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リモートワーク下における活力ある職場づくり 第3回

メンバーの持ち味を味わう

  • 公開日:2023/02/13
  • 更新日:2024/05/16
メンバーの持ち味を味わう

前回は職場における「安心感の土壌づくり」に向けて、そのポイントとマネジャーとして固めておきたい姿勢についてお話をしました。その核心は「メンバーが“自分のことを見てくれている、分かってくれている、育てようとしてくれている”と感じること」でした。 そのためにも、メンバーの持ち味をつかむことが大事なわけですが、メンバーと一言で言っても、ベテランもいれば新人もいて、まさに十人十色です。「持ち味をつかむことの意味や価値は分かっているつもりだが、つかみ切れていない感じもする」というのが皆さんの実感ではないでしょうか。 そこで、今回はメンバーの持ち味をつかむとは何をどうすることなのか、そして、メンバーを生かすとは?について考えてみたいと思います。

“ここにやりたい仕事はないと言う若手社員”
はじめに、Aさんの立場に立つ
エピソードの顛末
エピソードから分かること 「メンバーの持ち味をつかむ」ためのポイント

“ここにやりたい仕事はないと言う若手社員”

まずはエピソードをご覧ください。今回は、広告業界のある会社の営業支援を担う職場の話です。営業の人たちの契約管理や納品フォロー、時には一緒になってお客様への提案書を作成する役割を担っています。なお、この会社は、コロナ禍になり、在宅・出社どちらも選べる=一人ひとりが選択する、という勤務環境になっています。

「うちの職場に3年目のAさんが異動してきました。Aさんは入社して2年間、営業の仕事を経験しました。今回の異動は、『新人のうちに営業を経験した人は、一度、営業を支える部隊も経験させて職務適性を見出す』という会社方針の一環です。ところが、Aさんが異動してしばらくしたときに、リモート会議の場で“ここに私のやりたい仕事はないんです”と言いだしたから、もう大変でした。他のメンバーの前で言ってしまったので、職場での立ち位置が“期待の若手”から“部外者”に変わってしまって。一堂に会する機会もないので、真意も分からないままモヤモヤした雰囲気が漂ってしまいました」

皆さんがこのマネジャーだったら、どんなことを感じ考えますか?

前回お話ししたように、まずは相手の立場に立って見てみましょう。

はじめに、Aさんの立場に立つ

Aさんの置かれた現実でいうと、“やりたかったであろう営業の仕事から異動になった”“異動初日から多くの人がリモートワークをしている”ということでしょうか? 会社の方針とはいえ、少しずつ仕事にも慣れ、いよいよというところで異動になり、また一から覚え直し。新しい職場の人と知り合う機会もなかったことでしょう。

私がAさんだとしても、“自分のキャリアはどうなるのか?”という不安と多少の不満は溜まります。ただ、ここまで明確に不満を口にするというのは、私にはできません。背景には何があるのでしょうか?

どうやらAさんは不安状態が先行しているようです。やはり「安心感の土壌づくり」を考える必要があると思います。ただ、Aさんがここまで明確に不満を口にしたのはなぜでしょうか? 何かここにAさんという人の考え方・感じ方を理解する入り口があるように思います。

エピソードの顛末

「Aさんがあそこまでの表現をしたのがずっと不思議だったので、出社したときに一緒にランチにいきました。“そんなに営業やりたかったの?”と聞いてみたら、Aさんからいろいろ話してくれました。“学生時代にテニスをやっていたのですが、お互いが意見をぶつけながら活動できたというのがあって、いろいろな人と意見をぶつけ合うようなコミュニケーションを取れる仕事をやりたいと思ってずっと営業を希望していました”とのことでした。“テニスで意見をぶつけ合う? どういうこと?”と聞いてみたら、“……実は自分はすぐケガをしてしまってこれ以上選手としては続けられなくなりました。ただ友達もいたのでやめたくないなと思って、自分に何かできることはないかって考えたときに、彼らのために練習メニューを考えたり、試合を組んだりすることならできると思ったんです。自分が考えたメニューを巡ってみんなで意見を出し合ったりしているうちに、みんながどんどん強くなっていって”と話してくれました。正直“すごい!”と思いました。自分がケガした後にそこまで人のために動けないだろうなと思いましたから。でも、これって、うちの部署の役割に近いかもと思い、あらためてこの部署の仕事の面白さを話してみたら、Aさんも多少前向きになってくれて、まず営業の人たちの困りごとをヒアリングして改善案を作ることをやってもらうことにしました」

