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立ち止まって振り返ることの大切さを知る

最初で最大のチャンス 〜新人フォロー研修の現場から〜

  • 公開日:2007/07/01
  • 更新日:2024/05/16
最初で最大のチャンス ~新人フォロー研修の現場から~

年功序列の崩壊と成果主義の導入は、新入社員の環境も大きく変えました。今やかつてのように長くゆっくりとした助走期間はなく、入社1年目から飛び立たなくてはならない時代となっています。一方で団塊世代のリタイヤが始まり、否が応でも若い世代が企業の成長を引っ張っていかなければならない。このような時代に新入社員とどう向き合い、どんなふうに育成していけばよいのか?今回のコラムは日頃新入社員と接することも多いトレーナーが、実際の研修現場の話を交えながらお届けします。

求められる短期間での成長と成果。そこに潜む落とし穴。
客観的な自分を知ることで、不安や不満の正体がわかる。
公開コースは同世代の異業種交流会。そこにいることが刺激。

求められる短期間での成長と成果。そこに潜む落とし穴。

私は現在40代ですが、私たちが新人の頃と比較して、今の新入社員は大変な環境に置かれていると思いますね。とにかく求められる成長のスピードが格段に違う。入社1年目から責任ある仕事を任され、短期間で仕事量が増えていき、しかも成果が要求される。新入社員研修からフォロー研修までの期間も総じて短くなってきています。以前は新入社員研修から1年後に行う企業が多かったのですが、最近では6ヵ月後、早いところでは数ヵ月後に行うような企業もあります。それこそ「あっという間、もうフォロー研修なの?」というのが、彼ら・彼女らのホントノトコロではないでしょうか。彼ら・彼女らの志向も「今ここで何をやれば成果を上げられるか」「短期的に自分が組織にどう貢献しているか」といった方向に向いている場合が多いですね。そのようにスピードが求められる中で、自分なりのWILLを持ちどうやったら成長していけるかを真剣に考えている若者たちを見るにつけ、頼もしく思いますね。これはトレーナーとしての偽らざる実感です。

ただし、短期間でのスピード成長はややもすると自分の思いと現実のギャップを生み、不安や不満につながりがちです。特に最近の新人は売り手市場の中でたくさんの情報を研究し、自分で企業や仕事を選んで入社してきているので、期待感がある分だけギャップを感じている新入社員も多いように思えます。配属された仕事が自分のやりたい仕事と合っていない場合はそのギャップは大きくなる傾向にあります。合っていたとしても日常の仕事に忙殺されている場合は成長を実感しにくい。本来ならば相談に乗ってもらえたり、指導してもらえる先輩もいない。上司は年が離れすぎている。自分が果たして成長しているのかわからなくなり、一人で悶々と悩む。

その状態が続いたり行き過ぎると、どうしても自分が置かれた状況から逃げ出したくなってきます。今は転職市場が充実していますので、道の選択肢には困らない。もちろんそれがきちんと意思決定した結果ならよいのですが、安易な選択だった場合、決して本人のためにはならないですし、企業にとっても大きな損失となります。こうした状態に陥らないようにするためには、一旦立ち止まって自分を振り返ってみることが非常に大切です。振り返りがきちんとできないと、その後の仕事に取り組む姿勢、モチベーション、周囲へ働きかける主体性などすべてが変わってきます。

客観的な自分を知ることで、不安や不満の正体がわかる。

弊社の新人フォロー研修の公開コースは2日間です。この限られた時間を一緒に過ごすことで、これだけは持ち帰ってほしい、感じてほしいと思っていることがあります。それは仕事のPDS(Plan-Do-See)ではなく、自分の成長のPDSを回すことの意義をぜひ感じ取ってほしいということです。組織の中でキャリアを積み重ねていくことは平坦ではなく、途中には必ず浮き沈みがあります。沈んだときに「何をきっかけにして浮上していけばいいか」、あるいは「これをすれば苦境から抜け出せる」、こういったことを知っているかいないかの違いは非常に大きい。これらを知る最初で最大のチャンスがフォロー研修という場なのです。

