- 公開日:2022/12/12
- 更新日:2024/05/16
弊社では、人と組織のもつ潜在的なエネルギーを最大限発揮してもらうための支援をしています。具体的には、企業・組織内のコミュニケーションを活性化することを通して、安心感の土壌をつくり、イキイキと働く人・組織づくりを支援しています。 さて、コロナ禍になって人・組織において大きく変わったことの1つが、「働き方」だと思います。多くの企業でリモートワークが導入され、さまざまなオンラインツールを駆使することで出社しなくても、場所を選ばず仕事を進められるようになりました。一方でこの変化をマネジャーの立場から見ると、メンバーと直接顔を合わせる機会が減るなかで職場内のチームワークをつくり、人材を育成し、業績をあげるという難しい問題に直面することを意味しています。 もっとも、実際には多くのマネジャーは、このような問題に直面しながらも手をこまねくことなく、さまざまな工夫をして価値ある取り組みを行っています。しかしもったいないことに、他社・他者の取り組みを聞く機会が少なく、自分がやっていることの価値を実感できないまま、孤軍奮闘しているように見えます。 そこで、本コラムでは、マネジャーやマネジャーを支援するバックオフィスの方々に向けて、具体的な取り組みを紹介しながら、“リモートワーク下における活力ある職場づくり”のヒントを提供していきたいと思っています。
今、職場で起きていること
第1回は、具体的なヒントをお伝えする前に、リモートワークになって一変した(ように見える)“職場”について、今起きていることを整理してみたいと思います。
コミュニケーションをキーワードにしてコロナ下の職場を見たときにどんな変化があったと思いますか?
<図表1>職場内のコミュニケーション
図表1は、職場内のコミュニケーションについて示したものです。職場内のコミュニケーションはフォーマルなコミュニケーションとインフォーマルなコミュニケーションに大別できます。フォーマルなコミュニケーションとは、会議や業務打ち合わせといった「役割・責任、合理的、指示・説明」というスタイルのコミュニケーションになります。一方でインフォーマルなコミュニケーションとは、職場での雑談・飲み会といった「感覚的、思うこと・感じることを自由に」伝えるものです。
リモートワークが進んだことによる変化は、「マネジャーとメンバー間の縦のコミュニケーションの量はそれほど変化がないものの、“指示・説明、報告”(フォーマル)が増え、一方で、メンバー同士の横のコミュニケーション機会、特に“雑談・飲み会”(インフォーマル)は大幅に減少した」ということではないでしょうか?
では、インフォーマルなコミュニケーションが減少することの何が問題なのでしょうか?
インフォーマルなコミュニケーションが減少することの一番の問題は、「職場で思ったこと・感じたことを自由に言い合えない → 日頃感じる疑問・違和感が解消できない → 自分の考えが合っているのか不安 → 職場における安心感の土壌の喪失」=「職場の活力の減少」につながるということです。
あるエピソードを紹介します。リモートワークが導入された職場でよく見られる光景です。
“新人の状態がよく分からない”
あるメーカーの研究開発職の若手社員から聞いた話です。その会社ではコロナ禍をきっかけに、リモートワークが本格導入され、出社率50%という制限のなかで、上司と相談して自分が必要と思う出社形態を取ることになりました。
「最近、うちの新人が何を考えているのか全然分かっていなくて反省したことがありました。コロナ禍前なら、ちょっとした出来事で新人の状態を把握できていたんです。例えば新人とマネジャーが2人きりで面談しても、会議室から戻ってきた新人の表情を見て“落ち込んでいるな”とか“結構不満ありそう”とか分かるじゃないですか。落ち込んでいたら“何があったの?”って聞いてみたり、夜マネジャー抜きで飲みに行って愚痴り合ったり(笑)。逆に不満そうに見えたら“厳しい事言うけど、すごくよく見ているマネジャーだからね”ってフォローしたりしながらお互いの状態とか考えが見えていたんですよね。でも、最近はマネジャーとは1on1で話す機会は増えたけど、オンラインなので他の人の様子が分からなくて……。新人とも出社時間が合わなかったりして、今どんな状態なのか、何を考えているのかつかめてない。この間、たまたま新人と話したら、“最近、しんどくて夜眠れない”って急に言われて、すごく焦りました。新人とマネジャーも1on1をやっているので大丈夫かなと遠慮していたのですが、私ももっと話さないといけないって痛感しました」
みなさんは、この話を聞いてどんなことを感じますか?
安心感の土壌をつくり場の活力を高めるには「マネジャーとメンバーの縦のコミュニケーションだけでなく、メンバー同士の横のコミュニケーションも重要である」といえそうです。一方で、その対策の中心は1on1といった縦のコミュニケーションであり、横のコミュニケーションに対しては十分に手が打たれていないのが現状ではないでしょうか。
また、先ほどから 「安心感の土壌をつくる」と表現していますが、実はその難度を左右する構成要素がいくつかあることが見えてきます。
例えば、
(1)出社形態
従来どおり出社主体の職場もあれば、フルリモートワークに近い職場もあります。リモートワークの比率が高くなればなるほど安心感の土壌をつくる難度は高まります。
(2)メンバー構成
経験豊富で自分の仕事スタイルを確立しているベテランは他者に依存せず仕事を進めていけます。一方で若いメンバーは他のメンバーと協働したり依頼したりすることが多い半面、人脈基盤も脆弱なため、必要性も難度も高まります。
(3)メンバーの入れ替えの頻度
所属するメンバーが頻繁に入れ替わるほど難度は高まります。
(4)これまでの取り組みの蓄積
これまでにメンバー同士でコミュニケーションを取る機会が蓄積されていればいるほど、横のコミュニケーションが当然の行為・習慣となって、リモートワークになっても何とかその機会を見つけようとします。
<図表2>「安心感の土壌づくり」の難易度を左右する構成要素
図表2はそれらをまとめたものです。こうして見ると、前述したエピソードの職場は、出社率が50%に制限され、新人が入社してきている一方で、以前から横のつながりがあり、本当に苦しいときは、新人からも話しかけてくれているという点で重症ではなく、活性化の難度はそれほど高くないかもしれません。
みなさんの会社・職場をこのメガネを通してみると、どのような状態に見えますか?
自分の職場について考えるポイント
1 コロナ禍になって、職場の横のコミュニケーションは増えているだろうか、減っているだろうか <図表1>
2 コロナ禍になって、職場にどんな変化があっただろうか? <図表2>
マネジャーは、リモートワークになりさまざまな変化の渦中にいると思いますが、一度しっかり観点を定めて、自らの職場の現状を見つめ、そのうえで対策を考えてみませんか?
人事部門の方も、ぜひ一度自社の組織の現状を見つめてみてください。
次回以降は、職場の変化を前提に、さまざまなエピソードを通して具体的に活力ある職場づくりに向けたヒントをお話ししていこうと思います。
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※本稿は、オフィスのミカタへの寄稿記事より転載・一部修正したものです。
執筆者
技術開発統括部
コミュニケーションエンジニアリング部
エグゼクティブコミュニケーションエンジニア
河島 慎
1975年生まれ、三重県出身、 1998年、電機メーカーへ入社、人事・総務を約8年経験。
2004年、リクルートマネジメントソリューションズへ入社。以降、コミュニケーションエンジニアとして、人材価値経営(人・組織のもつ潜在的な可能性の最大化による事業価値最大化を図る経営)実現を支援している。
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