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公開日:2024/03/11
更新日:2024/03/11

THEME 中堅/リーダー

連載・コラム中堅リーダー層の能力開発セミナー

中堅・リーダー層をマネジメント人材に移行するために必要なアップスキルとは

中堅・リーダー層をマネジメント人材に移行するために必要なアップスキルとは

ビジネス環境が日々多様化・複雑化するにつれ、マネジャーに求められる役割も多様化し、負荷が大きくなっています。同時に次のマネジメントを担う中堅・リーダー層とマネジャーに求められる仕事における乖離が、質・量共に大きくなっており、マネジャー昇格後に必要な要素をすべて身につけ始めるのでは遅いのが実情です。マネジャーへのスムーズな移行を果たすためには、中堅・リーダー層の段階からマネジメントに必要な能力を開発し、特にマネジャー移行後に求められるスキルを段階的に学んでおくことが必要です。

そうしたなか、私たちは2023年12月に「中堅・リーダー層をマネジメント人材に移行するために必要なアップスキルとは」セミナーを開催しました。セミナーでは、現代のマネジメントに必要な能力、中堅・リーダー層に求められる能力開発の観点と意図的・計画的な育成のあり方、具体的な事例などを紹介しました。本記事では、本セミナーの内容を紹介します。

講師
●坂井 直純 (さかい なおずみ)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRD統括部 シニアスタッフ

 

ミドルマネジャー候補者が不足しているのはなぜか


このセミナーの検討テーマは、「中堅社員に対して、ミドルマネジメントに向けた準備としてどのような経験を積ませるべきか?」ということです。なお、本セミナーでは、中堅社員をミドルマネジメントの昇格手前となる、プレマネジメント層として「リーダー層・主力層」と置いています。

私たちの調査によれば、人事担当者も管理職層も、企業組織課題の1位に「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」ことを掲げています。また、人事担当者の3位、管理職層の2位に「中堅社員が小粒化している」ことがランクインしています(図表1)。中堅社員の実像をもう少し詳しく調べると、「ミドルマネジャーになりたくない」と考える傾向があることが分かってきました。中堅社員の多くはキャリア意識が高く、主体的にキャリア形成したい一方で、仕事中心の生活にあまり魅力を感じておらず、仕事はほどほどにしたいと考えている傾向が多くみられます。目立つよりも堅実に働きたいという意向も強くなってきています。

そのようなことから、ミドルマネジャーへの昇格をあまり望まない傾向が顕著にみられます。多くの人事や管理職が、こうした中堅社員を見て小粒化していると感じており、最近の中堅社員は「踏ん張りがきかない」「はみ出しが少ない」といった声もよく耳にするところです。


<図表1>会社の課題認識

Q:下記の項目それぞれについて、あてはまる程度をご回答ください。
(「よくあてはまる」「ややあてはまる」「あまりあてはまらない」「まったくあてはまらない」の4択から単一選択)
※選択率は「よくあてはまる」「ややあてはまる」の合算


会社の課題認識

出典:マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ・2023年)

管理職になりたくない中堅社員


実際、中堅社員の約70%が、「管理職になりたくない」もしくは「どちらともいえない」と回答しています(図表2)。また、多くの人事担当者や管理職は課長・マネジャー候補の育成や選抜に悩んでいますが、その最大の原因は、課長・マネジャーになりたい社員が減っていることです(図表3)。もちろん、マネジャーに向けて順調に成長していく中堅社員も一定数いるのですが、マネジャーへの昇格を望まないがゆえに、中核人材としての役割転換が進んでいない中堅社員が増えているような話もよく聞かれます。

中堅社員層は、マネジャーからの関与が減ることもあり、個々の成長度合いが本人の主体性・自律性に依存しやすいため、成長度合いに大きな差が生まれ、二極化しやすくなります。ほどほどに堅実に働きたい中堅社員は、成長が鈍化し、次のマネジャーとして物足りなく感じさせます。こうした状況が、多くの会社でマネジャー候補者の不足を生み出しています。


<図表2>管理職への志向

Q:管理職への志向はどの程度ありますか?(新人、若手、中堅各々 N=400人)
管理職への志向

出典:新人・若手の意識と学習・キャリアに関する調査(リクルートマネジメントソリューションズ・2013年)