弊社の新人フォロー研修の特徴は、現状の振り返りと自分を客観的にとらえることに主眼を置いていること。例えば、セッションの一つに再現ドラマというものがあります。これは入社してから自分の身に起こった喜怒哀楽の場面をグループのメンバーそれぞれが出し、その中から1つを再現し、残りの参加者たちがそれを見て客観的な感想を話し合うセッションです。最初に説明をすると「なんだ、劇か、参考になることあるの・・・?」という反応が多いですね。もちろん言葉にすることはありませんが(笑)。ところが実際にやってみると、誰もが真剣になります。“自分が考えている自分”と“他人から見た自分”の違いに驚くからです。例えば、あるグループが誰かの身に起こった怒りの場面を再現したとします。「こんなの理不尽だよね。誰だって怒るでしょう」と思っていたことが、あるメンバーから見たらまったく違うふうに見える。「それって上司があなたのことを思って言ってくれたんじゃないの?」「怒っている場合じゃないでしょ。すごいいい成長の機会じゃない」・・・・、20名くらいのメンバーから率直な感想や意見がバンバン返ってくる。同世代からのメッセージはトレーナーから言われるのとは違った重みがあるようですね。

セッションを通してそうしたことを繰り返していくうちに、不安や不満と感じていたことが実は思い込みや言い訳に過ぎなかったことに気づく、あるいは何をやって何をやらなかったから今の自分があるのかが見えてくる。そこがまさにこの研修の大きな狙いなのです。

公開コースは同世代の異業種交流会。そこにいることが刺激。

新人フォロー研修というと、私の中で今でも非常に印象に残っている男性がいます。IT関連会社の新入社員でしたが、初日に会った時の表情は少し疲れている感じでした。ずっと気にはしていましたが、実はトレーナーが見ているよりずっと深いところで、彼の中に変化が起こっていた。なぜか研修の終わりにはさっぱりとしたいい表情になっていたんです。何があったのだろうかと思っていたら、彼の方からやって来て理由を話してくれたのです。「実は会社を辞めようと思っていたんです」と。「仕事の量が多くて忙しい。それも理由の一つですが最大の悩みは、どれだけ仕事をしても先輩や上司からフィードバックがなく、自分が成長しているかどうかの実感が持てなかったことでした。でもこの研修に参加して、同世代の参加者からいろんなフィードバックをもらううちに、自分にもちゃんと強みがあり、入社してから成長していることもわかった。だから、そんなに急ぐことはないじゃないかと思えた」、「それにほかの参加者を見て自分に足りなかった部分もわかりました。私はこれまで先輩や上司からのフィードバックを待っていただけなんです。これからは自分の方から働きかけてみます」。そんな内容のことを、元気な声で言ってくれた。嬉しかったですね。

企業が新人フォロー研修に期待することも、彼が体験したことに近いのではないでしょうか。これらはパソコンソフトのように自分で勉強すれば得られるものではなく、人と交流して、よい意味で人と対比する中でしかなかなかつかめないものです。特に公開コースというのは、それができる場。研修のはじめに私はいつも言うんです。「ここは、異業種交流会でもあるんですよ」と。いろんな企業のいろんな人たちと会って話をするだけでも刺激になる。少し手前味噌になりますが、自分がキャリアをスタートした頃にこんな研修があったらなぁと思いますよ(笑)。

執筆者

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人材開発トレーナー

佐山 享志

1962年生まれ。1985年銀行に入行。営業店3ヵ店の現場で営業・融資業務を担当。企業支援の関連会社において経営診断やコンサルティングに携わり、取引先企業の業績向上に貢献する。その後、融資部等の4部署でマネジャー。2002年、リクルート(現 リクルートマネジメントソリューションズ)の人材開発トレーナーとなり、現在に至る。メーカー・金融機関・IT などの業界を担当している。

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