の参加者に、異業種交流という自社では得難い経験をする中で、自分の世界を広げること、多様なチームメンバーと一緒に成果を出すことに挑戦して欲しいと思います。そして、Jammin’のような一人ひとりのポテンシャルの発揮につながる「きっかけ」づくりを続け、プログラムに参加した社員と共に当社の更なる成長に貢献していきたいと考えています。

Jammin’の皆さんとオーナーで、唯一無二の場を一緒につくりたい

――今後のJammin’に期待することを教えてください。

西村:越境からでしか得られない経験や社外のリーダー候補と切磋琢磨できる環境を提供できる唯一無二のプラットフォームがJammin’だと感じています。だからこそ、私たちもリーダーとしてポテンシャルの高い人財の派遣を続けたいと思っています。これからもトレーナー・専門家の皆様にはJammin’で提供する質の高い経験やフィードバック、切磋琢磨し合える環境づくりにはこだわっていただきたいです。そして、Jammin’を更に良い場にしていくために、Jammin’の皆さんとオーナーの私たちが、こうやって相互にフィードバックしながら質を高めていくことが大切なのだと思います。

――福島さん、これからJammin’に参加する人たちにメッセージをお願いします。

福島:私が参加したコースでは、皆ギラギラしていて、負けたくない気持ちの強い人が多かったです。全員が仲間であり、ライバルでした。チーム内の1人でも機能しなければ勝ち抜けないような、シビアなプログラムでした。ですから、社内で話すときには「Jammin’は大変です。斜に構えるなら止めた方がいい」と伝えるようにしています。周囲の迷惑になるだけでなく、本人のためにも良くありませんから。私自身はJammin’を通じて、自分の「本能」を呼び覚ますことができました。本当に良いきっかけを得ることができたと感じています。

福島氏と西村氏の画像

【text:米川青馬、illustration:長縄美紀】

※記事の内容および所属等は取材時点のものとなります。

 

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