エピソードから分かること 「メンバーの持ち味をつかむ」ためのポイント

「メンバーの持ち味を把握する」ということはどのマネジメントの教科書にも書いてあります。しかし、何をつかむことが持ち味をつかむことになるのかということは案外明確になっていないものです。その点から今回のエピソードを見てみると、

メンバーの持ち味は、必ず過去から現在までの体験のなかに行動として表れている

ということが分かります。

持ち味をつかむとは、

1 何に喜んだり、怒ったり、悲しんだりしている人なのか

2 自信のよりどころになっている体験は何か

3 どんな性格の仕事、どんな状況で力を発揮するタイプなのか

などをつかむことだといえそうです。

なかには、“ここまで明確にしないといけないの?”と思う方もいると思います。

コロナ禍以前であれば、コミュニケーション機会が豊富に存在し自然と持ち味をつかむことができました。しかし、リモートワーク時代になり、コミュニケーション機会が激減しました。そのため、何をつかむことが必要なのかをあらかじめ明確にして、そのための機会を“意図的につくる”ことが必要だと考えます。

つまり、定点観測ポイントを持っていますか?ということになります。このことは大事なことなので、また回を改めてお話ししたいと思いますが、1ついえることは、朝礼・昼食・1on1……など、実はリモートワーク時代であっても機会はいくらでもあるということです。日頃無自覚だったことを自覚的にやるだけで新たな発見があるでしょう。

では、持ち味をつかむ際に大事なことは何でしょうか?

“いろいろ話しかけたりしているけれど、メンバーが警戒して話してくれない”ということはありませんか? この問題はいろいろな角度から見つめる必要がありますが、ここでは少し、自分の胸に手を当てて考えてもらいたいと思います。

メンバーの持ち味をつかむより前に、マネジャーとしてメンバーを評価しようとしていませんか?

誰だって、評価されている・観察されていると思ったら警戒することでしょう。特にリモートワーク時代の少ない接点のなかで評価が先になってしまえば、メンバーがより殻に閉じこもるのは当たり前です。

そうではなく、せっかく出会えた人同士、この人ってどんな人なんだろう? 自分だったらこんな感じ方をするのに、この人はこんなふうに感じるんだ、面白い人だなあ……というように、素直にメンバーとの見方・感じ方の違いを味わい、楽しんでほしいと思います。言い換えると、素晴らしいところが必ずあるという前提でメンバーに接してほしいということでもあります。

そうしてみると、このマネジャーも「Aさんがあそこまでの表現をしたのがずっと不思議だった」と「正直“すごい!”と思った」なんて言っていますよね。

人事部門の方は、この機会に、会社のなかに、メンバーとのコミュニケーションを楽しんでいるマネジャーがどれだけいるかを一度確認してみてください。

そして、もし幸運にもメンバーの持ち味が見えてきたと思ったら、メンバーの持ち味と仕事機会をつなぐことを意識してみてください。適材適所・適材適機会……これがマネジャーの皆さん与えられた最大の権限だと思います。

<図表1>メンバーの持ち味と仕事機会をつなぐ 適材適所・適材適機会

<図表1>メンバーの持ち味と仕事機会をつなぐ 適材適所・適材適機会

さて、今回は、若手社員を題材に持ち味をつかむことを考えてきました。しかし、お読みいただいている人たちのなかには、それよりもベテラン、年上のメンバーに対して、どう接するのかということに関心がある方もいるでしょう。そこで、次回はその問題についてお話ししたいと思います。

執筆者

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コミュニケーションエンジニアリング部
エグゼクティブコミュニケーションエンジニア

河島 慎

1975年生まれ、三重県出身、 1998年、電機メーカーへ入社、人事・総務を約8年経験。
2004年、リクルートマネジメントソリューションズへ入社。以降、コミュニケーションエンジニアとして、人材価値経営(人・組織のもつ潜在的な可能性の最大化による事業価値最大化を図る経営)実現を支援している。

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