<図表3>課長・マネジャー候補の育成や選抜における難しさ

Q:貴社では課長・マネージャー候補の育成や選抜に難しさを感じていますか。難しいと感じていることについて下記から選択してください。(いくつでも)(n=150)課長・マネジャー候補の育成や選抜における難しさ

出典:マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ・2023年)

期待と負荷が高まるミドルマネジャー


マネジャーになりたい社員が減っている理由の1つとして、ミドルマネジメント層に求められることがどんどん膨らんでおり、期待レベルや難易度や負荷が高まっていることも挙げられます。目標達成・品質管理・メンバー育成・組織力強化はもちろんですが、最近は健康経営・働き方改革・エンゲージメント向上・リモートワーク対応など、経営方針の転換や強化を踏まえた管理業務が増加しています。その一方で、チームメンバーの多様性への対応やハラスメントなどに注意することも必須となっています。

さらに最近は、ミドルマネジャーが「自律共創型組織」への移行を求められるケースも増えてきており、図表1の調査のとおり、ミドルマネジャーの負担は明らかに過重になっているのです。

その一方で、これまで伝えてきたとおり、中堅社員層のパフォーマンスは二極化しており、全体的に見れば低下傾向がみられます。それは中堅社員だけでなく、ミドルマネジャーも同様です。

つまり、ミドルマネジャー及びその候補者の期待レベルと能力のギャップが拡大しているのです(図表4)。適度なギャップであれば、人は背伸びをして能力を発揮しようとします。

しかし、ギャップが大きくなりすぎると、人はやる気を失ってしまいます。これが、ミドルマネジャーになりたい社員が減っている原因の1つになっています。こうした状況を解消するためには、人事(≒会社)や上司の支援によってこのギャップを小さくし、スムーズにステップアップできるような環境をつくっていくことが肝要です。


<図表4>期待レベルと能力のギャップ拡大

期待レベルと能力のギャップ拡大

では、ミドルマネジャーのどの業務が難しいのでしょうか。図表5の調査によれば、トップ3は「メンバーの育成・能力開発」「既存業務に取り組みながらの新しい挑戦」「業績・目標達成」です。当然ながら、これらは以前から難しいとされてきた業務ではあります。しかしながら、多くの企業でその難度がより高まってきているということが顕著にみられます。また、最近増えてきた自律共創型組織のマネジメントで難しいとされるマネジメント業務は、「あいまいな状況のなかでも先を見て、組織のビジョンを打ち出す」「失敗を恐れず、まずは挑戦してみることをメンバーに勧める」「これまでの成功パターンにとらわれることなく、新しいやり方を試す」こととなります(図表6)。


<図表5>日々のマネジメントで難しいと感じていること

Q:日々のマネジメント業務で難しいと思っていることはありますか。以下からあてはまるものをすべてお選びください。(n=150)日々のマネジメントで難しいと感じていること

出典:マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ・2023年)

<図表6>自律共創型組織の運営に向けて管理職が難しいと感じていること

Q:自律共創型の組織運営に向けて、難しいと感じていることを3つまで選択してください。
全体のなかで実際に自律共創型の組織運営に取り組んでいると回答した管理職(n=67)自律共創型組織の運営に向けて管理職が難しいと感じていること

出典:マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査(リクルートマネジメントソリューションズ・2023年)

中堅社員には「人・組織に対する見立て力」を磨いてもらうことが重要


では、中堅社員はマネジャーになる手前で、いったいどのような能力を磨くのがよいのでしょうか。私たちが最も重要だと考えているのは、「人・組織に対する見立て」の力です。

人に対する見立てとは、「メンバーの育成計画を立てる」ことであり、組織に対する見立てとは、「部署のビジョンと運営計画を立てる」ことです。この2つができるようになれば、組織のビジョンにもとづいてメンバーに挑戦を促し、育成や能力開発ができるようになります。チームで新しいやり方を試すチャレンジもしやすくなるでしょう。結果として、業績・目標の達成に近づけるはずです。この力は一般的な組織だけでなく、自律共創型組織をマネジメントする際には特に欠かせない力になります。

