連載・コラム
競争を勝ち抜く上でのキーポイントは営業マネジメントの巧拙
「大変」で「多異変」な時代を勝ち抜く営業組織とは?
- 公開日:2008/07/07
- 更新日:2024/05/16
※タイトルに使用した文言について
出典:『人材教育』2007年11月号16p 「多異変な時代」に対応する人材育成の新しい波
(グローバルインパクト代表パートナー 船川淳志氏 寄稿)
ものが売れない時代においては、営業マネジメントの巧拙が厳しい競争を勝ち抜く上でのキーポイントになってきているようです。そんな中、弊社では今年、営業強化研修分野で『売れる営業マネジメント』という新プログラムをスタートアップさせました。今回のコラムは同研修の開発者の一人であり、現在はさまざまな企業を対象に研修の第一線に立っているトレーナーからお届けします。
営業マネジャーが置かれている厳しい状況をなんとかしたい
「売れる営業マネジメント」の開発は、さまざまな業界で活躍する営業マネジャーの方々の声を参考にし、実際にトライアルにも参加していただく形で行ってきました。(2008年7月より特定企業向けサービスもスタート)そこに参加された方々の感想として多かったのは、「営業マネジャーの仕事の全体像を理解できてよかった」「自分に期待されている役割が整理できた」というものです。あたりまえのことじゃないのと思われるかもしれませんが、実は日本では営業マネジメントを体系的に経験しているマネジャーは非常に少ないんですね。
なぜかといいますと、かつては例えマネジメントが機能していなくても市場成長が結果業績を担保してくれたからです。極端な話ですが、上司の仕事は部下の行動量をいかに上げるか、顧客とどうやって良い人間関係を構築するか、だけを考えればよかった。私も、トレーナーになる前に会社員として勤務していた時代はそうでした。
今や営業を取り巻く環境はまったく変わりました。市場は成熟し、顧客企業は以前にも増して合理的、合目的的な購買決定をするようになっています。人間関係や温情だけではもはや発注などしてくれません。個人でさえ感情に左右されない購買傾向が強まってきています。
また、価格にシビアであることは言わずもがなです。数字そのものが簡単には上がらなくなった。しかし、会社からの業績プレッシャーが弱まることなんかありません。
一方、今の若手にしても、数字を上げるシナリオをロジカルかつ具体的に示さないとついてきてくれない。「とりあえず訪問量を増やせ」だけでは部下は動かないんです。営業を科学的に捉えるスタンスと思考力が今の営業マネジャーには求められます。プレイヤー時代に残した実績と人の良さだけでは部下はついてこない。当時の仲間たちと話しても「営業マネジャーなんてなるもんじゃないよなー」という声が多いですね。もちろん彼らにもなんとかしたいという気持ちはある。部下に信頼されているかどうか不安で不安でしょうがない。「でも何をしたらいいの?なんにも勉強してこなかったじゃない、俺たち」と(笑)。
営業マネジメント研修を開発したいと思った背景には、こうした営業マネジャーが置かれている厳しい現実を何とかしたいという私自身の強い想いがありました。
強いチームを率いる営業マネジャーの原則を学ぶ。
『売れる営業マネジメント』研修は、営業マネジメントの担い手であるマネジャーが高業績を上げ続けていくための原則を具体的なケースを取り上げながら学んでいくものです。ポイントは“継続的な成果、業績を上げていくためのもの”であるということです。
マネジメントとは一定期間成果を上げればいいというものではありません。ハイパフォーマーに依存する組織は決して長続きしない。成果や業績を継続していくためには、一人が抜けてしまったら終わる組織ではなく、いなくなっても機能する強いチームを作ることが必要なのです。そもそも変化が激しくスピードが求められる今の営業環境では、チームとしての総合力で顧客に対応していかないとアウトプットの質が担保できなくなっています。
そこでプログラムの開発にあたっては、厳しい環境においても高業績を上げ続けている営業チームに着目し、そこで行われている営業マネジメントを分析することから始めました。
強いチームを率いるマネジャーたちは、一体どんな考え方・やり方で仕事に取り組んでいるのか?リクルート社内をはじめ社外へのインタビューを行って共通項を探し出し、エッセンスを抽出して10の原則にまとめました。例えば、営業マネジャーは瞬時の判断を求められますが、強いチームのマネジャーはその判断がぶれずに一貫しています。そして、自分の考えを自分の言葉で部下に語りかけることができる。「そんなのあたりまえだろ」とか「会社が言っているから」とは決して口にしません(笑)。自分の行動や言葉の影響をよくわかっている。また、部下の仕事に枝葉末節な介入はしないというのも共通しています。あまり信頼されていないマネジャーは、自分の都合や関心事だけで部下の仕事をいちいちチェックしますが、売れる営業マネジャーは数字の管理にしても、部下のフォローにしても自分なりのマネジメントポイントが明確なんですね。そのポイントが来たときだけ確認やアドバイスをきっちり行う。自分ひとりでやろうとしたり、やり方を一方的に押し付けたりしない。明らかにプレイヤー意識から脱却しているんです。
受講者である営業マネジャーの皆さんは、「売れる営業マネジメントの10原則」を自分と照らし合わせながら学んでいきます。営業マネジャーは非常に忙しく、時間がありません。だからこそ、こうした基準、原則をしっかりおさえることが非常に重要になってきているのではないでしょうか。
営業という仕事に矜持を持った営業マネジャーの存在こそが人と組織を輝かせる
冒頭で受講者の方々の感想を紹介しましたが、マネジャーの全体像を理解し、自分の役割がはっきりと見えることによって、今抱えている現実と改めて向き合わなければならないようなケースも出てきます。
これまで担当してきた研修の中でお一人、非常に印象に残っている方がいらっしゃいます。
その方はある部下との関係で悩んでおられたのですが、研修が終了したあと感想をお聞きすると「なんだか重い荷物を背負ったような気がします」と呟いておられたんですね。問題の部下については研修中にお聞きしていたのですが、確かに同情したくなるようなとんでもない部下でした。「それでもやはり向き合わなければならないんですよね・・・」とぽつり。ずっとそのことが気になっていたのですが、後日メールが届きました。「少しずつですが部下との関係を見直す兆しが見えてきたような気がします」。
極端に言ってしまえば、その方は部下に対してマネジメントを放棄することもできたと思います。でもそうせずに、「俺がやんなきゃ」と思い、「コイツのために自分から働きかけていこう」と決意してくれたのだと思います。うれしかったですね。重い荷物は背負ったけれど、そこがゴールじゃなかった。
現在営業マネジャーが置かれている環境は確かに厳しい。でもそのポジションを重くて嫌なものだと思ってはほしくないのです。「営業マネジャーとしての自分がいるからこそ、部下は生き生きとし、何かを成し遂げられるんだ」そういう矜持をぜひ持ってほしい。そしてそんな営業マネジャーの存在こそが部下を勇気付け、組織を元気にさせるのだと思います。私もトレーナーという仕事を通して、一人でも多くの営業マネジャーが自分の仕事にやりがいと自信を持って組織に貢献することができたらと思っています。
執筆者
人材開発トレーナー
池田 睦彦
1989年大手トイレタリーメーカー入社。営業、マーケティング部門、海外駐在を経験し、2003年1月にトレーナー契約。その後、研修プログラムの開発にも携わる。現在は主に中堅・管理職アセスメント、マネジメント、リーダーシップ強化をテーマとしたプログラムの納品が多い。担当するお客様はメーカー、商社、金融、サービスなど多岐にわたる。
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