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連載・コラム自律的な学びの現場から トレーナー・講師インタビュー 第3回

「受講者に寄り添って、学びへの向き合い方を変えるのが講師のミッション」講師 三坂健

「受講者に寄り添って、学びへの向き合い方を変えるのが講師のミッション」講師 三坂健

公開型研修「リクルートマネジメントスクール」では、研修スキルと各分野の専門性の高さを兼ね備えた「トレーナー・講師」が受講者から人気を得ています。本連載では、トレーナー・講師の担当コースに対する考えや想い、感じていることなどを紹介していきます。また、自律的な学びの最前線で何が起きているか語っていただきます。
第3回は、3時間研修コースの「使える!ロジカルシンキング」「戦略的思考を強化する」「わかりやすく説明する技術」の3つを担当する三坂講師です。


講師プロフィール
株式会社HRインスティテュート
代表取締役社長/シニアコンサルタント
三坂 健(みさか けん)氏

損害保険ジャパン(株)退社後、HRインスティテュートに参画。経営コンサルティングを中心に、開発・思考力強化などを担当。近著に『この1冊ですべてわかる〜人材マネジメントの基本』(日本実業出版社)、『全員転職時代のポータブルスキル大全』(KADOKAWA)、『図解オンライン研修入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『戦略的思考トレーニング 目標実現力が飛躍的にアップする37問』(PHPビジネス新書)など。

■ リクルートマネジメントスクールの担当コース
使える!ロジカルシンキング 〜“わかりやすさ”のための3つの基本思考〜(119)
戦略的思考を強化する 〜ビジネスで勝つための5つの着眼点〜(131)
わかりやすく説明する技術 〜伝えたことが瞬時に相手の「自分事」になる!効果的な教え方・説明のしかた〜(189) 

3時間でも基本のすべてをあふれるくらいに詰め込んで分かりやすく伝える



――簡単な自己紹介をお願いします。

三坂:HRインスティテュートで、経営コンサルティングや人材育成トレーニングに長く携わっています。リクルートマネジメントスクールでも、かれこれ15年ほど前から講師を担当してきました。3時間研修コースでは、2012年に「使える!ロジカルシンキング」を始めた後、「戦略的思考を強化する」と「わかりやすく説明する技術」も立ち上げ、3コースの講師となって今に至ります。


――三坂講師の3コースはいずれも大人気だそうですが、秘訣は何だと思いますか?


三坂健氏1

三坂:第1に心がけているのは、難しいことをできるだけ分かりやすく伝えることです。例えば、戦略的思考の1つに「ポーターの戦略論」がありますが、こうした理論を説明するときは、その前に必ず具体的なケースを伝え、理論が腑に落ちるようにしています。学びを実践につなげていただくための工夫です。

第2に、3時間だからといって内容は薄くしていません。ロジカルシンキングも戦略的思考も説明する技術も、3時間だから最小限の内容にするのではなく、あふれるくらいに内容を詰め込んで、分かりやすく理解できるように進めています。受講者の皆さんにせっかく貴重な時間を投資していただくのですから、「3時間でこれだけの情報をもらえた」「受けてよかった!」と思ってもらえるコースを目指しています。

第3に、スキルの必要性を体感していただくために、研修中にあえて「軽く失敗してもらう」ようにしています。軽く失敗すると、これから学ぶスキルの必要性を、身をもって実感できるからです。

そのほか細かなことをいえば、ブレイクアウト(少人数に分かれて対話する仕組み)では各チームにこまめに顔を出し、できるだけ多くの方と関わるようにしています。また、その場での手作り感やライブ感を重視して、ホワイトボードを使った板書を最大限活用しています。基本的にはすべて、自分が受講者だったらしてほしいと思うことを工夫して取り入れています。

誰に伝えるのかを意識すれば、伝えたことが瞬時に相手の「自分ごと」になる



――なぜ「わかりやすく説明する技術」コースを始めたのですか?

三坂健氏2

三坂:ロジカルシンキングや戦略的思考はビジネススキルとしてよく知られていますが、「わかりやすく説明する技術」を始めた当初は、説明スキルがまだビジネススキルとしては確立されていませんでした。ここでの「説明スキル」とは、プレゼンテーションのように多くの方に一方的に紹介することではなく、日常のちょっとした会話や報連相、会議などでの説明を指します。世のなかには「説明すること」に苦手意識を持つ方が多く、説明することを仕事にしてきた私の強みと社会のニーズが合致すると考えて始めました。私は、記者会見を見るのが好きなのですが、記者会見では説明スキル次第で、話し手の社会的評価が大きく変わります。また、相手の反応に対してその場で臨機応変に対応する場面も多く、いかに相手を理解できるかがポイントになります。

わかりやすく説明する技術 」コースで最も重視しているのは、相手に寄り添うことです。例えば、ロジカルシンキングを学んだ直後は、誰もがどうしても論理的に美しく説明しようとしがちです。しかし、そうした説明は、実は相手にあまり伝わらないことが多い。なぜなら、相手が何を分かっていて、何を分かっていないか、何を知りたいのかを踏まえていないからです。別の言い方をすると、誰に伝えるのかを意識して分かりやすい説明ができたら、伝えたことが瞬時に相手の「自分ごと」になるのです。


――最近の3時間研修コースには変化がありますか?