実は、ミドルマネジャーがメンバーの信頼を失うシーンは限られています。「自分たちに対する想いが感じられないとき」と、「組織に対する意思が感じられないとき」、この2つのどちらかが起きたとき、メンバーは上司を信じられなくなるのです。つまり、ミドルマネジャーが人・組織に対する見立ての力を十分に持っていれば、メンバーの信頼を失わずに済むのです。中堅社員の間にこの両者の見立て力を磨けば、ミドルマネジャーに昇格したときにスムーズに役割転換できるようになります。

中堅社員が学ぶべきスキル1 広い視野で仕事を考えるスキル


私たちは、組織・人に対する見立ての力として、中堅社員が学ぶべきスキルを具体的に3つ想定しています。1つ目は「広い視野で仕事を考えるスキル」です。これは組織に対する見立てにつながるもので、「課題化するスキル」と「道筋を描くスキル」の2つに分解できます。このスキルが高いミドルマネジャーは、将来的な経営人材のプール群に入るでしょう。

このスキルを高めるためには、例えば、自社や競合の中期経営計画を読みこんで、内外環境に対する考察や戦略の違いをつかみ、事業が置かれている状況を把握することなどは、良い訓練になります。また未経験の仕事に就いてもらい、自らの手で論理的に課題を設定し、成功までのシナリオを描いて実行してもらう体験なども、このスキルを高めることにつながります。また会計知識を学び、収益性やコストを踏まえた判断力をつけてもらうことも大事です。

なお、現代の経営環境では、問題解決の力を高めることは必須能力ともいえます。若手時代は、そのつど起こった問題だけを解決する「発生型」問題解決ができればOKですが、中堅社員は、自組織のあるべき姿を決めるところから始める「目標設定型」の問題解決を求められます。そして、ミドルマネジャーになると、組織ビジョンや自らの使命・目的も含めたすべてを自分で考え、課題を設定したうえで解決する「課題設定型」問題解決が求められるようになるのです。課題設定型の問題解決ができてはじめて、広い視野で仕事を考えられているといえるわけです。

この3段階の問題解決スキルを順に学び、実践して経験を積む研修育成サイクルを構築できれば、中堅社員のプレマネジメントスキルの全社的な底上げが図れるはずです。

中堅社員が学ぶべきスキル2 人を動かして仕事を進めるスキル


2つ目は「人を動かして仕事を進めるスキル」です。これは人に対する見立ての力に直結するもので、「人との関係を築く」スキルと「人に働きかける」スキルに分けられます。ピープルマネジメントはマネジャー就任時に最も苦労する業務で、しかもプレイヤーとして優秀な社員ほど苦手とする傾向があります。特に、仕事を自ら意味づけできる人、MUSTで動いて成果を出してきた人は、「ピープルマネジメント」で躓きやすいことが多くみられます。しかし一方で、マネジャーの役割・活動・基本姿勢・立場などをよく理解したうえで「ピープルマネジメント」の経験を積んでいけば、誰もが伸ばせるスキルでもあります。

「ピープルマネジメント」には、複数の利害関係者の合意形成を促せる力、目標達成にメンバーを動機づけられる力、チームを方向づけて前向きな雰囲気をつくれる力など、「多様なコミュニケーション力」が必要になります。そのため、中堅社員の「ピープルマネジメント」を強化する研修を導入する際には、『1.どのようなシーンでのコミュニケーションを強化するか」を明確にして、『2.必要なスキルを検討する』ことが欠かせません(図表7)。例えば、後輩指導力を身につける際のポイントは「傾聴力」と「質問力」で、この2つを高めるには「ビジネス・コミュニケーション研修」や「コーチング研修」が効果的です。このように「場面とスキルを絞ること」が研修効果を高め、中堅社員の能力アップにつながります。


