- 公開日:2023/07/03
- 更新日:2024/06/13
■ プロローグ
弊社では、これから初めて本格的に人材育成に取り組む、という中小企業の皆様からもご相談をいただいています。 本コラムではそのようなご相談を年間約1000件お受けしている、インサイドセールス部門の担当者から人事の方に向けて、お役立ていただける情報を発信していきます。
中堅時代こそ育成が重要
中川 和明(なかがわ かずあき)
HRD・OD事業推進部 営業推進グループ
企画スタッフ
弊社の人材育成、組織開発部門でインサイドセールスを担当している中川和明と申します。
人事の皆様からいただくお悩みとそれに対してお答えしている内容をもとに、主に中堅・中小企業の方が人材育成について考える時にヒントになる情報を発信したくこのコラムシリーズをスタートしました。
本コラムシリーズの趣旨については第1回に記載していますので、ご参照ください。
◆中小企業の人材育成を考える 第1回
人材育成のよくあるお悩み「マネジメントを強化したい」はなぜダメなのか?
第4回となる今回は、中堅社員の育成についてお伝えしていきます。
中堅社員育成については、企業の人事からは「最近の中堅社員が小粒化している」「管理職になりたがらない中堅社員が増えている」など、さまざまなお悩みを伺います。中堅社員層は、若手を卒業した3~5年目くらいの年次から管理職手前のリーダー層までその対象が幅広いのが特徴です。
言い方を変えると、中堅社員の期間は長いからこそどう過ごすかがその後の活躍を大きく左右する、ともいえます。
中堅社員育成についてよくお伺いするお悩みと、その背景や特徴について考察していきます。
「管理職になりたくない」という中堅社員が増えている
最近の中堅社員の傾向としてよく挙げられるのは、「管理職になりたくない」と考えている人が増えているということです。また、中堅社員には管理職になる手前で組織のリーダーとして活躍したり、マネジャーの補佐として力を発揮したりしてほしいという期待も高いもののなかなかそのような役割転換ができないというお悩みも伺います。
中堅社員育成といってもその対象は幅広いと前述しましたが、こういったお悩みが顕在化してくる対象は中堅社員後期のリーダーや、リーダー手前層です。図表1の「Leading Player」にあたります。
<図表1>中堅期は「中堅前期:Main Player」「中堅後期:Leading Player」に大きく分けられる
昨今、上記のようなお悩みが増えている背景の一つとしては、組織のフラット化が大きく影響していると私たちは考えています。
昔のように「主任」や「係長」など管理職手前の肩書を持たない会社が増えました。業務やプロジェクトごとに「チームリーダー」がいることは多いと思いますが、その場合も業務面だけのリーダーシップを期待されることが多く、チームメンバーの育成という役割を担いません。そのため、中堅社員はリーダーという役割を持っていても主には自分の業務に専念するプレイヤーとして成長していきます。
その結果、管理職がマネジメントの役割を一手に担うことが多く、メンバーから見ると非常に大変な役割に感じられるでしょう。一方で、中堅社員もプレマネジメントの経験知が少ないため、自分自身がマネジメントの役割を担うイメージが持ちづらいままになりがちです。
管理職に昇進する際は明確な役割の転換があるため、転換の苦労は大きかったとしても管理職も周囲も期待が変わったことを認識しやすいという側面があります。一方、中堅社員時代の役割の転換は分かりづらく、そろそろリーダーや組織の中核として役割を広げていってほしいという期待があっても実は明確に伝えられていない、ということも起こりがちです。
そうやってマネジャーを補佐するリーダーが育たないままでいると、マネジャーの役割はますます大変なものとなり、なりたいと思われなくなってしまうという悪循環にもつながりかねません。
新人や管理職と比べてなかなか節目となる機会を持ちづらい中堅社員にとって、研修を役割への期待を伝える場として活用することもお勧めしています。
◆ どんな環境下でも自律的に周囲に働きかけ成果を出し続けるビジネスパーソンを目指す|S-BT
中堅社員の陥りがちなポイントと育成の際に考えるべきポイントを下記 特集ページ でもお伝えしています。
中堅社員育成が陥りがちな「キャリア形成不全」
前述の課題感とつながる話ではありますが、もう一つ中堅社員の陥りがちな状態である「キャリア形成不全」についてお伝えしたいと思います。
昨今の中堅社員層は学生時代からキャリア教育も受けており、「自分に向いている仕事は何か」「自分を生かせる仕事や職場は何か」というようなキャリア形成への関心が高いという特徴があります。一方、プライベートを重視し、昔のような出世への強い願望も薄れてきているため「仕事中心の生活にはなりたくない」と考える人も増えています。この二つの特徴が組み合わさっていることにより、起こりやすくなっているのが「キャリア形成不全」です。
社会人としてのキャリアの見通しは、自己分析や会社以外の活動からも見えてくるものもありますが、目の前の仕事に没頭することで成長実感を持てたり、経験を積み重ねたりすることで生まれてくる側面もあります。
若手や中堅時代にそのような感覚を養えないままになると、ビジネスパーソンとしての自分の現状を捉えられず、表面上のスキルアップに力を入れてみても仕事での効力感はなかなか持てない、という状態に陥ることがあります。さらに、中堅社員時代は役割の変化を感じにくいため、キャリアが停滞しているように感じがちです。
そうやってキャリアを形成したいのに、いま一歩うまく行っている感覚が持てない、という状態が、中堅社員に期待したい「自律的な成長」を止めてしまう一因になっているというケースがあります。
そのようなご相談をいただく場合にお薦めしているのはキャリア研修です。
キャリア研修というとキャリアアップやキャリアの転換を考えるもの、と思っている方もいらっしゃるのですが、目の前の仕事の意味・価値を捉えなおし、今後どういう役割を果たしていきたいか、という中堅社員の方が目の前の仕事を頑張っていくための機会として活用いただける研修です。
最近は、中堅社員研修としてキャリア研修を取り入れる企業が増えています。
個々人に合わせたスキルアップの機会提供
中堅社員の方に必要なビジネススキルについても触れておきます。
中堅社員の方は組織の中核として、重要な問題解決を担ったり、今後に向けた新たな課題設定の役割を担ったりすることが多いと思います。
そのためには問題解決や課題設定のスキル、またそれに付随して関係者と効果的なコミュニケーションを取るためのロジカルシンキングやプロジェクトマネジメントなどのスキルを身に付けていくことが主流になるでしょう。
ただし、担当している業務やこれまでの経験、個人の得手不得手により学ぶべきテーマが異なってくるのが中堅社員の学びの特徴です。また、受け身の学習ではなく、自分の仕事に必要なことや今後のキャリアを考えて主体的に学んでもらいたい、というニーズも高まっています。そのような場合は、選択型研修の導入をお勧めしています。
弊社でもチケット制 × 3時間で活用しやすい「自律的な学びを支援する選択型研修」をご用意しています。
最後に
今回は、事業推進の主戦力になる中堅社員の育成についてお伝えしてきました。
中堅社員はその対象範囲が広いため、企業によって育成の対象や注力のポイントが変わってくるのが特徴です。本コラムではよくお寄せいただくお悩みを中心にお伝えしました。
貴社の人材育成の参考になりましたら幸いです。
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【中小・中堅企業向け】階層別研修プランの構築と見直し
バックナンバー
第1回 人材育成のよくあるお悩み「マネジメントを強化したい」はなぜダメなのか?
第2回 管理職育成を考える際に検討すべきポイント
第3回 新入社員・若手社員育成の肝となる“オンボーディング”
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