三坂:3時間研修コースがオンラインで開催できるようになってから、「戦略的思考を強化する」コースをはじめ、各コースの参加者がかなり増えています。特に、第一線で働く忙しい方々の受講が多くなりました。私の推測では、以前から戦略的思考を学びたかったけれど、忙しくて学ぶ時間が取れなかった方がたくさんいらっしゃったのではないでしょうか。オンライン化によって、そうした方々がちょっとした空き時間に、気軽に受けられるようになりました。そのなかには、社会の急速な変化に合わせて、ビジネス戦略のシフトを検討する必要性が高まっており、その糸口を見つけるために戦略的思考を学んでいる方が多く見られます。さらに全国各地からの参加も明らかに増えました。

研修はベクトルが上向きの人に出会える絶好のチャンス



――自律時代の「個人の自律」をどのように捉えていますか?

三坂健氏3三坂:トップダウン型・管理中心型の組織では、もはやビジネスがうまくいかない時代になりました。代わって現代に求められているのは、ボトムアップ型・現場中心型の組織です。なぜなら、現場が自発的かつアジャイルに動かなければ、社会の激しい変化に対応できないからです。この現場中心型の組織には、個人の自律、つまり一人ひとりが主体的に考えて行動することが欠かせません。そして、個人の自律には「自走感」が大切だと考えています。自分で考えて走っている感覚を持つことが、自律につながっていくからです。

なお、働く個人が自走感を得るためには、次の3つを満たすことが肝要です。

(1)目的・目標の一致/組織と個人の目的・目標をできる限り重ねること

(2)役割の自覚/チーム内での個人の役割がはっきりしていること

(3)試せる環境(タブーの認識)/個人が何をどこまで試してよいのか(どこから先はやってはいけないのか)が分かる環境

これらの3つのポイントが押さえられたうえで、「多様な学び・スキルを得られる環境」が整っていると、さらに自律的な個人の能力開発につながり、ホラクラシーな組織(階層のない自律的な組織)がつくられるでしょう。


――自走感を得るにはどのような研修が有効ですか?

三坂:多くの場合、研修は人事や上司から「行ってきなさい」と言われて受講するものです。私はそうした受講者の皆さんに、「面白い!」と感じていただける研修をいつも目指しています。面白ければ、自ずと興味関心が湧き、ビジネススキルへの向き合い方が受動から能動に変わるからです。ロジカルシンキングや戦略的思考や分かりやすく説明する技術を、自分のものにしようと考えてくれるようになります。

少し大げさにいえば、私はたった3時間で「受講者のパラダイムシフト」を起こしたいと願っています。例えば、「ロジカルシンキングは難しいと思っていましたが、見方が180度変わりました。早速、ロジカルシンキングを現場で使ってみます」と言っていただけるよう、受講者に寄り添って、学びへの向き合い方を変えるのが講師のミッション、というのが私の考えです。


――これから研修を受講する方にメッセージをお願いします。

三坂健氏4三坂:研修は、普段会えない人と出会える絶好のチャンスです。特に、高い志を持っている人、成長意欲の高い人、つまりベクトルが上向きの人に出会えると、すばらしい刺激を受けることができます。私自身、ベクトルが上に向いた受講者に出会えたときは、幸運だと感じますし、自分もそうありたいと意識しています。

世のなかには、外に出てみないと分からないこと、得られないことがたくさんあります。組織の誰かが外に出て、新しい情報を得て帰ることが、組織自体の存続可能性を高めます。人事の皆さんは、組織のために、多くの方を研修に送り出すことを止めないでください。そして受講者の皆さんは、研修での新たな出会い、新たな刺激を存分に楽しんでください。私自身、ベクトルをできるだけ上に向けて、皆さんをお待ちしています。



バックナンバー
第1回 「日々どうやって自分らしく生きるかを考える人を増やしたい」研修トレーナー 岡本 浩幸
第2回 「両立思考を大事にすれば、企画を通すのも個人の自律もうまくいく」講師 富沢裕司

「受講者に寄り添って、学びへの向き合い方を変えるのが講師のミッション」講師 三坂健
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誰に伝えるのかを意識すれば、伝えたことが瞬時に相手の「自分ごと」になる
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