<図表7>ピープルマネジメント強化研修の導入プロセス

ピープルマネジメント強化研修の導入プロセス

中堅社員が学ぶべきスキル3 変化や不確実性に対応するスキル


3つ目は「変化や不確実性に対応するスキル」です。これも人に対する見立ての力につながるもので、「前に進めるスキル」と「自己を更新するスキル」に大きく分けられます。冒頭で触れたとおり、現代の中堅社員の多くはキャリア意識が高い一方で、仕事はほどほどにしたいと考えており、目立つよりも堅実に働きたい意向が強いのが特徴です。しかし、キャリアは本来、仕事を通じて積み上げられるものです。キャリアづくりのためには、「キャリア形成」と「仕事・役割」をつなげて考えることが欠かせません。中堅社員が両者をつなげて考えられるようになれば、自律的に学んで行動を起こし、マネジャーへと成長を遂げてくれるはずです。そして、変化と不確実性に満ちた現代社会を生き抜くスキルを自ら高められるようになるでしょう。

このときポイントとなるのは、「コンフォートゾーンからラーニングゾーンへの移行」です。コンフォートゾーンとは、本人が慣れ親しんだ環境のことです。コンフォートゾーンから出て、未知の人間関係や責任や業務がある環境で、一定の負荷を感じながら働くと、人は多くの学びを得て、自己を更新できるのです。そうした環境をラーニングゾーンと呼びます。中堅社員をラーニングゾーンに移し、個々の学びを増やすことが大切です。ただし、負荷を大きくしすぎないことにも注意が必要です。なぜなら、負荷があまりにも大きいパニックゾーンでは、人はかえって混乱してしまい、学ぶどころか心身の調子を崩す可能性もあるからです。

マネジャー昇格も、ある意味ラーニングゾーンへの移行と捉えることができます。図表8は、昇進前後の管理職意向の変化を調査した結果ですが、昇進前の管理職意向がネガティブだった人の約半数が、昇進後にポジティブに変化しています。その変化の理由のトップ3は、「より大きな影響力を周囲に及ぼすことができているから」「現場の仕事とは違う面白さがあるから」「自分にとって成長を感じられているから」です(図表9)。

ミドルマネジャーというラーニングゾーンに入り、多くを学んで成長し、マネジャー昇進をネガティブからポジティブに変えたのです。中堅社員に対して、上記トップ3の理由を感じられるようなプレマネジメント経験を積める仕組みや施策を用意することで、ミドルマネジャーへの昇進を前向きに考える社員を増やすことの一助になるはずです。


<図表8>昇進前後の管理職意向の変化

昇進前後の管理職意向の変化

出典:管理職意向の変化に関する実態調査(リクルートマメジメントソリューションズ・2016年)

<図表9>昇進前後の管理職意向の変化の理由

昇進前後の管理職意向の変化の理由

出典:管理職意向の変化に関する実態調査(リクルートマメジメントソリューションズ・2016年)

中堅社員の基本的な学習プロセス


最後に、私たちリクルートマネジメントソリューションズが考える「中堅社員の基本的なプレマネジメント学習プロセス」を紹介します(図表10)。ポイントは以下の3点です。

1.研修でインプットとアウトプットの機会を用意すること
2.上司との会話・面談などの場を定期的に設けて、上司が積極的に関わり、上司自身も変化できる機会を用意すること
3.スキル成長の度合いを継続的に確認すること


<図表10>中堅社員の基本的なプレマネジメント学習プロセス

中堅社員の基本的なプレマネジメント学習プロセス

適切なインプットをはやい段階で行いながら、職場で実践・アウトプットする機会を設定することで、自分自身の強み・弱み、過不足を実感し、学び成長し続けることの必然性をいかに実感させるかが重要となります。こうした取り組みを継続させていくことで人と組織が共に変革し、成長し続ける組織風土をつくることができるのです。

より詳しい情報を知りたい方は、ぜひお問い合わせください。

中堅・リーダー層をマネジメント人材に移行するために必要なアップスキルとは
ミドルマネジャー候補者が不足しているのはなぜか
管理職になりたくない中堅社員
期待と負荷が高まるミドルマネジャー
中堅社員には「人・組織に対する見立て力」を磨いてもらうことが重要
中堅社員が学ぶべきスキル1 広い視野で仕事を考えるスキル
中堅社員が学ぶべきスキル2 人を動かして仕事を進めるスキル
中堅社員が学ぶべきスキル3 変化や不確実性に対応するスキル
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